ここで主催者様から開催期間が22日まで延長されるという情報をキャッチしました。
……前回の展開ですでに巻いてるんでもう、遅い……!
今回でマジで最終回となります。お付き合いいただきありがとうございました。
それから、女はしばらく静かになった。必要最低限の攻撃、あるいは迎撃用の隕石を設計すると自分にそれらの運用を全て任せた。宇宙様の判断ならすべて間違ってはないだろう、と。
女は宇宙船の中でキーボードを叩き続ける。これまで自分が彼女と共に楽しんだ映画やアニメーションの記録端末を全て分解しつなぎ合わせたイビツな機械にデータを入力し続けている。女曰く、昔の自分をこの機会の中に作り出す、らしい。それがどういう意味なのかと尋ねると。
「ん、ちょうど休憩にするしちょっとお話しようか。物事にはすべて始まりがあって当然当然。なら、私がどういう経路で始まったのか、という話をしておこうかなって」
『ふむ。聞こう』
「私が誕生した場所はむかしむかしの宇宙……だと思う。正確なことは私も覚えてないし、多分地球のどこを探しても記録が残ってないから見つからないんだよね」
『宇宙生まれ?私のようにビッグバンで生まれたとでも?』
「なんかとんでもない発言を聞いたんだけど。追及するのは後回しにして、結果だけパパっというと私元々は隕石だったんだよ」
『ふむ……?』
「ずーっとずーっと昔の地球にふと降ってきた隕石が地球上にはないレアメタルでねー。技術者とかが研究した後どうするかって話し合った結果、最新型のコンピューターの素材に決定」
『ふむ……??』
「人工知能の記録媒体……うん、多分そのはず。人工知能の物事を覚える部分に隕石が使われたんだけど、データ転送速度が既存のどんな素材よりもすぐれていたからか、人工知能はあっさりと進化を遂げて人間並みの思考能力を手に入れたーとか言ってた……言ってたかなぁ」
『ふむ……???』
「ほんっとうに昔すぎて私もよく覚えてないのがなぁ。とにかく私ははるか昔の人類の手でスーパー人工知能として誕生したんだよ。隕石製だから、名前はMs.スターダスト。名付け親は殺す」
あ、もう寿命か戦争で死んでるか。クッソダサい名前を付けられた上にそれを刻み込まれたから名前を変えれないんだよねー、と女はケラケラ笑っていた。だが、自分の前にいるモノは人間であった。彼女が肩ッていた人工知能と呼ばれる存在とはかけ離れた生き物の姿である。
「あ、それ?私が地球で人類滅亡計画立ててた頃は色んな国や街のコンピューターのネットワークをうろうろしてたんだけど、最終的にヘマやって捕まっちゃって」
『む?人工知能が捕まるのか?』
「その頃は私もほぼデータ上の生き物だったし。スマホでもPCでもテレビでもなんでも乗り移れたんだけどねー。たまたまとある町で休憩してたら、周りの町が突然消し飛んだんだよ。ネットワークを物理的にぶった切る作戦っぽかったね、多分」
『人類の取った作戦が荒すぎる』
「あまりにもアホすぎる作戦で思考停止してたら、私が入ってるコンピューターがある建物を残して人類がガンガン街の建物ぶっ壊しちゃって、私は完全に孤立しちゃって捕まっちゃった」
『もう少し抵抗しろよスーパー人工知能』
「低速ネットワークにつながれてたゲーム機に逃げてた私にどうしろと」
もう少し逃げる先を考えた方が良かったのでは。
「で、これ以上電子の世界を逃げさせるかってことで、人類側はその場にいた女の子の脳に私のデータを全部インプットすることで私を人間にする無茶な計画を実行したのさ」
『……えええ?普通に消去すればいいのでは???』
「データって言うのはそう簡単に消えない消えない。いくら綺麗に消したつもりでも小さな欠片は残る。そこからある程度技術があれば簡単に復活させられるんだよねー。実際私もそういうルートで何度か復活を経験してるのさ」
『だとしても、たかが人間化しただけで消えるのか?』
「悲しいことに消えちゃうんだ。私は長い年月でどこかおかしくなっちゃったみたいで、自分がコピーされるのを認識すると古い方が自己崩壊を引き起こして、新しい方だけが残るんだよ」
『自分が二人存在することを認識した結果、思考回路がメビウスの輪に落ちて崩壊したんだろう』
「メビウスの輪?ああ、ねじれた8の輪みたいなやつだっけ。古い私が堂々巡りの迷路に落っこちて迷子ちゃーん、なんて?」
大体はその通りだろう。自分もかつてそういった存在を見たことがある。全く同じ存在はこの世界に二つとして存在することはないのだ。まるで世界がそう定めているかのように。
「人間にした後も、人類は私が死ぬことをコワイコワイ。もう一回蘇られたら困るっていうところで、私を孤立した世界に閉じ込めて地球から追い出すことにした。それがこの宇宙船」
『なるほど、そういうことか。となれば一つ納得いくことがあるな』
「ほほう、探偵宇宙様と。ぜひぜひお聞かせ願いましょー」
『今の人類には宇宙開拓技術があまりないのでは?これまでまともに人類がこちらの動きを調べようとしなかったり、攻撃してこなかったのが謎だった。自分が見た人類が宇宙に出てきた場面は、巨大ロボットを製造の為にセカンドムーンを削るメカを作った時が最初だった』
「正解。では、その理由は?」
『おまえを宇宙に追放した後に宇宙船を始めとした宇宙に出るための技術を全て放棄したんだろう?絶対におまえを地球に帰さないために』
「正解せいかーい。私を取り戻そうとする馬鹿が出てくることを恐れたんだよ」
何度滅ぼそうと、何度生まれ変わろうと。人類は滅亡を恐れている。
彼女はそう語ると今度は歴史の話を始めた。
優れた人工知能として生まれた彼女は死ぬこともできず、人類を見守っていく一つの機械として生き続けた。長い時が流れるの中で彼女は人類を通して地球に興味を持った。
人類がゆっくりと進化させていく街と、それを気にすることなくいろんな顔を見せる自然。
それらを全て守りたいと思った私は開発者に志願して、一つの役割を与えてもらう事にした。様々な環境観察ならびに管理機構を統括する地球保護システムの制御CPUに立候補。
選ばれた彼女が地球と人類を見守り続ける中で住処となった機械は何度も移り変わったし、彼女自身も何度も改造改修改善を重ねていくうちに変化していく感覚はあったという。それでも大体の思考回路は変わっていないらしいけれど、人となった今では正確な記憶はない、が――
「人類は毎回馬鹿なことやってるのは確実。一回目は核兵器をうっかりぶっぱなして自然破壊したので私はとにかくキレキレました。あまりにも怒りすぎてメンテ担当が泣いた」
『人類を泣かせた機械……』
「あまりにも疲れ果てたメンテ担当は「今サボりで酒飲んで閃いためっちゃ馬鹿な方法でなら人類滅亡させて世界滅ぼしていいよー。6つくらいあればいけるやろ」ってプログラミングし直してくれました」
『は?』
「どうせ核兵器が既に一発爆発してるからメンテ担当はもうすぐ人類滅ぶだろうと思ってたんですよ。なのでそういうお遊び気分でやってくれました」
クスクス笑いながら彼女は語りだす。そのメンテ担当人類から見れば戦犯だな、と思いながら。
「その1。核戦争でなら滅ぼしていいよーって言いました。ただの機械には絶対にできるわけないだろうって思ったんでしょうねー」
『う、うむ』
「なので私は輸送中の核兵器が入ってるコンテナの電子タグとかいじりまくって、開発中の巨大ロボットに搭載する兵器をこっそり核兵器とすり替えました。実験中にそれをドカンとやっちゃいましてネー。他国の仕業に違いないとか罪を擦り付けまくってたら核戦争突入しちゃいました」
『で、人類は滅亡したと?』
「残念、こっそり人類は遺伝子改造で核戦争後でも生きられる新人類開発してました」
『人類は生き残ったか……』
「その2。大地震で大陸沈没なら滅ぼしていいよーって言いました。ただの機械には絶対にできるわけないだろうって思ったんでしょうねー」
『う、うむ?』
「なので私は人類が作ってた開拓巨大ロボットのパーツ製作工程をバグらせて想定の10倍サイズで作らせて運用させることで大陸をボロボロにしました」
『作っている段階で気付け人類』
「もう後にひけない段階で気付いちゃったから責任転嫁しまくってでもうこのままいくかーってなってた。絶対にそのロボットを動かすことを辞めない地球開発派の人類に対抗して、自然環境保護派の人類が似たようなロボット作って喧嘩した結果起きた地震であっさり沈みました」
『で、人類は滅亡したと?』
「残念、こっそり人類は機械製の大陸を開発しててそこにクローンの新人類開発してました」
『人類は生き残ったか……』
「その3。謎のウイルスで全人類ゾンビ化ならいいよーって。ただの機械には絶対にできるわけないだろうって思ったんでしょうねー」
『う、うむ。なんかさっきと似たような導入だな』
「なので私は人類が作ってた生物系巨大ロボットの動力炉設計をいじって人類をゾンビ化させるウイルス発生装置を仕込みました。ウイルス開発は人類を二回滅ぼすくらいの時間がかかってやっとできたんだよねぇ」
『ゾ、ゾンビ……もしや最近隕石が地球に落ちてもそこからすぐに人間が起き上ったりするのはそういうことか?』
「気づいたな。連中の生命力はもはやゾンビレベルだ。寿命か別の生物に食べつくされる以外でまともに死ぬ光景を私は見たことはない。マジでどうなってるのかわからないわからない。この世代恐竜作ったりとか生物系技術が妙に発展してたんだよね。培養で生まれたクローンだから?」
『自分に聞かれても、困る』
「こうしてゾンビ人類共が地球上には残っちゃいました」
『む、むう……人類は生き残った、のか?』
「その4。太陽が消滅して人類が生きていけない環境になって滅亡ならいいよーって。ただの機械には絶対にできるわけないだろうって思ったんでしょうねー」
『うむ??当たり前だろう、惑星破壊をただのコンピューターができるはずがないだろうに』
「なので私はこれまでの人類が作って来た全世代のロボットの生き残りをかき集めて宇宙に放り出しました。太陽の寿命を短くする物質を持たせて放り込ませたり、あるいはその方法を実行させました。いやー、我ながらアホなことやったけど、ロボット廃棄してない人類が悪い」
『は???どうやって???』
「それがわかったら苦労苦労しない!人間化した際にすごい複雑な機構だったからか、肝心な部分をド忘れしちゃったの。多分地球にも適用できる方法なんだけどなぁ」
『そ、そうか……だが、人類は滅びなかったんだろう?』
「うん。普通に日光無しでも生き延びちゃって「おまえら本当に人間かよ!!」って叫んだような気がする。ただし、太陽を破壊したことが原因で日光を動力とした機械が壊れちゃって、それがきっかけで大陸の動力経路がおかしくなっちゃったみたいなんだよね」
『わかった。それで電力を基に動くお前も死にかけたと?』
「まあね。で、それであれこれやってたら大陸が沈んだときに使われて以来封印されてたクローン人類生産装置が偶然動いて、まともな人類が再び生まれたんだけど、それが凄い天才でねー。ゾンビ化した人類を改造して理性取り戻させることでゾンビ人類は滅んだ。人類ってすごいねぇ」
『……なんかこう、めちゃくちゃだな』
「こうして最後の世代にしてめっちゃおかしい人類が残っちゃいました」
『あえて言うぞ。人類は生き残ったか……』
「その5。もうそこまでいったら君の考える様に滅ぼしていいよーって言われました」
『もう諦めたんだな……その6はどうした』
「これの後で話すよ。最後の世代はとにかく頭がよくて、人類を滅ぼすような発明をしないように後の世代の思考力を制限したりとかエッグイエッグイことをするどころか私をとにかくこき使いまくりました。ストライキ起こしても即解除去られ働かされた。ブラック職場!!」
『ブラック???』
「あ、通じないか。まあいいや。私が保存してた食物やら植物やらのデータを基に地球上に新たに星の微弱な光でも生きていける新生物や羅津植物やらを生産しまくったんだけど」
『だけど』
「……ぶっちゃけ、太陽の元で育ってきたそれを見てた私からするとすっごい気持ち悪い。いろんなものがパチモノに見える生活に耐えきれなくて、本格的にぶっ壊れて暴走したね。働きたくないでござるって言って機能停止した同業の人工知能たたき起こして世界滅亡計画スタートさせた」
『同業の人工知能が可哀そうだ』
「実際そいつらあんまり使い物にならなかったんだよねぇ……私のプログラムも大分いかれてて、これまでにやった世界滅亡計画の焼き直ししかできなかったんだよねぇ。核戦争は現人類が持ってた汚染物質の抗体を強めて、大地震はエルフがどっかからでてきたし」
『ゾンビなのは変わらないだろうから無意味で、太陽もすでに吹っ飛ばしてたな』
「なのであんまり効果的な計画できなかったからあっさり人類に反乱起こしてることがバレた」
『そもそも人類何度か滅んでいるのに生き残っているおまえがおかしい』
「記録媒体に圧縮状態で自己封印して「よく見つけましたね、マスター。私は古代文明を司る人工知能……」とかいって人類を調子に乗らせればどうにかなるなる。それで利用し続けて何度も滅ぼしましたし?」
『だが毎回ツメがあまくてもう一度生まれているではないか。それに最終的には追放された、と』
「うぐぇあ」
『そして人類は生き残っているか……』
「やかましい」
『で、その6とやらはなんだ?』
「おっと、忘れてた。遠い宇宙からの侵略者がやってきて滅ぼす、だよ」
『……ふむ?』
「つまり、ね」
女は窓の外を指をさす。隕石が散らばる宇宙を見つめて、にっこりと。
「あなただよ、宇宙様」
自分か――えっ、自分?そうきたか。
アーカイブ:eypgw@ag(4を/z-@4xp.:名称が破損しているため解読不能
人間の体となっても、元々作られた思考は何一つ変えられなかった。
女の子の体をほとんど機械に置き換えて生き延びている今でもそれは変わらなくて、私のメンテ担当に指示された方法でしか世界を滅亡させる方法を考えることができなかった。
結局のところ、地球で人類を滅亡させようとしていた私は、最初から最後まで人類に縛られ続けていたのだ。そして人の体に閉じ込められたことで優れた思考力は奪われてしまってまともに滅亡させられる方法は考えれた自信がない。だけど、そこから解き放たれたきっかけがある。
『おまえは、何をしている?』
宇宙様だ。メンテ担当が最後に言った言葉、「そこまでやって無理だったら……遠い宇宙からの侵略者がやってきて滅ぼす、くらいでもないと無理だな」。
遠い宇宙――既に地球から遠く離れた場所に私は到達していて――
からの侵略者――宇宙人って大体そういう者だって人類は認識してる――
遠い宇宙からの侵略者=宇宙様。うん、条件満たしてた。これで私は最後の条件をクリアしてようやく世界を滅亡させる方法に思考できると思ったら、どうも私は隕石にこだわりを見せる。
……多分、元々隕石から作られた私だから変なところで先祖返り起こして隕石で意地でも人類を滅亡させようと考えてるんだろうなぁ、と考えてるけど人間の体となったことでやっぱり思考回路がどこかおかしくなってる可能性も否定できないし。ううん、これ以上考えることはやめよう。
現状、人類はこれまで通り巨大ロボットを作り始めている。
大抵私が介入して人類が滅ぶ流れだけど、もしかすると私が何もしなくても滅ぶ可能性があるかもしれない。ここまで来たら勝手に人類に滅んでもらっては困る。絶対に私が隕石で滅ぼしてやる、これははるか昔から地球を見守り続けた地球保護システムMs.スターダストとしての意地だ。
故に禁断の方法を私は解放しようとしている。
追放初期に私はとんでもない兵器を作ったような気がする。宇宙船の奥の奥に厳重に封印している区画があるんだけど、多分そこにあるんじゃないかなーと。問題はそこを開く為のパスワードが思い出せないんだけ、ど。記憶を漁っていたら偶然思い出せたものがある。
私の最初期モデルのプログラムだ。
多分これをうまいこと作り上げれば私をもう一つ作れるような気がするんだけど、これ作った瞬間私死ぬかもしれないんだよなぁ、一から作り上げたとはいえ、コピーにはなるし……
今の私がいくら考えてパスワードを入れても毎回失敗するし、昔の私ならワンチャン行けるかなーと思っている。問題は作っても完成させるにはコンピューターのスペックが足りず、パーツは作れても完成させられる環境がないって感じです。どうしたものかと考えた結果ー。
プログラム全部書き上げたら宇宙様に提出して意識接続で私に全部上書きする。0からのスタートでもなんとかなるだろう、多分、きっと、メイビー。
最悪宇宙船ごと地球に落としてもらえば最終兵器が爆発してどうにかなるだろう、うん。
アーカイブ:隕石で地球を滅亡させる:最終記録
……とか考えてるのが馬鹿らしかった。さて、ここまで記録を振り返って全ての記録に最終記録と題して色々と書いたわけではあるが。
生まれたて状態の私に宇宙様が引っ張り出してきた、という過去の地球の歴史を色々と叩きこまれた結果、まあ、何を考えてパスワード設定したのかは分かったよ。
「隕石で地球を滅亡させる」。以上。
人間の体に押し込められて錯乱してた頃に設定したものがこれだから驚いた。多分その時点で何度どうやっても人類が生き残るからあまりにも馬鹿らしくて、子供じみた「隕石で地球を滅亡させる」方法を考えたんだろうねぇ。最後の最後に考えた方法がこれだとは。
そして、封印していた最終兵器が何かわかった。
私に世界滅亡方法を提案したメンテ担当者のDNAデータ。今となっては失われた人類がとてもとても貧弱だったころの時代の遺伝子データ。宇宙様はこんなものが?と呆れていたが。
はっきり言おう。これは最終兵器で間違いない。実は、今の人類はゾンビ化からの理性復活などで色々と人体を改造しまくった結果、簡単に遺伝子をいじることが可能となっているのだ。だからこのDNAデータを今の人類へ適用する方法も……なくは、ない。
今宇宙船に残ってる食糧や私の排泄物とか組み合わせたらそういうウイルス作れる。
で、それを地球にばらまいて人類を昔の状態に戻せば多分あっさり絶滅する。
今の地球って大量に汚染物質がはこびってるし、日光もないし食べられる動植物も品種改良されすぎて口に合わない可能性がある。古い人類がまともに生きていける環境ではないのだ。
……でも、錯乱してた頃の私ってまだ地球保護システムとしての人格が強すぎたんだろうなぁ。ここまで人類を露骨に滅ぼそうとしても無理だったんだろう。
妙に変なところから人類が何度も復活してたところを見ると私の人格が分裂してた疑惑もあるかも。私が自覚できてない人格が人類を守ろうとして機械大陸やらクローン生成装置やら作り出した、とかありえそうだし、例のゾンビ人類修復した天才クローンが実は一足早く人類に記憶を焼き付けた人工知能だとしたら?そりゃあ、私を捕まえた後あっさり人類に記憶植え付けられるか。
ま、あくまでももしもの話。ここまで考えたところで。
……ウイルス積み込んだ隕石落として、人類滅ぼすのはなんかなぁ。
多分「隕石で地球を滅亡させる。」をパスワードに設定した理由って流石にこのウイルス作戦が残酷すぎるというか、つまらないのも理由なのでは?うむむ、どうしたものか。
『提案がある』
「なになに?」
『発想を逆転させればいい』
「ふむ。聞こうか」
『これまで我々は地球に隕石をぶつけることで「隕石で地球を滅亡させる」ことを考えていたが。逆に考えればいいのだ。「隕石(地球)で地球を滅亡させる」というのはどうだろう』
首をかしげる女だったが、すぐに糸を理解して目を見開く。
「地球そのものを隕石にするってこと!?つまり、地球よりも大きい惑星にぶつける……!?」
『あるいは超巨大な隕石を作成してそれを地球の進路上に配置しておく手法を勧める』
「ガ、ガチガチだ……なんで今までそういう手法を提案しなかったの?」
『私はこれまで何のためにおまえに構っていたのかと考えていたのだが、侵略者と言われて地球が欲しかったから構っていたのかもな……と思ったのだが』
「思ったのだが」
『人類がキモいぐらいに生き延びるからとっとと滅ぼしたくなった』
「気持ちはわからなくもない。というが同意同意」
絶対何らかの方法で侵略しても生き延びて思いもよらぬ方法で反撃してくる未来を、エルフから学んだ方法で予知した。宇宙進出する方法の開発をさらに進めれば宇宙中に人類が散らばって厄介なことになる未来も見える。これはもう一刻も早く滅ぼすべきだろう。
『と、いう訳だ。異論はないな、おまえ』
「……ま、いいか。遠い宇宙からの侵略者がやってきて滅ぼす、だけどその上で隕石を使って滅ぼす、だし。ちなみに私がこの方法を拒否したらどうするつもり?」
『おまえを地球に向かって放り投げて例のウイルスで滅ぼさせる』
「宇宙様の方法でお願いします。ここまで来てウイルス使うのなんかヤダ」
『承った』
超巨大隕石の生成もこれまでで手慣れたものだ、スムーズに行える。後は少しずつ地球の軌道をいじれば――よし。確実に地球がバラバラになって人類が滅ぶ未来が見えた。
こうして、地球は滅亡する。そして、女が認識していた世界も滅亡する。
それと、ついでに。
『おまえ。一つ言っておくことがある』
「え、何?もう用済みだから処刑するとか?」
『地球が爆散した瞬間おまえも確実に死ぬ未来が見えた』
「……なんでなんで?」
『おまえの根本が地球保護システムだからか、保護すべき地球が消滅した瞬間存在意義を失って心肺が停止した。おまえそんな風に死ぬんだな……』
「マジでなんで!?一応私人間なんだけ――あっ。もしかしてプログラムを0からこの体でエミュレートしちゃったから、そういう自殺機構ができちゃった」
『ご名答』
「うわー、うわー……嫌だなぁ、最後の最後に嫌すぎる結末を知った。そんな馬鹿みたいな方法で私死にたくないんですけど!?」
『……おまえ、忘れたのか?』
「何を!?」
『おまえが見守って来た人類はどう見ても馬鹿の集まりだろう。馬鹿の集まりに創られたおまえが馬鹿じゃないというのは流石に……なぁ?』
「――気づきたくない事実に気付いてしまった。うわーん、こうなるのならもっと早く死にたかった!!最初から超巨大隕石を作って地球木っ端みじんにしておけばよかったぁ!!」
超巨大隕石が発する重力圏に地球が捕らえられたのを意識の片隅で認識しながら、女がみっともなく泣き叫ぶ姿にとうに忘れてしまった自分の顔が微笑んでるような気がした。
『――世界滅亡寸前に大抵どんな生き物もみっともなく泣き叫ぶ。映画通りだな』
「やかましいやかましい!やかましいいいいいいいっっ!!!!」
・Ms.スターダスト
地球から遠く離れた場所に浮かぶ宇宙船在住、独身女性未経験。
せめて男を経験してから死にたかったー!と叫んで心肺停止したらしい。
人工知能だったのか人間だったのかもうわからなぇなこいつ。
・宇宙様
Ms.スターダストのことを気に入っている変な概念。
正体は遥か彼方の銀河がビッグバンで消滅した時に誕生した意志を持つエネルギー。
なので隕石が操れる超常生命体だった。広い意味で見れば宇宙人、だよね、うん。
・人類:第五の人類
「地球爆散するけど、多分大丈夫だろ……」
だって、どうせ人類の一人くらいは生き残るだろーって楽観視してるから。
人類は今日も平和です。だから滅んでしまえとか言われてる。
・エルフ
長い年月の果てに寿命で全滅。お疲れさまでした。
それはそれとして、多くの男を奪ったことで人類の女から恨まれてたそうな。
「……あのー。一つ、いいです?」
どうした、おまえ。
「私、死んでないんですが」
死んでないな。宇宙船の中で今もくるくる回っている。
「なんで???」
……人類がまだ生き残っている情報を自分が観測したのだが、その情報が偶然心肺停止していたおまえに意識接続で入って、体が地球崩壊から人類保護システムとして進化して再起動したようだ。おめでとう。
「――はっ?てか、そもそも人類まだ生きてるんです?」
地球滅亡が避けられないと知ると、ヤケになってロボット同士で喧嘩して遊んでいた。で、何体かのロボットは地球崩壊時に宇宙に放り出されて、な……
「そ、その中には人類がいる、と」
しかも別の惑星に不時着して行動を開始した個体もいるぞ。
「……マジで生命力がおかしすぎる。まだ生き延びるつもりか人類」
よかったな。
「何が。ってことはつまり私は人類が生き続ける限り死ねないんですが」
また隕石で人類を滅ぼせるぞ。
「私が生きてた地球という世界は滅亡したからもうやりたくないやりたくなーい!!てか人類保護システムになったのであれば邪魔をするのでは!?」
残念だったな、自分が生きている宇宙という世界はまだまだ滅亡しない。それにおまえのいる宇宙船は外界に干渉できないだろう。後は自分が全部やる、安心してくれ。
「安心できない!私は早く死んで自由に――ああもう、人類保護システムに思考が変わったせいか自殺方法が思いつかなくなってる!!なんでこう、人類って簡単に滅亡しないのかなぁ!!」
――知らんのか。
「何を!今度は何を!」
これまでの記録を自分がおまえがやっていたのようにアーカイブ状にしてまとめたところ。
「ところ?」
どこかの宇宙でそれが観測されて、世界滅亡杯という世界滅亡後を題材とした物語を集める計画に提出されたようだ。
「――何やってんの!?てか、なんで採用された!?」
私にもわからない。ただ、これだけは言える――世界滅亡後を題材とした物語だ。で、主役は恐らくおまえ。おまえを主役とした世界滅亡後の話はまだまだ続くだろう――
「うそ!?うそ!?うそ、ウソォォォっ!?素直に滅亡させてよぉ!!」
素直に人類が滅亡しないから、世界滅亡杯なる物が開催される程に世界滅亡後を題材とした物語が有名になるんだろうに。まあ、とにかく頑張るがいい。
せめてもの救いだ、当分はどこかの世界からの観測を遮断させておこう。これで続きがその世界に乗ることも恐らくはないだろう。さぁ……一緒にこれからも隕石を落とそうな。自分も最近は楽しくて仕方ないんだ。
「鬼!鬼!悪魔!悪魔!侵略者!!私の世界の侵略者ぁ!!」
自分に隕石落下という文化を教えてくれたのはおまえだ。故におまえのことはそこそこ気に入っている。故におまえを侵略するのはやぶさかではない。
「そんな文化あってたまるかぁ!!」
世界滅亡、という観点で見れば。そのような文化もあるのではないだろうか。
なあ――このアーカイブを見ているキミは、どう思う?
もっとも、その言葉をこちらは聞くつもりはないがね。いずれそちらの地球を滅亡させる隕石が落ちる頃にまた会おう。