エリカと会ってから数日。
レッドがタマムシを離れた後、私はもう一度ジムに訪れた。
というのも、一旦イーブイの安全を確保してから動きましょう。とのエリカの言葉から、イーブイを連れたレッドが出発するのを待っていたのである。
「さて、エリカ。準備はいい?」
「大丈夫ですよ。行きましょうか、マシロ。」
『いくよー!』
そして、今日はきららも絶好調。さすがに数日休むと元気にもなるか。
「ところで、そのポケモンは?見たことがないポケモンですが・・・。」
「私もなんて言うポケモンかわからないから、きららって呼んでる。見た目はかわいいけど、実力はお墨付き・・・かな?」
まぁ、実際はお墨付きどころか最強?
とにかく、きららが負けるところは想像できない。
「そうですか。頼もしいですね。」
「でも基本的に大技ばかり覚えてるから、加減を間違えると地形が変わっちゃうんだよね。」
「え?」
『ましろー、うえにこのまえあったひとがいるよー?』
「上?」
とりあえず、エリカの疑問は置いておいて上を見る。
確かに、何かの影のようなものは見えるけど・・・。あれ人なの?
「上がどうかしましたか?」
私につられて首を傾げながら上を見るエリカ。
ここからじゃよくわからないし、行って見る方が早いかな。
「エリカ、少し待ってて。ちょっと見てくる。」
「見てくるとは、どうやって・・・?」
「ミスタ、あそこまで行ける?」
私はミスタをボールから出して聞いてみる。
うん、多分行けるみたい。私はミスタに飛び乗る。
レッドかタマムシを離れるまでの間、マサキのそらをとぶをまねてミスタに乗せてもらえないかお願いしたところ、意外とすんなり乗せてもらえるようになった。
「お願い、ミスタ。あそこまで飛んで!」
「ーーー」
掛け声と共に高度がグングン上昇する。
ちょっとまって、これ。結構怖い!
鳥ポケモンと違って、不安定な感じが物凄い!
『すごーい!ましろがとんでるー!』
「飛んでる!飛んでるけど、ものすごく怖いんですけどー!」
『あははー。』
きららは楽しそうにミスタと私の周りをグルグルと飛び回る。そうこうしていると、小さな影が人影にみえてくる程に近づいていた。
「あれって、ナツメ?」
私が呟いた時には、その人物の前でミスタが停止していた。
「ちっ。イーブイを追っていたら、また面倒な小娘に見つかったか・・・。」
「面倒な、なんて子供に向かって言う言葉じゃないよ?」
「貴様こそ、子供なんて言葉は似合わんがな。あの時は流石に死ぬかと思った。」
ナツメと普通に会話する。あれ?今日は問答無用で攻撃してこないね。
そういえば、オツキミやまで私避けられてたっけ。それのせいかな?
「今日は前と違って大人しいね。らしくないんじゃないの?」
「ほざけ。お前に用はない以上、こちらから仕掛ける理由はない。」
「でも、この前は。邪魔者は消す、って言ってたよね?」
そう言うと、また舌打ちをして黙り込んじゃった。
うーん、どうやらロケット団全体に私を避ける命令が出てるのかな?
「まぁいいや。とりあえず、1つ聞きたいことがあって。」
「・・・なんだ?」
「ブルーって子知ってる?」
「知らん。」
「そっか、ならいいや。あともう1つ。あのイーブイはどうするの?」
「奪い取る。と、言いたいところだが。そう言うと、お前はどうする?」
「ぶっ飛ばす、かな。」
そう言うと、ナツメはフッと笑う。
「危ない橋を渡るぐらいなら、イーブイの一匹ぐらい放って置くさ。」
「そう。それならもう用はないかな。戻るよ、ミスタ。」
そう言って戻ろうとするとナツメに呼び止められた。
「まて。大人しく戻るのはらしくないんじゃないか?」
「まぁね。捕まえたいのはやまやまだけど、こんなとこで戦うと、最悪どっちか死ぬかもしれないから、できれば戦いたくないかな。それに、ブルーの事は知らないみたいだから、ね。」
こんな高さから落ちたら絶対に死ぬでしょ。
あと、怖い。ここ高すぎるんだよね。せめて、この高さに慣れてからじゃないと無理。マジ怖い。
「そうか、相変わらずのあまちゃんだな。まぁ、せいぜい気をつけることだ。きっと、近いうちに私達のボスがお前の相手をしてくださる。」
「それは、おあつらえ向きだね。首を長くして待ってるよ。」
「ほざいてろ。」
言うだけ言って、ナツメはテレポートで消えていった。
さて、私達も早く降りよう。
降りている間、私は浮遊感に慣れるか別の鳥ポケモンを捕まえるか頭を悩ませた。
下に降りると、エリカが駆け寄ってくる。
「ふぅ、怖かったぁ〜。」
「上で何かありましたか?」
「上で、と言うか上が・・・かな?」
「???」
首をかしげるエリカに苦笑いをする。
「こっちの話。とりあえず、上にナツメがいたから追い払っておいた。」
「え?ケガはありませんか?」
「大丈夫、穏便に・・・、ではないかもしれないけど。話だけで終わったよ。」
「そうてすか。ご無事で何よりです。」
「時間とっちゃったね。それじゃ、ゲームセンターに向かおうか。」
「はい。」
そう言って歩き出した瞬間。
ドカァン!
ゲームセンターの方から爆発音。
そして、そこから高速で飛び去っていく一筋の影。
「エリカ。」
「ええ、行きましょう。」
短く会話した私達は、ゲームセンターに駆け出した。
「これは・・・!」
「派手に壊れてるねぇ・・・。」
目の前には以前、ニビシティで吹き飛ばされたポケモンセンターと同じぐらいぼろぼろになったゲームセンター。
とりあえず、早朝の開店前だから一般客はいないと思うけど、従業員とかはいるかもしれない。
「きらら、瓦礫をどかせる?」
『まかせて!』
「もんじゃら、あなたもお願いします。」
きららが瓦礫を浮かせて、もんじゃらが蔓で脇にどけていく。
さすが、ジムリーダーのポケモン。パワーがすごい。
瓦礫をどけていくと、白衣を着た研究者、というかこの前のおじさん?
「おじさん、生きてる?」
「君は・・・。この間の・・・。」
生き埋めになってただけあって、息も絶え絶えで返事をする。とりあえず、きららに引っ張り出してもらった。
「やはり、あなただったんですね。カツラさん。」
そう言って、エリカはおじさんの前に立つ。
やっぱり、知り合いだったの?えっと、カツラって言うの?この人。
「エリカくん・・・だったかね?顔を会わせるのは久しぶりだね。」
「ええ・・・。マシロの話を聞いてもしや、とは思いましたが。こんなところで会いたくはありませんでしたわ。」
「ふふっ、そう・・・だろうな。」
話が長くなりそうだから、私は割って入る。
「二人とも、話は後だよ。おじさん、他に人は?」
「大丈夫だ。あの日から人払いをしておいた。従業員も、開店前には立ち入らないようにしている。だから、私以外誰もいない。」
「そっか。なら、早く離れよう。爆発したのがロケット団の研究施設なんてばれたら、おじさん捕まっちゃうよ?」
「だが、私は・・・。」
いまだにうだうだ言っているおじさん。
個人としてはそのまま放っておいて捕まってもらってもいいんだけど・・・。
なんか、エリカの知り合いみたいだし。
それに。
「ロケット団、抜けるんでしょ?だったら、おじさんのことをどうするかはエリカに任せるよ。」
「マシロ。ありがとうございます。」
「ミスタ、この人乗せてあげて。」
私はミスタにおじさんをお願いして、エリカに向き直る。
「場所は、ジムでいいかな?いい感じに町から離れてるし。」
「そうですね。お願いします。」
私達は、おじさんをミスタに乗せてやって来た道を引き返していった。
ジムに戻ってきた私達。
とりあえず、このおじさんって何者?エリカの知り合いみたいだけど。
「マシロ。紹介しておきますね。この人はカツラさん。グレンタウンでジムリーダーをしています。」
「この人もジムリーダー?ジムリーダーの半分がロケット団って、ポケモンリーグやばくない?」
「耳が痛いですね・・・。とりあえず、ケガの手当てをしましょうか。」
「それなら、私が治すよ。」
そう言ってケガを治そうとする私。
しかし、きららが慌てて止めてくる。
『ましろ、だめだよ!これいじょうはからだによくないよ!』
「え?」
言われたときには既にケガを治し始めていた私は、途中で止めることもできずにケガを治しきってしまった。
「きゅうに、どう・・・したの・・・?きら・・・。」
あれ?なんか視界が?横向き・・・に?
そのまま私は気を失った。
ーカツラ視点ー
私のケガを治したとたん、目の前の少女は倒れてしまった。
「マシロ!?」
「マシロくん、というのかね?彼女は一体・・・?」
「私も詳しいことは知りませんが、ロケット団に敵対している心優しいトレーナーですよ。」
エリカくんはそう言って倒れてしまったマシロくんを抱き上げる。
「思ったより軽いですね。この子をベッドに運んでくるので、少しお待ち下さい。ラフレシア、ここはお願いします。」
ちゃっかりポケモンも置いていく。相変わらず抜け目がないな。
「まったく、私は何をやっているのやら・・・」
ロケット団を嫌っているはずの女の子に諭されて、ケガまで治してもらった。
おそらく、そのせいで彼女も倒れてしまったのだろう。本来であれば私のような人間など治したくなかっただろうに。本当に頭が下がる。
「お待たせしました。それで、お話を聞かせてもらって構いませんか?」
「そうだな。私のしてきたことと、私が出会った少年少女のこと。あまりいい話ではないがな。」
「分かっていますよ。それを聞いて、私もあなたをどうするか決めましょう。あなたの事は、マシロに任されたので。簡単には決められません。」
「では、聞いてくれて。私の犯した罪を。」
そうして、私は今までの罪を懺悔するように話した。イースターやギャラドス、その他色々なポケモンを実験材料のように扱ってきたこと。
そして、私の目を覚ましてくれた少年と少女のこと。
エリカくんは黙って話を聞いてくれていた。
「それで、あなたはこの先どうするつもりですか?」
「そうだな・・・。飛び出していったあいつも、今はもう1つの命。私がどうこうする必要もあるまい。それならもう、私の出る幕はあるまい。大人しく自首しよう。」
「それなら、私達を手伝ってもらえませんか?」
それは、意外な提案だった。仮にもジムリーダーの看板を背負いながら、ロケット団として活動していたこの私を・・・
「私を、許そうと、言うのか。」
「それを決めるのは私ではありませんよ。あなた自身です。その為には贖罪の場は必要でしょう?」
なるほど、自分の手であがなえと。そう言うことか。
「他人に任せるな、と言うことか。なかなか手厳しい。」
「マシロに任されたので、中途半端なのは許しませんよ。彼女に許してもらえるまでは、あなた自信の行いで、罪を償ってください。」
そう言って、私と彼女は薄く笑いあった。