ん・・・?あれ、ここは・・・?
目を覚ました私は、見慣れない天井に戸惑う。
辺りを見渡すと、少しだけ見覚えのある雰囲気に気づく。
「エリカの・・・ジム?」
隣の台を見ると、私の荷物とモンスターボールが2つ。
もしかして私、あのまま倒れちゃった?
後でお礼を言っておかないと。
そう思って立ち上がると、いつもと違う自分の格好に気づく。
あれ?着物になってる。エリカがやってくれたのかな?何から何まで頭が下がる。
その時ガラガラと、ドアを開けてエリカが部屋に入ってきた。
「おや、気が付きましたか?」
「うん、ありがとう。これ全部エリカが?」
そう言って袖を掴み両手を広げる。
「はい。うふふ。随分質素な格好でしたので、着付けがいがありましたよ。」
「あはは・・・」
そう言って笑うエリカに、乾いた笑いを返す。
そういえば、マサラタウンを飛び出すように出てきたから、長袖長ズボンのシンプルな格好のままだったんだよね。
それに比べて、今は青を基調にして赤と緑を入れてるのかな?
青。
ブルー。
「・・・・・・ヨシ!」
「随分と気に入っているようで、私も嬉しいですよ。」
「え?聞こえてた?」
「ええ、バッチリ。」
ちょっと!なんか恥ずかしいんですけど!
私は顔を抑える。真っ赤になってない?大丈夫?
「青には少し、思い入れがあって・・・ね。」
「そうですか。白い髪によくお似合いですよ?」
「ア、アリガト。」
やめて!今褒められるとニヤけてとまらなくなるから!
とにかく、私は恥ずかしさを隠すように続ける。
「それで、おじさんは?」
「彼はグレン島に戻りました。」
「あれ?警察には突き出さなかったんだ。」
「ええ。あなたのお陰ですよ。」
「私?」
首を傾げる。特に何かした覚えはないんだけど・・・。
「フフッ。わからなくても構いませんよ。そんなあなただから、彼も変わったんです。」
「ふーん、よくわからないけど・・・。」
「それでいいのです。それより、一週間ほど寝てましたが、お身体の方はどうですか?」
え?一週間?
そう言われるとなんだかとても。
「お腹が空きました。」
「ですよね。昼食・・・には遅いですが用意してあります。食堂にどうぞ。」
「ありがと、エリカ。」
そう言いながら先に歩き出すエリカ。
ん?既に用意してあるって事は、一週間毎日用意してくれてたのかな?
「ねぇ、もしかして。ご飯も毎日・・・?」
「えぇ。用意しておりました。」
「ごめんね、いっぱい無駄にさせちゃって。」
「いえ、大丈夫ですよ。ただ・・・。」
「ただ・・・?」
スゥっと、少し息を溜めるエリカ。
「少々体重が増えてしまいましてね」
「ヒィッ!」
振り返り、うしろにゴゴコゴゴと効果音が聞こえそうな笑みを浮かべる。
それってつまり、私の分も・・・ってことだよね・・・。
「ゴメンナサイ!」
「別に謝る必要はありませんよ?私が勝手にしたことですからね?」
「ヒィッッ!」
怖い!ミスタの上なんか比じゃないぐらい怖い!
これが、ジムリーダー・・・!
戦慄していると、フッとプレッシャーが消える。
「申し訳ありません。からかいすぎましたね。」
「あはは〜・・・」
いやいや、からかうなんてレベルじゃないって。寿命が縮むかと思った。
そんなこんなで遅い昼食後。
「エリカ、少しパソコン借りてもいい?」
「構いませんよ。どこかに連絡を?」
「うん。ちょっとオーキド博士にね。探し人の足取りが掴めたけど、すぐにわからなくなったって。」
「先日仰っていたことですね?」
「そう。とりあえず報告だけでもしておきたいかなって。」
そのままパソコンを操作する私。あれ、いつもなら直ぐに出るんだけど・・・。何かあったのかな?
あ、繋がった。
「あ、もしもし博士?」
「その声は、マシロか?」
「え?その声ってレッド?」
博士に繋いだはずなのに、何故かレッドが出た。しかも映像がないから、最初は誰かわからなかったし。
「なんでレッドがそこに?博士は?」
「博士はロケット団に連れて行かれた。どうやらヤマブキシティにいるらしい。そこでオレをまちかまえているそうだ。グリーンいわく、ロケット団との最終決戦になるって。」
レッドを誘ってる?ロケット団に恨みを買うような事をしたのかな?
まぁ、私は心当たりしかないけど、二人も何かしらの因縁があるみたい。
「とりあえず、オレはヤマブキシティに向かう。博士に用事なら、オレ達が博士を助け出したあとにしてくれ。それじゃ。」
そう言って一方的に通話を切られる。
えっと、ヤマブキシティで大きな戦いがあるってことでいいのかな?
「エリカ、聞こえてた?」
「はい。早速、カツラさんにも手伝ってもらいましょう。」
見逃したおじさんにも手伝わせるらしい。
まぁ、手を貸してくれるのなら、見逃した意味はあった・・・のかな?
ご飯を食べ、手早く準備を終える。
さてと、ロケット団との最終決戦がヤマブキシティで待ち構えてる以上、私もここでじっとしてる訳にはいかないよね。ブルーのことも気になるし。
「それじゃ私は、ヤマブキシティに向かうけど・・・。ほんとにこれ、着ていっていいの?」
「構いませんよ。それより、お気をつけて。私もタケシとカスミ、それとカツラさんが揃い次第、ヤマブキシティの東西南北のゲートを抑えます。」
「ありがと。そっちも気をつけてね。」
そう言ってヤマブキシティのゲートに来てみたものの。
「ここは通行禁止だ。ん?いや、ちょっと待て。白い髪の女が来たときは連絡しろって通達があったな・・・。少し待ってろ。」
と言って待たされてる。まぁ、心当たりしかないし。
最悪、強行突破しよう。
「待たせたな。ゲートを出た所で、待っていろ。迎えが来る。」
「迎え?誰が来るの?」
「知らん。俺の仕事はここの門番であって、子守りじゃない。さっさと行け。」
しっしと手を振られたので、さっさとゲートを抜ける。冷たい門番だったけど、門番ってみんなあんな感じなのかなぁ・・・。
さてと。ここで待ってればいいらしいけど誰が来るのやら。
そう思っていると、人影はすぐに現れた。
スーツを着た、今度は髪の毛のあるおじさん。
「待たせたな。こちらにも準備があって少々てこずった。」
「言うほど待ってないよ。それより、準備ねぇ・・・。最終決戦前の下準備・・・かな?」
「ほう・・・。タイミングから、偶然ではないと思ったが。やはり、今日を狙ってきたのか。君に招待状を出した覚えはないんだがね。」
「知ったのは偶然だけどね。それで、あなたはロケット団の幹部?」
「フフフ、ハッハッハッハッ!!」
聞いたとたんに笑いだす目の前のおじさん。
人が質問してるのに笑うって失礼じゃない?
気持ちが顔に出てたのか、私の顔を見ると笑うのをやめた。
「いや失礼。面白い冗談だったものでな。」
「冗談のつもりはなかったんだけどな。」
「そうか。では改めて・・・。我が名はサカキ。ロケット団のボスをしている。」
「なるほど。ボスに対して幹部?なんて聞いたら笑い話にもなるか。」
「そういうことだ。お前の事は、ナツメから聞いている。名前を聞こうか。」
「・・・マシロ。ナツメにはずいぶんひどい目にあわされたよ。」
「フッ。それはお互い様だろう。あそこまで手酷くやられたあいつを見たのは初めてだ。」
互いに軽口をたたきあう。ロケット団のボスがなんで出迎えに来たかは分からないけど、口論でも負けたくはないよね。
そう思ったとき、ふと何かが消えたような不思議な感覚がした。
「今のは・・・?」
「ナツメのバリヤードがやられたか。どうやら、招待客が来たようだ。」
「レッドのこと?」
「他にも招待していない者もいるようだがな。」
そういうやいなや、背中を向けて歩きだすサカキ。
「ついてくるといい。私のアジトに案内しよう。」
私は、歩きだすサカキの背中を追いかける。
「わざわざ案内してくれるのはありがたいけど、どういう意図?」
「一番の理由は、お前を自由にさせておくわけにはいかないからだな。おそらく、三幹部では止められん。」
「あなたなら止められるって?」
「無論だ。」
すごい自信。さすがはロケット団のボスってところかな?
「それで、一体どこまで歩くの?」
「この町の中央にあるシルフカンパニー。そこが私の、ロケット団のアジトだ。」
そう言って黙ってしまったサカキ。そのまま足を進め続けていると、いつの間にか、この町で一番大きなビルが目前に佇んでいた。
「ここだ。」
「なんか燃えてない?」
「そのようだな。」
しかし、立派なビルも何故か炎上し所々窓から煙が立ち上っていた。
「どうやら、もう始まっていたらしい。」
そうつぶやくと、こっちに振り返る。
「それでは、こちらも始めようか。」
そう言ってサカキは上着を翻し、ポケモンを繰り出す。
サイホーン、サイドン、ダグトリオ、ニドキング、ニドクイン、ゴローニャ。
あれが、サカキのポケモン全部・・・かな?
「改めて名乗ろう。ロケット団のボス、そして。トキワシティ、ジムリーダー。大地のサカキ!サイドン、じわれだ。」
そして、サカキは自分の後ろの道をサイドンで踏み砕く。
「さて。これで、君は私を倒さないとシルフカンパニーには行けなくなった訳だ。」
「迂回したり、ポケモンに乗っていけば行けるんじゃない?」
「フッ。私がそんなことを許すと思っているのか?」
まぁ、そんな悠長なことできないか。
「まさか。それに、ロケット団のボスを無視する理由なんて。」
「こっちにもないんだから!」