ふぅ。
うまいことスピアーを瓦礫に閉じ込めて、上にあれを撃ち込めた。
「あれがいわおとし・・・だと?まるで隕石ではないか。」
上を見上げたまま、サカキが呟く。
確かに、言われてみたら隕石って感じだね。
『つかれた~。』
ふらふらと飛んできたきららを抱き止める。
これを使うときららがかなり消耗しちゃうんだよね。
でも、すごいはかいこうせんはエネルギーがたまってないと全然威力が出ないし、なかなか使い勝手が悪い。
「ありがときらら。私のせいで無茶させてごめんね。」
『そうだよ~。ほかのひとをなおすのはほどほどにしてよね!』
「うん。今度からそうするね。」
そう言って抱き抱えたきららを撫でる。
さてと。
「上は決着が着いたけど・・・。サカキ、あなたはどうするの?」
「計画の要である3体が解放された以上、貴様の足止めも必要なくなった・・・か。」
そう言ったときに、ようやく瓦礫からスピアーが起き上がる。
「戻れスピアー。もうここに用はない。」
起き上がったスピアーをボールに戻す。
そして、そのまま私の前まで歩いてくる。
「どうするか・・・か。私はこのまま失礼させてもらおう。」
「逃がすと思ってるの?」
「その満身創痍な状態で・・・か?」
サカキは胸に抱えるきららに目を向ける。
ぐぬぬ。確かにミスタは倒されちゃったし、きららのエネルギー空っぽだし。
「ハァ・・・。どうしようもない、かな。」
「懸命な判断だ。」
「次は負けないからね。」
「フッ。負けてはいないだろう。」
「あなたを捕まえられない時点で負けてるようなものだよ。」
目の前にいるのに自分の力不足のせいで逃げられるのってものすごく腹立つね。
「そう言うな。これでも敬意をはらっているのだぞ?その気になれば、残りのメンバーで貴様を踏み潰すこともできる。」
「・・・そういえばそうだったね。」
そういや、まだ4体も手持ちが残ってたっけ。あ、スピアーも入れたら5体か。
何体連れてるのよこいつ。ずるくない?
「・・・次は逃がさないから。」
「そうか。」
サカキは短く返事をすると、すれ違いざまに私の肩をポンと叩きそのまま歩き去っていった。
『よかったの?』
「うん。きららに無理はさせられないしね。」
『むちゃをしたのはましろだよ~?』
「そうだっけ?」
『そうだよ?』
「そっか。」
きららを撫でながら上を見上げる。
蔓の上にはもう誰も残ってない。
「ブルーはもういない・・・か。流石にまだその辺りに居るよね?」
私は踏み抜かれ荒れ果てた地面を迂回しながらビルの周りを歩き始めた。
ビルの正面に差し掛かったとき、そこではレッドやグリーン、オーキド博士やエリカ達がぐるぐる巻きになったロケット団の横で話をしていた。
あれ?ブルーはどこに行ったんだろう?レッドかグリーンなら知ってるかな?さっきまで一緒にいたんだし。
そう思って近づく私に気づいたレッドが話しかけてきた。
「あれ、マシロ?なんでここに?」
「お前、気づかなかったのか?」
その言葉に反応したのは、何故かグリーン。
ん?と言うことは、私に気づいてたのかな?
「え?なんのことだ?」
「気づいてないならいい。それよりマシロ。今回は借りておくが、必ず借りは返す。」
「貸したつもりはないからそのまま受け取っておいてよ。」
「そうはいくかよ。」
「???」
借りとかいいからレッドみたいに頭に?マークでも浮かべといてくれないかなぁ・・・。
いや、じゃなくて、ブルーのこと!
「そんなことより、ブルーは?一緒じゃないの?」
「え、あれ?そういえばどこに行ったんだろう・・・?」
「ブルーと言うのは、オレ達と一緒にいたあの女のことか?」
ん?一緒にいたのにグリーンは知り合いじゃなかったの?
「そうそう。おかしいな・・・。さっきまで一緒に居たと思うんだけど・・・。」
「わからないならいいや。自分で探してみるよ。」
とりあえず、歩いてみようかな。
そう思って歩き出した私をきららが止めた。
『そっちじゃないよ。たぶん、あっち。』
「町の外れの方?」
『そうみたい。』
わざわざ一人で外れの方に行ったってこと?
あ、もしかして、オーキド博士が居るからか。
そりゃ、どろぼうに入った家の家主には会いづらいよね。
そう思いながら町の外れの方に歩いていくと、木の影に隠れた女の子を見つけた。
その姿を見た瞬間、私はきららを放って駆け出す。
『あわわ。ましろ、きゅうになげないでよ!』
空中で体勢を立て直して文句を言うきらら。
でも、そんなことはもう私の耳には入らない。
そして、私は木の影に隠れてたブルーに抱きついた。
「やっと見つけた!」
ーーー
まったく、新種のポケモンを手にいれようと思ったらとんだ目に遭ったわね・・・。
それも、よりにもよって鳥ポケモンなんて最悪!
それに・・・。なんであの人がいるのよ!?
木の影からちらりと、視線を向ける。
そこには、グリーンに支えられたオーキド博士。
盗みに入った家の人と顔を会わせられるわけないし、早いとここんなところからはおさらばしちゃいましょう。
そう思っていた時、アタシに飛びかかってくる人影。
「やっと見つけた!」
そう言って私に抱きついてきたのは、白い髪の着物をきた女の子。
「会いたかったよ、ブルー!」
そう言って抱きついたままアタシを見上げてくる。
うーん、アタシの名前を知ってるみたいだけど、アタシ、こんな子知らないわよ?
「あなた、誰?」
「え?私、マシロだよ・・・?覚えて・・・ない?」
そう言って目に涙をため、いまにも泣き出しそうになる。
ちょっと!?泣くのは得意だけど泣かれるのは初めてなんですけど!?
「ちょっと!?人の胸のなかで泣かないでよ・・・。」
そのままこの子の頭を撫でる。
マシロって言ったっけ?そんな知り合い、いたかなぁ・・・?
そう思ったとき、ふと懐かしい気持ちになる。なんか昔、同じようなことがあったような・・・?
その時、ほとんど覚えていなかったマサラタウンでの出来事を少しだけ思い出した。
少しの間だけだけど、仲がよかった、一人の病弱な女の子。
「え!?マシロって、あの引きこもりのマシロ!?」
「引き・・・。うん、その引きこもりのマシロです・・・。」
「あ、ごめん。引きこもりは言い方が悪かったわね。え、それより体は大丈夫なの?確か、体が弱かったはずじゃ・・・。」
そう言うとマシロは少しアタシから離れると、袖を掴んでその場でくるっとまわる。
「お陰さまでこの通り、元気になりました!」
むむ、この子可愛いわね。今といいさっきといい、あざといし。天然なのか、狙ってるのか・・・。まぁ、出てるとこはないんだけど。
「それより。やっと見つけたって、アタシの事を探してたの?」
「あ、そうそう。」
そう言ってアタシの前にてくてくと歩いてくる。ううむ、あざとい。
「ブルー、博士の所からゼニガメ盗んだでしょ?」
「え!?」
「鳥ポケモンにさらわれた子がマサラタウンに帰ってきてるのに挨拶も無しにポケモンを持っていったら気になるでしょ?」
「あぁ、そっか。そっちから見たら、そんな感じになるのね。あれからこっちも色々あって・・・。アタシはマサラタウンのこと、ほとんど覚えてないのよ。だから、挨拶どころか、両親の顔もわからないのよね。」
「そっか・・・。もう6年も前だもんね。でも大丈夫!私はブルーのこと忘れたことないから!」
「あ、ありがと・・・。」
何が大丈夫なのかはわからないけど、これは慰められてるのかしら。
「そういや、なんでブルーはゼニガメを盗んだの?」
「え?あー、えっと・・・」
ポケモン図鑑を貰って旅に出たトレーナーが羨ましかった。なんて言えないし・・・。
「ちょっとやることがあってね。」
「そうなの?私も手伝おうか?」
さらっと信じたわね、この子。
普通、盗人の言うことなんて信じないでしょ。まぁ、嘘は言ってないけど・・・。
「それじゃ、これを渡しておこうかしら。」
「これは?」
マシロの手に小型の機械とスプーンを押し付ける。
「小型の通信機よ。手を貸りたくなったら連絡するからちゃんと持っててよ?」
「スプーンは?」
「ロケット団のお姉さまからバッジのついでに頂いたものよ。いらないからあげるわ。」
「要らないけど貰ったの?」
「まぁね。貰えるものは貰っておくものよ。」
アタシはプリンを出す。カメちゃんはさっきまで戦ってたから、無理はさせられない。
けど、ここの町にはあの人が居るから同じ町には居づらい。
「それじゃ、アタシはやる事があるから。」
「行っちゃうの?」
「ええ。やることがあるって言ったでしょ?それに、手元のそれがあるから会おうと思えばすぐに会えるわよ。」
アタシはマシロの手の中にある通信機を指差す。そのままアタシは膨らんで少しずつ浮いていくプリンに捕まる。
「それじゃあね、マシロ。」
アタシはそのままプリンに捕まって上空に浮かぶ。
ちらりとマジロの方を振り返る。その小さな人影は、ビルでアタシたちを助けてくれた女の子の姿に重なって見えた。
あの時の女の子って、マシロ・・・?
だとすると、本格的に手伝ってもらうことになるかもしれないわね。
ーーー
あーあ、行っちゃた。
6年ぶりに会ったのにあっけない感じだったなぁ・・・。
それに、私の事忘れてたみたいだし!
6年ぶりだし仕方ないかもしれないけど、実際に言われるとへこむや・・・。
「まぁ、思い出してくれたみたいだからいいけどね。」
そう呟いて手元のアイテムを見る。
スプーンはよくわからないけど、通信機は嬉しいかな。
これで、いつでもブルーとお話しできるしね!
とりあえず、スプーンはリュックにしまっておこう。要らないけど、ブルーから貰ったものを捨てるなんてあり得ないし。
「それじゃ、皆のところに戻ろうかな。」
『おいかけなくてよかったの?』
「いいの。もう、追いかけなくても良くなったし。それにね?」
『??』
不思議そうに首をかしげるきららを捕まえて、胸に抱きかかえる。
「きららも疲れたでしょ?ミスタも頑張ってくれたし、これ以上は無理はさせられないから。」
私はもう一度きららを胸に抱えて、レッドたちの方に歩き出した。