ミュウツーを捕獲した後。
あの後私は、結局エリカの所に帰った。
なんやかんや言っても、居心地はいいし、ミスタは満足するし、きららはのんびりできるし。
「日向ぼっこが最高だよねー。」
『ねー。』
あれから1週間。
きららもボールから出てくるぐらい元気になった。ミスタはエリカのポケモン達と毎日バトル。私は縁側で天日干しされる毎日。
これだけ気持ちいいんだから、天日干ししたお布団だって、そりゃ気持ちいいに決まってるよね。
そうやって縁側で溶けていた私の横に、エリカが歩いてくる。
「あらあら、今日も溶けてますねぇ。」
「疲れも何もかもが溶け出てるよぉ・・・」
笑いながら話しかけてくるエリカに、やる気のない返事を返す。
だってきららも元気だし、気にすることもなくなくなったんだよ?そりゃ溶けるって。
「ところで、なにか用事?」
「用事というほどではないのですが、セキエイには向かわなくてよかったんですか?」
「セキエイ・・・?あぁ、ポケモンリーグか。いいよ、そんなの。柄じゃないし。」
「そうですか。マシロなら、きっと優勝できると思ったんですが・・・。」
「エリカって、私の事持ち上げすぎじゃない?」
「そうですか?マシロは自分の事過小評価してると思いますよ?」
「すごいのは私じゃなくて、きららとミスタだよ。」
最近、エリカは私の事を持ち上げてくる。
何かさせたいのか何なのかはわからないけど、そんなに持ち上げてどうしたいのやら。
「あと、ポケモンリーグにブルーという方が出場しているらしいですよ?」
「え?ブルーが?」
「はい。確か、お知り合いのかたでしたよね?」
「そうだね。・・・そっか、ブルーが出てたんだ。」
私は縁側で溶けながら考え込む。
写真やらなにやら売ってたらしいし、ポケモンリーグは賞金も出るから・・・。
やっぱりお金が必要なのかな?
そういうことなら私も出たらよかったかなー?と思いながら立ち上がる。
「行くんですか?」
「ブルーが出てるなら、応援ぐらいしとかないとね。」
「その方が大好きなんですね。」
「そうだよ。私の初めての友達で、ずっとずっと追いかけてきた、とっても大事で大好きな人。と言っても、今はもう追いかけなくても良くなったんだけどね。」
「フフッ、そうですか。」
「うん。やりたいことがあるって言ってたから、邪魔しちゃ悪いかなーって。でもまぁ、応援ぐらいならいいでしょ!」
私はミスタを迎えに歩き出した。
ーーセキエイこうげんーー
あの後、エリカのポケモン達とバトル中のミスタにお願いして、セキエイまで連れてきてもらった。
流石に長距離飛行は疲れたようで、今はボールでお休み中。きららも人混みの中で邪魔になるといけないからボールの中。
私もようやく慣れてきたのか、ミスタの上でもあまり怖くなくなってきた。
『只今より、準決勝1回戦。ブルー選手対ドクターO選手!』
おっと、ぎりぎりセーフだね。
もう少し遅かったらブルーの勇姿を見逃すところだった。エリカに感謝だね。
会場に入ると、中は超満員。うーん、前の方には行けそうにないね。
仕方ない。出遅れた私が悪いから、ここで立ち見しよう。
中央のステージでは、プリンとオニスズメの戦いが繰り広げられていた。
プリンがトライアタックを放ち、オニスズメに命中する。しかし、オニスズメは怯むことなく、みだれづきを浴びせる。
耐えきれなかったのか、うたうでオニスズメの動きを止めようとするけど、鳥ポケモンには届かない。
そのままプリンのトライアタックでオニスズメを狙うが、最初に当たったのは偶然だったのか、一向に当たらない。
んー、なんかブルーと、あれは・・・レッドかな?二人が言い合いをしてるけど、ここからじゃよく聞こえない・・・。
仕方ない。迷惑だけど、無理やり前に行こう。
ちょっとごめんねー。
ふぅ、ようやく前にこれたと思ったらカメックスがハイドロポンプの噴射の勢いで空を飛んでる。へぇ~、そんなこともできるんだ。
「オウムがえし!」
「反射や!オニスズメがエネルギーを反射する壁を作っとる!」
あ、マサキもいたんだ。解説ご苦労様。
でも、あのドクターOって人。どこからどうみてもオーキド博士じゃない?なんで顔を隠してポケモンリーグに出場してるんだろう?
と思っていたら、反射したハイドロポンプでカメックスが撃墜される。
そして、技を撃とうと近づいてくるオニスズメに対して頭を抱えて尋常じゃないくらいに怯えだす。
「いや・・・こないでーーーー!!」
「やはり、鳥が怖いかブルー。」
様子が変わったブルーに周りがざわつきだす。
「6年前、マサラから5歳の少女が大きな鳥に連れ去られる事件があった。当時、同じ年だった孫かおったから、他人事とは思えなくての。ずいぶん捜索に協力したから、今も姿をよく覚えとるよ。」
そして、スッと写真を取り出す。そして、顔を隠しているほうたいがスルリと剥がれ落ちる。
「まさかその子がゼニガメを盗みに入って防犯カメラに写るとは思いもよらなかったがね。あんなに怖い思いをしたんじゃ、鳥が苦手になっても無理はないのう、ブルー。」
「くっ・・・。ええい、カメちゃん!みずでっぽう!」
「オウムがえし!」
「きゃあ!」
そのままカメックスのHPは0になり、勝者はオーキド博士に決まる。負けが決まると、ブルーはガクッと膝から崩れ落ちる。
「さて、説明してもらおうかの。ポケモンを盗むなら他でも手に入るものを、どうしてわしの所から盗み出したのか。」
ブルーはうなだれながら、ポツポツと話始める。
「くやしかったの・・・。知らない、遠いところでアタシは育ったわ。覚えているのは自分が生まれた町、マサラタウンという名前とおぼろげな景色だけ・・・。
ある時、同じ歳のマサラタウンの二人の男の子がオーキド博士からポケモンと図鑑をもらって旅だったことを知ったわ。」
ここまで話すと、堪えきれなかったように涙を流しながら叫んだ。
「アタシだって!アタシだって、マサラのトレーナーだもの!二人とおんなじことがしたかったのよ!博士にポケモンをもらって、図鑑を持って!冒険の旅に出たかった!」
そう叫んだ後うつ向いたままひっく、ひっくと泣き続けるブルー。
そんなブルーに、博士はそっと近づきブルーの手をとる。
「ブルー。どんな理由があっても、人を騙したり盗ったりしちゃダメだ。もうしないと約束できるなら・・・。」
「あ・・・。」
博士が手をどけると、ブルーの手にはポケモン図鑑が握られていた。
「3つ目の図鑑だよ。これで君も、マサラノトレーナーだ。」
それを見た瞬間、ブルーは博士に抱きついてもう一度泣き出した。
「うわぁぁーん。」
「君が無事で何よりじゃ。」
そう言ってブルーの頭を撫でる博士。
観客席では何故かマサキが「わかるわその気持ち!」ってもらい泣きしてる。なんで?
まぁ、マサキはほっとこう。それよりも、ブルーが負けちゃったか。勝ってほしかったなぁ。
「でも・・・」
博士、ブルーが鳥ポケモンを苦手だと思って鳥ポケモンで出場したのかな?
なんか、ずるくない?
というか、ブルーのトラウマえぐって勝つとかひどくない?
ちょっと文句言いに行こう。
ーー控え室ーー
控え室の前でドアをノックしようと思ったら、博士とグリーンの話し声が聞こえた。
「オレとレッド。勝った方がおじいちゃんと決勝か。」
「いやー、わしは昔1度この大会で優勝しとるし、もういいよ。棄権するから、決勝戦はお前らでやってくれ。」
「・・・願ってもないな。」
そのまま控え室から出てくるグリーンとぶつかりそうになる。
「おっと。」
「・・・マシロか。お前はこの大会にエントリーしてなかったんだな。どうせならお前ともう一度戦いたかったんだが。」
「え?うーん、ミスタだったらよろこんでやってくれると思うけど・・・。」
「ミスタ?マシロの新しい手持ちか?」
「あ、うん。」
「そうか。この大会が終わったら改めて挑戦させてもらおう。」
「わかった。ミスタにお願いしておくよ。博士は中?」
「あぁ。おじいちゃんに用か?」
「うん。ちょっと・・・ね。」
「そうか。それじゃあ、オレは行くぜ。」
「がんばってねー。」
ステージに向かって歩いていく背中に声をかけると、振り向かずに片手をあげて決勝戦のステージに向かっていった。
さてと・・・
ーーオーキド視点ーー
「はかせー、いるー?いるよねー?」
「おぉ、マシロくんか。どうかしたかの?」
「どうもこうもないかな?さっき棄権するって聞こえたけど?」
「あぁ。わしはもういい。後は若いもんに任せるよ。」
団扇をパタパタとあおる。ふぅ、いい汗かいたわい。
「ふーん。棄権するくせに、ブルーのトラウマを抉るような事までしたの?」
マシロ君のプレッシャーに、思わずパタリと団扇を落とす。さっきまでとは違う汗が背中を伝う。
「いや、落ち着くんじゃ。これには深いわけがあっての・・・。」
「へぇ・・・。深いわけねぇ・・・。とりあえず、聞くだけ聞こうかな?」
「う、うむ。まず、わしはもう若くない。普通に戦ったらブルーにはまず勝てんじゃろう。しかし、ブルーに勝てんと本音を引き出すことができんと思っての。」
「一応、理由があったんだね。」
「そういうことじゃ。」
ふぅ、落ち着いてくれたか。
相変わらずブルーの事となると手がつけられんの。やれやれ。
「ほんとはミスタにぼこぼこにしてもらおうと思ったんだけどね。さっき先約ができちゃったし、今日は見逃しておくね。」
「あやつは容赦がないから勘弁しとくれ・・・。」
研究所がめちゃくちゃになったときの事を思い出す。あの時は掃除が大変じゃったわい・・・。
「それに、ポケモン図鑑を貰ってブルーも嬉しそうだったし・・・ね。」
「それはお主のせい・・・というか。マシロ君のおかげじゃよ。」
「私?」
心当たりがないのか、首を傾げる。
「ポケモン図鑑は量産できるものではなくての・・・。今はあの3台しかないのじゃ。それを君が、ブルーの捜索の邪魔になると受け取らなかった結果、ブルーの手に渡った。つまり、マシロ君がブルーの事を思って受け取らなかったからこうなったんじゃ。」
「なんか、私のお下がりみたいに聞こえて嫌だな。その事、ブルーには言わないでよ?」
「わかっておるわい。本当に君はブルーの事になると目の色が変わるのぅ・・・。」
「当たり前でしょ?だって。」
「私の初めての友達なんだから!!」