ジョウト地方、アサギ港。
地方と地方を繋ぐ貴重な町。
船を使わないなら、あとは自力で山を超えるか空を飛ぶかなんだけど、そんな長距離はミスタも飛べないし、自分の足で行くのもしんどいし。船が一番楽だよね。
「到着っと。」
『ながかったねぇ〜。』
「きららは船旅楽しかった?」
『わかんない!』
「そっかー、わかんなかったかー。」
船を降りながら、きららと話す。
きららにとっては船の上でも浮いてるだけだもんね。船旅の良さはわかんないか・・・。
とりあえず、ブルーに連絡しておこうかな。
ブルーに貰った小型の通信機を取り出す。
「もしもし、ブルー?聞こえる?」
『聞こえてるわよ。通信機の調子もいいみたいね。そっちはどう?』
「聞こえてるよ。こっちはちょうどジョウトに着いたところ。」
『そう。それじゃ、今から行動開始ってことね。頼りにしてるわよ、マシロ。』
「了解!期待にそえるよう頑張るよ。」
ピッ。
通信終了っと。
さて、これからどうしようかな?とりあえず、仮面の男・・・女?とりあえず、仮面の男でいいや。そいつの尻尾を掴まないとね。
そういえば、アサギにはジムがあったっけ?チャレンジャーって感じでお邪魔してみる?でも、カントーのジムリーダー半分ロケット団所属だったし・・・。
ん?でもそれは、むしろ好都合?
いや、でもジムバッジを集めてるトレーナーは目立つよねぇ・・・。むむむ。
「あら、挑戦者の方ですか?」
「え?あれ?」
考えながら歩いていたら、どうやらジムの前まで来ていたみたいで、ちょうどジムから出てきた髪の長い女の子とばったり出会う。
「んーと、ちょっと考え中・・・かな。」
あごに指を当てて答える。
「そうですか。わたしは少し灯台に用があるので、もし挑戦するのなら少しだけ待ってくださいね。」
そんな私に用事がある、と言って私の横を通りすぎていく。そっかー、用事があるなら仕方ないよね。・・・あれ?っていうことは?
後ろ姿を駆け足で追いかける。
「ちょっと、待って!じゃあ、あなたがジムリーダー?」
横に並ぶと、その子はこっちを向いてニコッと笑う。
「はい。わたしがアサギジムのジムリーダー、ミカンです。ご存知なかったんですか?」
「さっきジョウトに着いたばかりだからね。この地方に関しては少し疎くて・・・。」
あははー、と笑ってごまかす。
こんなことならジムリーダーのことも調べておけばよかったかな。
「ということは、ジムチャレンジのためにこの地方に来たわけじゃないってことですか?」
「んー、そうだね。目的のためにはジムに向かった方が早いかもしれないと思ったんだけど、ジム自体は目的じゃないかな?」
「はぁ・・・。よくわからないけど、その目的は聞いてもいいことですか?」
「えーっと、最近変わったことない?」
「え?急に変わったことを聞きますね。えーっと・・・。」
「あ、己紹介がまだだったね。私、マシロ。よろしくね。」
そういえば名乗ってなかったね。ごめんごめん。
「はい。よろしくお願いします。それで、最近変わったことですか・・・。」
「うん。何でもいいんだ。」
「それなら、アカリちゃんの様子が少しだけおかしいような気がします。」
「アカリちゃん?誰、それ?」
「あ、えっと、デンリュウの名前です。デンリュウのアカリちゃん。最近、灯台のお仕事をしてるとき、たまに光が弱くなるときがあって・・・。」
「病気かなにか?」
「わかりません。やっぱり、病気ですかね?」
「ポケモンセンターで治らないなら、病気じゃないのかなぁ・・・。」
「そう、ですよね。」
二人で灯台までの道を歩く。
私の知りたいことじゃなくて、ただの世間話になっちゃってるよ。まぁ、何事もそんなにうまくはいかないよね。
「海の向こうのタンバには、すごい薬屋さんがいるらしいんですが・・・。」
「薬屋さんがあるなら、薬を貰いに行けばいいんじゃない?」
「それが、その薬はとても貴重なものらしくて、少し様子がおかしいだけでそんな貴重なものを使うのも気が引けて・・・。わたしの気のせいかもしれませんし。」
「なるほどね。」
流石にこの子はロケット団とか、悪の組織の人じゃないよね?これで悪人とかなら、私は人間不振になる自信しかないよ。
「ねぇ、きらら。病気とかでも治せるかな?」
『うーん、たぶんなおせるとおもうけど・・・。』
「エネルギーたくさん使っちゃう?」
『やってみないとわからないけどね、はんぶんぐらいはつかうとおもう。』
「えっと・・・。その子とお話ができるんですか?」
不思議そうに首をかしげるミカン。
「まぁね。この子とは長い付き合いだから。」
「なんか、うらやましいですね。」
「そうかな?」
「そうです。わたしも1度くらい、アカリちゃんやハガネちゃんとお話してみたいです。」
話しているうちに灯台に着いた。
「えっと、マシロちゃんはどうしますか?灯台を登るの大変ですけど?」
「そのアカリちゃんは、灯台の上にいるんだよね?」
「そうですけど・・・。」
「なら、私も登るよ。」
「わかりました。それじゃ、一緒に登りましょう。ところで・・・。」
「ん?」
「その子、見たことないポケモンですけど、かわいいですね。」
そう言ってきららの方を見る。
いつもは初対面の人と話すときにはボールに戻すんだけど、かんがえごとをしていたから戻しそこねてたんだよね。ミカンはいい人っぽいからいいけど、悪い人だと、珍しいってだけで奪おうとするから。
あれ?ジムリーダーのミカンも見たことないってことは、この地方でも、きららって珍しいってこと?
それじゃ、出しっぱなしは目立つじゃん・・・。
「かわいいでしょ。ボールの中が嫌いだから、普段はボールの外にいるんだ。」
「へぇー、ちょっと抱いてもいいですか?」
「きらら、いいかな?」
『いいよー』
そう言うときららはミカンの胸に飛び込んでいく。
「柔らかいのに、芯がしっかりしてる。まるで・・・ハガネみたい。」
「ん?」
なんか、ハガネみたいって言ったときのミカンの気配に背筋がゾワッてした。なにそれジムリーダーのオーラ?
「ありがとうございます。堪能しました。」
「そう?それならよかった。」
さっきの感覚は一瞬だけできれいに消えてしまった。気のせいかな?
「それじゃ、登りましょう。」
登りだすと、すれ違うトレーナーに声をかけられる。主にミカンが。
「今日でアカリちゃん交代かい?」
「ええ。」
「今日はバトルはしていかないのかい?」
「今日はお客様がいるので。」
「かわいい子が二人になってやがる!」
「お上手ですね。」
こんな具合に大人気である。
いつもはバトルしながら登ってるの?ハード過ぎない?
というか、そのワードをだすと、うちの戦闘狂が・・・。
ガタガタガタガタ
とボールが震え出す。言わんこっちゃない。
こうなったら止められないし、仕方ないか。
「ミカン、ちょっと先に行っててくれる?」
「はい?」
「でておいで、ミスタ。」
ボールからミスタを出す。
「この子が戦いたいって。」
「ーーー」
「他のトレーナーも、たくさんいますよ?」
その言葉は火に油を注いでるんだよねぇ。
「こうなったら止まらないからね、この子。仕方ないから戦いながら上にいくよ。」
「わかりました。それじゃ、上で待ってますね。」
そう言ってミカンは先に上に上がっていった。
さてと。
「それじゃ、いくよミスタ。」
「ーーー」
登りながらバトルとか、なんの罰ゲームだろう・・・。
ーーーーーーーー
「あー、もう。疲れた!」
「ーーー♪」
灯台の1番上に登った私達。
疲れきった私とは対称的に、ミスタはたくさんバトルしてきたからご機嫌な模様。
そんなミスタにため息をつきながら奥に進む。奥にはミカンとデンリュウが座っていた。
「あら、早かったですね。ここにはジムに挑戦するような方がたくさんいるので、こんなに早く登れるとは思ってなかったです。」
「そうなんだ。なんだかんだ戦闘好きなだけあって強いからね、この子。ジムの挑戦者ぐらいには負けないかな。」
「すごい自信ですね。是非ともジムに挑戦しに来てください。」
「考えとくよ。それよりも、この子がアカリちゃん?」
「はい、そうです。」
アカリちゃんの前に座り込む。そして、そのままてをかざしてみる。
外傷がないけど、治せるかな?
そう思ったときには手から淡い光がでて、しばらくすると消えた。
よくわかんないけど、これで大丈夫かな?
「きらら、どう?」
『へったのはさんわりぐらいかな?』
「予想より少ないね。よかった。」
「あの、今のは?」
不思議そうに首をかしげるミカン。アカリちゃんも同じように首をかしげる。
「私、触るだけで他人の怪我を治せるんだ。だから、アカリちゃんも大丈夫。と言っても、病気を治すのは初めてだから、確実とは言えないんだけどね。」
「そうなんですか。にわかには信じれませんが、とりあえず様子を見てみますね。」
「うん、そうしてもらえると助かるかな。治ってたらもうけぐらいに考えておいて。」
さっきの様子から、アカリちゃんも自覚症状みたいなのはなさそうだし、このまま何事もなければいいね。
「それで、ミカンはどうするの?」
「今日はアカリちゃんを迎えに来ただけなんで、このままジムに戻ります。・・・挑戦、していきますか?」
ミカンの目が鋭くなる。
ジムリーダーって妙な凄みがあるよね?エリカもそうだったし、こんな人ばかりがジムリーダーなら、そりゃバッジも集まらないよ・・・。
「とりあえず、今日はパスかな?灯台を登ったから疲れたし。」
「そうですか。では後日お待ちしてますね。」
「いや、後日もお邪魔するかはわかんないよ?」
あと、意外と好戦的。
ーーーーーーーー
「んーー!」
灯台を降りて、グッと伸びをする。
それを見て隣のミカンがクスッと笑う。
「お疲れですね。」
「そりゃ、こんな高い建物登ったら疲れるでしょ。」
灯台を見上げながら答える。
「今はもう慣れましたけど、確かに初めの頃はわたしも疲れましたね。」
「でしょ?エレベーターでも増設しておいてよ。」
「わたしにそんな権限はないんですけど・・・。」
そう言って苦笑いするミカン。
まぁ、もう登ることはないかもしれないからね。別になくてもいいや。
「それじゃ、私はポケモンセンターで休もうかな。」
「では、ここでお別れですね。明日、お待ちしてますね。」
「いやだから、行くかは分かんないんだってば。」
「それなら、マシロちゃん。ポケギア持ってますか?」
「ポケギア?」
「こういうやつなんですけど・・・。」
取り出したのは、ブルーのから貰った小型の通信機。私もポケットからそれを取り出す。
「これ、ポケギアって言うんだ。知らなかったよ。」
「連絡先教えて貰ってもいいですか?もし挑戦するのなら、連絡してください。もちろん、遊びに来るだけでもいいですよ?お友達ですから。」
「とも・・・だち・・・!?」
ギギギと音がなりそうな感じで視線をポケギアからミカンに移す。
「はい。お友達、です!」
そう言ってニコッと笑うミカンに、私は思わず抱きついてしまった。
「わわっ、どうしました?」
「なんでもない。嬉しかっただけだよ。」
「そうですか。」
頭を撫でられる私。なんか、友達ができる度に頭を撫でられてる気がする。まぁいいや。
それじゃ、そろそろ離れないとね。
「それじゃ、登録しよっか。」
「登録?」
「ちょっと借りますね。ここを、こうして、と。はい、できました。」
「早いね?もう終わったの?」
「登録自体はすぐに終わりますから。これで、いつでも連絡がとれますね。」
「そうだね!ありがと!」
「それじゃ、連絡お待ちしてますね。」
うふふ、と笑いながら手を振ってジムに帰っていく。
私も大きく手を振り返す。
えへへ、友達増えちゃった!
ミカンの姿が見えなくなるまで私は手を振り続けた。