洞窟を出ると、ダイゴさんは私からある程度距離をとる。
「このぐらいでいいかな。」
「やらないと駄目ですか?」
「ポケモンバトルは嫌いかい?」
「まぁ、好きではない・・・かな。」
言いながら、抱いていたクチートをおろす。
と言っても、私の手持ちには戦闘大好きっ子がいるんだよね。さっきからボールがガタガタしてるし。
「分かってるよ。お願いね、ミスタ。」
「ーーーー」
待ってました、と言わんばかりに勢いよく出てくる。
確かに最近はあんまりバトルしてなかったから、ストレスが溜まってたのかも。
「スターミーか。他の手持ちを聞いてもいいかい?」
「え?いませんけど・・・。」
「・・・成程。それなら、2対2の入れ替え制でやろうか。」
ん?なんか、きららも頭数に入ってるけど大丈夫かな?
「きらら、数に入っちゃってるけど、どうする?久しぶりにバトルする?」
『やるやるー!』
きららも久しぶりのバトルでノリノリだった。
でも、きららとまともな勝負になるトレーナーのほうが少ないんだよねぇ・・・。
「ちゃんと手加減はしてよ?」
『でも、あのひと。かなりつよいよ?』
「そうなんだ。どれくらいかわかる?」
『まえに、やまぶきでたたかったひととおなじぐらい、かな?』
「え?サカキと同じぐらい?」
『そうそう!そのひと!』
「うへぇ・・・。」
きららと話している間、首を傾げているあの石マニアの人が?
人は見かけによらないって言うけど、サカキと同じぐらいっていうのは驚きだねぇ・・・。
「話はまとまったかい?」
「そうですね。2対2の入れ替え制で大丈夫です。」
こっちの先発は、と考える前にミスタが前に出る。
まぁ、ミスタ以外ありえないんだけどね。あの子ほど、切り込み隊長なんて言葉が似合う子はいないし。
「久しぶりのバトルだけど、指示はいる?」
「ーーーー」
ふるふると、体を横に振る。
好きにやらせろってことね。了解。
「それじゃ、メタング。頼んだよ。」
今朝見たポケモンより一回り小さい感じのポケモンを繰り出す。メタングと言うらしい。進化すると、今朝見たポケモンになるのかな?
ってことは・・・。
「手加減されてる・・・のかな?」
『かな?』
「ちー?」
いや、きらら?真似しないでよ。
クチートも真似しちゃったじゃん。
「それじゃ、始めようか。」
「いつでもどうぞ!」
まぁ、ミスタが好きにやるから私の方は特に身構えることもないし、ね。
「先手はもらうよ。バレットパンチ!」
メタングが高速で突っ込み、ミスタに向かって拳を振り上げる。
それに対して正面から十万ボルトで迎え撃つ。
技を受けたメタングは、多少怯んだもののミスタにその拳を叩きつける。
・・・あれは拳でいいのかな?まぁいいか。
「そのままコメットパンチ!」
そして、逆の拳をもう一度ミスタに叩きつけようとする。
うーん・・・。ミスタ、接近戦は苦手なんだよね。主砲のすごいはかいこうせんも、ハイドロポンプも少し溜めが必要だから、近づかれると相手の方が早い。どうするんだろう?
そう思っていると、ミスタは正面からコメットパンチを受け止め、ガンッ、と鈍い音が響く。
「え?ミスタ、大丈夫?」
まさか、正面から受け止めるとは思わず声が出た。
でも、心配はいらなかったみたい。
受け止めた時に、れいとうビームを撃ってたみたいで、メタングは拳を叩きつけた姿のまま凍りついていた。
メタングの氷柱の出来上がりだね。
「ーーー」
メタングを凍りつかせたミスタはいつもの電子音を響かせる。
とりあえず、殴られた分は問題ないってことかな?
ダイゴさんはどうするんだろうか。
ふと彼の方を見ると、ニヤリと不敵に笑ったような気がした。
「っ!!ミスタ、飛んで!」
「しねんのずつき!」
私が叫ぶのと、ダイゴさんの指示はほぼ同時だった。
ミスタは私の声に反応して上に飛び、メタングはずつきで正面の氷を叩き割った。
「あいにく、氷には強いんだ。でも、よく気づいたね?」
「顔に出てましたよ?」
「そうか。ポケモンじゃなくて、僕の仕草から反応したのか・・・。いい判断力だね。」
「ありがとうございます。」
ちらりとメタングの方を見る。
割れたのは正面の部分だけ。後ろ半分は未だに氷に包まれてる。
それなら・・・。
「ミスタ、すごいはかいこうせん!」
「メタング!てっぺき!」
凍りついても動けるようなポケモンだからね。中途半端な攻撃じゃ倒せないかもしれない。
そう思って、まだその場から動けない今。メタングに最大級の一撃を放つ。
ミスタから放たれたビームはメタングの氷ごと粉砕して、浜辺の砂を巻き上げる。
あー、これは砂まみれになるやつだ・・・。
『きららがーど!』
と思ったらきららがサイコキネシスで私の周りの砂を弾いてくれた。
「ありがと、きらら。今日はよく助けられてるね。」
『うむ。よきにはからえ。』
「ほんと、どこで覚えたのそれ?それに使い方間違ってるよ。」
『がーん!!』
私の周りをフラフラと飛んだあと、私の頭の上にぺたんと着地する。リアクションもバッチリだね。
あ、そういえば船の中で見てたテレビに似たようなことやってたっけ。それの影響かな?
とりあえず、頭の上のきららは置いといてダイゴさんの方を見る。
・・・なんか、頭に砂の山を作ったまま微動だにしないんですけど。
あ、動いた。
「驚いたな。メテオビームを使えるのかい?」
「メテオビーム?すごいはかいこうせんのこと?」
「君はそうよんでいるのかい?」
「はい。まあ、はかいこうせんよりすごいから、すごいはかいこうせんって言ってるだけなんですけど。」
「そうなのか・・・。今の技はメテオビームと言って、宇宙の力を吸収して打ち出す技なんだ。」
「ソーラービームの、宇宙バージョンってことですね。」
成る程。だからよく晴れた星のキレイな日は威力が高いんだ。エネルギーが集めやすいってことだね。
「戻れ、メタング。」
ダイゴさんがメタングをボールに戻す。
すごいはか・・・、じゃないね。メテオビームを受けたら流石に耐えれなかったみたい。
「あれは予想外だったね。甘く見てたかな?」
ダイゴさんはそう言って頭と肩に積もった砂を払っていく。
その間にミスタは私の横に降りてきた。
「ごめんね、ミスタ。思わず口出ししちゃった。」
「ーー」
ミスタに謝ると、最初と同じように体を横に振る。
油断した自分が未熟!って感じかな?
おっと、きららじゃないけど私も影響されちゃってるね。
「お疲れ様。選手交代だね。きらら、いつまで頭の上ににいるの?」
『むー、ましろがつめたい。』
「はいはい。船に乗ったら、一緒に続きを見ようね。」
『わーい!』
喜ぶきららは、私の周りをぐるっと回ると前に出る。ちょろい。
『やるぞー。』
「きららもやり過ぎないなら、自由にやってもいいよ?」
『ほんとに?やったー!』
きららもたまには自由にやりたいよね。
サカキと同じぐらい強いなら、多少やり過ぎても大丈夫だろうし。
「メタグロス。次は君だ。」
グオォ、と声をあげながら新しいポケモンが出てくる。こっちはメタグロスと言うらしい。
「こっちの方が強そうだね。きらら、気をつけて。」
『りょーかいっ!』
「準備はいいかい?」
「いいですよ。」
「いくよ!ラスターカノン!」
メタグロスと言うポケモンから銀色のビームが放たれる。
・・・さっきから知らない技ばっかりだなぁ。
もしかして、私の知識ってカントーの物に片寄ってるのかな?
『えいっ!』
きららのかわいい掛け声から放たれたのはメテオビーム。
それはラスターカノンよりも大きく、砂を巻き上げながらラスターカノンを飲み込んでメタグロスに直撃した。
あー、いつの間にか辺りは暗くなってるし。今日も星がキレイだから絶好調だね。
あと、ダイゴさんがまた砂まみれになってるよ。
『あのぽけもん、すごいね。』
「え?」
『まだ、たってる。』
「うそ!?」
メテオビームが収まり、砂ぼこりがやむと、さっきと同じ場所に立っているメタグロス。
苦しそうに見えるけど、あれをまともに受けて立ってたポケモンは始めてだよ。
「すごいねぇ・・・。」
『次、いくよ!』
きららはそのままメタグロスに向かって、すごいいわおとしを1つだけ落とす。
見た感じ、ダイゴさんと同じぐらいの岩が1つだから加減はしてるけど、あのポケモン大丈夫かな?
「メタグロス!てっぺきとリフレクター!」
そう思っていたら、自分を固くするであろう技と自分を守る壁を出す技を同時に展開する。
そして、空から落ちる岩がリフレクターに衝突する。
リフレクターは岩に押されて少しずつヒビが入っていき、数秒の均衡のあと砕け散り、岩がメタグロスに直撃した。
衝撃でまた砂が巻き上がり、今度はダイゴさんだけじゃなく、私も巻き込まれた。
「あぁ、もう!せっかくの着物が台無しだよ。大丈夫?」
巻き上げた砂が落ち着いた後、砂を払いながら隣のクチートとミスタに声をかける。
「くち。」
クチートは元々洞窟に住んでたからか、全然平気そう。
ミスタは、体を振って砂を落とした後、自分で洗い流してる。
便利そうだね、それ。
「メタグロスの方は?」
『まだ、たってるよ。』
「ホントに!?」
『でも、たってるだけかな?』
「え?」
そのポケモンの方を見る。
どうやら、立ったまま気絶してるみたい。
加減してたとはいえ、消耗してないきららの攻撃を受けて立ってるのすごすぎない?
と言うかダイゴさん、また頭の上に砂の山を作って微動だにしないんですけど。
あ、動いた。
「今度はりゅうせいぐん、か。君のポケモンには驚かされてばかりだね。」
「りゅうせいぐん?」
メタグロスをボールに戻しながらこちらに歩いてくる。
頭の上に砂の山ができてますよ?
「うん。別の地方で伝えられる、ドラゴンタイプの究極の技だね。」
「へぇ~、そんなにすごい技だったんだ。」
「これも知らなかったのかい?」
「はい。すごいいわおとしってよんでました。」
「はは。間違ってはいないね。」
なんか笑われた。
いや、たしかにバブルこうせんをなんかすごいあわとかよんでたら、私も笑うかもしれない。
「あ、それなら・・・。」
「ん?」
「もうひとつ、よく分からない技があるんですけど、わかりますか?」
「どんな技だい?」
「きらら、あれ消せる?」
そう言ってさっき落とした岩を指差す。
『できるけど、つかってもいいの?』
「今回はいいよ。でも、岩だけを消してよ?」
『おっけー。』
すると、きららから銀色の光が溢れる。
その光は岩に収束し、光が消えると岩もキレイに消えていた。
「みたいな技です。」
「ふむ・・・。おそらく、はめつのねがい、かな?僕も見たことがないから断言はできないけど・・・。」
「はめつのねがい・・・。」
「ジラーチだけが使える技があるらしいから、それだと思う。予想ばっかりで申し訳ない。」
「いえ、全然わからないよりいいですから。それより、砂積もってますよ?」
「おっと。」
ダイゴさんが頭と体の砂を払っていく。
「ふぅ。こんなもんかな?それより、ここまで一方的になるとは想わなかったな。」
「いえ、きららのメテオビームとりゅうせいぐんの両方を使ったのは始めてですよ?」
「一応、誉め言葉として受け取っておくよ。しかし、それだけ強いのにポケモンバトルは嫌いなのかい?」
「そうですね。いくら強くても絶対にケガをしないわけじゃないですし、ケガするのは私じゃなくてポケモンですから。」
「だから好きじゃない、と。」
「はい。それに、きららは出会った時から強かったし、ミスタは勝手に強くなったし。だから、私がトレーナーって言われても違和感しかないんですよね。」
そう言うと、ダイゴさんは顎に手を当てて何か考え込む。
「成る程。マシロ君はポケモンを育てたことがないんだね。」
「ですね。」
「それなら、このポケモンを連れていくといい。」
そう言ってモンスターボールを差し出してきたので、思わず受けとる。そして、中から飛び出してきたのは青い鋼鉄の体を持った小さなポケモン。
「ダンバルと言って、進化するとメタング、メタグロスに姿を変える。まぁ、育てるのはなかなか大変なんだけどね。」
「唐突ですね。ホウエン地方には、ポケモンを送る風習でもあるんですか?」
「いや、ないよ?」
「それなら、なんでこの子を?」
「多分、君がポケモンバトルを嫌いなのは、自分でポケモンを育てたことがないからだと思うんだ。普通のトレーナーは自分の力量にあったポケモンを連れて、ポケモンと一緒に強くなるものなんだ。そして、ポケモンと喜びを分かち合って、また強くなろうとする。そうやって少しずつ成長していくんだよ。」
「最初から強いポケモンを連れているのはレアケースってことですか・・・。」
「そうだね。だから、そのクチートとダンバルと一緒に強くなった時には。ポケモンバトルも楽しむことができる、と思うよ。」
「そんなもんですかね?でも、それならダンバルは渡さなくてもいいんじゃ?」
「そうなんだけどね?なんか、そのままだと野性のポケモンを捕まえることは無さそうな気がして・・・。空のボールも持ってなかったし。」
まぁ、確かに私は野性のポケモンを捕まえる気はなかったけどね。だからってポケモンを1体ポンと渡せるものなのかなぁ・・・。
「あとは、先行投資、みたいなものかな?」
「先行投資?」
「うん。この先、いつか君の力を借りるときが来るかもしれない。その時は力を貸してほしいと思って。その時の手持ちが3体だけだと心もとないからね。年はいくつだい?」
「11です。」
「16以上なら即スカウトするんだけどね。だから君の将来に期待して、そのポケモンを君に預ける。ダンバルがメタグロスに進化した時には、力を貸してもらえるかな?」
「よくわかりませんが、将来手を貸してほしいってことですね。わかりました、暇なら手を貸しますね。」
「あぁ、うん。とりあえずそれでお願いするよ。」
とりあえず、将来的に弱いと心もとないってことかな?
実際、サカキとかミュウツーとか、2体だと危ない時もあったしね。
「それじゃ、ポケモンセンターに帰ろうか。今日は疲れたよ。」
「それ、私のせいですか?」
「いやいや、そんなことはないよ。君との勝負は実に有意義なものだったよ。」
「そう?なんかトゲを感じたんですけど・・・。あ、バトルに負けたから?」
「はっはっはっ。」
沈黙と愛想笑いは肯定なんですよ・・・。
ーーーーーー
ダイゴさんとバトルした翌日。
ダイゴさんは朝からさっさと出発してしまった。
ほんとに石だけ掘りにきたんだねぇ・・・。
それか、バトルで負けたからかな?
とりあえず私もサクッと着替えていつもの長袖長ズボンに。
「さてと。それじゃあどうしようかな。」
船が出るまであと2日ある。
現状、行きたいところも、やりたいこともないので絶賛悩み中である。
あ、でもやっておかないといけないことはある。
私はボールからクチートとダンバルを出す。
「ボールの中はどう?快適?」
「くち!」
「そっか。よかった。」
この子はボール初体験だから、少しだけ心配してた。まぁ、ミスタときららに文句を言われたことはないからそれなりに快適なのかな?
いや、きららには言われたことがあったような・・・。
まぁいっか。
ダンバルはクチートの隣でしきりに首をかしげる仕草をしている。
「では、名前をつけたいと思います。一晩悩んだけど、とりあえず発表していくよ!まずは、クチート!」
「くち!」
「かぷちー!かぷっと噛みつくクチートから!どう?」
「ちー!」
お、好感触。気に入ってくれたみたい。よかった。
「よろしくね、かぷちー。」
「ちっく!」
「次はダンバル!」
と、呼んでみたけどさっきからしきりに首をかしげている。
「もしかしてあなた、最近捕まったの?」
コクコクと、頭を上下に振る。
ただでさえ捕まったばかりで慣れない環境にいたのに、知らない人に預けられるとそりゃ戸惑うよね。
と言うか、捕獲したばかりのポケモンを会ったばかりの他人にポンと預けるのはどうなんだろうか・・・?
信用されてるってことかな?
あの短時間で信用できるのかは疑問だけど。
「ダイゴさんが何を思ってあなたを預けたのかは分からないけど、よろしくね。」
もう一度コクコクと頭を上下に振る。
とりあえず、分かってくれたみたい。
それじゃ・・・。
「あなたの名前は、グロウ!進化先のメタグロスにかなり引っ張られたけど、どうかな?」
すると、私の周りをクルっとまわる。喜んでるのかな?
「これからよろしくね、ふたりとも。」
ーーーダイゴ視点ーーー
やれやれ、参ったね。
あそこまで一方的にやられるとは思わなかった。
「さすがに予想外だったね、メタグロス?」
「グオォ。」
「はは、ごめんってば。ラスターカノンで様子見は悪手だったね。」
メタグロスも悔しかったらしい。
ドラゴンタイプもいわタイプも、効果は今一つ・・・なはずなんだけど。
ジラーチというポケモンが強いのか、あの子のジラーチが規格外なのか。
「それに、スターミーも強かったね。予想外のことばかりだ。」
それに、観察眼と判断力。
まさか、僕の仕草から読まれるとはね。
子供にばれるようじゃ、僕もまだまだだね。
しかも、あのポケモン達は彼女が育てたポケモンじゃないらしいし。
なんで一緒にいるのだろうか?
「不思議な子だったね。思わずスカウトしたくなったよ。まぁ、まだ若いから、とりあえず将来的助けてもらえたらと思って、捕まえたばかりのダンバルを預けてみたけど・・・。」
さてさて、彼女はどんなトレーナーに成長するのかな?
楽しみにしてるよ?マシロくん。