ーーーー2年後ーーーー
「ハガネちゃん、アイアンテール!」
「グロウ、コメットパンチ!」
ハガネちゃんの尻尾と、進化したグロウ、メタングの拳がぶつかり合う。
しかし、両者の一撃は拮抗することはなく、ハガネちゃんの尻尾が振り抜かれ、グロウは地面に叩きつけられた。
「グロウ!?大丈夫・・・じゃないね。ありがと。」
倒れたグロウをボールに戻す。
あかりちゃんを倒した後の連戦だからキツかったよね?
お疲れさま。
そして、次のボールを構える。
「いくよ、かぷちー!」
繰り出すのはかぷちー。
このバトルできららとミスタもには頼らない。
このバトルは私が、と言うか、私とグロウとかぷちーがどれだけ成長したかをはかるためのもの。
だから、グロウとかぷちーの二人と一緒に戦う。
「強くなりましたね、グロウ。あかりちゃんを倒せる程に。」
「ミカンのお陰だよ。私、ポケモンを育てたことがないから、凄く助かった。」
「助言はしましたが、育てたのはマシロですよ。あかりちゃんを倒したんです、自信をもってください。」
「うん。ありがとう。」
「それじゃ、続きです。2対2で互いに最後のポケモン。全力でいきます。」
そう言うと、さっきまでのほわほわした雰囲気から一変し、キリッとした目付きになる。
やっぱりジムリーダーはそこら辺のトレーナーとは違うね。
「ハガネちゃん、かみくだく!」
ハガネちゃんの大きな体が、小さなかぷちーに迫る。
正面からまともに受けたら勝ち目はない。
だから、起こりを叩く!
「ふいうち!」
ハガネちゃんの大きな顎がかぷちーに噛みつく前に、こちらから飛び込み、顎を打ち上げる。
「そのまま、はたきおとす!」
そして、返すように頭を叩き、ハガネちゃんを地面に叩きつける。
少しは効いてるかな?
そう思ったのも束の間。モクモクと砂埃が舞う中、ハガネちゃんはムクリと体を起こす。
「後の先を取る、ですか・・・。お上手ですね。」
「いやいや、ハガネちゃんピンピンしてるじゃん・・・。」
やっぱり硬いねぇ。
ミスタがハガネちゃんに勝ったときは遠距離から相性で押し切ったけど、かぷちーは接近戦しかできないから余計にそう感じるや。
「アイアンテール!」
今度は尻尾を振り回す。
これだけサイズが違うと、近づくのも難しいかな?
となると、全部躱すしかないか。
「かぷちー、つるぎのまい!」
縦横無尽に尻尾が迫る中、それを舞うように躱す。
「すごいですね。まるで踊っているみたい。」
「エリカ直伝の舞だからね。見た目も効果も保証するよ?」
目の前では尻尾を叩きつけるハガネちゃんと、それを躱すかぷちーの舞。
確かに、そう言われると踊ってるみたいだ。
ダンスパートナーがハガネちゃんか・・・。
サイズが違いすぎない?
「ずっと見ていたい気もしますが、これ以上好きにはさせません!ハガネちゃん、すなじごく!」
ハガネちゃんが尻尾で地面を叩くと、巻き上げられた砂がかぷちーを取り囲む。
身動きが取れなくなったかぷちーはつるぎのまいを中断する。
「ストーンエッジ!」
地面から生える岩の突起が、すなじごくに捕まったかぷちーに迫る。
多分、かぷちーは砂で周りが見えてないよね?
だったら、私がタイミングを測って・・・。
「かぷちー、跳んで!」
私の声と同時に地面から岩が生える。
しかし、それに合わせてかぷちーが飛び上がることで、すなじごくから飛び出す。
「流石ですね。でも、逃がしませんよ。ハガネちゃん、かみくだく!」
「くるよ!かぷちー、ほのおのきば!」
空中でぶつかり合うハガネちゃんとかぷちー。
数秒の拮抗のあと、押し勝ったのはかぷちーだった。
「いっけぇぇぇーーーー!!」
思わず声をあげる。
かぷちーがハガネちゃんを掴んだまま地面に叩きつける。
ドガァンと、轟音と砂埃をあげながらそこから立ち上がったのはかぷちーだけで、ハガネちゃんは倒れたまま気絶していた。
「やったよ、かぷちー!初勝利だよ!」
私はかぷちーにかけよって、そのまま抱えあげてくるくるとその場でまわる。
「すごいすこい!頑張ったね、ありがとう!」
「ちー!」
かぷちーも嬉しそう。
確かに2年ずっと負けっぱなしだったもんね。そりゃ嬉しいよね。
私も嬉しいもん。
「ふふっ、大はしゃぎですね。」
ハガネちゃんをボールに戻しながら歩いてくる。
おっと、笑われるほどにはしゃいでたみたい。ちょっと恥ずかしい。
「いやいや。始めて育てたポケモンで、始めてジムリーダーに勝ったんだよ?そりゃ嬉しいでしょ?」
「ふふっ。そうですね。」
恥ずかしさを隠しながら反論すると、見透かされてるのか、ミカンは笑いながら賛同する。
「それでは、ジムリーダーに認められた証のスチールバッジ。今回は受け取ってくれますか?」
「うん。」
私はミカンの手のひらからバッジを受けとる。
その時、ふとダイゴさんが言っていたことを思い出した。
ポケモンと一緒に強くなる、か。
なんとなくわかったような気がする・・・かな?
「でも、ミカンに勝つまで2年もかかったよ。」
「強くなるのに、早い遅いはありませんよ。やるかやらないか、です。」
「そういうものなの?」
「そういうもの、です。」
まぁ、ジムリーダーがそう言うならそうなんだろうね。
「あとその着物、似合ってますね。」
「ほんとに?ありがと。」
「でも、エンジュの踊り子さんより大分スマートな感じがします。裾なんて膝ぐらいまでしかありませんし。」
「あ。それはね、洞窟で動きづらかったから裾とか袖を色々動きやすいようにしてもらったんだ。・・・すごく怒られたけど。」
「え?」
「えっとね・・・」
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「ねぇ、エリカ?この着物の裾とか袖、短くできない?」
「できますけど、どうしてですか?」
「洞窟とかだと動きづらくて。」
「動き・・・づらい・・・?」
なんか、後ろにゴゴゴゴって文字が見えそう。
「いいですか!?動きづらいのは、服が悪いんじゃありません!作法がなっていないんです。まずは・・・」
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「ってことがあってね・・・。それでも着物は直してくれたから、ありがたい話なんだけどね。」
「あはは・・・。」
「お陰ですごく動きやすいんだよね。まぁ、背が伸びないから着られてる感じだけど。」
ミカンと話していると、カバンにしまっていたポケギアがプルルと鳴る。
「ちょっとごめんね。」
よいしょと、かぷちーを降ろしてからポケギアを取り出す。相手はブルー。
まあ、ブルーとミカンしか登録してないんだけどね。
「もしもし?」
『あ、マシロ?そっちの様子はどう?』
「それが、全く進展なし。やっぱり手がかりがないと厳しいかも。」
『そう。それならちょうどいいわね。マシロ、急いでカントーに戻ってきてくれる?』
「いいけど、何かあったの?」
『さっき、レッドのピカを見かけたのよ。すぐに見失ったんだけど。でも、レッドもいないしサワムラーに追われてるしで、なんか嫌な予感がするのよね。だから、そっちの進展がないなら、こっちで手を貸してほしいのよ。』
「わかった。すぐに戻るよ。」
『お願いね。』
ピッ、と通信を切る。
「行くんですね。」
「うん。なんか、急ぎみたい。」
そう言ってかぷちーをボールに戻す。
「この時間なら、明日の船で出発するのが一番早いですね。」
「明日かぁ・・・。まぁ仕方ないか。」
きららとミスタは元気だけど、かぷちーとグロウは疲れてるしね。
今日はゆっくり休もうかな。
「それじゃ、今日は早めにポケモンセンターに戻って休もうかな。」
「わかりました。今日はゆっくり休んでください。」
そう言ってミカンはポケモンセンターまで送ってくれた。
ポケモンセンターへの帰り道、ポツリとミカンが話し出した。
「しかし、2年前とは見違えましたね。かぷちーを連れてお友達の調査の手伝いに行ったと思ったら、ボロボロのかぷちーを抱いて戻ってきた時とは大違いです。」
「まぁ、あの出来事があったから強くなれた、って所はあるんだけどね。恥ずかしいからできれば忘れてほしいところだけど・・・。」
「ふふ。絶対に忘れません。」
「えぇ~・・・。」
と言うのも、2年前ジョウトに戻ってきた後。
かぷちーと一緒に調査に出掛けた矢先、女の子に出会った事から始まる。
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「ねぇ、そこの人。見たことないポケモンだね?」
「え?かぷちーのこと?」
「えっと、名前は知らないけど足元の子。」
見た感じ、私と同じか少し年上っぽい女の人が、かぷちーを指差す。
「クチートって言うんだ。ホウエンで捕まえたんだけど、ジョウトにはいないの?」
「あたしは見たことがないかな。」
「そうなんだ・・・。」
ジョウトにはいないんだ・・・。
それならボールから出したままじゃ目立つね。ちょっと迂闊だったかな?
仕方ないけど、ボールの中で我慢してもらおう。
「ねぇ、せっかくだし勝負していかない?」
「勝負?」
「そうそう。見たことないポケモンだし、せっかくだから。」
かぷちーをボールに戻そうとすると、バトルを挑まれる。
「どうするかぷちー?」
「くち!」
どうやら、やる気みたいだけど、この子にとっては初めてのトレーナ戦・・・大丈夫かな?
でも、かぷちーとの初めてのバトルで、すこしワクワクしてる自分もいる。
うん。受けようか、この勝負。
かぷちーとは初バトルだけど、初勝利を目指して頑張ろう。
そう思っていたんたけど。
女の人の出したロコンに、私とかぷちーは、一方的に敗北した。
「やったね、ロコン!」
喜んでいる女の人を尻目に、私はかぷちーを抱いて、きずぐすりを使う。
・・・負けるのって、こんなにも悔しいものなんだね。
ぐっと唇を噛み締める。
「大丈夫、かぷちー?」
「ちー・・・。」
「ごめんね、勝たせてあげられなかった。」
「あたしの勝ちだね。でも、その子バトルに慣れてなさそうな感じだったけど・・・。」
「そうだね。一緒に行くようになってから初めてのバトルかな。」
「そうなんだ。ちょっと申し訳なかったね。」
「いいよ、気にしないで。」
なぜか申し訳なさそうにする女の子にそう言うと、少し表情が明るくなる。
さてと。
「それじゃ。私はこの子をポケモンセンターに連れていかないと。」
「・・・あなたは、強いね。」
歩き出そうとした私にそんな呟きが聞こえて思わず足を止める。
「負けたのは私だよ?」
「勝敗の話じゃないよ。負けて、とても悔しそうなのに・・・。でもそれを飲み込んで、その子の事を気遣ってあげてるのがね。負けると全部ポケモンのせいにする人もいっぱいいるから・・・。あたしもロコンにあたったことあるし・・・。」
そう言ってロコンをなでている。
トレーナーってのも色々な人がいるんだねぇ・・・。
と言うか、悔しがってたのばれてるんだけど。恥ずかしい。
「んー、そうだね。私は、強い弱いで一緒にいる子を決めてるわけじゃないし。それに・・・」
「それに?」
「トレーナーとポケモンは一緒に強くなるものなんでしょ?なら、普通の事なんじゃないかな?」
そう言うと一瞬、ぽかんとしたあとに、ふふっと笑う。
「やっぱり、あなたは強いですよ。その普通をできないトレーナーもいっぱいいるのに・・・。少し、羨ましいくらい・・・。」
「少し・・・何?」
「ううん。なんでもない。それより、ポケモンセンターに行かなくてもいいの?」
「おっと、そうだった。それじゃ、行くね。」
「はい。さようなら。」
さっきアサギを出たところなのに、すぐに帰ることになるとは思わなかったよ。
「強い、弱いじゃない・・・か。負けた人が言う台詞じゃないと思うけど。ホウエン地方ね、行ってみようかな?」
最後のつぶやきは、私には聞こえなかった。
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「あの日、出発したと思ったらすぐに帰ってきましたからね。」
「意気揚々と出発したのに、すぐに帰ってくるとか恥ずかしすぎるよねぇ・・・。」
と、そんなこんなでポケモンセンターに到着。
軽く挨拶をして、ミカンはジムに帰っていった。
と思ったら、振り返って別れ際に、
「おめでとうございます。先程はお見事でした。」
そう言うと、今度こそ帰っていった。
改めて言われると、なんか心にくるものがあるね・・・。
「やったね、かぷちー、グロウ。」
ボールを出して声をかける。
中を覗くと、二人ともボールの中で寝てる。
起こしちゃ悪いと思い、私はそっとボールをしまう。
「二人とも、お疲れさま。」