28話
次の日。
ミカンは、アサギを出発する私を見送りに港まで来てくれた。
ありがたいけど、ジムリーダーって結構自由だよね。
悪の組織の幹部やってたりするし。
あー、やっぱりジムでも回るべきだったかなぁ。
バッジを集めてると目立つと思ってやめたけど、成果ゼロよりマシだったかもしれない。
まぁ、結果論だね。
「どうかしましたか?」
「なんでもないよ。」
「そうですか。それより、本当に置いていくんですか?」
ミカンの手には、かぷちーとグロウの入ったボール。
昨日から続いてスヤスヤとお休み中。
「うん。昨日の疲れが残ってるみたいだから、預かっておいて。元気になったら通信システムで送ってくれる?」
「わかりました。お預かりします。・・・グロウちゃんの鋼鉄の身体、一回抱いてみたかったんですよね。」
「なんて?」
「なんでもないですよ?」
「そう?」
なんか、すごいウキウキしてる気がするけど・・・。
なんでだろ?まぁ、いっか。
「それじゃ、またね。」
「はい。」
手を振るミカンに手を振り返し、船に乗り込む。
さて、ブルーに一応連絡しておこうかな。
プルルル。
「もしもし?」
『マシロ?どうしたの?』
「今から船でカントーに戻るから。多分、昼頃には着くと思う。」
『え?思ってたより早いわね。どうしようかしら・・・。』
どうやら、ブルーの予想より早かったらしい。
「なんかまずかった?」
『まずくはないわ。ただ、何を手伝ってもらうか、まだ決めきれてないのよ。何をマシロに任せるのが1番いいかしらね・・・。んー、こっちに着いたらもっかい連絡してくれる?』
「わかった。それじゃ、また後でね。」
ピッ。
通信を切った瞬間、船が出発する。
とりあえず、何をするかはわからないけど、
短い船旅の間はのんびりしようかな。
ーーーーーー
船の甲板で手すりにもたれながらのんびり海を眺めていると、小さくクチバの港が見えてきた。
「お、ようやく見えてきたね。・・・ん?」
呟いた時、船の下を大きな影が通りすぎる。
「今のはカイリューかな?珍しいね。」
そう言った瞬間、ボールからミスタが飛び出してくる。
「ミスタ?」
声をかけるが、ミスタはそのまま海に飛び込んでいった。
「ちょっとぉ!?もうすぐクチバに着くのにどこ行くのよ・・・。」
なんか、海の中でドカンバタンやってるし。
あー、そういや昨日のジム戦でかぷちーとグロウしか戦ってないからか、よっぽど戦いたかったんだ・・・。
だからって通り魔みたいなことはやめてほしいなぁ。
あ、出てきた。
水飛沫をあげて海から出てきたミスタは、船の甲板に飛び乗ると何故か私を無理やり担ぎ上げる。
「え?ミスタ?なんで?」
やはり、ミスタは答えずにそのまま海に戻っていく。
「ちょ!?きらら、助けて!」
あ。そういや、きららは部屋でテレビ見てるんだった。
そのまま私はミスタに乗せられて、海に連れ込まれた。
そして、連れてこられたのは海底。
いや、流石に海底まで息を止めとくのは無理!
「ぷはっ。あれ、息が吸える。なんで?」
まぁ、よく分からないけど生きてるからいいや。
それよりも・・・
「ミスタ、なんでここに連れてきたの?」
ミスタの方を見ると、これを見ろと言わんばかりの動き。
ミスタの横にあるのは、台座のようなものに花びらのように置かれた4つの石。
ほのおのいし、みずのいし、かみなりのいし、リーフのいし。
あと、中央に見たことない石が1つ。
そういや、クチバ湾に、使ってもなくならない石が沈んでるって伝説があったっけ。ブルーの事を調べてるときに知ったけど、関係ないからすっかり忘れてたや。
ってことは。もしかしてミスタはここで進化したのかな?
「それで、これを持っていけってこと?」
「ーーーー」
「ん?持っていくんじゃなくて、誰かにあげる・・・?」
ミスタのジェスチャーを読み取ると、誰かにあげようってことらしい。
でも、石なんか欲しがる人なんて・・・。
居たねぇ・・・。
「成る程ね。ダイゴさんにあげようってことかな?確かにあの人なら喜びそう。」
「ーーーー」
そうそう、と言わんばかりに体を揺らす。
意図は分かったけど、海に連れ込まれた時は焦ったよ。
とりあえず4つの石はカバンにいれて、見たことのない石を手に取る。
「冷たい。これも進化のいしのひとつなのかなぁ・・・?まぁ、ダイゴさんなら知ってるでしょ。」
手に取ったそれもカバンにしまう。
「それじゃ、戻ろうか。早く戻らないと、船に乗ってる人が1人いなくて、海に落ちたんじゃないかって大騒ぎになっちゃう。」
あれ?間違ってない様な気が・・・。
うん。早く戻ろう。
船に戻ったときは、まだ私が海に落ちたのに気づかれてなかった様子だった。よかった。
ただ、部屋までびしょ濡れのまま歩くことになった。
掃除が大変かもしれない。ごめんなさい。
『ましろ?みずあそび?』
部屋に戻った私を、きららの呑気な声が出迎えてくれたので、びしょ濡れのまま抱きついてやった。
つめたーい、って楽しそうだった。
船がクチバに着くと、手早く船を降りる。
びしょ濡れだったから、服は着物に着替えた。
昔の名残でずっと長袖のものを着て旅をしてきたけど、体調が悪くなることはなかったからもうずっと着物にしようかな。やっぱり可愛いものが着たいよね。
そうなると、またエリカにお願いしないと。
・・・最近、頼んでばっかりな気がするなぁ。また怒られないといいけど・・・。
まぁ、それは後で考えよう。
私はポケギアを取り出し、ブルーに電話をかける。
プル。
「出るの早」
『マシロ?ちょうどよかった。カントーに着いた?』
早いね、と言う前にブルーが食いぎみに言う。
「あ、うん。今着いたよ。そんなに慌ててどうしたの?」
『急いでトキワの森に向かって!麦わら帽子の子が襲われてるから、助けてあげてくれる?あたしも向かってるから。』
状況はよく分からないけど、トキワの森で麦わら帽子の子を助ければいいのかな?
急ぎみたいだし、早速向かおうとミスタに飛び乗る。
「ミスタ、トキワの森。できるだけ急いで。」
ミスタが飛び上がり、きららが付いてくる。
「で、相手はまたロケット団?」
『いえ、四天王だそうよ。レッドも四天王に負けて行方不明。唯一逃げ延びたピカを追いかけて始末しようとしてるみたいね。』
「なんか、色々と物騒なことをしてるねぇ。というか、レッドが負けたってほんと?」
『本当でしょうね。じゃないと、ピカだけが逃げてくるなんてあり得ないわ。』
「リーグ優勝者が負ける程の相手・・・か。」
『そうゆうこと。ホントはマシロに四天王を1人ずつ蹴散らしてもらうのも有りかと思ってたんだけど・・・。レッドが勝てない相手だとあなたも勝てないかもしれないでしょ?』
「こっちはこっちで結構、物騒なことを考えてたよ・・・。まぁ、勝てるかどうかはやってみないと分からないけど。」
と言っても、全力のきららで勝てない相手なんて想像できないんだけどね。
そう思ったときに、ふと冷気と変な音を感じた。
なんか下で川が氷ってる。あれかな?
女の人と対峙する麦わら帽子の子とマサキ。
あれ?なんでマサキがいるの?
まぁ、マサキは置いておこう。
「見つけたよ!」
『見つけた!』
ブルーと私が着いたのは同時だったみたい。
麦わら帽子の子は足元の氷ごと川の流れにのって逃げだし、ブルーは森に身を隠しながら攻撃、私は上から女の人に向かってスピードスターを放つ。
「ちょっとそこのお姉さん?麦わら帽子の子を追いかけるのはやめてくれないかな?」
『ちょっと!?レッドをしのぐ実力者なのに、なんで正面から向かっていくのよ!?アタシは逃げるわよ!』
「え?」
なんか、置いていかれた・・・?
いや、確かに悪手かもしれないけど何も置いていかなくても・・・。
しかも通話も切れてるし。
「あなたは?」
「う~ん、通りすがりの正義の味方。かな?」
「通りすがりなら、わざわざ麦わら帽子の子、なんて言わないわよ?」
「だよねぇ・・・。失言だった・・・。」
「まぁ、あなたがどこの誰か、なんて関係ないわ。邪魔するのなら始末するだけよ。ジュゴン!」
女の人はジュゴンを繰り出す。隣にはパルシェンが居るから、氷か水かその辺りの使い手かな?
「パルシェン、オーロラビーム!ジュゴン、れいとうビーム!」
2体のポケモンから、それぞれ別の氷タイプの技を放つ。
「きらら、メテオビーム!」
それを、きららのメテオビームで押し返し、凍った川ごと女の人の足場を砕いた。
「チッ!」
女の人はジュゴンに飛び乗り、氷の砕けた川に着地・・・着水かな?
「きらら、加減がうまくなったね。」
『えらい?』
「えらいえらい。」
『うむ。くるしゅうない。』
また影響されてるよ。
少し苦笑いの私に、怪訝な顔をして女の人が声をかける。
「あなた、何者?」
「あれ?どこの誰だかは関係ないんじゃなかったの?」
「通りすがりの強い人だなんて、流石に気になるでしょう?」
「人に名前を聞くときは、自分から名乗るものじゃない?」
「・・・四天王のカンナよ。これでいいかしら?」
「・・・マシロ。」
少しイラッとした感じで答えるカンナ。からかいすぎたかな?
名乗ってもいいか少し迷ったけど、私の名前ぐらいはいいでしょ。
私が矢面に立てば、ブルーの事も気づかないかもしれないし。
「なんであなたがあの子を庇うのかしら?」
「ピカは、知り合いの手持ちだからね。そりゃ助けるでしょ?それより、なんでピカを狙ってるの?」
「どんなトレーナーも、ポケモンも逃がさない。それが私達四天王。」
大層なものだね、四天王って。
「でも、今まさに逃げられてるじゃん。」
「口の減らないおちびちゃんね。あなた、人をイラつかせる才能があるわよ?」
「そう?ありがと。」
「本当に人をイラつかせる子ね。そこから降りてきなさい!ふぶき!」
ジュゴンがふぶきを放ち、上空の私達を凍らせようとする。
でも、こっちには万全のきららがいる。
「きらら、サイコキネシスで押し返して!」
上に向かったふぶきは、サイコキネシスで下に押し返される。
そして、ジュゴンとパルシェンごと川を凍りつかせた。
凍って砕けてまた凍って。川も忙しいね。
「ふざけたパワーね。ふぶきごと押し返すなんて。」
「まったく、そんな事しなくても降りるのに。よいしょと。ありがとねミスタ。」
凍りついた川に降りる。
急いでくれたミスタもお疲れさま。
「ジュゴンとパルシェン、凍ってるけどどうする?まだやる?」
「私達が諦めると思って?」
一応聞いてみたけど、まぁそうだよね。
「思ってないよ、聞いてみただけ。それじゃ、ついでにもう1つ。レッドはどうしたの?」
「そんなの始末したに決まってるでしょ。」
あー、やっぱりそうなんだ。
でも、しぶとく生き残ってる可能性もあるかもしれない。現にピカは逃げてきたわけだし。
「考え事なんてしてていいのかしら?パルシェン!ちょうおんぱ!」
「え?」
凍りついた川からパルシェンが飛び出す。
そして、辺りに響く不快な音に思わず耳をふさいでしゃがみこんでしまった。
そして、音が止んだときにはカンナの姿は見当たらなかった。
「あ、頭が痛い・・・。それより逃げた、かな?」
『くらくらする〜。』
きららもグロッキーだね。ミスタは・・・急いだからかな。疲れてるけどちょうおんぱの影響はなさそう。
とりあえず、麦わら帽子の子は逃げられたから当初の目的は達成できたけど、カンナにも逃げられた。
「でも、レッドがねぇ・・・。生きてるといいけど。」
まぁ、生きてると信じよう。
死んでたらどうしようもないしね。
それより、ブルーはどこ行ったんだろう。
ポケギアを取り出し、ブルーを呼び出す。
プルルルル
『もしもし?』
「ちょっと?置いていくなんてひどくない?」
『いや、流石にアタシは四天王に正面から挑めるほど強くないわよ。それより、マシロは無事なの?』
「とりあえずは大丈夫だよ。麦わら帽子の子も逃げられたみたいだし。まぁ、カンナにも逃げられたけど。」
『・・・やっぱりあなたも大概よね。まぁ、無事で何よりだわ。マシロにはそのまま麦わら帽子の子に合流してくれる?』
「了解。その子、名前は?」
『イエローって言うの。きっとまた四天王に狙われると思うから、守ってあげて。』
「分かった。今度は置いていかないでよ?」
『・・・善処するわ。』
通話が切れる。
「・・・せめて即答してくれないかなぁ。」
今度も似たようなことがあったら、また置いていかれそう。
まぁ、ブルーが無事ならそれでいいんだけど。
ブルーに助けられた事を思えば全然安いや。
「痛っ。あのちょうおんぱは効いたなぁ・・・。」
痛みのあまりに、頭を押さえる。
『ましろ、だいじょうぶ?』
「大丈夫じゃないかも。ちょっと休んでいこうか。ミスタも急いだから疲れてるしね。」
ーーーーーーーー
「追ってこない・・・か。」
安堵してホッと一息つく。
あんなトレーナーが居るなんて聞いてないわね。
白い髪のツインテール。
スターミーと、見たことないポケモン。
スターミーの方はわからないけれど、見たことないポケモンの方はふぶきごと押し返すエスパーの技を使える、と。
「キクコに聞いてみましょうか。」
コンパクト型の通信機を取り出し四天王の1人、キクコに繋げる。
『フェフェフェ、そっちの首尾はどうかの?』
「どうもこうもないわね。白い髪のおちびちゃんに邪魔されて逃げられたわ。マシロって言うらしいけど、心当たりある?あのレッドのお友達だそうよ。」
『フム。白い髪の女の子なら、2年前にセキエイでポケモンリーグの優勝者と準優勝者とダブルバトルをやっていた子じゃないかね?』
「そういえば、そんなこともあったわね。あの時は確か、女の子が勝ったのだったかしら?。」
『そうさね。なんであの実力でポケモンリーグに出場しなかったのやら。』
「道理で強い訳ね。イエローとピカチュウを始末する前にマシロって子を始末しないと駄目ね。」
『どうするのかえ?』
「タイミングを見て、仕掛けるわ。その時は手伝ってちょうだい?」
『フェフェ、了解だよ。でも、子供相手に2人がかりなんて大人げないねぇ。』
「それだけ危険人物ってことよ。」
『それならアタシも一目見に行こうかねぇ。フェフェフェ。』
「うっかり返り討ち、なんてやめてよ?」
『分かってるさね。』
そう言って通信が切れる。
イエローの能力もそうだけど、マシロの強さも想定外。
ピカチュウに逃げられるし、想定外の事ばかりで嫌になるわね。
「まぁ、嘆いても仕方ないか。」
それじゃ、私も動きましょうか。
どうせなら私もマシロの監視を兼ねてキクコと合流するのもいいかもしれないわね。