3話
ブルーがさらわれたあの日、森の中で気を失っていた私は、捜索隊に発見された。
どうやら、大きな鳥ポケモンを見ていたのは私だけじゃなかったようで、あの後捜索隊が作られたらしい。
そのまま私は2週間ほど寝ていたらしく、目が覚めたときにはもう、ブルーの捜索も打ち切られていた。
その後、オーキド博士に大きな鳥ポケモンについて必死に訴えたが、影しか見ていない私の話はあまり役には立たなかった。
あれから6年
あの日から変わったことがいくつかある。
一つは、病弱だった体が健康優良児に。
それにあわせて、オーキド研究所に毎日入り浸るようになった。やることは当然、大きな鳥ポケモンについて調べること。
そしてもう一つ。
『きょうもけんきゅうじょ?』
「うん、そうだよ。きららには退屈かもしれないけど・・・」
『そんなことないよ?いろんなぽけもんとあそべてたのしい!』
「そっか。それじゃ、今日もみんなと遊んでてくれる?」
『わかった!』
なぜか私にだけ声が聞こえる。このポケモン。
黄色い頭に白い体、頭にはオレンジっぽい短冊が3つ。背中に羽衣がついた、誰も名前のを知らない星の形のポケモン。
6年前のあの日、気を失った私にずっと引っ付いて、片時も離れなかったらしい。それからずっとそばにいてくれるこの子。
名前がわからないから、「きらら」って呼んでる。
オーキド博士って、鳥ポケモンについてなにも分からないし、きららのことも知らないしで。
博士って意外と大したことないのかなぁ?
割と失礼なことを考えながら今日も研究所へ向かう。
「おじゃましまーす。」
『おじゃましまーす。』
「おぉ、よく来たの。今日も頼むぞ。」
そう返事を返してくるのは、オーキド博士。この研究所の所長?でいいのかな?他の人ほとんど見たことないけど···。
その間にきららはぴゅーっと外の広場に飛んでいってしまった。遊びに行ったのかな?
一応、自分の事だけやるのも悪いから、研究の手伝いをしていたんだけど、いつの間にか博士の助手扱いされているらしい。
まぁ、便利だからいいんだけど。
「ところで博士?鳥ポケモンの情報は?」
「ないのぅ。6年間毎日来ておるが、何か他のことに目を向けてはどうかの?」
なにか言い出した博士をキッ、と睨み付けると慌てたように続ける。
「いや、ブルーの事を諦めろと言っとるんではなくてじゃな。たまには息抜きでもしたらどうかな・・・と思っての。」
「私の事はいいですよ。ブルーは私をかばって連れていかれたんだから、私が息抜きなんて、やってられない。」
「ううむ・・・」
そう言うと顎に手をあてて唸りだす。
最近、よく唸ってるけど何か気になることでもあるのかな?
まぁ、どうでもいいんだけど。
それより、6年間経ってまともに情報が集まらない。
ここで研究の手伝いをしながら待つのも限界・・・かな?
「ねぇ、博士?」
「なんじゃ?」
「ここ以外でポケモンの研究や情報が集まる場所ってある?」
「そうじゃの、文献なら博物館のあるニビシティ。情報ならタマムシ大学のあるタマムシシティ。あとは、研究所があるグレンタウン、かの。」
「ニビとタマムシとグレン、か。」
研究所のグレンタウンは後回しでいいかな。博士の研究所で6年経ってもまともに情報が集まらなかったんだから、期待できないし。
「となると、ニビシティ経由でタマムシシティに行くのがよさそうかな?」
「1人でぶつぶつと、急にどうしたんじゃ?」
おっと、どうやらさっきまでの博士と同じ事をしていたらしい。
でも、とりあえずやることは決まった。
「とりあえず、ニビシティに行きます。博物館で何か情報が集まるかもしれないんで。」
「ふむ、旅に出る、と?」
「そうですね。これ以上ここにいても得られるものは無さそうなんで。」
「とりあえずその、さらっと毒をはくのはやめてくれんかの?」
「大丈夫です。本音なんで。」
「それは大丈夫ではないんじゃよ・・・。」
ため息をつきながら、博士は後の棚からリュックを取り出す。
「ここに、基本的な旅の道具が入っておる。これを持っていくといい。」
「えらく用意がいいですね?」
「いつかは飛び出していくと思ってたんじゃよ。まぁ、黙って飛び出していく方が早いかと思っていたがの。」
そう言って笑いながらリュックを渡してくれた。
「博士もさらっと、ひどいことを言ってますけどね?」
「はっはっ。もう6年の付き合いじゃ。それぐらい許してくれんかのぉ。」
「なら、おたがい水に流しておきましょうか。」
笑いあう私達。なんだかんだ6年間顔を会わせていたから、悪口の言い合いなんてなれたものだ。
まぁ、研究所に居ないときもあったけど。
「今のお主なら問題ないとは思うが、体には気を付けていくんじゃぞ。」
「体は大丈夫だよ。博士も知ってるでしょ?」
「そうじゃの。あと、これも持っていくといい。」
「なにこれ、手帳?」
差し出されたのは赤い色をした、手帳サイズの機械。
「ポケモン図鑑じゃよ。出会ったポケモンのデータを自動的に記録してくれる、ハイテクなアイテムじゃ!」
「要らないです。」
どや顔してるところ悪いけど、研究所を離れてまで研究の手伝いをするつもりはないかな。
それに、余計なことをするつもりはないし。
「なん・・・じゃと・・・」
「面倒だし、そんなことをやってる暇はないし。」
ため息をつきながら図鑑をしまう博士。
そんなにデータを集めてほしかったのかな?
「後は、そうじゃな、困ったことがあればグリーンを頼るといい。少し前にポケモン図鑑を埋めるために、旅に出たところじゃ。」
「グリーンかぁ。愛想がなくて苦手なんですよね、彼。」
「まぁ、とにかくじゃ。ブルーのこと、頼めるなマシロくん?」
「任せてください。私がブルーの為にこの6年、どれだけの資料を漁ったか、知ってるでしょう?」
「フッ、そうじゃな。野暮なことを聞いたかの・・・。それじゃあ、頼んだぞ!」
「はい!」
「あと。母親には・・・」
何か言っているがそれに気づかないふりをして、私はリュックを背負い、外に駆け出す。この6年で伸ばしたきららとおそろいのツインテールをなびかせて、私はきららに聞こえるように叫ぶ。
「きらら、行くよ!」
『ましろ、きょうははやいね?どこかいくの?』
そう言いながら飛んでくるきららに、私は駆け出しながら答える。
「私の、始めての友達を探しに!」