マシロさんに託されたミスタに乗って、ワタルの後を追う。後ろにはもう1体、マシロさんが託していったきららが飛んでいる。
クチバでは戦力外って言われたようなものだったけど、今回はミスタときららを置いていってまで任されたんだ。絶対にワタルを止めないと。
でも、マシロさんは大丈夫なんだろうか・・・?
「いや、他人の心配をしている余裕はないか。ボクはワタルに集中しないと。」
ワタルの背中が見える。
そして、そのままワタルの横にミスタときららと共に躍り出た。
「何をしに来た!」
飛び出したボク達にプテラがはかいこうせんを放つ。
曲がることもせずにまっすぐ迫ってくるはかいこうせんを、ピーすけを繰り出して受け止める。
マシロさんに託されたんだ。
逃げることも、避けることもしない・・・。
全部正面から受け止める!
はかいこうせんを受け止めた瞬間、ピーすけの姿を光が包み込む。
そして、はかいこうせんを受け止めた際の衝撃と閃光が収まったとき、そこにはトランセルに進化したピーすけの姿があった。
「キャンセルボタンはもう押せない。・・・いや、キャンセルボタンはもう押さない!」
ワタルを止める為に、マシロさんはボクを信じてミスタときららを託していった。
ここでワタルを止められないと、人類が滅ぶ。絶対に負けられない。
「ピカ。ラッちゃん。オムすけ。ドドすけ。ピーすけ。ゴロすけ。きっと、人とポケモンは共存できる。ボクはそれを証明したい!みんな・・・力を貸して!」
声を上げ、みんなをボールから繰り出すとみんなを光が包む。
光が消えると、みんなの姿が変わっていた。
オムナイトのオムすけは、オムスターに。
ドードーのドドすけは、ドードリオに。
ゴローンのゴロすけは、ゴローニャに。
トランセルのピーすけは、バタフリーに。
みんなが、ボクの気持ちに答えてくれた!
「一斉進化に、2段階連続進化だと・・・?」
「行くよ、みんな!」
バタフリーに抱えてもらい、ボクは飛び上がる。連れてきてくれてありがとう、ミスタ。
「人間はポケモンの敵だ!やつらを排除するために、幻のポケモンを手に入れる!」
「違う!人間はポケモンの味方だ!ボクはみんなの世界を守る!」
ワタルのハクリューに対して、オムすけ、ゴロすけが対峙し、ギャラドスにはラッちゃんとドドすけが突撃する。
そしてボクとピーすけとピカが、ワタルとプテラに対峙する。
「ちょうおんぱ!」
「サイケこうせん!」
互いの技がぶつかり合い、衝撃と共に弾かれる。
「くっ!」
「ちっ!」
互いに距離を取りながら体勢を整える。
「ハクリューもギャラドスも動けないか・・・。なら、トレーナーの貴様からだ!はかいこうせん!」
「10万ボルト!」
プテラのはかいこうせんを相殺しようとするが、ピカの10万ボルトを突き破るはかいこうせん。
「ッッ!やっぱり・・・強い!」
はかいこうせんの余波でバランスを崩す。そこに高速で接近するワタルとプテラ。
「遠距離では戦えても、空中での接近戦ならフィジカルの差は埋められまい!」
「まずいっ!ピカ!」
急いでピカが電気を溜めるが、ワタルの方が速い!
「くっ!」
思わず目を閉じて衝撃に供える。
キィンと甲高い音が響く。が、衝撃は一向にやってこない。
恐る恐る目を開くと、プテラの翼を体で受け止めるミスタの姿。
「ちっ!」
「ありがとう、ミスタ!ピカ!」
「ピ!」
ミスタが受け止めたことで動きを止めたワタルとプテラに10万ボルトを放つ。
「ぐあっ!」
苦しそうな声を上げて、プテラとワタルは距離をとる。
それを見ると、ミスタはそのまま後ろに下がってしまった。
「え?」
すれ違う際に、聞こえたのはミスタの声・・・かな?
(これはお前たちの戦いだ。決着は自身の手でつけろ。)
守ってはくれるけど、加勢はしないってこと・・・なのかな?
そして、ミスタの気持ちと同時に、ピカの記憶も流れ込んでくる。ピカの思い出せなかった部分の記憶が、戦いの中で戻ってきているみたいだ。
その記憶の中に、発生したエネルギーに対する対抗策があった。
発生した以上、止めることはできない。できるのは、それ以上のエネルギーで吹き飛ばす事だけ。
「だったら・・・!」
ボクは、右手のギプスの糸をほどき地上に垂らす。これに気づいた誰かが、少しでも手を貸してくれるように。
「みんな!ありったけのエネルギーをピカに集めるよ!」
ボクが声をあげると、みんなが集まってくる。
「させると思っているのか?来い!ハクリュー、ギャラドス!」
みんなが戻ってきた以上、ワタルの元にハクリューとギャラドスが戻る。そして。
「はかいこうせん!」
3体分のはかいこうせんが放たれる。
くそっ。これじゃ、エネルギーが集められない・・・!
「ピカーーーーえっ?」
その瞬間、きららがボク達の前に飛び出し一瞬だけ振り向いて、ウィンクをする。
(ここは、引き受けるよ。)
きららの声が聞こえた瞬間、きららから極大の閃光が放たれた。
「すごい・・・!これなら!」
閃光ははかいこうせんを押し返し、そのままワタルを飲み込んだ。
「ぐおおぉぉぉ!!!」
ワタルの叫び声が響く中、糸にそって下から大量のエネルギーが送られてくる。
「これは、レッドさん達の!」
発生したエネルギーを吹き飛ばすのは、ワタルが動けない今しかない!
「やるよ、ピカ!」
「ピ!」
レッドさん達のエネルギーとボク達のエネルギーをピカに集める。そして、それを放とうとした瞬間、きららからもエネルギーが送られてくる。
「え?これ、きららのエネルギーだけでレッドさんとボク達の10倍ぐらいあるんじゃ・・・。」
きららから送られてくるエネルギーに驚く。
でも、これ程のエネルギーなら発生したエネルギーだって吹き飛ばせる!
「1000万ボルトォォォォ!!」
目を開いていられない程の7色の閃光が周りを照らす。
ここまで・・・か。
と言う呟きが聞こえた気がしたけど、それと同時にボクの意識も薄れていった。
ーーーーーーーー
イエローを見送った後、グロウに乗ってサカキの後を追う。隣にはかぷちーが乗っているからか、スピードは抑え気味。
多分、グロウよりミスタのほうが移動速度は早そう。その分、人は沢山乗せられそうだけど、今の所そんな予定はないかな。
「こっちに逃げてったと思うんだけどなぁ。グロウ、もう少し早くてもいいんだよ?」
私が声をかけても、スピードを上げることはなかった。きっと、私の体調を気にしてるんだと思う。
実際、体調はすこぶる悪い。歩くのはしんどいからグロウに乗せてもらってるし。右腕は痛いし。
それでも、サカキを放っておくのも嫌だしね。
「見えた!」
考えながら追いかけていると、サカキの背中が見える。
どうやら、向こうも気づいた様でその場で振り返る。
「仮は返したはずだが?」
「次はサカキだって言ったよね?」
「フッ。期待はしていない、とも言ったがな。」
サカキと対峙して、グロウから降りる。
おっとっと。
バランスを崩しそうになりながら、地面に足をつける。
「フム。さっきと比べて、ひどく調子が悪そうだな?」
「サカキに心配されるほどじゃないよ。」
その時、スオウ島の上から轟音が鳴り響く。
「上は始まったようだが、放っておいて良かったのか?」
「上は任せてきたからね。きららとミスタがついてるし、私がいなくても大丈夫だよ。」
「主力もなしに、オレと戦おうと言うのか?」
「サカキだって、ワタルと戦ってるんだからトントンでしょ?」
まぁ、主力がいないのも事実だし体調も良くないけど、サカキだってワタルと一戦交えた後なんだから消耗してるはず。
「フハハハハハハ!面白い。だが、主力もなしに勝てると思わないことだ!ニドキング!」
「確かに。主力はいないけど、他の子が弱いって訳じゃないからね。グロウ!」
「ほのおのパンチ!」
「コメットパンチ!」
サカキの繰り出したニドキングとグロウの拳がぶつかり合い、ギリギリと拮抗した後、互いに弾かれる。
「成る程。パワーは十分、と言うわけか。前回は見なかった顔だが、よく鍛えられている。」
「そりゃどうも。」
ロケット団のボスに誉められても、あまり嬉しくはない。
「グロウ!」
声に合わせてニドキングとの距離をバレットパンチで詰める。
そして、そのままニドキングの胸を穿つ。
「ほう、早いな。だが・・・。」
バレットパンチを受けたニドキングは、衝撃で少しだけ後ろに下がったが、グロウの拳を体で受け止めた。そして、ニヤリと笑うと。
「今度はこっちの番だ。ニドキング!」
「・・・ッ!てっぺき!」
胸に拳を突き出した状態のグロウの上から炎を纏った拳が振り下ろされ、地面に叩きつけられる。
ドガァンという音と共に舞い上がる砂ぼこり。
「これで、決着か?」
「それは・・・どうかな!」
私が答えた瞬間。
グロウは全身を回転させて砂ぼこりを吹き飛ばし、そのままコメットパンチをニドキングに叩き込んだ。
グロウに吹っ飛ばされたニドキングは、地面に腕と膝を突き立ててバランスを取りながら勢いを殺し、サカキの隣で停止した。が、ダメージは大きそうでその場で片膝をつく。
「ふむ。頑丈なポケモンだな・・・。」
サカキは驚いた表情で呟く。
「主力がいないから勝てない、なんて言わせないよ?」
「どうやら、そのようだ。」
「そう思うなら、大人しくーーーーえ?」
大人しくしてくれないかな?と言おうとした瞬間。
スオウ島の上空で7色の閃光が輝き周囲を照らす。
そして、弾けたエネルギーが光になって島の上空から島全体に降り注いだ。
「これは・・・?」
「弾けたエネルギーを、イエローの力が変化させたか。」
足元を見ると、光が降り注いだ所から花や草が芽吹く。
「これでこの島も、草木に溢れる島になるだろう。そして、どうやら時間切れの様だな。」
「え?」
「ボス!」
「貴様は、マシロ!?」
島の奥から現れたのはナツメと、金髪の男。イエローの話と容姿からして、マチス・・・かな?
サカキに援軍ってことだね。
・・・タイミングの悪い。
「誰だぁ、この小さいのは?ボスとやりあおうってんなら、オレが相手になるぜ?」
「ここは任せたぞ、マチス、ナツメ。オレはこのまま修行の旅に出る。今のままでは世界征服なんぞ夢のまた夢だ。」
「はっ!」
「ちょっと!勝手に帰ろうとしないでくれない?」
しかし、サカキは私の言葉には耳を貸さずにニドキングをボールに戻す。そして、そのまま背を向けて歩き出した。
その背中を追いかけようと一歩踏み出した瞬間、私はそこでバランスを崩した。
あ、やば・・・。そろそろ限界かも・・・。
倒れる直前にグロウがサッと近づいて支えてくれる。そして、心配そうにグォォと声を出す。
「大丈夫。ありがとね、もう少しだけ頑張るよ。」
「マシロ、腕を治したければシロガネ山に行くといい。おまえらはせいぜい自分のジムでも守ってろ。どうせ、しばらくはロケット団も活動できん。・・・弾けたエネルギーがカントー本土に広がってやがる。あのエネルギーを吹き飛ばすだけの力をつけんとな・・・。」
振り返らずに言いたいことだけ言って、サカキは歩いて行った。
そして、その背を守るようにマチスとナツメが立ちふさがる。
「そこ、退いてはくれないよね?」
「当然だろ?どこの誰だか知らねぇが、ボスに任されたこの場所を退くわけねぇだろうが!」
「油断するなよマチス。こいつは、私とキョウを退けた女だ。」
「ん?ってことは、こいつが2年前に話してたやつか。あの頃はいつ会えるかと楽しみにしてたが、ようやく会えて嬉しいぜ?」
そう言ってマチスはニヤリと笑うと、エレブーを繰り出した。
「エレブー!かみなりパンチ!」
「かぷちー!ほのおのキバ!」
エレブーの拳をかぷちーの顎が受け止め、周りにバチバチと火花が迸る。
そして、そのままエレブーの拳を掴んだまま振り回し、地面に叩きつけた。
あれ、思ったより弱い・・・。いや、弱ってる?
「ちっ・・・。四天王との戦いのダメージが残ってるか。」
「1人で突っ込むな。お前も四天王との戦いで消耗してるだろ?フーディン!」
ナツメの出したフーディンからサイケこうせんが放たれる。が、かぷちーは飛び退いてかわす。
その時、掴んでいたエレブーを離してしまった為エレブーが自由になり、マチスの元に戻る。
そして、不敵に笑いながらナツメが言う。
「それじゃ、仕切り直しといきましょうか?」
こっちには仕切り直す程の余裕なんてないんだけどなぁ・・・。