「ちょっと!?急にどうしたのよ?」
抱き止めたマシロに声をかけるが返事はない。どうやら、意識がないみたい。
・・・と言うか、軽いわね。イエロー並みに小さいし、あたしでも支えられるぐらい。・・・じゃなくて!
「なんでお姉さまとマシロが戦ってるのよ?」
ナツメの方に視線を向ける。
「ボスの命令だ。」
「ボス?命令って、いったいどんな命令よ?」
「マシロの足止めさ。」
足止め?なんでこんなところで・・・。というか、ボスってことは、サカキがここにいたのかしら?
「 そう。でも、足止めならもう十分じゃない?そっちのマチスはそこでのびてるし、マシロはこんなだし、ここら辺で引いてくれないかしら?」
「・・・そうだな。時間は稼いだし、お互い四天王との戦いで疲労している。ここいらが潮時か。」
そう言うとナツメはマチスを伴ってテレポートで消えていった。
「ふぅ・・・。大人しく引いてくれて助かったわね。流石にもう戦うのは勘弁してほしいわ・・・ん?」
呟いていたあたしに、見慣れないポケモン達がよってくる。
そして、青い鋼鉄の体をしたポケモンが背中を差し出す。
・・・乗れってこかしら?
「それじゃ、失礼して。・・・あら、ありがとう。」
小さい方が乗るのを手伝ってくれる。
この子達、マシロの手持ちかしら?エレブーを吹っ飛ばしてたし。
・・・そう言えば、この小さい体でエレブーを吹っ飛ばしてたのよね?さすがとしか言えないわ。
そう思いながら鋼鉄のポケモンの背に乗る。
「それじゃ、あたしが来た方に戻ってくれる?他の仲間がいるの。」
「グオォ。」
「ちー!」
ポケモン達が返事をして、小さい方があたしの隣に飛び乗る。
そして、ゆっくりと進み始めた。
グリーン達のところに戻ると、レッドが戻ってきていた。その腕にはイエローを抱えている。そして、その後ろにはきららとミスタ。
一緒にいないと思ったら、イエローに付いてたのね。
「あら、イエローは大丈夫なの?」
「ああ。全力を出しきったんだろう。気を失っているだけだ。マシロはどうしたんだ?」
レッドはあたしの膝の上で寝ているマシロに目を向ける。それと同時にミスタがあたしの後ろに、きららはあたしとマシロの周りをぐるぐると回り、マシロの隣にちょこんと降りる。
「イエローと一緒。・・・何故かナツメとマチスと戦ってたけど。」
「え、なんで?共闘してたんじゃ?」
「詳しくは知らないわ。まぁ、この子はこの子でロケット団と何かしらの因縁みたいなのがあるみたいよ。」
「キョウは居なかったのか?」
話の途中でグリーンが口を挟む。
「そう言えば、居なかったわね。・・・気になるの?」
「さっきまでチームだったから、気になっただけだ。」
ふーん、こいつも相変わらず素直じゃないわねぇ。
「ワタルはイエローが倒したし、これで戦いは終わったな!」
「うむ。」
「ああ。」
「そうね。」
レッドの言葉に、あたし達が頷く。
「それじゃ、帰ろうぜ!」
ーーーーマシロ視点ーーーー
私が目を覚ましたとき、最初に目に入ったのはブルーの顔だった。
「あれ?ブルーがいる。」
思わず手を伸ばし、その頬を指でつつく。・・・うん、ぷにぷにで柔らかい。
「・・・なにやってるのよ?」
「あれ・・・本物?夢とかじゃなくて?」
「夢じゃないし、正真正銘あたしよ。」
「え?どういう状況?」
「四天王は全員倒して、みんな揃って帰る途中よ。」
体を起こして周囲を見渡すと広がるのは青一面の海。どうやら、グロウの背中に乗っているみたいで、ブルーと私、それにきららとかぷちー。グロウの後ろにはミスタ。
そして、周囲を見渡したその景色のなかに、ギャラドスに乗るレッドとイエロー、カツラさんとマサキ。
ゴルダックに乗ったグリーン。
あぁ、みんな無事だったんだ。よかったよかった。
気が抜けた私はそのままもう一度倒れ込む。
その時、ふと気づいた。
「あれ?これって膝枕?」
「分かってるなら、どいてくれないかしら?」
「ってことはずっと?」
「そうね。・・・それで、どいてくれないのかしら?」
「・・・もうちょっと。」
「ハァァ・・・。」
ブルーの盛大なため息がきこえた。
いやだって、どうせならもっと堪能したいでしょ?
それに、体も重たいし。
別に、言い訳とかじゃなくて本当だし。
『ましろー、やっぱりたおれてるー!』
「あ、きらら。」
『むちゃはよくないよー!』
あの時、イエローを治した事を言ってるよね?
「ごめんごめん。でもワタルは倒せたし、終わりよければ全て良しってことで。」
『むー!』
横になったままきららに手を伸ばし、頭を撫でる。よしよし。
「いつもありがとね。きららがいるから無茶ができるんだよ?」
『えへへ。・・・あ!やっぱりむちゃしてるんだー!』
「あ、失言だった。」
「何を話してるのかわからないけど、相変わらずね仲良しねぇ。」
「まぁね、長い付き合いだし。それに、ブルーとも仲良しだよ?」
「・・・別にそんな事で張り合いたい訳じゃないわよ。」
そんな事を言って、照れたようにそっぽを向くブルー。かわいい。
「あ、そう言えばナツメとマチスは?」
「あの2人なら、あなたが倒れた後さっさと逃げてったわよ。」
「そっか。」
「なんであの2人と戦ってたの?と言うか、なんでスオウ島に来てるのよ?」
「あ・・・。いや、少しでも力になれるかなーって・・・。」
とりあえず、四天王直々に招待されたのは黙っておこう。余計に怒られそうだし。
「ハァ・・・。まぁ、その気持ちはありがたいけど無茶はしないでよ。前にも言ったけど、マシロはあたしにとって切り札なんだから。」
「フヘヘ・・・。いたたたたた!右手は、右手は止めて!」
切り札と言われて思わず笑みがこぼれるが、同時に右手を握られる。
「あら、ごめんなさいね。でも、握られるだけで痛いんでしょ?そんな状態で戦ったりしないで、休むときは休む!」
「ハイ、ゴメンナサイ。」
悪びれもせずに右手を握ってくるブルーに、涙目になりながら謝る。
やっぱり怒ってたよ。
でも、ブルーだけに任せるなんてできないもん。しょうがないよね。
そう思った瞬間、また右手が握られる。
「痛い痛い!なんで!?」
「なんか、不埒なことを考えてそうだったから。」
「むー。」
相変わらず勘が鋭い。
いや、だからって手を握るのは辞めてほしい。痛いから。
「でも、ありがとね。」
「ぐす・・・。ん?何が?」
涙目のままブルーに聞き返す。
「あなたの情報がなかったら、あたしの可愛い右手がおさらばするところだったわ。」
「え?それって・・・。」
「そ。あたしはカンナと戦ったのよ。その際、マシロが言ってた氷の人形のせいで右手が千切れちゃってね。」
「え?」
思わずブルーの右手を見る。
そこにはちゃんと、ブルーの右手があった。
そんな私の反応を予想してたのか、ブルーは笑いながら続けた。
「フフ、安心しなさい。千切れたのは擬態してたメタちゃんよ。マシロが教えてくれたから、あらかじめ擬態させてたの。だから、あなたのお陰。」
「そっか。役に立ったなら良かったよ。」
それにしても、ブルーの手が千切れかけたのか・・・。
あの時、カンナだけでも仕留めるべきだった。
「てぃっ!」
「いったぁぁっ!!」
そんな事を考えると、再三右手を握られる。
「怖い顔をするのはやめなさい。大方、オツキミ山でなんとかしておくべきだった。とか考えてるんでしょうけど。」
「ソンナコトナイヨ?」
「目を見て言いなさい・・・。あのね、マシロが全部背負うことないのよ。今回の件はあたしが頼んだんだから、それに・・・。」
「それに?」
「マシロは笑ってる方が、似合ってるわよ。」
以外な台詞にブルーの顔をじっと見つめる。
すると、ブルーはぷいっとそっぽを向く。
ん?これはもしかして・・・。
「あれ~、照れてる?」
「・・・自分でもらしくないと思ってるわよ。」
「そんなことないよ。」
お返しとばかりに、もう一度ブルーの頬を指でつつくと、視線だけをこっちに向ける。
そして、数秒見つめあった後。
「フフッ。」
「あはは。」
どちらともなく笑いあった。
「ま、ひとまず戦いは終わったし、しばらくはゆっくりしましょう。」
「うん。私はもうしばらくブルーの膝を堪能しておくかな。」
そう言うと、ブルーは不敵に笑う。
「あら?あたしの膝は高いわよ?」
「え、買うに決まってるじゃん。」
「即答しないでくれるかしら・・・?」
と思ったら、呆れ顔になってため息をついた。