ロケット団を追いかけると、すぐにその背中が見えた。
けど、ミスタのスピードが遅くなってて追いつくにはもう少し掛かりそう。
今日はずっと飛んでもらったから、無理させてるね・・・。
「ごめんね、ミスタ。ずっと飛びっぱなしで疲れてるよね・・・。もう少しだけ頑張ってくれる?」
声をかけると少しだけスピードが上がる。
ミスタ、ありがとね。
「ちっ!想定より追い付くのが早いね!」
「ヘルガー!マグカルゴ!かえんほうしゃ!」
カーツと呼ばれていた男が、ヘルガーの背中にマグカルゴを出し、マグカルゴかえんほうしゃを放つ。
「きらら!メテオビーム!」
が、かえんほうしゃごとヘルガーとマグカルゴを撃ち抜く。
「なんだと!?・・・ちっ、もどれ!」
「このままだと追い付かれる、か。」
「だが、どうする?」
「仕方ない。相手は1人だ、全員でかかればなんとかなるかもしれん。」
「なら、急いで先に行った奴らと合流しよう。」
逃げていく2人はスピードを上げる。
どうやら、先に逃げたしたっぱ達と合流するみたい。
2人だけを相手にする方が楽だけど、合流してくれるならまとめて捕まえることができる。
・・・いや、あの人数を1人で捕まえるのは手が足りなくなるから2人を相手にするほうがいいか。
でも、ミスタは疲れてるし合流されるまで追いつけない。
そう思った時、ポケギアに連絡が入る。
「こんな時に誰!・・・ってブルー!?」
私は慌てて電話を取る。
「もしもし、どうしたの?」
『今朝話してた、シルバーの写真送っといたわよ。・・・と言うか、風の音?なんか賑やかね。』
「ちょっと今、ロケット団を追いかけててね。仮面の男の事知ってそうだから、捕まえてくるよ。」
『仕事が早いわね。それじゃ、取り込み中みたいだから失礼するわ。』
そう言うと、ブルーは通話を切った。
期待に応えないとね。
そう思いながらポケギアを鞄に戻そうとした時、受け取った写真を開いてしまう。
そこには、さっきまでゴールドの隣にいた赤い髪の少年はが写っていた。
「え?シルバーってさっきの!?」
あ!
そう言えば、塔の中でゴールドが赤い髪の少年の事をシルバーって言ってたっけ!もっと早く気づけばよかった。
私は慌ててブルーに電話をかけ直した。
「もしもし!」
『なによ、ロケット団を追ってたんじゃないの?』
「そうなんだけど!シルバーって少年、さっきまで一緒にいたの!」
『は・・・え?なんで?どういう事?』
「どうする?今から引き返せばシルバーの事、捕まえられるかも。でも、ロケット団の事は・・・。」
『・・・そうすると、ロケット団の事は諦めるしかないってことね。いやホント、あなた仕事が早すぎるわよ。』
「あはは・・・。」
『あー・・・、もう!」
ブルーは電話口で叫び、少しだけ黙り込む。
「・・・ロケット団は後回し!先にシルバーの事を捕まえて!』
「いいの?」
『いいわよ!仮面の男なんかより、シルバーの方が大事!』
「わかった。引き返すね。」
なんか、最後の方はやけくそ気味に叫んでたけどシルバーの方が大事って言う辺り、やっぱりブルーって優しいね。
私はミスタの背中を軽く叩く。
「ミスタ、引き返して。」
そう言うと、ミスタはそのままUターンする。
そして、飛んできた道を引き返し始めた。
「・・・見逃された?まぁいい。何があったかは知らないけど、このまま逃げるわよ。」
引き返す私の背中に、そんな声が聞こえた。
『悪いわね、せっかく尻尾を掴んでたっていうのに。』
「仕方ない、運が悪かったんだよ。それに仮面の男より、そのシルバーって子の方が大事なんでしょ。」
『そうね。それに、どちらかと言うと運は良かったのかしら?』
「そうかもね。」
電話越しに笑い合う。
『あたしが動けたら良かったんだけどね、もう少しかかりそう。』
「かかりそう?」
『こっちの話。完全にあたしの個人的な事だから、気にしないで。』
「そうなの?わかった。」
ブルーと話していると、陥没した町が見えてくる。
そして、崩れた町の中で対峙しているゴールドとシルバーを見つけた。
「いたいた。・・・なんか、バトルしてる?」
『そうなの?じゃあ、そのバトルが終わったら、シルバーとかわってもらえる?』
「・・・いや、止めてくるよ。崩落してるのにこれ以上壊されると、余計に復興が大変だし。町の復興って結構疲れるんだよ?」
『知ってるわよ・・・。あたしだって、復興には力を貸してたわけだし。』
「ま、そんな訳で・・・。ミスタ、割り込むよ。」
終わったら休んでてね、ミスタ。
ーーーーーーーー
ロケット団の残党が退き、一息つく。
「ふぅ・・・。引いたか。」
だがあのリーダー格の女の方は、着物の奴をやたら気にしていたな。
確かに、最初ロケット団のポケモンを蹴散らした時は驚いたが・・・。
そんな事を考えていると、ゴールドがおもむろにポケモン図鑑を差し出してきた。
「返せよ、オレのニョたろう!通信進化って、要するに交換じゃねーか。どーりで言うことを聞かないはずだぜ。」
「少しは力をつけたようだな。」
ポケモン図鑑を操作してニョロトノを送り返す。
「へへ、育て屋の特訓はダテじゃないぜ。・・・お帰り、ニョたろう。」
用は済んだ。
そう思い、踵を返したところで、ゴールドが声をかけてくる。
「ところでシルバー。ホウオウってなんなんだ?スズの塔の中の彫像に書いてあった名前、ロケット団の女も口にしてた。」
「・・・」
「オレは見逃さなかったぜ。ホウオウという言葉に反応していたお前の事を・・・な。おめぇ、いったい何者なんだ?」
「・・・。」
ゴールドはひたすら疑問を投げ掛けてくるが、話す必要はない。
そのまま黙っていると、応える気がない事が伝わったのかやれやれと頭をかく。
「何か目的があるんだろうが、まぁいいや。どうせ答えねぇだろうし。それよりもだ。お前はいつも目的目的って、任務みたいに戦って・・・。今まで楽しんでポケモンバトルをやったことがあんのかよ?」
「・・・何?」
あのポケモンに連れ去られてから、生きていくのに必死でバトルを楽しんだことなんてなかった気がする。
・・・いや、姉さんといたときはまだ楽しめてはいたか。
「そこでだ。お互いポケモン図鑑とウツギ博士のポケモンを持つ者同士、フェアな条件だ。邪魔物もいなくなったし、1度本気で手合わせしてみねぇか、シルバー?」
「挑戦状か・・・。受けてたとう。」
本来なら、受ける必要のないこの勝負。何故だか受けたくなった。こいつに感化されたか・・・。
「ふっ。まぁいいか。」
「ン?なにか言ったか?」
「いや・・・。それより、ポケモンセンターの跡地に向かうぞ。もしかしたら、非常電源が生きているかもしれん。互いに1戦やりあった後だ、万全の状態じゃないと悔いが残るだろう?」
「へっ。そうだな。」
そう言って揃って歩き出す。
ポケモンセンターは崩れているが、幸運にも非常電源は生きていたから互いのポケモンを回復させることが出来た。
「お前、5匹しか連れてないのかよ?」
「ハンデだ。それじゃ、始めるか。」
「前回は邪魔が入ったが、今回は決着をつけようぜ。1体はハンデとか言ったこと後悔させてやるぜ!」
「「勝負!」」
オレが最初に出したのはアリゲイツ。それに対してゴールドはマグマラシ。
性格的にウツギ博士のポケモンを出すと思ったのが当たったな。
「ちっ、いきなり不利かよ!ひのこ!」
「一気に決める!みずでっぽう!」
そして、互いに技を出そうとした瞬間。
アリゲイツとマグマラシが、上から降ってきたポケモンに叩き潰された。
「なっ!」
「誰だ!」
ゴールドと同時に上を見上げる。
そこにはスターミーに乗った、さっきロケット団を追いかけていった、着物の少女の姿があった。
その少女はそのままオレ達の間に降りる。
「横やりを入れちゃってごめんね?でも、これ以上この町を壊すのは止めてくれないな?」
「おいおいおいおい!急に割り込んで来やがって、何の用だ!?」
「だから、町の中でバトルするのは止めてくれない?あと、ゴールドに用はないよ。用があるのはそっちのシルバーの方。」
「・・・なんだ?」
割り込んで来たと思ったら、オレに用があると言う。
だが、この女とは初対面だし心当たりはない。
と思ったら、ポケギアで誰かと話しだす。
「・・・うん。じゃあ、かわるね。ちょっとこの電話に出てくれないかな?」
ポケギアで誰かと話すと、こっちにポケギアを差し出してくる。つまり、用があるのはこの女じゃなくてポケギアの向こうの人。
姿を見せずに初対面の人間を向かわせる辺り、信用はできない。
「・・・断る。」
「えー、それは困るんだけど・・・。」
「オレを無視するんじゃねぇよ!せっかくシルバーとタイマンで勝負してたのに横やり入れやがって。」
「そんなにバトルがしたかったの?一応、謝ったでしょ・・・。」
そう言うと、ポケギアから何か言われたのかぼそぼそとポケギアにむかって話し出した。
「断られちゃって・・・。確かに、用心深いところはブルーに似てるかもね。ハァ・・・。どうにか話を聞いてもらうから、ちょっと待っててね。」
ポケギアの相手と話終わると、ため息をつきながらこちらに向き直る。
今、ブルーって言ったか?電話の相手が姉さんなら、この女は・・・。
「あんた、マシロか?」
「あれ?私の事知ってるの?」
「姉さんから聞いている。あんたにずいぶん助けられたってな。」
「そっか。私、ちゃんとブルーの助けになってたんだ。えへへ、良かった。」
さっきまでの表情からうってかわって、急に笑顔になる。
コロコロと表情が変わるやつだ。・・・本当にこんなやつが姉さんが言うほど強いのか?
「ゴールド、悪いが勝負はお預けだ。」
「はぁ!?どういうつもりだよ!?」
「あんた、かなり強いんだって?オレと勝負しろよ。」
それに、マシロと戦うことで強くなる為の秘訣が分かるかもしれない。
「・・・終わったら、電話に出てくれる?」
「いいだろう。」
「わかった。それなら、いいよ。」
今度はスッと真剣な顔になる。
本当にコロコロと表情が変わるな。
「だから、オレを無視すんなよ!?これは、オレとシルバーの真剣勝負なんだぜ?シルバーもなんでこんなやつと!」
「お預けだと言っただ。」
「はぁ!?ざけんなよ!」
「・・・ハァ。ゴールド、そんなに戦いたいの?」
「ったりめえだ!」
「それじゃ、2人で来なよ。」
喚くゴールドにため息をつくと、信じられない言葉を吐いた。
こいつ、さっきの人数を2人で追い返したのを見ていたはずだろう・・・。
それとも、オレ達の2人でも問題ないとでも言うのか?
「あぁん?2対1ってことか?」
「そ。それが嫌なら、話が進まないから引っ込んでてよ。」
「ちっ、こいつ・・・!シルバー、オレが入っても構わないか?」
1対1のほうが良かったが、聞いていた通りのマシロの強さを知るには都合がいいか。
「・・・ああ。だが、油断するなよ。」
「へっ!オレ達が組んで負けるかよ!」