「ったく、大量のギャラドスに赤いギャラドス。あいつに関わると退屈しねぇなぁ!」
シルバーを追いかけ、いかりの湖に着いた途端にギャラドスの大量発生に巻き込まれた。
どつやら、電波による強制進化によって発生していたらしい。
その電波のアンテナの役割をしていたのが赤いギャラドスってのには驚いたぜ。
「で、お前何をやってんだ?」
赤いギャラドスを捕獲し一段落ついたと思えば、オレの前でポケギアを操作しているシルバーに声をかける。
「さっきの電波の波形を記録した。こいつを辿って、発信元を突き止めて叩く。」
「おー、成る程。便利なもんだな。しっかし、誰がこんなことを・・・。」
「ゴールド、これが最後の忠告だ。今、オレが追っている相手は、ロケット団残党とは比べ物にならない相手だ。好奇心で首を突っ込むな。」
「へっ、やなこった。」
オレのやることはオレが決める。他人にどうこう言われる筋合いはないぜ!
「口で言ってもわからないなら・・・。」
「お、やるか?前は結局、有耶無耶になっちまったからな。ここで白黒つけても構わないぜ?」
ボールを構えるシルバーに、挑発的な言葉を投げかける。
前はマシロに横槍を入れられたからな、仕切り直しといこうじゃねえか!
そして、互いにボールを投げようとしたときだった。
どこからか、見覚えのある霧が漂ってきた。
「ッッ!この霧は・・・!」
「フッフッフッ。電波が途切れたからと来てみたが、見覚えのある顔ぶれじゃないか。」
「やっぱり、お前かよ・・・!」
姿を表したのは、前回ウバメの森で出会った仮面の男。・・・前は歯がたたなかったが、今ならわかるぜ。
多分、
その時、オレのポケギアにウツギ博士から連絡が入る。オレは仮面の男から視線を動かさずに、指先だけでポケギアに出る。
『やっと繋がった!ゴールドくん、君が手に入れた金属の成分が分かったよ!あれは、ジムリーダーに配られたジムバッジの成分だった。それも、トレーナーに渡すレプリカじゃなくて、オリジナルのものだ。つまり、仮面の男はジムリーダーである可能性がある。だからゴールドくん、今後出会うことがあっても関わらないように!わかっ・・・。』
話している途中だったが、通話を切る。これ以上聞いている余裕はなさそうだ。
あと、その忠告はもう少し早く聞きたかったぜ、ウツギ博士。
通話を切ると同時に、
「さて、あんたがジムリーダーかどうかはこの際、置いておくとしてだ。そんな仮面を被ってんだ、どうせ答えねぇだろ?そんなことより、あんたの目的はなんだ?ロケット団の残党を集めたり、このいかりの湖でコイキングを強制進化させたりしやがって。」
「ロケット団は優秀な組織だった。それなのに、何故壊滅したのか・・・。それは、コマ不足だったからだ。計画が大きければ大きいほど、強力なコマが大量に必要なのだ!」
「だから無理矢理進化させてたってのか。」
こいつの自分勝手な話には反吐が出るぜ。
「人だろうとポケモンだろうと、小さい頃から教え込めば強力なコマになり得るのだよ。なぁ、シルバー?」
「ニューラ!」
シルバーは言葉を遮るようにニューラを繰り出したが、仮面の男は足元にいたデリバードと共に飛び退き、ニューラの爪は地面を抉るだけに終わる。
「どうしたんだよシルバー、らしくねぇじゃん。・・あいつ、お前の名前を知ってるってことは知り合いか?」
「お前には関係ない。」
「そうだな。9年前、各地からさらっていた子供の1人なんて、そこのガキには関係ない話だな。」
「んだと?」
コイキングだけじゃなく、9年前から子どもをさらってただって?
ろくでもねぇ野郎だぜ。
「おい、シルバー。お前が色々やってたのは、こいつを倒すためか?」
「・・・そうだ。」
「成程な。そう言うことならこいつの退治、手伝わせろ。こいつはポケモンや人を道具としてしか見ちゃいねぇ。人として、トレーナーとしても許せねぇぜ。」
「・・・勝手にしろ。」
「行くぜ、バクたろう!」
シルバーと2人で仮面の男に立ち向かう。
この間のマシロとの戦いを思い出すぜ。
「フッ、小賢しい。いけっ!」
森の中からデルビル、アリアドスが飛び出してくる。
「ゴールド!」
「おうよ!」
シルバーと短く声を交わす。そして・・・。
「いわくだき!」
「かえんぐるま!」
バクたろうがアリアドスに、ニューラがデルビルに、それぞれ技を叩き込む。
「マシロと戦ったときより、息があってんじゃねーか?」
「フッ。そうかもな。」
「あん時の電話のせいか?」
「・・・。」
あ、黙り込んだってことは図星だなこりゃ。
「ほぅ、前に戦ったときよりは強くなっているようだな。」
自身の足元に倒れているデルビルとアリアドスを見ながら話す。
「ったりめーだ。オレだって遊んでたわけじゃねーよ!」
「そうか。だが、シルバー。一緒に逃げた長い髪の娘はどうした?」
「・・・!」
「お前が慕っていたあの娘だよ。一緒にいないということは、逃げる途中で野垂れ死んだか?」
「ニューラ、でんこうせっか!」
仮面の男の台詞に苛立ったのか、もう1度ニューラが仮面の男に迫る。が、デリバードの氷の爪で弾かれる。
「いわくだき!」
弾かれた腕をそのままデリバードに叩きつけるが、デリバードはニューラの攻撃を避けると、仮面の男を連れて空に飛び立った。
「ちっ、空に逃げたか。」
「おい、シルバー。落ち着けよ!」
「邪魔だ、離せ!」
落ち着かせようとシルバーの肩を掴むが、腕を振って振り払うとヤミカラスに掴まって仮面の男を追っていった。
「にゃろう、おれは飛べねーっての!・・・ん?」
1人で呟いたオレの手には、1つのボールがあった。
ーーーーーーーー
ゴールドなら、上手く使えるだろう。
そう思い、アイツを預けて仮面の男を追う。
「追ってくるか。だが、1人で私に勝てると思っているのか!ふぶき!」
「ぐっ!」
上から強力な冷気と氷塊が降ってくる。
それを躱しながら仮面の男に迫る。
「挑発にのって追ってくるとは、まだまだ甘いな!」
「・・・さっきの挑発はオレとゴールドを引き離す為のもの。その誘いにあえて乗ったことを教えてやる!」
ヤミカラスのつつきに、つばさでうつ。
技を繰り出してある一点に誘い込む。
「各地から子どもをさらい、影で人を操る貴様の非道。それを今ここで阻止する!そのためにこの湖の中央まで誘導した!あんたとの因縁は、オレ自身の手で断ち切る!」
仮面の男が湖の中央に到達した瞬間、湖から大量のギャラドスが飛び出した。
「ヌ!これは、強制進化させたギャラドス!」
「自分の策略にハマる気分はどうだ?」
仮面の男に対しニヤリと笑い、赤いギャラドスを繰り出し、その背に乗る。
「電波の中継点として動いていた赤いギャラドスを捕獲したことによって、湖のギャラドス達は一方的なコントロールから開放された。こいつらの怒りは今、貴様に向いている。はかいこうせん!」
仮面の男に向かって、大量のギャラドスのはかいこうせんが放たれる。
勝った!
そう思った瞬間、ヤツから強烈な冷気が吹き荒れた。
ーーーーーー
シルバーのやつ、どこ行きやがった!
森を走り回り湖に出たとき、凍りついた湖に大量のギャラドス。そして、その上に倒れているシルバーの姿があった。
「シルバー!」
「トドメだ。」
凍りついた湖の上から、シルバーに向けて巨大な氷塊が降ってくる。
くそっ、ここからじゃ間に合わねぇ!
「仕方ない!ここで使うぜ、シルバー!」
去り際に、「どうせ、オレにも使いこなせん。何かあったときは使え。」ってしれっと置いていきやがって。
オレはリュックからキューを取り出すと、
そして、凍りついたギャラドス達に反射してシルバーの元でボールが開く!
「行け!バンギラス!」
雄叫びを上げてボールから出てきたバンギラスは、氷塊を噛み砕き、ペッと吐き出す。
マナーがなってねぇなぁ。
まぁいいぜ、おかげでシルバーの所まで行く時間が稼げた。
「おい、シルバー!・・・気を失ってやがる、仕方ねぇ。」
オレはシルバーに肩を貸すと、凍りついた湖から出ようとする。・・・が。
「何処に行く?」
オレの背中に不気味な声がかかる。
後ろを振り返ると、氷づけになったバンギラスの姿。
「マジかよ!?」
「他のやつより手強かったが、指示のないポケモンなど野生のポケモンと変わらん。そんなもの、取るに足らん。」
そう言うと、上から大量のつららが降ってくる。
「くそっ!キマたろう、にほんばれ!バクたろう、かえんぐるま!」
キマたろうの援護をつけ、バクたろうが氷を溶かしながら弾き返す。が、追いつかない。つららが降ってくるスピードの方が早い。
「ウーたろう、エーたろう、ニョたろう、トゲたろう!」
全員をボールから出し、つららを弾き落とす。
が、1体また1体とつららの前に倒れていく。
「っくしょおおおお!!」
シルバーを背負っている以上、つららを避けることもできない。
帽子やリュックが落ち、靴が脱げながらも逃げるが、その際もつららを受け続ける。
そして、最後に巨大な氷塊が落ちてくる。
「避けきれねぇ・・・。ここまで、か。」
呟いた瞬間、力が抜け、凍った湖の上に倒れ込んだ。そしてギュっと目を閉じる。その時だった。
「かぷちー、ほのおのキバ!」
なにかが砕ける音が響き渡った。
「なにが・・・?」
薄れていく意識の中、薄っすらと目を開けると、そこには着物姿の白い髪の少女の背中。そして、その手持ちのポケモンと見慣れない大型のポケモン。
「ずいぶん・・・遅かったじゃねぇか・・・よ・・・。」
「よく頑張ったね。後は任せて。」
「そうさせて・・・もら・・・。」
最後まで言い切る前に、オレの意識は途切れた。