声をかけると安心したのか、ゴールドは気を失った。
上を見ると文字通り、仮面をつけた男。
確かにこれは、仮面の男って呼ぶしかないね。
「隣にいるのはエンテイか、久しいな。・・・しかし、貴様は何者だ?」
「この子、エンテイって言うんだ。ここに来る途中で会ったんだけど。」
仮面の男の疑問には答えず、隣のエンテイを見上げる。
と言うのも、エンジュを出たすぐのことだった。
ーーーーーー
ポケギアの表示を見るとゴールドの名前。
「もしもし?どうしたの?」
『さて、あんたがジムリーダーかどうかはこの際、置いておくとしてだ。そんな仮面を被ってんだ、どうせ答えねぇだろ?そんなことより、あんたの目的はなんだ?ロケット団の残党を集めたり、このいかりの湖でコイキングを強制進化させたりしやがって。』
ん?返事はないし、誰か私と以外の人と話してる?
しかも、仮面ってことは相手は仮面の男?それなら、悠長に私と話ができないような状況なのかもしれない。
だったら、のんびりはしてられないね。
「グロウ、かぷちー、きらら!」
グロウの上にかぷちー、私の横にきららを出しておく。
状況が分からない以上、先に備えておかないとヤバいかもしれない。
「仮面の男が見つかっぽいんだけど、ゴールド達がまずい状況かもしれない。急ぐよ!」
『おっけー!・・・ましろ?』
元気よく返事をしたと思ったら、きららは怪訝な顔をする。
「どうしたの、きらら?」
『なにかきてるよ?』
きららがつぶやいた瞬間、私達に並走する赤い大きな4足歩行のポケモン。
それは、さっき焼けた塔から飛び出した3体のうちの1体だった。
「ちょっと・・・。今、あなたの相手をしてる暇ないんだけど?」
並走するポケモンに声をかけると、グルル、と低く唸るだけで敵意みたいなのは感じない。と言うより、私の横をずっと付いてくる。・・・もしかして。
「私に付いてくるつもり?」
「ガウ!」
どうやらそうらしい。どういうつもりか分からないけど、今はゴールドの所に行くのが最優先だね。とりあえず、邪魔をしないようなら時間も無いことだし、好きにさせておこう。
「急ぐよ、みんな!」
ーーーーーーーー
って感じで急いできたけど、途中で通信が切れたときは焦ったね。
でも、ギリギリ間に合ったみたいで良かったよ。
しかし、エンテイって呼ばれたこの子めちゃくちゃ唸って威嚇してるんだけど、仮面の男とどういう関係なんだろう?
ホウオウに関係してるみたいだから、もしかしたらブルーをさらったことにも関係あるかと疑ってたんだけど・・・。
むしろ仮面の男とは敵対してる?
「まぁいい。そこのガキもろとも湖に沈めてやろう!」
そう言うと、さっきよりも1段と大きい氷塊をぶつけてくる。
「グロウ!かぷちー!」
名前を呼ぶと、グロウが氷塊を砕きかぷちーが当たりそうになる破片を弾いていく。
その間にゴールドとシルバーの様子を確かめると、靴やらリュックやらがない。
所々開いている穴から湖に落ちたかな?・・・諦めるしかないか。
「エンテイ、ちょっと背中貸してくれる?2人を安全なところに連れてってほしいんだけど。」
そう言うと、何故か心配そうな目で見られる。1人で大丈夫かってところかな?まぁ、2人がこれだけボロボロにやられてたら心配にもなるよね。
「大丈夫だよ。私、この2人より強いし。・・・それに、自分でも意外だったけど、割と怒ってるんだよね。知り合いをここまでボロボロにされたことに。だからさ、ここは任せてよ。その代わり、2人をよろしくね。」
そう言うと、エンテイは大人しく屈んでくれた。
「ありがと。きらら、手伝って。」
『はーい。』
私はかがんだエンテイの背中にゴールドとシルバーを乗せる。私は背が低いから、きららのサイコキネシスで手伝ってくれないと乗せれないんだよね。
「それじゃ、2人のことよろしくね?そうだね・・・、うずまき島とか良さそうかな。」
うずまき島ならこの地方の反対側だし、さっきのスピードなら簡単には追い付けないと思う。
ホントならミカンのいるアサギがいいんだけど、今はエンジュで復興の手伝いをしてるし、この男が本当にジムリーダーならエンジュなんてジムのある町に行くのもまずいかもしれない。
それならむしろ、人気のない所に行ってもらった方が安全だよね。
エンテイの背に乗せると、周囲のポケモンを回収しておく。
『おっきなぽけもんもかちこちだぁ~。』
「バンギラスが氷づけって・・・。まぁ、湖ごと凍らせるならそれぐらいできるか。」
バンギラスも回収してっと。これで全部かな?
「それじゃ、よろしくね。」
エンテイの背中を叩くと、少しだけ振り返るとそのまま駆け出した。
「ちぃっ!行かせん!」
私からエンテイに標的を変えると、その背中に大量のつららを放つ。
「邪魔はさせないよ、きらら!」
『まかせて!』
エンテイの背中に向かったつららをサイコキネシスで弾く。
「ミスタ、ハイドロポンプ!」
そして、仮面の男に向けてハイドロポンプを放つ。
「無駄だ、デリバード!」
が、ハイドロポンプは仮面の男に届く前にデリバードによって凍りついた。
まぁ、氷タイプ相手に水タイプ技は通らないか。それでも、ゴールド達が逃げる時間は稼げたかな。
ちらっと後ろを見ると、ちょうどエンテイが見えなくなるところだった。
「さて、ゴールドのお陰で大体聞きたいことは聞けたし。エンテイ達との関係はよく分からないけど、今はどうでもいいかな。」
「何を言っている?」
「こっちの話。ただ・・・。」
ふぅ、と一息ついて心を落ち着ける。
「個人的な恨みは山ほどあるから、覚悟してよね!かぷちー、グロウ!」
かぷちーがグロウに乗って飛び上がる。
「ミスタ、きらら!」
その後ろをミスタに乗った私ときららが追いかける。
「その仮面、剥がさせてもらうよ!グロウ、コメットパンチ!」
グロウの拳とデリバードの氷の爪がぶつかり合う。
「ヌゥ!」
砕けはしなかったが、ピキッと音をたてて氷の爪にヒビが入る。
「かぷちー、ほのおのキバ!」
そして、ヒビの入った爪ごとデリバードをかぷちーの大顎が挟み込むと、そのままぶん投げ地面に叩けつける。
「ミスタ!10まんボルト!」
最後に仮面の男に向かって10まんボルトを放つが、仮面の男は身を翻して10まんボルトを躱すと、デリバードが叩きつけられた場所の隣に降り立つ。
「さっきのガキどもとは違うようだな。」
仮面の男が地面に降りると同時に、デリバードも立ち上がる。あれだけ打ち込んでもまだ立てるんだ。ジムリーダーってのも本当っぽいね。
「ま、あの2人よりは強いかもね。きらら、スピードスター!」
地面に立つ仮面の男の周りをスピードスターで取り囲む。
「しゃらくさい、全て吹き飛ばしてくれる。ふぶき!」
瞬間、周囲一帯に強烈な冷気が吹き荒れ、取り囲んだスピードスターを全て吹き飛ばすと、私達に向かってくる。
この威力、カンナのふぶきより強いかもしれない。
でも、関係ないかな!
「きらら、押し返して!サイコキネシス!」
きららが私達の前に飛び出すと、サイコキネシスで吹き荒れる冷気をまとめて仮面の男に押し返す。
「グオオォォォ!クソッ!デルビル、アリアドス!」
自身の冷気で凍りつきながらデルビルとアリアドスを呼ぶと、周囲の森から飛び出してくる。
飛び出してきた2体は、きららに向かってかえんほうしゃと糸を放つ。
「させないよ。かぷちー!グロウ!」
きららの隣にグロウとかぷちーが割り込むと、かぷちーが炎をまとった大顎で糸を焼き切り、デルビルの炎はグロウがひかりのかべで受け止める。
そして、かぷちーとグロウはそのまま2体に向かって飛び出した。
「ええい!ゴース、シャドーボール!」
その様子を見て焦ったのか、マントの下からゴースが飛び出しきららにシャドーボールを放つ。・・・が。
「ミスタ、メテオビーム!」
ミスタのメテオビームがゴースのシャドーボールごとゴースを貫き、そのまま凍りついて動けない仮面の男もろとも飲み込んだ。
「ヌアアァァァァ!!」
仮面の男の叫び声が辺りに響く。
そして、メテオビームの閃光と仮面の男の叫び声が収まった時には、ヒビの入った仮面にボロボロのマント。
そして、マントの下からむき出しになった体は・・・。
「氷の体、ね。マントの下にゴースを隠して空中も自由自在に飛び回ってた、って感じかな?カンナといい仮面の男といい、氷使いって妙な技が得意だよね。」
息も絶え絶えな仮面の男の前に降りて話しかけていると、かぷちーとグロウが戻ってくる。周りを見ると、横で伸びているアリアドスとデルビル。
ちゃんと倒してるね、ありがと。
「フッフッフッ、思い出したぞ。残党が言っていた少女の話・・・。名前は確か、マシロ、と言ったか。カントーでの事件の際に裏で動いていたという、白い髪の少女。ただの噂だと思っていたが、どうやら事実だったようだな。」
一応私のことは知ってたようだけど、ただの噂だと思ってたみたい。
「それで、ただの噂って気にしてなかった子どもにやられる気分はどう?」
「フッ。貴様の事はもっと注意しておくべきだったな。覚えておこう。」
「今更注意しても遅いよ。この状況で逃げられるとでも思ってるの?」
「それは・・・どうかな?」
ボロボロになっても、余裕を崩さない仮面の男。
なにか、奥の手でも隠してるのかな?
そう思った時。
「ワオオォォォンン!!」
と、森の中から遠吠えが響き渡った。
すると、森の奥からどんどんとデルビルが集まり、私達と仮面の男の周りを取り囲んでいく。
森の中に別のデルビルを残してたのかな?そいつが仲間を呼んできた、と。
「これが奥の手?有象無象をいくら集めても意味ないよ?」
「有象無象でも数を揃えれば力になる。コマを扱うというのは、こういうことだ!吠えろ!」
辺りにデルビルのほえるが響き渡る。すると、エンジュで受けた時の様に体が重くなる。
「どうだ?取るに足りん力でも、集めれば使えるものだ。ロケット団の残党の様にな!」
私の様子を見て勝ち誇ったように言う。
けど、1回受けたから予想してたんだよね。
「きらら。全部、黙らせるよ。」
『オッケー。』
「目標は周囲のデルビル。数が多いから、少しぐらいなら派手にやってもいいよ!きらら、りゅうせいぐん!」
「何をほざいて・・・!」
仮面の男が何かを言いかけると、空を見上げ息を呑む。
そこには、きららが放った大量のりゅうせいぐんが空を埋め尽くしていた。
空を埋め尽くすりゅうせいぐんは周囲のデルビルに降り注ぎ、直撃した者は倒れ、当たらなかった者も余波で吹き飛び、無事な者は散りじりに逃げていった。
お陰で周囲がボロボロの大惨事に。まぁ、すでに湖は凍ってるし、ギャラドスの氷像が沢山あるしで、元々大惨事か。
「ありえん、このようなことが・・・!」
地面に張り付いた氷の体を、バリバリと音をたてて引き剥がす。
無茶なことするなぁ、と思ったがふと気づく。
「あぁ、氷の体で痛くないから無理やり剥がせるのか。・・・だったらいいか。」
「何を・・・!?」
「かぷちー!」
仮面の男が地面から体を引き剥がした瞬間、逃さまいと氷の体をかぷちーの大顎が噛み砕いた。
その際、衝撃で仮面がコロンと外れる。
仮面の下にあったのは、
「全身が氷で、トレーナーはいない・・・と。いないんだから、逃げる必要もないし、そりゃ余裕が消えない訳だ。」
ん?ならどうやって指示をだしてたんだろう?
不思議に思い、周囲を見渡し転がっていった仮面を拾い上げると、仮面の裏にレンズの付いたポケギア。
なるほどね。これで映像を見ながら指示を出して会話してたんだ。
「ねぇ、そっちの人こえてる?」
『聞こえてるとも。噂以上の実力だった、完敗だとも。』
「機械を通すことで声も変えてたんだね。用意周到なことで。」
『褒め言葉として受け取っておこう。』
「どうせポケギアからも足がつかないだろうから、私から1つだけ言っておくよ。絶対に見つけるから。」
言いたいことを伝えると、相手の返事を聞かずにポケギアを放り投げる。そして。
「かぷちー。お願い。」
かぷちーの大顎が噛み砕き、粉々になったポケギアが辺りに散らばった。
『あれ、こわしてよかったの?』
「いいのいいの。仮面の男のポケギアなんて、何が仕込まれてるか分かったものじゃないし。それに、仮面の男の持ち物なんて持ち運びたくないからね。それよりみんな、お疲れ様。」
「ちー!」
「グォウ!」
「ーーーー」
『ひさしぶりにつかれたよー。』
皆が返事をする中で、きららは私の頭の上にポトッと落ちてくる。
きららが頭に乗るのも久しぶりだね。
広範囲のりゅうせいぐんを使うのも久しぶりだし、大分お疲れっぽい。
少し休んでから、エンテイを追いかけようか。