ポケットモンスター 煌   作:うたたねここ

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56話

 

 

北西の村で一晩過ごすとミスタも元気になった為、次のジムに向かうことにした。

次は、コガネシティがいいかな。

 

「それなら、一旦エンジュに向かおうか。町の様子もどうなってるか気になるし。」

 

元気になったと言ってもミスタに無理はさせられないから、今日はグロウに乗って移動中。

 

森を抜けると、エンジュシティにあるスズの塔が見えた。他はボロボロなのに、スズの塔だけ真っ先に建て直されてる辺り、よっぽど大事な場所なんだねぇ。

そんな事を思っていると、スズの塔の方からドォンと、鈍い音が聞こえた。

 

「今の音・・・、スズの塔の方かな?」

 

なにやらスズの塔の方が騒がしい。

ただのイザコザならいいけど、もしかしたらまたロケット団が何かしでかしてるのかもしれない。もしそうなら放っとくのはまずいか・・・。様子を見に行こう。

 

「グロウ、お願い。」

 

私はグロウに声をかけると、スズの塔の方に進路を変えた。

 

スズの塔に着いたとき、塔の上に大きな水晶のようなものが出来ていた。と思ったら、上の方に少しだけ閉じきってない部分がある。

 

「いや、少しだけ隙間があるね。と言うか、あそこにいるの・・・スイクン?誰かと戦ってる?」

 

塔の下から上を見上げると、誰かとスイクンが押し合っている。

そして、バンと音をたてて水晶が閉じるとスイクンと戦っていた人が空中に放り出されて真っ逆さまに落ちてくる。

 

ちょっ!危ない!

 

「グロウ、急いで下に!」

 

咄嗟にグロウに下に入ってもらい、私が受け止める。

 

「ぐひゃ。」

 

・・・正確には受け止めきれずに変な声を出しながらそのまま押し潰れた。

 

受け止めた人に潰されながら地上に降りると、それと同時に回りに鞄やポケギア、後なんか変な人形が落ちてくる。

 

落ちてきたやつ、全部何かしらの破片が刺さってるんだけど・・・。それに、人形なんかは特に悲惨でお腹を貫通してる。

 

潰されながら抱えた人を見ると、落ちてきた人は女の子のようで気を失ってる。とりあえず、怪我はなさそうかな。

 

「スイクンは・・・いないか。」

 

上を見上げるがスイクンの姿はなく、完成された水晶のようなものがあるだけだった。

まぁ、スイクンは強い者を探してるらしいし追い討ちを仕掛けてくるようなポケモンじゃないか。この人を倒したから姿を消したかな。

 

「ひええぇぇ~~。わ、私の人形がぁぁ~~。」

 

そんな時、地面に落ちた人形を拾い上げて悲鳴を上げる人が現れた。

なんかマントを着けた奇妙な格好をしている。人形とそっくりだね。と言うか、自分とそっくりな人形を作ったのかもしれない。

自分の人形なんて、カンナの氷の人形を思い出して私は嫌だけど。あー、氷使いってのはどいつもこいつも曲者だねぇ・・・。

 

「ん?クリスはどうした?」

 

キョロキョロと周囲を見渡すと私と目が合う。そして、腕の中の女の子を見ると慌てて駆け寄ってきた。

それと同時にポケモンもやってくる。ウインディ、エビワラー、カラカラ、パラセクト、ネイティ、チコリータの6体。この子の手持ちかな?

 

「君が助けてくれたのか?ありがとう、礼を言う。クリスは無事なのか?」

「うん。意識はないけど、大きな怪我はないよ。」

 

ほいっと、クリスと呼ばれた女の子をマントの人に渡す。

女の子と言えど、小柄な私が抱えておくには重たいんだよね。

 

「おっと。・・・ありがとう、もう一度礼を言っておく。私はミナキ。スイクンを追うものだ。人は私をスイクンハンターと呼ぶ。」

「私はマシロ。ただの通りすがり。」

 

スイクンハンターね、大層な呼び方だね。

 

「む?スイクンは?」

「さぁ?私が来たときにはもういなかったよ。」

「そうか・・・。」

 

ミナキと名乗った人はガックリ肩を落とす。スイクンを追いかけてたのに、入れ違いになったらそりゃ落ち込むか。

 

「それでも、一応塔の中も確認しておこう。」

 

塔の方を見上げるミナキさん。確かに、塔の中は見てないからまだいるかもしれない。あの水晶が通れるのか分からないけど。

 

「そう。それじゃ、私は行くね。」

 

ま、そこは私には関係ないからいいか。早くジムを回りたいし、さっさとコガネシティに行こう。

 

「うむ。君のことはクリスにも伝えておく。さらばだ!」

 

クリスと呼ばれた子を抱えたまま塔に駆け出すミナキさん。

男の人はすごいねぇ、人を抱えたまま走れるんだもん。私には無理だ。

 

それじゃ、コガネシティに向かおう。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ん・・・。ここは?」

「おお、目を覚ましたか。ここはスズの塔の最上階、結晶壁の中だ。そして、スイクンはもういなくなってしまった。」

「そうですか・・・。わたし、失敗したんですね。」

 

スイクンの捕獲に失敗したわたしは形を落とす。・・・あれ、でも塔から落ちたはずだけど、怪我が少ない。

自分の体を不思議に思うわたしに気づいたのか、ミナキさんが話す。

 

「マシロという通りすがりのトレーナーが助けたくれていた。」

「そうですか。」

 

思わず聞き流してしまいそうになったが、聞いたことのある名前が出てきて聞き返す。

 

「・・・え、マシロさん?その人、着物を着ていて白い髪をツインテールにしてませんでした?」

「そうだが、知り合いかい?」

「いえ、面識はありませんが聞いていた人と特徴が一致するので、多分その人です。なんでも、カントーの事件で裏で動いていたとか。」

 

オーキド博士にチラッと聞いただけなんだけど、カントーの図鑑所有者と一緒に動いていたとか。

今はジョウトにいるらしいから、もし荒事に巻き込まれる事があればマシロ君を頼るといい。捕獲に関しては門外漢だがな。

と言って笑ってたっけ。

 

「そうか。なら、次に会ったときはお礼を言っておくといい。」

「そうします。」

「ところで、少し前にこのスズの塔が地盤沈下に巻き込まれたのは知っているか?」

「え?でも、この塔すごく綺麗ですよ?」

 

確かに町はひどい有り様だったけどスズの塔だけ綺麗だから、てっきり影響を受けなかったのかと思ったけどそうじゃなかったみたい。

 

「そう。町が崩落していた中でこのスズの塔が優先して修復された。その答えはこの像だ。」

 

そう言って指差したのは目の前にある像。みたことのないポケモンだけど、この像がなにか関係してる?

 

「さっき離した地盤沈下はロケット団残党が引き起こしたものらしい。スズの塔が沈めば、自分の居場所を失ったホウオウが怒り戻ってくる、という仮説に基づいた実験だったようだ。そして、ホウオウの怒りを恐れたマツバ・・・この町のジムリーダーがスズの塔の再建を最優先させたらしいが、間に合わなかったようだ。」

「間に合わなかった・・・?」

 

わたしが疑問を口にした瞬間、ホウオウの像が光った。

 

「これは・・・!?」

「この像は主の帰巣に反応して輝きを放つらしい。つまり、ホウオウは怒り舞い戻ってくるということだ。やつらの思惑通りにな。もしかしたら、スイクンもホウオウに会うためにこのスズの塔に来たのかもしれない。」

「・・・え?」

 

そういえば、スイクンがエンジュに来たのは自分の目覚めた場所、やけた塔を目指してるのかと思ってたけど、実際にいたのはここスズの塔だった。ってことは・・・。

 

「さて、スイクンがここにいないのなら私は行こう。楽しかったよ、素敵なレディ。」

 

考え事をしているわたしの手を取ると、その甲にチュっと口づけをする。すると、ずっと隣にいたメガぴょん(チコリータ)がミナキさんを威嚇する。

 

「な、なななななにを!?」

「あーっはっはっは!さらばだクリス。またどこかで会おう、我がライバルよ!」

 

そして、高笑いをしながら飛び去っていった。それを見送り、わたしは膝を抱えるようにペタんと座り込んだ。そんなわたしにメガぴょんは寄り添ってくれた。

 

「心配させてごめんね。でも、悔しいの。」

 

そう言うとメガぴょんが落ち込んだように頭を下げる。

 

「ううん。スイクンを捕獲できなかったことじゃないの。スイクンの気持ちを分かってあげられなかったことが悔しいの。」

 

スイクンがいたのはやけた塔じゃなくてスズの塔。その時点でなにか理由がある事に気づくべきだった。

スイクンはきっと、ホウオウと会いたかったんだ。だから結晶壁をはったんだ、邪魔されないように。それなのに・・・。わたしの目から涙が零れる。

 

「それなのに、わたしはやみくもに勝負をしかけてスイクンの邪魔をしてた。ごめんねスイクン・・・。あなたの気持ち、分かって上げられなくて。」

 

 

 

そうして、ひとしきり泣いた後、重たい腰を上げてスズの塔を出る。

 

「さて、気持ちを切り替えないとね。会えたらだけど、マシロさんにもお礼を言わないとね。」

 

その後、野生のポケモンを捕獲できなくなったわたしはスリバチ山に行くことになる。

 

 

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