ポケットモンスター 煌   作:うたたねここ

66 / 95
66話

 

祠を探して森の中心部に向かうと、少し開けた場所に出る。

 

そこに祠はあった。

 

「ここね。」

「奴は・・・。まだ来ていないようだな。」

「みたいね・・・。後は、ここを守り切ればあたし達の勝ちよ。」

「それにしても、さっきの音は・・・?」

「マシロがやってくれたんでしょ。」

 

シルバーと話している途中、目の前の地面が膨らみ始める。

それと同時にあたしのポケモン図鑑からピピピと音がなり始める。

この音は共鳴音・・・?ってことは、もしかして。

 

「ッッ!誰だ!」

 

そして、それを見たシルバーが声を上げると、膨らんだ地面から顔を出したのはサイドン。その後ろから見慣れた2人の顔が出てくる。

 

「やっぱりレッド!?それにグリーンまで。どうしてここに?」

「ブルー!オレ達はこのスプーンに導かれて来たんだ。そう言うブルーこそ、なんでジョウトに?」

 

そう言うレッドの手にはスオウ島であたしも手にした事がある、運命のスプーン。

それを見ながらあたし達はポケモン図鑑の共鳴音止める。

 

「少し、大きな借りを返しにね」

 

なんの事か分からない2人は首を傾げている。

あんた達は分からなくていいのよ。

 

「そうだ、2人とも。返しておくよ。」

 

そう言って、おもむろにレッドから渡されたのは、1つのモンスターボール。

グリーンも同じようにボールを受け取り、あたし達はそれを開く。

中から出てきたのは、シロガネ山に行く時にレッドに預けたカメラちゃん。

あたしの鳥恐怖症を克服する為にも、カメちゃんに頼る訳にはいかない。そう思ってレッドに預けておいた。

グリーンが受け取ったボールからはリザードンが出てくる。

グリーンも同じようにレッドに預けてたのかしら?

 

そう思ってると、さっきの音を聞きつけた様子で新しい人影がこの場所にやってくる。

 

「今の音って、ポケモン図鑑の共鳴音じゃ・・・。」

 

そう言いながら森の茂みから顔を出したのは麦わら帽子をかぶった、これまた見知った顔。

 

「イエロー!?」

「レッドさん!?それに、グリーンさんにブルーさんまで・・・。」

 

驚いた声を上げるレッドとイエロー。

なにこれ、同窓会かしら?なんと言うか、運命的な物を感じるわね。

 

「やれやれ、祠には誰も近づけるなと言ったはずなのに・・・。なんだこの賑やかな様子は。」

 

そう思っていると、森の中から声が聞こえる。

 

「誰だ!?」

 

シルバーが叫ぶと、全員が一斉に声のした方に振り向く。

そこには、背中にラプラスを背負った氷の人形に腰掛けるヤナギの姿があった。

 

「ジムリーダー、ヤナギ・・・。マシロの予想は的中していたな。」

「状況は掴めないが、奴は敵・・・。ということでいいのか?」

「ええ。ポケモンリーグを襲撃した仮面の男の正体よ。」

 

グリーンの言葉に私は頷く。

その瞬間、この場に降り立つ人影。

 

「わたしもいます!」

「クリス!」

 

シルバーはその人影をクリスと呼び、その子はメガニウム、それと焼けた塔から飛び出したポケモン、エンテイ、ライコウ、スイクンを従えていた。

 

「シルバーの知り合い?頼もしい援軍ね。」

「あぁ。図鑑所有者の1人だ。」

 

そう言ってシルバーはポケモン図鑑を取り出す。すると、ポケモン図鑑は点滅を始めピピピと音を発しだした。

 

「この音は・・・!」

「共鳴音!ってことは、ゴールドが何処かに!?」

 

シルバーとクリスが驚いた瞬間。

 

「待ちやがれええぇぇぇ!!」

 

ツンツン頭の少年がこの場に飛び込んで来た。

 

「「ゴールドッ!?」」

 

 

 

ーーーーゴールド視点ーーーー

 

 

 

 

セキエイから飛び立った仮面の男を、バクたろうに乗って追いかけていると、空から仮面の男を追う人影が見える。

そして、その人影は仮面の男に向かって一筋の閃光を放つ。

 

「今のは、メテオビーム!?ってことはあの人影はマシロか!」

 

うずまき島で特訓中、きららの奴に偶にぶち込まれたあの技。よく覚えてるぜ。

メテオビームを受けると、仮面の男はその場で静止し、マシロがそれに追いつく。

すると、2人は何やら話始めたようだった。

 

「なにか話してんのか?」

 

そう思っていると、仮面の男が仮面とマントを投げ捨て、踵を返し森の中に飛んでいく。

その背中に今度は2本のメテオビームが迫るが、それをホウオウとルギアが受け止めるとマシロの前に立ち塞がった。

あれじゃ、マシロの奴は動けねぇな。だったら、オレが奴を追うぜ!

 

「逃がすかよ!!」

 

オレは逃げ出した背中を追って森の中を突き進む。相手は森の中に逃げ込んで安心していたのかその背中にスグに追いついた。

 

「あの小娘が追いかけてきたのは計算外だが、あの2体なら易々と突破できまい。」

「そうかもな。だが、マシロと話してたお陰でテメェに追いついたぜ?」

「ム?貴様は・・・。」

「ようやく素顔が拝めたぜ、ジムリーダーのヤナギ。マシロの予想はバッチリ当たってたな。」

「・・・ウバメの森、いかりの湖、セキエイ。何度も敗れながらも立ち向かってくる。その諦めの悪さに敬意を評し、名を聞いておこう。」

「オレの名か?オレはワカバタウンのゴールドだ!よーく覚えときな!!行くぜ、エーたろう!」

 

ヤナギに向かってこうそくいどうで向かっていくエーたろう。

 

「みだれひっかきだ!」

「デリバード!」

 

それをデリバードが氷で出来た爪でエータロウをはじき返す。氷の爪か、それなら!

 

「バトンタッチ!ウーたろう、けたぐり!」

「ム!?」

 

エーたろうと入れ替わったウーたろうが、けたぐりで氷の爪を砕くと、デリバードが仰け反って後退する。

 

「ならば、凍りつかせるまでだ。ふぶき!」

 

距離を取ったデリバードがふぶきを放つ。が、オレはこの光景に見覚えがあった。

 

この状況、シルバーの奴と特訓してた時と全く同じじゃねーか!あんにゃろう、こういう事態も想定してオレと戦ってたってのかよ!

 

でも、それなら特訓の時と同じように!

 

「ふぶきを貫け!ばくれつパンチ!」

 

バトンを受け取った事で速度の上がったばくれつパンチが、デリバードのふぶきを貫きデリバードをぶん殴った。

 

「何っ!?」

 

ヤナギは驚いた声を上げるが、デリバードはそのまま木に叩きつけられ地面に倒れ込む。そして、ウーたろうが氷の体を押さえつける。

 

「へっ!マシロの特訓は伊達じゃねぇってことだ!それに、まだ終わりじゃねぇぜ!マンたろう、キマタロウ!」

 

オレの頭上で、マンたろうがキマたろうを乗せて周囲を照らしだす。

 

「これは・・・、にほんばれか!」

「その通りだ!そして、最後はバクたろうの炎がその氷の体を溶かし尽くす!車イスなんかに乗ってんだ。その体がなけりゃ、満足に動けねぇんだろう?」

 

そして、バクたろうが氷の体をどんどん溶かしていく。

 

「さぁ、観念しな。年貢の納め時だぜ!」

「ぐおおおぉぉぉ!!」

 

マシロの特訓のお陰で火力の上がったバクたろう。さらに、にほんばれで強化され、ヤナギにはもう打つ手はない・・・。そう思っていた。

 

「・・・まさか、貴様ごときに出す事になるとは思わなかったな。」

「なんだと?」

 

そう言ってヤナギは1つのモンスターボールを構える。そして、それが開いた瞬間、周囲を支配していた熱気が一瞬で冷気に包まれ、ウーたろうが凍りつく。

 

な・・・!にほんばれで強化されたバクたろうの火力を超えるだと!?

 

「紹介しよう、ラプラスのヒョウガだ。そして、私の切り札でもあり、目的そのものだ。」

「目的そのもの・・・?どういうことだ!?」

「おしゃべりをしている暇があるのか?」

「ッッッ!!」

 

そう言うと、ラプラスの放つ冷気はどんどん強力になっていき、いつの間にか周囲を凍りつかせ始めた。

そして、終いにはバクたろうすらも少しずつ凍りつかせる。

 

「マジかよ!?」

 

オレが声を上げた瞬間、何か大きな物が墜落したような轟音と、地響き。

 

「今のは・・・。」

「まさか・・・!?あの2体のどちらかがやられたというのか!!時間がない、こうなったら!!」

 

ヤナギは手に持ったモンスターボールに、何やら細工を施していく。そして・・・。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「完成だ!これで私は過去に戻り、あの時を取り戻す。・・・その前に、ゴールド。君とはここでお別れだ。」

「ちっ・・・くしょうが・・・!!」

 

ヤナギの放つふぶきは凄まじく、バクたろうの後ろにいるはずのオレやキマたろう達も少しずつ凍っていく。

バクたろうでさえ既に半分凍りついている。

 

クソったれ!マシロの特訓でパワーアップしても、まだこれだけの力の差があんのかよ!!何か、何か手は・・・?

 

そう思って周囲を見渡した時、ふぶきに煽られる野生のピカチュウ達が視界に入る。しかも、大事そうにタマゴを抱えている。

 

「テメェ、関係ねぇ野生のポケモンまで・・・!」

「構わん。些細なことだ。」

「ざけんなああああぁぁぁぁ!」

 

オレはバクたろうの後ろから飛び出すと、ピカチュウとそのタマゴを抱えふぶきから守る。

 

「そうか、そのポケモン達を守ると言うのか。バカめ、そのまま凍りついてしまえ。」

 

ヤナギの言葉が聞こえるが、それに反応する程の余裕はない。

バクたろうの炎に守られていても少しずつ凍っていく程の冷気だ。そいつは、バクたろうの後ろから飛び出したオレを一瞬で凍りつかせていく。

 

ここまでかよ・・・。

そう思った時、オレを襲う冷気が少しだけ弱くなる。

 

「何が・・・。」

 

と、後ろを振り返ると、野生のポケモンを抱えるオレを庇うよに、ニョたろうとエーたろうがオレの背中を庇っていた。

 

「ニョたろう、エーたろう!お前ら!!」

 

そして、ニョたろうとエーたろうはそのまま凍りついた。

 

またか・・・。ここまできて・・・、また、負けるのかよ・・・。

 

キマたろうとマンたろうも、いつの間にか凍りついている。バクたろうもほとんど凍りついて、先程までの炎なんて見る影もなかった。

 

「さて、そろそろお別れの様だな。言い残すことはあるか?」

「テメェに言い残すことなんか・・・ねェ!以上だ!」

「そうか・・・。なら、そのポケモンごと、凍りつくといい!」

 

そう言って、ヤナギがトドメを刺そうとした瞬間。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぐあああぁぁぁぁぁ!」

 

その衝撃でヤナギは氷の体を砕きながら地面に叩きつけられる。そして、空間の歪みが消える。

 

「今のは、マシロの!」

 

メテオビーム!なんにせよ、ナイスだ!

 

「ぐっ・・・。そうか、またあの小娘か・・・。どこまでも邪魔をする!!」

 

氷の体を再生させながら起き上がると、忌々しそうに呟くと、さっきよりも小さくなった体で一気に飛び去って行った。

 

「なっ!にゃろう・・・!」

 

起き上がろうとしたが、凍りついてうまく動けない。だが、腕の中のピカチュウ達は無事だ。そう安心していた時だった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

バクたろうの炎が勢いよく燃え上がると、その炎は少しずつ、オレとオレの仲間の氷を溶かしていく。

 

「これは・・・?」

「"もうか"じゃな。」

 

唐突に現れた聞きなれた声に視線を移すと、そこには育て屋の老夫婦と、釣り人のおっさんの姿。

 

「育て屋のばーさん!それに、じーさんに釣り人のおっさんも・・・。ぐっ!」

 

体の痛みに顔をしかめる。が、おっさん達もかなりボロボロ。

 

「ゴールド、大丈夫か?」

「オレに、大丈夫かって言う前に自分の心配をしろよ、おっさん。」

 

そんな様子でもオレの心配をするおっさんに思わず笑ってしまう。

 

「おお、キミがピカ達のタマゴを守ってくれたんじゃな。そんなボロボロになって・・・。ありがとう・・・。」

「へっ・・・。ボロボロなのはよくあるこった、気にすんな。それより、今"もうか"って・・・。」

「ポケモンの持つ特性と言うやつじゃ。バクたろうが、自身の危険を察知して発動したんじゃろ。」

「火事場の馬鹿力みてぇなもんか。」

 

育て屋のばーさんの話に納得すると、凍りついた仲間達の氷が溶ける。だが、1度凍りついたんだ、これ以上無理はさせられねぇ。

 

「ありがとよ、みんな。」

 

バクたろう以外をボールに戻す。

 

「バクたろう、まだやれるか?」

 

バクたろうは大きく頷く。

 

「頼むぜ!"もうか"ってやつ、あてにさせてもらうからな!」

 

そう言ってバクたろうに乗ろうとした瞬間だった。抱いていたタマゴが大きくなり、ガタガタと震える。そして。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「初めて見るポケモンじゃ。」

「ピカチュウ、じゃ無さそうだな。でも、その跳ねた前髪。親近感を感じるぜ。」

 

その小さいポケモンは、ぴょんとオレの頭に乗るとヤナギが逃げ出した方を指さす。

 

「お、ヤナギを追うってか?いいぜ、加勢なら大歓迎だ。頼むぜ!ちっさな相棒!」

 

そして、バクたろうに乗ったオレの両肩にさっき庇ったピカチュウ達が乗る。

おおう、流石に少し重てぇな。

 

「うおっと!!てめぇらも力を貸してくれるのか、助かるぜ。」

「ゴールド、オーキドから預かった手紙がある。だいぶ前に預かった物だから、戦いの役に立つか分からんが持っていけ。」

「あんがとよ!行くぜテメェら、ヤナギを止める!」

 

育て屋のばーさんから手紙を受け取ると、バクたろうは駆け出した。

その背中で、オーキドのじーさんの手紙を開く。

 

『これまでわしの元から図鑑を持って旅立った少年少女達は、それぞれ個別の能力に長けていたように思う。それは、ひとつひとつがトレーナーとして大切な能力ばかりじゃ。

わしは、「ポケモンとトレーナーとの関わり」を研究する者として、常に彼らの事に目を向けていた。

「戦う者」・・・レッド、ポケモン戦闘(バトル)の第一人者。

「育てる者」・・・グリーン、ポケモンの育成が上手い。

「癒す者」・・・イエロー、ポケモンの気持ちを読み取り癒す。

「捕らえる者」・・・クリス、捕獲(ゲット)専門家(スペシャリスト)

「代える者」と「換える者」・・・ブルーとシルバー、2人でポケモンの進化と交換。』

 

手紙はここで終わっている。どいつもこいつもクリスから聞いた名前ばっかりだがよ・・・。

 

「あぁん?あのじーさん、オレには何も無いってのか?だから手を引けってことか?わざわざ手紙でそんなことを伝えるなんてご苦労なこった。でもよ・・・。」

 

1人で1番でっけえ奴とだが戦ってる、小さい先輩の姿を思う。

 

「図鑑なんて持ってない奴だって戦ってんだ。それなのに、何の能力も無いからって尻尾巻いて逃げられるかよ!」

 

こんな手紙、燃やしちまうか。

そう思ってバクたろうの背中の炎に突っ込もうとした時、封筒に残ったもう1枚の便箋に気づいた。

 

「ん?もう1枚あったのか。」

 

『ゴールド。お前は「孵す者」じゃ。お前が手にし孵したタマゴからは、潜在能力を最大限に引き出せるポケモンが生まれてきた。いや、能力だけじゃない。お前の意志や感情をも受け継いだポケモンの誕生。おそらく、沢山のポケモンと家族のように暮らしてきたお前だから身についたお前の能力。いや、お前だけの能力じゃ。』

 

おうおうおう、えらく褒めてくれるじゃねーか!俄然ヤル気が出てきたぜ。

 

「・・・ん?まだあんのか?」

 

そして、封筒に残った最後の1枚。そこに書いてあったのは・・・。

 

「チッ、余計なお世話だっつーの!・・・お、あの背中は!」

 

視線の先、開けた所にヤナギの姿が見えた。

 

「覚悟はいいか?行くぜおめぇら!」

 

オレは頭上と両肩のポケモンに声をかけると、広場に飛び込んだ。

 

「待ちやがれええぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。