「ところで、3人だと3対3になるんですかね?」
「そうね・・・。」
クルミの疑問に、ブルーは少し考え込む。
「まぁ、あの子なら大丈夫でしょ!」
「ホントですかぁ・・・?」
更に疑問を深めながら、怪訝な目で問い直す。
「ホントホント。まだきららを出てないって事は、まだ余裕があるって事よ。」
「・・・そのきららってポケモンが、マシロさんのエースなんですか?」
「あたしも戦ってる所は1度しか見た事ないんだけどね。その時はレッドとグリーンを軽く跳ね除けてたわ・・・。それに、マシロ曰く『きららがいれば大抵の事はなんとかなる』そうよ。」
「そんなに凄いポケモンがいるんですね・・・。」
きららが眠っている事を知らないブルーは、そう言って太鼓判を押していた。
『えー・・・。予定とは違いますが、3回戦はジムリーダー連合VSマシロチャンピオン!3対3で行います!』
「3対3かぁ・・・。」
そう呟いても、私の取れる選択肢は1つしかない訳で。
「ミスタ、出番だよ。」
そう声をかけると、嬉しそうに飛び上がり私の前に飛んでくる。
ホント、バトルになるとウッキウキだね。まぁ、へそを曲げられたままよりかは全然良いんだけど。
「あとは、グロウとかぷちーだけど・・・。」
かぷちーは全然余裕そうなんだけど、問題はグロウ。ソーラービームの中を突っ込んでもらったし、かえんほうしゃも受け止めた。疲れた表情から、多分やけどもしてるっぽい。
「確認なんだけど、このインターバルで回復しちゃダメなの?」
『そうです。チャンピオンがどれだけ勝ち進めるか、という趣旨なので。回復は禁止です。』
入れ替えはオーケーって言い方から予想してたけど、やっぱりダメか。過酷なルールだねぇ・・・。というか、きららを想定したルールっぽい。
「おっけー、分かった。・・・グロウ、まだいける?」
「グォ!」
私の問に小さく頷くグロウ。まぁ、なんやかんやグロウも負けず嫌いだよねぇ。
『ホントのホントに回復禁止とか大丈夫なんですか!?』
『むしろ、禁止にしとかないとマシロに勝てるわけないでしょ!!もう4人も負けてるんだから!!』
『そうですけど・・・。』
いや、だからマイク拾ってるってば。
・・・けど、流石に過大評価すぎる。こっちはもういっぱいいっぱいだよ・・・。
「準備はよさそうね。ハガネちゃん、お願い!」
「いくそ、フーディン!」
「では、モンジャラ。いきますよ!」
ミカンはハガネちゃん。
ナツメはフーディン。
エリカが・・・、モンジャラ?ラフレシアじゃないの?
「エリカはモンジャラ?」
「ええ。モンジャラでないと、勝てませんから。」
そう言ってニコッと笑うエリカに、少し背筋が寒くなる。
エリカが笑ってるって事は、絶対何かあるよね。ジムリーダー対抗戦でヤナギに負けたと言ってもカントーの主将。油断は出来ないかな。
『ミカンさんは、ハガネール。ナツメさんはフーディン。エリカさんはモンジャラを繰り出しました!』
「グロウ、かぷちー、ミスタ。3対3は初めてだけど、お願いね!」
「グォゥ!」
「チー!」
「ーーー」
『対してマシロチャンピオン。メタグロス、クチート、スターミーの3体!・・・と言うか、顔ぶれはほぼ変わりません!』
そりゃ、3体しか戦えるポケモンがいないもん。しょうがないじゃん!!
「いきます!ハガネちゃん、アイアンテール!」
「グロウ、コメットパンチ!」
『ハガネールの鋼の尻尾に、メタグロスが鋼の拳を打ち付ける!』
打ち合う度に火花を散らし、2度3度とぶつけ合う。
「フーディン、サイケこうせん!」
「ミスタ、ハイドロポンプ!」
ハガネちゃんとグロウが打ち合うと、ナツメのフーディンが動き出し、それをミスタのハイドロポンプで受け止める。
『フーディンのサイケこうせんと、スターミーのハイドロポンプがぶつかり合う!これは・・・!完全に互角!互いに1歩も譲りません!』
「おぉ・・・、流石ジムリーダー。」
「フッ。褒めている暇があるのか?」
「モンジャラ、つるのムチ!」
「ッッ!かぷちー、つるぎのまい!」
他に気を取られている間に、近づいていたモンジャラがかぷちーにつるを伸ばしてくるか、それをステップを刻んで躱していく。
「そうくると思ってましたわ!モンジャラ、手を緩めないで!」
『これはすごい!つるのムチを躱したクチートに向かって、更に1本、2本と、どんどんつるを増やしていきます!そして、クチートはそれを踊るようにして躱す!躱し続けます!』
かぷちーが躱す度に、かぷちーの横をモンジャラのつるが通り過ぎ、いつの間にか、かぷちーの周りは躱したつるに囲まれていた。
「さあ、モンジャラ!からみつきなさい!」
そして、かぷちーの周りのつるが、一斉にかぷちーに絡みついた。
「かぷちー!?」
『これは・・・!躱したと思っていたつるが、一斉にクチートに絡みつき、その動きを封じています!これでは、さっきまでの踊っているかの様な動きは出来ません!』
モンジャラのつるは、かぷちーの動きだけじゃなくて、大顎も開けないように上から巻き付き、開閉をも封じている。
「やられた・・・。だからモンジャラを選出したんだね。」
「言ったでしょう?モンジャラでないと、勝てない、と。そのまましめつける!」
身動きが取れないかぷちーを、モンジャラがしめつけていく。
このままじゃ、まずい!
そう思った時。
「フーディン、かなしばりだ!」
「ミスタ!?」
ミスタに助けてもらおうと思ったが、先に動けないようにかなしばりをかけられる。
「それなら・・・グロウ!」
「行かせません!すなじごく!」
今度はグロウの周りをすなじごくで取り囲み、グロウの動きを封じる。
『すごい連携です!クチートの動きを封じたのと同時に、他のポケモンの動きを封じ、助けることが出来ないようにしています!こうなると、自力で脱出するしかないと思われますが!』
「・・・この連携、最初から狙ってたの?」
「そうです。マシロに勝つなら、最初に狙うべきなのはどのポケモンか・・・。そう考えた時、あなたが私を頼ってくれた時の言葉を思い出しました。」
ーーーー
「かぷちー、元々体が弱いから技の打ち合いになると不利なんだよね・・・。何かいい戦い方ないかな?」
ーーーー
私が初めて負けた戦いの後、ミカンにポケモンバトルを教わってた時に分かった事。
グロウは技と技のぶつかり合いになっても押し負ける事は少なかった。けど、かぷちーは技の押し合いになると必ず負ける。
「だから、相手の攻撃を全部躱す。技が出る前に潰す。一撃で終わらせる。その戦い方が出来るように、つるぎのまいを教えてくれたんだったよね。」
「そうです。だから、1番打たれ弱いかぷちーを最初に倒す事を考えました。」
「だからモンジャラ、ね。」
なるほど。動きを封じて、大顎も使えなくする。完全にしてやられた形だね。
こうなると、一か八か。賭けるしかないか。
「確かに、ここまでは完全にしてやられたね。でもね・・・」
初めて負けた時から、ミカンとエリカに戦い方を教えてもらった。
それから、四天王と戦って、シロガネ山でも戦って、ジョウトのジムリーダーや仮面の男。色んな相手と戦ってきたんだ!
「かぷちーも強くなったんだよ!」
そう叫んだ瞬間、かぷちーの大顎が炎を纏う。
「かぷちー、全力でほのおのキバ!その場に叩きつけて!」
かぷちーが力を振り絞って、全身を回転させながら炎を纏った大顎を地面に叩きつけると、かぷちー自身ごと周囲のつるを焼き払う。
ただでさえ、ほのお、かみなり、こおりのキバは体の弱いかぷちーに負担が大きいから、あんまり使ってこなかったのに・・・。更に無茶な使い方させちゃったなぁ・・・。
『ここでクチートが炎を纏い、無理矢理モンジャラのつるを焼き切ったぁ!!』
「でも、これで抜け出せた!」
ここから、反撃開始だよ!
そう思った瞬間。かぷちーの後ろにフーディンの姿が現れる。
「いや、想定通りだ。」
「嘘でしょ!!ここまで予想してたの!?」
「これで1抜けだ。サイコキネシス!」
「ッッ!ふいうち!」
フーディンの放ったサイコキネシスと、咄嗟に放ったふいうちは、かぷちーとフーディンを互いに吹き飛ばす事になった。
「かぷちー!?」
「フーディン!!」
『フーディンのサイコキネシスが決まると思われましたが、クチートも最後の意地を見せたのか!?互いに吹き飛ばされましたが、その後どちらも動きません!!これは、両者戦闘不能のようです!』
2体が埋もれた場所の砂埃が晴れていくと、そのまま動かないかぷちーとフーディン。
「こっちはまだ終わってませんよ!ハガネちゃん、アイアンテール!」
「ッ!グロウ、てっぺき!」
すなじごくに閉じ込められているグロウは、外からの攻撃を受け止める。
「そこです!かみくだく!」
そして、受け止めたまま動けないグロウをそのままハガネちゃんの顎が挟み込み、地面に叩きつけた。
「グロウ!?」
『今度はハガネールの顎が、メタグロスを捉えました!そして、こちらもこれで戦闘不能のようです!』
ハガネちゃんがグロウの上から退くと、そこには戦闘不能になったグロウの姿。
「流石のグロウも、連戦の後だと耐えられなかったようね。」
「そうみたいだね。やっぱりジムリーダーは強いなぁ・・・。でも、これで1対1かな?」
つるが焼き切られたモンジャラを横目にミカンにそう言うと、エリカはフッと笑う。
「まだですわよ。モンジャラ、せいちょう!」
『エリカ選手のモンジャラ!つるが焼き切られて戦闘不能かと思われましたが、割れた天井から差し込む日差しを受けてみるみる成長し、あっという間に先程までと変わらない姿に!!』
「さあ、これで2対1ですわよ!」
「エリカの想定では3対1だったんだがな。」
「まぁまぁ、それだけマシロが強いってことですよ。」
「かぷちーの真後ろにテレポートするからだよ。」
「離れた位置からだと、躱されるだろ。」
フーディンがやられて悔しかったのか、悪態をつくナツメをミカンがなだめる。
あそこでフーディンがやられるのは想定外だったみたい。
「まぁ、想定外なのはそれだけじゃないみたいだよ?」
「え?」
エリカが聞き返した瞬間、キーンと何かが凍りつく音が聞こえた。
『これは!?元気になったと思われたモンジャラが、一瞬で凍りつきました!!』
「あら、いつの間に・・・。いえ、フーディンが倒されたんですもの、当然ですわね。ミスタ、お見事です。」
『いつの間にか自由になっていたスターミーが、モンジャラを一瞬で凍らせたようです!この冷気、まるでヤナギさんとのエキシビションマッチを思い起こします!』
「これで、1対1だね。。」
「そうみたいね。でも・・・、ここまで、ですかね。」
「え?」
「降参です。」
そう言うと、ミカンはハガネちゃんをボールに戻す。
『ここでジムリーダー側、降参です!相性を考えた結果でしょうか・・・?』
「こっちは3人。そのうえ、対策までしたのに1対1に持ち込まれたのよ?ここまでやられちゃ、わたし達の負けですよ。それでいいですよね?」
「そうですわね。」
「残った1人がそう言うなら仕方あるまい。」
「それに・・・。ハガネちゃんで、ミスタに勝ったことないのも。」
振り返りながら問いかけると、エリカは笑いながら。ナツメは腕を組んで頷く。・・・ナツメは若干不服そうだけど。
そんな様子で3人は舞台をおりていく。
『決まりました!チャンピオンVSジムリーダー連合は、2体のポケモンが戦闘不能になりながらも、チャンピオンの勝利です!ジムリーダー連合も、ジムリーダーとしての意地を見せて、2組のトレーナーが倒すことすら出来なかった3体のうち、2体を戦闘不能にしました!!』
「・・・こう言われると、オレ達が弱いみたいじゃねーか。」
「・・・事実だ。」
「そうなんだけどよ!・・・釈然としねぇ。」
「オレもまた鍛え直さないとな・・・。またシロガネ山にでも行ってみるか。グリーンも行かないか?」
「オレはジムリーダーとしての仕事がある。」
「あ、そうか。」
「だったら、オレもついて行っていいっスか、レッド先輩?」
「いやいや、急に何言ってるのよゴールド。すいません、この人空気読めなくて。」
「んだとぉ?」
「いや。全然いいよ。それじゃ、一緒に行くか。」
「さっすが先輩、話がわかる!ほら見ろクリス、大丈夫だっただろ?」
「それは、たまたまでしょ。あなたはいつもそうなんだから・・・。」
「アハハハ・・・。」
なんだか、図鑑所有者組が賑やかだなぁ・・・。イエローが置いていかれてる気がするけど。
「それじゃ、あたしで最後かしら?」
そう言ったのは、いつの間にか降りて来ていたブルー。
「時間的には、少し余裕がある。って事は、それだけ、予定よりも早く終わった・・・。やっぱりマシロは強いわね。」
「まだあるの?こっちは満身創痍なんだけど・・・。」
「え?まだきららがいるじゃない。」
「いや、きららはエネルギーを使い果てして寝ちゃってるよ?」
「嘘!?それじゃ、3体だけでエキシビションマッチを!?あー、もう・・・。そういう事は先に言いなさいよ・・・。」
「先に言わなかったのはブルーでしょ・・・。」
そういう事なら、こんな急に生放送なんてやらなかったのに・・・。と、なにやらブツブツと呟き出す。そして、顔を上げたブルーは最初に謝ってきた。
「ごめんなさい。そんな事ならもっと猶予を取れば良かったわね。」
「まぁ、次で最後でしょ?ミスタなら頑張ってくれるよ。そうだよね?」
そう言うと、嬉しそうに飛び跳ねるミスタ。
少し前までそっぽ向いてたのはなんだったのやら。
「こんな感じだから、あまり気にしなくていいよ。・・・流石にまた同じことはやりたくないけど。」
「あなたがチャンピオンになったのと同じ様な偉業があれば、あふかもね。フフッ。」
笑われてるんだけど、もしかしてまだ何かあるの?ないよね?
『さぁ、こちらで用意されたトレーナーは次で最後!カントー図鑑所有者、ブルー選手VSマシロチャンピオン。泣いても笑っても、これが最後の戦いです。』
大丈夫、解説の人も最後って言ってる。いや、最後じゃなくても、ミスタしか戦えるポケモンがいないんだけどね。