サファイアの訛りが難しい。
あれから2年。
今はエリカのお屋敷に居候中。いつもの縁側でのんびりぐで~っと伸びている。
というのも、あの生放送のお陰で私は有名人になってしまったようで、ブルーとあっちこっちに旅行に行っても「サインください!」「バトルしてください!」「一目惚れです!」なんて色んな人が群がってくるようになった。
お陰で旅行も楽しめないし、人混みが鬱陶しいし、ブルーにも迷惑がかかるからって、旅行はご破産になった。別れ際、「レッドが優勝したときでも、ここまでじゃなかったわよ・・・。なんか、ごめんなさいね。」って謝られたのはこっちも申し訳なかった。
「謝られるぐらいなら、あの時逃げたほうがよかったなぁ・・・。」
「ありあら、お疲れですね。」
「あ、エリカ。・・・どこに行ってもチャンピオン、チャンピオン。嫌になっゃうね。」
「フフッ。それだけ人気ってことですよ。女性で身長が低くてもチャンピオンになったんですもの、注目の的というやつですね。」
「やめてよ・・・。150は超えた、はず・・・。」
と、口では否定しても世間的にはどうやらマスコット的にも見られているそうだ。
女性でもチャンピオンになれる、小さくてもチャンピオンになれるというものは、世間的にも大きな影響を与えたらしい。
まぁ、お陰で私の気が休まるときはほとんどなくなったんだけど。
エリカのお屋敷にいるのも、「エリカに勝てればチャンピオンとバトルできる。」といった条件を盾にのんびりするため。エリカに認められてバッジを手に入れるトレーナーはそれなりにいるようだけど、エリカを倒すチャレンジャーってのは今のところは現れていない。
いないんだけど、何事も例外はいるもので。
「それに、野生の前チャンピオンがやってくるんだよねぇ、ツンツン頭の下っ端を引き連れて。」
「大人気ですね。お陰で今日もジムは大盛況ですよ。」
ポケモンリーグの予選免除という新しい制度も相まって、毎日のように人が押し寄せている。
「それにしても、あの生放送の影響がこんなにあるなんてねぇ。」
「そうですね。あの事件で有耶無耶になったエキシビションマッチもを、改めて開催していただく形になりましたから。」
「でも、組み合わせがあんなに偏るとは思わなかったけどね。」
あの後、トーナメントの組み合わせはくじ引きで決めた結果。
Aブロックが、ミカンチーム、ハヤトチーム、シジマチーム、マツバチーム、アカネチーム。
Bブロックが、ブルーチーム、イブキチーム、ゴールドチーム、レッドチーム、ナツメチーム。
何故か図鑑所有者がグリーン以外Bブロックに集まるというね・・・。どうせならジムリーダーと図鑑所有者どちらが強いか、ってな感じの方が盛り上がりそうなのに。誰のくじ運が悪かったんだろうか?
・・・あれ、もしかして私?
なんやかんや、ロケット団に四天王、仮面の男と全部の事件に顔を出してるし。
・・・いや、それを言ったらエリカもじゃん。と言うかトーナメント参加者、大体関係者だよ。そう考えたら、むしろ偏る方が自然なのかも。
「しかし決勝が、マチスのいるチームとナツメのいるチームになるとは思いませんでした。」
「そうかな?あの2人って他のジムリーダーより頭1つ抜けてると思うんだけど。」
「確かに、強さという点では他の方より優れている所はあります。ですが、チーム戦となれば純粋な強さだけでは勝てないものです。」
「あー。そう言われると、妙に息が合ってたね、特にマツバとマチス。」
あの2人、私の知らないところで何かあったのかな?なんというか、互いの事を分かりあったような動きだったし。
その結果、優勝はマツバとマチスの2人がもぎ取った。
「ま、あのメンバーの中で1番運が良かった、とも言えるかもしれないけどね。あの2人がミカンチームに当たったら絶対勝てなかっただろうし。」
「運も実力のうち、と言いますよ。」
「そうだねぇ。」
それは身にしみてわかる。
私だってきららに会わなかったら、未だに貧弱体質引きこもり生活だったかもしれないしね。そう思いながら、庭先でグロウの上で日向ぼっこをしているきららを眺める。
「ところで、今回はいつまで滞在する予定で?」
「特に決めてないかなー?エリカのお屋敷は居心地がいいから。」
「他のジムはそうでもないのですか?」
「基本的にはジム、だからね。ここまでのんびり出来る屋敷なんてないし・・・。」
ブルーと別れてからも、どこにいても人が集まってくるものだから1箇所に長期滞在が出来なくなった結果、今みたいに地方を回りながらジムにお世話になる形に落ち着いた。
なんだかんだで互いにメリットがあるしね。ジムは人が集まる、私は楽ができる。
・・・まぁ、ナツメには追い返されそうになったけど。
あれはいつだったっけなぁ・・・。
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その日はリニアが開通したからって、意気揚々と乗り込んだ日のこと。
リニアが開通したからって乗るんじゃなかった・・・。
どんなものかと乗ってみたものの、有名人になった私に気づいた乗客達がドンドン集まってきてマトモに身動きすら取れなくなった。
出口のない所で群がられると逃げられもしないから、ヤマブキについた途端ナツメのいるジムに駆け込む羽目になったよ。ジムに入ったら、待ち構えていたようで、ナツメが苦虫を噛み潰したような顔で仁王立ちしていた。
「帰れ。」
「流石エスパー、来るのが分かってたんだ!ちょっと助けてよ!」
「知らん。」
冷たくあしらうナツメを無視して、後ろの人たちに声をかける。
「ナツメに勝てたら相手になってあげるから、頑張ってね!」
「あ、おい!!」
そう言って勝手に事務の奥に駆け込む。
すれ違いざま、よろしく!って肩を叩いておく。
ナツメには、その日のうちに追い出された。
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「ジムも色々あるよね、って話。」
「そうですか・・・。」
うーん、と伸びをしながら話を終わらせる。
ここにいれば、居心地はいいんだけどエリカの負担も大きくなるから、ここに居続ける訳にはいかないよねぇ。
庭先でのんびりしているグロウ達を眺めると、ふと、ホウエンで言われたことを思い出した。
『ダンバルがメタグロスに進化した時には、力を貸してもらえるかな?』
そういや、ダイゴさんが力を借りたいって言ってたっけ?
あれから大分経ってるけど、ダイゴさん覚えてるかな?
私は忘れてたけど。
「・・・決めた!明日出発するよ。」
「今度は随分と急ですね。」
「うん、約束があるのを思い出して。ホウエン地方に行こうと思う。」
「それはまた、遠い所の約束ですねぇ。」
「そうそう。だから、善は急げってね!」
それに、遠くに行けばこの有名税からも開放されるかもしれないし。
「それなら、今日は豪華にしないといけませんね。」
「え、ホントに!?ありがと〜!!」
「ええ。」
その日の夕食は、とても豪華なものが並んだ。
そして、人目につかないように朝早くからひっそりとエリカの屋敷を抜け出すと朝一でホウエン行きの船に乗り込んだ。
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「船旅も久しぶりだね。きららはあんまり好きじゃないって言ってたけど。」
『ふね、おそ〜い。』
デッキの手すりにもたれながら、久しぶりの船旅を堪能する。幸い、船の上だと私に話しかけてくる人はいないみたいで、のんびりきららとお話ができる。
「そういえば、ホウオウと戦ったあと1週間ぐらい眠ってたよね?その、キラキラしたエネルギー・・・?ってやつ、そんなに消耗したの?」
『きらきらしたえねるぎーはたくさんあるから、ほとんどへってないよ?でも、ほしからもらったえねるぎーはすぐになくなるんだー。』
「星から貰ったエネルギー・・・。ミスタがメテオビームを使うときに集めてるやつかな?・・・ん?それじゃ、キラキラしたエネルギーってのと、星から貰ったエネルギーの2種類あるの?」
『そうそう!きらきらしてるエネルギーだけになると、なんかばーん!!ってはじけそうだから、おきていられないの。』
ばーんってはじけそうって、爆発でもするの?まぁ、あの威力を考えたらそれぐらいの危険性はあるか・・・。
キラキラしたエネルギーってのは、相当あぶないものだったらしいけど、普段は星のエネルギーでバランスを取ってるって感じなのかな?
それを、戦いで消耗するとバランスが崩れてやばくなると。どうしようもないときは眠ることでどうにかしてるってことかな?
「りゅうせいぐんを使うとすごく疲れるのは、そのバランスがかなり崩れるってこと?」
『そうかもー?りゅうせいぐんは、ほしのえねるぎーちょっとだけつかって、きらきらしたえねるぎーをたくさんつかうの。それで、きらきらしたえねるぎーをつかうのはすごくつかれるんだー。』
なるほど、りゅうせいぐんを使うとすごく疲れるのはその為か。
「それじゃ、他の技はキラキラエネルギーを使ってるの?」
『めておびーむは、いっぱいのほしのえねるぎーにきらきらしたのをすこしたすかんじ?』
「ふむふむ、りゅうせいぐんとは逆って感じ?」
『そうそう!』
なるほど、りゅうせいぐんはキラキラエネルギーを大目、星のエネルギーを少なめに使っう。
メテオビームは、キラキラエネルギーが少なめ、星のエネルギーを大目に使う、と。
今まで、りゅうせいぐんはここぞのタイミングでしか使わなかったけど正解だったみたい。
「ってことは、はめつのねがいは?」
『きらきらしたえねるぎーをばーん!ってしてる!』
「おぉう、結構危ない技だったんだねぇ・・・。」
と、そんな話をしていると見えてきたのはカイナシティ。そろそろ降りる用意をしないと。
きららのことが分かったような分からなかったような感じだけど、元々不思議なポケモンだったから今更だね。
「それじゃ、行こっか。きらら。」
『は~い!』
とりあえず、せっかくホウエンに来たんだからサファイアとオダマキ博士に挨拶してから、ダイゴさんを探そうかな。どこに居るか分からないけど、石の洞窟に行けば案外簡単に会えるかも。
それに、石の洞窟はかぷちーの里帰りにもなるしちょうどいいや。
2年前、テレビで見たチャンピオンのエキシビションマッチ。そこには、あの時ボク達を助けてくれた名前の知らないトレーナーの姿があった。
『これは・・・!!オーダイルが繰り出す左右からのきりさく攻撃を、クチートが大顎を使って逸らしています!まるで踊っているかのようです!』
そして、その時のクチートの戦う姿に目を奪われる。舞うように躱し、一瞬のスキをつく。
「あの日、ボクもこんな動きができたら・・・。」
あの子を怖がらせることはなかったのかもしれない。
ボーマンダに襲われたあの日、名前の知らない女の子を守ったはずだった。だけど、結果としてボクはあの子の心を傷つける事になった。
その後、真っ白な髪の女の人に助けてもらったけど、助言のような事を言うと名前も告げづに去っていったあの人。
その人が今、チャンピオンとしてテレビの向こう側にいた。
「マシロさん・・・か。」
あの日から、その背中を追い続けてバトルの腕を磨きながら、コンテストにも出場してきた。
でも、父さんにはボクの考えは理解できないようで「お前には才能がある。」なんて言われてきた。
あれから2年。
父親に理解されない事を理解したボクは、ホウエン地方に引っ越した日、家を出ることした。
そして・・・。
「戦う力を持っているかっていうのと、それを積極的に使いたいかってのは、また別の問題なんだよね。」
そう呟いて、ボクは秘密基地を後にする。
助けてくれた事には感謝するけど、ただ力を振るうだけならあの時と変わらない。それじゃ、意味がないんだよね。他人を怖がらせる様な力なら、要らないんだ。
「だから、みんな。ホウエン地方ではあまりバトルはしないように。せめて、この地方のコンテストを制覇するまではね。」
元々コンテストを制覇するのが目標だったけど、あの子と競争することになったお陰で急ぐ理由も増えた。
この旅でマシロさんのような強さと美しさに少しでも近づけるかな?
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「よし!」
アイツが手紙と共に置いていった服に着替え、父ちゃんに顔を見せる。
すると一瞬、とても驚いた様子だったがすぐに納得したような顔をする。
「なんだなんだ、急にめかしこんで!?・・・そうか、ついに行くんだな。」
「うん!」
2年前、マシロさんがチャンピオンになってから強くなったあの人への憧れ。
その時の戦いは今も鮮明に思い出せる。
「ジムを制覇して、マシロさんみたいに強くなるったい!」
その中でも、一際強烈に残っているのはミスタ。
引くことをせずに、全て正面から受け止めるあの戦いは、ボーマンダから救ってくれた少年の事を思い出させる。
「行ってこい。お前の夢だ、しっかりな!」
父ちゃんはそう言ってあたしの頭を撫でてくれる。
少しだけされるがままになっていたが、スグに開放される。
「それじゃ、行ってくるけん!」
そう言って家を飛び出し、森の中を駆ける。
幼い頃から憧れたその背中に追いつくために、父ちゃんのフィールドワークを手伝って少しづつ強さに磨きをかけてきた。
それを全部、ジムリーダーにぶつけるっちゃ!