2人と別れたあとミスタに乗って海を渡り、やってきたのはムロタウンの外れにある石の洞窟。
「さてと。あの石マニアのダイゴさんがムロにいるとしたら、ここしかないよね?」
洞窟の中を歩きながら周囲を見渡す。
が、見える範囲には人っ子ひとり居ない。つまり、誰かに尋ねることもできない。
「まぁ、こんなそもそもこんなへんぴな場所、誰も来るわけないか。それよりも、かぷちー。」
歩きながらボールからかぷちーを出すと、軽く周囲を見渡す。
すると、石の洞窟だと気づいたのか心なしか嬉しそうな気がする。
「久しぶりの里帰りだもんね。ダイゴさんを探しながらのんびり歩こうか。」
そう言ってかぷちーにあわせてのんびり洞窟を歩いていると、後ろから声をかけられる。
「マシロさん?」
「あれ、サファイア?こんなところでどうしたの?」
振り返ると、そこには昨日別れたばかりのサファイアの姿があった。
「ちょっと、特訓をば・・・。」
昨日、一緒に行くのを断ったからか、少し気恥ずかしそうに頭をかきながらそんなことを呟く。
「特訓?」
「そうったい。この町のジムリーダーは、今晩しか挑戦は受けれないって・・・。でも、今のあたしの実力じゃ多分・・・負ける。」
「それで特訓、ね。」
どうやら、この町のジムリーダーは忙しいようで今晩しか挑戦できないらしい。
でも、今の実力だと勝てないからここに特訓しにきたと。
「あれ?手紙は?」
「申し訳ないけど、後回しったい。」
「あらら。」
まぁ、私もまだダイゴさんに会えてないし。もしかしたら洞窟にいない可能性もある。そう考えると、今晩しか挑めないジムの方を優先するのも仕方ないか。
そう思っていると、サファイアはおもむろに頭を下げた。
「マシロさん、お願いったい!あたしを、鍛えてください!」
「へ?」
「昨日、一緒に行くお願いを断っておきながら、あつかましいかもしれん。でも、ジムに挑戦するまで時間がないったい!やけん・・・!」
「あぁ、もう・・・!!とりあえず頭を上げてよ。」
知り合いに頭を下げられるとすごく話しづらい。
「あまり教えるのは得意じゃないけど、それでもいい?」
「・・・!!よろしくお願いします!!」
こうして、何故かサファイアの特訓をすることになった。
ーーーーーーーーーー
サファイアの手持ちは、
今はとりあえず、野生のポケモン達と戦ってもらってる。
見た感じ、野生のポケモン達との戦い方は様になってると思う。
「サファイア、野生のポケモンと戦うことに慣れてる?」
「そうたい。フィールドワークの手伝いで野山で育ったけん、野生のポケモンと戦うことは日常茶飯事やけんね。」
「なるほど。」
野山で育った、か。だから人を抱えたまま、あんな速さで走れたんだ。やけにパワフルだと思ったけど、そういうことね。
「じゃあ、今度は私の手持ちとやってみようか。」
野生のポケモンを倒した後、今度は私と戦ってもらう。
「グロウ、お願い。」
「マシロさんの、メタグロス。正面から見ると、すごい迫力ったい。・・・ちゃも、どらら!」
グロウを前にして息を呑むサファイア。それでも、怯むことなくグロウに立ち向かってくる2体。
その2体の攻撃をグロウは両腕で難なく受け止める。
「硬いっ・・・!!だったら、ちゃも!!」
どららはそのままグロウに攻撃を続ける中で、ちゃもが距離を取る。そして、その口からグロウに向かってひのこを放つ。
「グロウ、ひかりのかべ!」
そのひのこをひかりのかべで受け止めると、どららの攻撃を受け止めていた腕を振り、どららを弾き飛ばす。
「どらら!!くっ・・・。やっばり強かね!」
う〜ん、力不足かな?
この町のジムリーダーのことは知らないけど、今のままだとジムリーダーに勝つのは少し厳しい気がする。
「率直に言うけど、このままだと難しいと思うよ?」
「そげんこと、分かっとるったい!だから、こうして特訓をば・・・!!」
「はいはい。分かってるから、ちょっと落ち着いて。」
「・・・ごめんたい。」
私の感じたことを言うと、かなり焦った様子。でも、私の言葉をすぐに聞き入れる辺りはまだ冷静かな?
「私が言いたいのは、今晩無理に挑戦しなくてもいいんじゃないかってこと。後回しにしたり、もっと力をつけてからでもいいと思うけど?」
「でも、それじゃ間に合わんかもしれん!!・・・11歳でポケモンリーグを勝ち抜いた人がおるけん、あたし達は11歳になるまでに同じぐらい強くなろうって。そう約束したっ人がおるんよ。だから、あと70日と少しまでに、ジムを制覇せんといかんのよ・・・。」
約束、か・・・。約束は大事だよね。
しかし、11歳ででリーグ優勝。なんか心当たりがあるんだけど・・・。
いや、そのことは今は置いておこう。
「それ、前に言ってた競争相手?」
「ううん・・・。もう、顔も覚えてないずっと昔に遊んだ子供。でも、その日のことを忘れたことはなか。」
「だからそんなに焦ってるんだ。」
ずっと昔の約束、か。
「あたしは弱いけん・・・。青い格好をした奴らにも勝てんかった。カナズミのジムリーダーにもギリギリの所だった。ムロのジムリーダーには勝ち目すら見えてない。それでも・・・。それでもあたしは、後回しなんてことはできんね!!」
サファイアがそう叫んだ瞬間、ちゃもとどららの体を光が包む。
「これって・・・!?」
「トレーナーの気持ちに応えてポケモンが進化することがあるとは聞いてたけど・・・。実際に見るのは初めてかも。」
光が収まると、そこには姿を変えた
ゴールド達のポケモンが、うずまき島で3体同時進化したっていうのは聞いたけど。実際に見ると結構びっくりするね。
「ちゃも、どらら!!この子達が応えてくれたなら、あたしも応えてあげんとね!マシロさん、もう1度お願いするったい!」
「わかった。教えるって言っちゃったしね、やれるだけのことはやろう。」
気持ちの面ではサファイアもポケモン達も十分で、それは目の前で進化として形になって現れた。
あのままだと勝てないと思ってたけど、今ならいい勝負にはなると思う。
それでも、勝てるかどうかは分からないんだけど。
「ところで、今晩挑むジムリーダーってどんな人?」
なので、ジムリーダーの特徴を聞いてみる。基本的にジムリーダーは1つのタイプを極めたエキスパート。タイプが分かれば有利に戦える。
・・・タイプに一貫性があるって、ある意味挑戦者に対するハンデみたいなものだよね。まぁ、それをものともしないのがジムリーダーって人達なんどけどね。
「かくとうタイプの使い手で、相手の力を利用する“柔の奥義”ってのを使うったい。」
「“柔の奥義”ね。それならグロウじゃなくて、かぷちーが適任かも。かぷちー、いるー?」
辺りに声をかけると、物陰からひょこっと顔をのぞかせるかぷちー。
里帰り中だから自由に散歩してたところを邪魔するのは申し訳ないけど、少し協力してもらおう。
「ごめんね、かぷちー。少しだけこっちを手伝ってもらってもいい?」
「ちー!」
テトテトと私の足元まで歩いてきたかぷちーは、手を上げて快く引き受けてくれた。
「グロウ、お疲れ様。それじゃ、かぷちー。よろしくね。」
ーーーーーーーー
そして、日が落ちる前。
洞窟を飛び出し山を駆け下りるサファイア。
「やれることはやった。あとは、全力でジムリーダーにぶつかるだけったい!」
走りながらジム戦に向けて意気込むと、洞窟での特訓を思い出す。
「・・・でも、かぷちーには歯がたたんかった。」
どららの攻撃は全ていなされ、ちゃもの速さでも当てられなかった。
「マシロさんにはまだまだ敵わんね。・・・それでも、かぷちーのふいうちのタイミングはなんとなく掴んだったい。」
『相手の力を利用する“柔の奥義”。多分、かぷちーのつるぎのまいやふいうちがそれに1番近いと思う。だから、かぷちーの動きを体に慣れさせたらかなり勝率は上がるんじゃないかな?』
そう言って容赦なく叩きのめされた。
その光景を思い出すと、たはは・・・と苦笑いを浮かべる。
そして。
『あとは、もっとシンプルな解決策。わざわざ“柔の奥義”なんて気にせずに、遠距離攻撃を一方的に放ち続ける。こんな感じで。』
そう言うと、グロウはラスターカノンを放つと周囲の岩をどんどんと撃ち砕いていった。
「あれもマネできんね。出来るのはちゃものかえんほうしゃぐらいったい。」
それでも、遠距離で戦えないよりは全然まし。そう思ってかえんほうしゃも練習した。それでも、最終的な切り札はマシロさんを驚かせた技。
『本命の一撃を隠してふいうちを誘う、か。うん、いいね。その技はきっと、ジムリーダーを倒すのに役に立つよ。』
結局、ふいうちを誘ってまで放った一撃も軽くいなされたけど・・・。それでもマシロさんのお墨付きをもらった技。
「
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「ありがとね、グロウ、かぷちー。」
走っていったサファイアを見送ってしばらく。
洞窟の中を散歩しながらかぷちーとグロウにお礼を言う。
サファイアはジムリーダーに勝てるかな?
出来ることはやったつもりだけど、どう取り繕っても時間が足りなかった。たから、かぷちーに一発当てれそうになった技を重点的に鍛えることにしたけど・・・。
「ま、あとはサファイア次第かな。」
と言いつつも、多分勝てるんじゃないかなーとは思ってる。あのにどげりを放ったときは、少しヒヤッとしたもん。それに、数時間特訓しただけなのに伸び幅は多分ゴールド達より大きかった気がする。
まぁ、まだゴールド達のほうが強いけども。
そんなことを考えていると、ゴゴコゴと足元が揺れだす。
「わわっ・・・!!」
ふらつきながらも咄嗟にグロウにつかまると、しばらくして地鳴りは収まった。
「・・・ふぅ、収まったかな?」
周囲を見渡すと、洞窟の壁やら天井やらがミシミシと音をたてている。
うーん、洞窟が崩れたら嫌だし早く出ようか。
かぷちーをボールに戻しグロウに飛び乗ると、出口に向かって一直線に飛んでいく。
そして、洞窟を飛び出すと目の前に広がるのは満点の星空。
「おぉ、もうそんなに時間が経ってたんだ。・・・あれ?」
そして、その星の中に見覚えのある後ろ姿。既にかなり小さくなっているけど、あれは・・・。
「メタグロスの後ろ姿?ってことは、ダイゴさん!?グロウ、あれ追って!!」
こうして、洞窟を飛び出してそうそう見覚えのある後ろ姿を追いかけはじめた。
「えっ、マシロさん!?」
ん?今、誰かに呼ばれたような・・・。
でも、こんなところに知り合いなんて居ないはずだし、気のせいかな。
ーーーーーーーー
「行っちゃった・・・。急に飛び出していったから、聞こえなかったのか、急いでいたのか。」
先日見かけた憧れの人物を、またもや思わぬところ見かけたが、ルビーに気づくことなく飛び去っていった。
そして、その背中を見送るルビーの後ろに現れるサファイア。
「マシロさんは大丈夫やろうけど、アイツは無事やろかね?・・・あ。」
「ん?」
そして、振り返ったルビーとサファイアの目が合う。
「キミか。こんなところでどうしたの?」
そして何事もなく、どうしたの?なんて言ってくるルビーに対して声にならない声を上げ、その場でしばらく飛び跳ねると大声で叫んだ。
「あたしは!この!石の洞窟から!すごい地響きがしたけん!あんたが埋まってるかもしれん思って飛んできたったい!それなのにあんたは!?」
思わず耳を塞ぐルビー。
「べ、別に助けてくれなんて頼んでないよ。確かに野生のポケモンの群れに襲われて大変だったけど、ダイゴさんって人と協力してね。スマートに乗りグェ・・・!?」
「今、なんと!?ダイゴって言った!?その人はどこに!?はよ答えんね!!」
喋る途中のルビーの襟元を掴みブンブンと振り回しながら畳み掛ける。
「も、もう・・・海の、向こうに・・・飛んで、行ったよ。」
「そ、そんなぁ〜・・・。」
海の向こうを指さしながら、苦しそうに答えたルビーの襟を離すと、その場にしゃがみ込み手紙を握りしめる。
「ゴホッゴホッ・・・。全く、相変わらず野蛮なんだから。」
「あたしはその人を探してたとに、なんでアンタが・・・。」
「手紙?そういえば、ダイゴさんと同じ方向にマシグェ・・・!?」
ルビーが呟いている途中でサファイアがおもむろにルビーの襟を掴む。そして、そのまま駆け出すと崖の上から飛び降り、
「あんた!!案内するったい!!」