ポケットモンスター 煌   作:うたたねここ

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82話

 

すてられ船での戦いから数日。

ようやくカイナシティにやってきた。

 

「いやー、片付けに結構時間かかっちゃったね。マリさん、まだカイナにいるかな?」

 

あの後、燃えた木や植物を片付けて、風穴の空いた船の壁に流木やらなにやらを積み重ねて穴を塞いで、プラスル達と遊んでいたら数日が経っていた。

 

そしてようやくカイナにやってきたが、市場やらなにやらで人が多い。

 

「造船所って言ってたっけ。その辺の人に聞けば分かるかな。」

 

そう思い、適当に目に付いた市場の出店のおじさんに声をかけた。

 

「ねぇねぇ、ちょっといい?」

「あいよ!ご入用は?」

 

声をかけた店はモンスターボールを取り扱っている店。ダイブボールにネストボール、ネットボール等。それに、シンオウから仕入れたって書いてあるヒールボールにダークボール。

 

多いねぇ・・・。じゃなくて。

 

「あぁ、ごめん。ちょっと聞きたいことがあって。カイナの造船所ってどこにあるかわかる?」

「造船所なら、港の方だな。って嬢ちゃん、どっかで見たことがあるような・・・?」

「え、気のせいでしょ。」

 

ヤバい。何も考えずに声をかけたけど、色んな地方のモンスターボールを取り扱ってる店なら私のことを知っていてもおかしくはない。

 

「いや、記憶力には自信が・・・あ!!」

「これください!!3個!!」

 

咄嗟に引っ掴んだのはヒールボール。とりあえず、その場に並んでいた3個分の金額を押し付ける。

 

「お、おう。まいど。」

「それじゃ!!情報ありがと!!」

 

そう言うやいなや、手早く立ち去る。

全く、こんな人混みでチャンピオンなんて言われたらどうなるやら。ホウエン地方、血の気の多いバトルマニアとか赤いのとか青いのとかいるし。ただでさえすてられ船で時間取られたのに、余計なところで時間を使っていられないよ。

 

そんなこんなでボールを鞄にしまって造船所に向かうと、ちょうどマリさんとダイさんが造船所のレポートをしていた。

 

「カイナシティの造船所に何者かが侵入!!完成間もない潜水艇かいえん1号を奪い逃走しました。クスノキ館長のお話によると、造船所を襲ったのは赤い装束の一団だそうです。館長、現場監督のツガ氏他に、居合わせた民間人の少年も巻き込まれたという情報もあります。こちらがその映像です。」

 

近くにあったモニターに目を移すと、そこには帽子をかぶった少年。

 

・・・なんか、ルビーによく似てる気がする。

 

「この少年は侵入者度共に潜水艇に乗り込むとそのまま行方が分からなくなっています。」

 

そしてそのまま行方不明、か。って、映ってる赤いのってすてられ船で会ったマグマ団と同じ奴ら?

 

「あ、マシロちゃん!」

 

そんな事を考えていると、私に気づいたマリさんとダイさんが駆け寄ってくる。

 

「いつこちらに?」

「ついさっき。あっちもこっちも赤い集団で忙しいね。」

「あっちもこっちも?」

「少し前、私も会ったよ。追い返したけど。」

「えぇ・・・。まぁ、無事で何よりだわ。それより、今からクスノキ館長に会うからあなたも来て!あ、あなたの話も後で聞かせてね!!」

 

私の手を引いて事件の余韻で人が多い中、造船所の中を走り抜けると館長らしき人に声をかける。

 

「クスノキ館長!」

「キミは?」

「ホウエンテレビのインタビュアーのマリです。内密の話があるので、少し時間をいただけますか?」

「え?ち、ちょっと!?」

 

そう言ってマリさんは返事も聞かずに館長の腕を掴むと、造船所の奥に引っ張り込んだ。

 

そして、周囲をキョロキョロと見渡し人がいないことを確認する。

 

「突然すみません。館長はデボンのツワブキ社長から届く部品の到着を待っていた・・・。そうですよね?」

「何故、それを?」

「表向きでは野生のポケモンに襲われて部品は行方不明、となってますが本当は違う。ツワブキ社長も謎の集団に襲われたんです!」

「何だって!?」

 

 

「そのあたりの話、オレにも詳しく聞かせてくれないか?」

 

 

館長が驚いた声を上げた瞬間、物陰からなにやら聞き覚えのある声が聞こえてくる。

そして、姿を表したのは個人的にはあまり会いたくなかった人物。以前出会ったバトルマニア。

 

「あなたは!!トウカの新ジムリーダー、センリさん!!」

「え、ジムリーダー?」

「ええ。この前ジムリーダーになったばかりだけど、実力は折り紙付き!!センリさんも手伝ってくれるなら百人力よ!」

 

いや、まぁ、強いのは知ってるけどね。ジムリーダーだったかぁ・・・。

 

「ツワブキ社長が襲われたのはトウカの森で、その時は()()集団でした。今回は・・・。」

「知りたいのはそんな事じゃない!!」

 

マリさんの話を遮るように大きな声を上げると、その肩を押しのける。そして、後ろにいた私と目があう。

 

「ん、キミは・・・。」

「ア、ドウモー。」

「・・・いや、今はそんなことよりも。」

 

今度は私に絡んでくることはなく、私達の横を通り過ぎると側にあった機械を操作する。

 

「海流の流れ、あとはかいえん1号の航行データにカメラのテープ。118番道路で消息不明、か。これだけあれば十分か。」

「一体何を!?」

 

必要なものが揃ったのか、センリさんはマリさんの言葉に何も答えずに造船所をでて船着場に歩いていく。

 

「オレは息子を探している。引っ越し早々家出をしたバカ息子だ!知りたいのは息子、ルビーの足取り。それだけだ。」

「えっ?ルビー?」

 

ってことは、やっぱりあの映像に映ってた少年はルビーで、実はジムリーダーの息子で。・・・ルビーもバトルマニアに育ったのかなぁ。

 

「じゃ、じゃあ侵入者と共に姿を消した少年っていうのは・・・!?」

「邪魔をしたな。」

 

そして、水上バイクに乗り込むとそのまま水の上を進んでいった。

 

・・・聞かせてくれって言いながら全部自分で調べていったよあの人。

 

「ちょっ!?えぇ・・・。随分勝手な人ですねぇ。」

 

小さくなっていく背中をみながらダイさんが呆然としている。

 

「確かに。でも、自分の息子が家出したら誰だって心配するもんじゃない?」

「う・・・。でも言い方ってものが・・・。」

「それは同感だけどね。ま、自分の息子がどこにいるのか分からない状態なのに、ニュースにもなってないひったくりの事件の話を始められたら、苛立つのも分かるけど。」

 

ルビーの事を聞いたのに、赤とか青とか言われたらそりゃ怒鳴りたくもなるでしょ。

 

 

 

ん?・・・・・・・・・怒鳴るほど心配してるってこと?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・あれ、口は悪いけどただの心配性なパパの可能性が・・・?

 

 

 

 

「マシロちゃん、ダイ。センリさんを追うわよ!」

「えぇ!?本気ですか?」

「本気よ。あの人を追えばきっと息子さんとも接触出来るわ。」

「そうすれば、造船所を襲った組織のことも聞き出せる、と?」

「そうよ。」

 

マリさんは船着き場から歩き出すと、ダイさんが慌てて追いかける。

 

「で、でもアクア団って組織の名前も分かってるのにそんな必要があるんですか?」

「それは()()()()()()()でしょ。今回も同じ組織だとは限らないわ。思い出して、トウカの森で私達が出会ったのは青い集団。でも、今回の造船所を襲ったのは赤い集団。」

「ッッ!!2つの組織が暗躍している!?」

「そゆこと。」

「それじゃ、マシロちゃん。センリさんを追いながら、マシロちゃんが会ったっていう赤い装束の話聞かせてもらえるかしら?」

「オッケー。」

 

造船所を後にした私達は、マリさんの車に乗り込んだ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「じゃあ、マシロちゃんが会ったマグマ団って奴らの目的は分からなかったのね。」

「うん。何かを持ち出した様な事は言ってたけど。」

「とりあえず、アクア団とマグマ団の2つの組織が存在してるのはわかりましたね。」

「そうね。局からも長期取材という形で自由に動く許可ももらったし、焦らず目の前の事から追っていきましょう。」

 

運転席に座るダイさんに、助手席下のマリさん。そして、後部座席に私が座る形。

そんな中、ポワルンが少しだけ光りながら姿を変えると、ポツポツと雨が降り出し、雨脚は一気に強くなり土砂降りになる。

 

「酷い雨ですね。・・・ってポワルン!?あぶな!ちょっ、暴れるな!?」

「待って、ダイ。停めて。何だか、外に出たがってるみたい。」

 

マリさんに言われて、道の端に車を停めると外には天気研究所の看板。奥には建物の影。

 

「天気研究所・・・?それに、あれは!?」

 

ピカッと雷が鳴り、一瞬だけ空が明るくなったときに見えた。天気研究所の屋上、胸ぐらを掴まれたルビーと、ルビーを持ち上げるセンリさんの姿。

 

「あの少年、防犯ビデオに映ってた・・・!!ってマシロちゃん!?」

 

それが見えた瞬間、私は車から飛び出す。

 

「行ってくる!ミスタ!」

 

そして、ミスタをボールから出すとその背中に飛び乗った。

 

 

ーーーーーーーー

 

マシロが天気研究所にくる少し前。

 

潜水艇から逃げ出したルビーは、道中で出会った海パンさんと一緒に、天気研究所に逃げ込んでいた。

 

「ザングースとハブネークから逃げる一心で飛び込んだけど、誰もいない。無人なのかな?」

「夜だからだろ?気象の記録は機械が勝手につけてるらしいぜ。」

「へぇ~。・・・あれ?ZUZU(ズズ)?」

 

海パン男と話していると、姿が見えなくなったZUZU。その姿を探して周囲を歩いていると足元にポロックが落ちている事に気づく。

それを拾いながら追いかけていくと、どんどんと屋上に続いていく。

 

「なんでこんなに・・・?しかも、ZUZUの好きな味に調合してある。まるで、ボクが作ったポロックみたいだ。」

「そうだ。お前の作ったポロックだ。造船所でばら撒いただろ?それを拾ってきた。」

 

ポロックを拾いながら歩くルビーの背中に、低い声がかけられた。

その声はルビーがよく知る、そして今1番会いたくない人物、センリの声。

 

「なんで、ここに・・・?」

「親をなめるな。お前の行動など何もかもお見通しだ!」

「グッ・・・!!」

 

そう怒鳴ったセンリは、ルビーの胸ぐらを掴み上げる。

 

「離・・・せ・・・!!」

「離せだと!?親に向かって何だその口の聞き方は!?」

 

怒鳴るセンリをZUZUがなだめようとするが、直ぐ側のヤルキモノに押しのけられる。

 

「どれだけ怒られてもいい、その覚悟ができているから。」

 

「家出なんてバカなマネをしたんじゃないのか!?」

 

バキッ、と掴み上げたルビーを殴り飛ばし、階段の下に突き落とす。

 

「お、おい!?大丈夫か!?」

 

ルビーの姿がないことに気づいて周囲を探していた海パン男が、突き飛ばされたルビーに気づくと慌てて駆け寄り声をかける。

 

「とうした?文句があるならかかってこい!!」

「あわわわわ、なんだあの超こえぇ人は!?」

 

そして、屋上にいるセンリを見てビビった声を出す。

 

「ボクの、父です。家出中のところを見つかっちゃって・・・。」

「連れ戻されそう、ってわけか。こういう時はサッサと謝っちまえ!あんなに、こえぇんだ、それがいい!!」

 

(そう、ボクには今3つの選択がある。1つは海パンさんの言うようにごめんなさいをすること。2つ目はこの場をやり過ごして逃げる。そして3つ目・・・っっ!!)

 

「ケッキング!!」

「うわぁぁぁ!!」

 

考え事をしているルビーを、足元の階段ごと持ち上げる。

階段の先にいたルビーは、持ち上げられたことによって逃げ場がなくなってしまう。

 

が、そんなルビーに救いの声がかけられる。

 

「随分と派手にやってるねぇ。ルビー、大丈夫?」

「え?マシロさん?なんでここに?」

「ほら、手を貸して。っと、ミスタの上に2人は狭いね。グロウ。」

 

そう言ってルビーに手を差し出したマシロは、グロウの上にルビーを引っ張り上げる。

 

「またキミか。これは親子の問題だ。口を挟まないでもらおう。」

「私もそうしたいんだけどね。ルビーが困ってそうだから思わず、ね。」

 

下にいるセンリに軽く返す。

 

「で、とりあえず手を貸したけど状況がよくわかってないんだよね。」

「・・・行き当たりばったりですね。」

「まぁね。だからさ、ルビー。」

 

苦笑いを浮かべて、言葉を区切る。

 

「君はどうしたい?家出してまでやりたいことがあったんでしょ?このまま逃げてもいいし、なんなら私がルビーのお父さんの相手をしてもいいし。」

「それは・・・。」

 

(マシロさんが手を貸してくれるなら、今の状況も簡単にひっくり返る。でも、それでいいのか・・・?マシロさんの強さに憧れて、自分を鍛えて。もう2度と誰かを怖がらせることがないようにたくさんのコンテストに出場してきた。そして、ホウエン地方であの子と競争している途中なのに、まだコンテストも出場していないのに。それなのに、そのマシロさんに、助けてもらう?)

 

「・・・そんなこと、できる訳がないよね。」

「ルビー?」

「いえ、決めました。こんなところで逃げてなんていられない。ボクは、父さんと戦います!たから、ごめんなさい。マシロさんの手は借りません。ボクは、ボクの力で父さんを認めさせる!」

「そっか。」

「話はついたか?」

 

2人のやり取りを黙って聞いていたセンリが声を上げる。

 

「うん。マシロさん程強くない、マシロさん程美しくもない。まだまだ醜い姿かもしれないけど、今ここで父さんを超える!行くよCOCO(ココ)NANA(ナナ)!」

 

そして、グラエナのNANAとエネコロロのCOCOを繰り出しグロウの背中を飛び降りると、階段を駆け降りセンリに向かって走り出した。

 

 

 

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