「そこの海パン!!どうなってるのよ!?」
「オレだって知らねぇよ!っていうかアンタ誰だよ!?」
「階段が壊れてる。これじゃあ屋上には行けませんね・・・。」
言い合う声が聞こえて下を見ると、海パンの人とマリさんとダイさんが屋上を見上げていたのでそっちに飛んでいく。
「マシロちゃん!?あの2人はどうなってるの!!」
「壮絶な親子喧嘩中、って感じ?」
「止めなかったんですか!?」
「ルビーが覚悟決めちゃってたからね、邪魔するのも悪いし。」
「ちょっと!それで2人になにかあったらどうするのよ!!組織の情報が聞き出せなくなるじゃないの!!」
「やばそうなら止めるから大丈夫。とりあえず、乗って。」
グロウに3人を乗せると屋上の上に飛び上がる。
「止めるからって、そんな簡単に・・・。」
「おや?君達は・・・?」
そして、マリさんが話しだそうとした時その後ろから声がかけられる。
声をかけた人物はチルタリスに乗った2人組の女性。1人は飛行服にゴーグルが一体になった帽子を被り、もう1人は特徴的な赤い髪にヘソ出しスタイル。
・・・この雨の中、寒くないのかな?
「え、ジムリーダーのナギさんとアスナさん!?どうしてここに!?」
「いや、トウカジムにセンリさんが居ないからって探しに来たんだ。届けも出さずにいなくなったから、苦情が殺到してね。」
「あたしは修行でジムを空けすぎておこられちゃって、アハハ・・・。」
ナギと呼ばれた方は静かに答え、アスナと呼ばれた方はそう言って頭をかく。
ホウエンのジムリーダー、自由すぎない?
「それで、君達の方は?」
「わたし達はホウエンテレビの者で、下で親子喧嘩をしてる2人を追いかけてて。」
「オレは違うけどな。」
「親子喧嘩?」
飛行服の人は海パンの人の言葉は聞かずに、チラッと天気研究所の屋上を見る。
「あの子がセンリさんの息子、か・・・。」
「親子喧嘩って、止めなくていいんですか?」
「好きにやらせてあげてよ。いざとなったら私が止めるからさ。」
「止めるって、新人とはいえ片方はジムリーダーだよ!?そんな事できる訳・・・!」
「待った、アスナ。」
焦った声を遮ると、ナギと呼ばれた人が私をじっと見つめる。
「君がそう言うならこの場は任せるよ、マシロ。」
「うん、ありがと。・・・って、私のこと知ってるの?」
「これでも、ジムリーダーだからね。他の地方の事でも、それなりに知っているさ。」
「有名人なんですか?」
「そうだね。ジョウト・カントー地方のチャンピオン、と言えばそれなりに有名人になるのかな?」
「えぇ!?」
流石にジムリーダーは私の事を知ってるか。後ろの人は知らなかったみたいだけど。
そういや、センリさんも私の事を知らなかったね。新人だからかな?
「ま、そういう事でここは大人しく見守っててよ。」
ーーーーーーーーーー
「NANA、はかいこうせん!!COCO、アイアンテール!!」
センリと対峙したルビーは、先制とばかりに攻撃を繰り出す。が、はかいこうせんはケッキングに、アイアンテールはヤルキモノに受け止められる。そして。
「それで戦っているつもりか?その技は両方とも、オレが教えた技だっ!!」
センリの言葉と共に弾き返されるNANAとCOCOは、吹き飛びながらも体制を立て直すとルビーの左右に着地する。
「いいや、ここからだよ。ZUZU、マッドショット!!」
「む!!」
階段の下、センリの死角から雨どいを通して、センリの真横から放たれるマッドショットは意表を突き、センリ共々、ヤルキモノとケッキングを泥で固めていく。
「ぐっ!!きあいパンチ!!」
が、下半身を固められながらもきあいパンチでマッドショットを打ち返していく。
「COCO、アイアンテール!」
それを更にアイアンテールで弾き返すルビー。動けないセンリとは裏腹に、ルビーは弾き返されるマッドショットを躱すこともできる。そのお陰でダメージは少ない。
そして、土砂降りの雨のおかけで泥や水が無尽蔵に供給される。状況は少しずつルビーに傾いていた。
「ケッキング、ビルドアップ!」
だが、力を溜め込んでいたケッキングがセンリの体を固めていた泥を吹き飛ばす。そして、先程ルビーを持ち上げた階段を持ち上げ、振り回そうとする。
「しばらく大人しかったのは力を溜め込んでたから、だよね。でも、それはこっちも同じだよ!NANA、はかいこうせん!!」
ルビーの隣で力を溜め込んでいたNANAが一気にそれを解き放つ。
「ぐおぉぉぉ・・・!!」
NANAの放ったはかいこうせんはケッキングが持ち上げた階段を粉砕し、身動がとれないセンリごとケッキングとヤルキモノを飲み込んだ。
「ハァ・・・ハァ・・・。あれをまともに受けたら、流石に父さんでも・・・、え?」
息を整えながらセンリがいた場所に歩いていくと、そこにあったのは倒れたセンリの姿ではなく床に空いた大穴。
「まともに受けていたら、な。ヤルキモノ、きりさく!」
「下っ・・・!うわぁぁぁぁああ!!」
そして、下から聞こえた声と同時にルビーの足元が細切れにされ崩れ去る。
(くそっ!!階段は囮で、本命は床に穴を空けて下に逃げること!!)
「COCO、NANA!!」
「頭を冷やすんだな。ケッキング、ふぶき!」
足場が崩れたルビー達は空中で体制を立て直そうとするが、センリはそれを許さなかった。
COCOとNANAは身動きの取れない空中で氷づけにしていき、さらにルビーの体を凍らせていく。
「ぐっ・・・!!MIMI、ミラーコート!!」
そんな中でもルビーは
「自分の身は守ったか・・・。だが、そのヒンバスだけでまだ戦うつもりか?」
「だけ、じゃないよ。ZUZU!!」
ルビーが叫んだ瞬間、上から飛び降りてきたのはZUZU。
階段を引っ剥がされたことで屋上に行けなかったが、足場を崩され下の階に落ちたことで、ルビーの目の前に飛び降りることができるようになり、センリと対峙する。
「父さんが下に落としてくれたお陰で、ZUZUがここに来られるようになった。そしてZUZUは、父さんの知らない新しいボクの手持ち。」
「新しい手持ちなら、手の内が分からない。そう言いたいのか?」
「・・・時の流れは移り行けども、変わらぬその身のたくましさ。身につけたるは、不屈の心!」
ルビーの言葉と共に、その体を輝かせるZUZU。
「・・・進化か。タイミングに気づいていたのか?」
光が収まると、そこにいたのは一回り大きくなった体の
「ただの偶然だよ。でも、ZUZUが応えてくれたんだ。こんなところで、負けられない!ZUZU!!」
「ケッキング!!」
「「うおおぉぉぉおおおお!!」
2体がぶつかり、衝撃が当りに広がり建物にヒビが入っていく。が、そんな惨状を気にすることなく2人は戦いを続ける。
「グッ・・・!!」
「進化したとはいえ、ケッキング相手に力勝負は分が悪いだろう?諦めろ。」
押し負け、弾かれたのはZUZUの方。
それでもルビーは諦めない。
「まだだよ!この天気が、ボクに味方してくれる!ZUZU、だくりゅう!!」
「これは!!」
放たれたのは、センリの視界を覆うほどのだくりゅう。
「ならば、ケッキング!ふぶき!!」
が、センリのケッキングが建物を破壊しながら迫るだくりゅうを一瞬で凍りつかせる。
「そう来ると、思ってたよ!!ZUZU!!」
「ム・・・!!」
ルビーが叫んだ瞬間、ZUZUが凍っただくりゅうを叩き割りケッキングに迫る。
「ケッキングの特性は、なまけ。攻撃した後はしばらく動けない。だから屋上でも、力を溜める必要があった!」
「・・・そうだ。だが、まだこちらにはヤルキモノが・・・!これは・・・!!」
センリがヤルキモノに目を向けると、MIMIのひかりのかべによって囲まれ、身動きが取れなくなっている。
「いつの間に・・・!!」
「さっきのだくりゅうにのって、ね!これでZUZUを止められるポケモンはいない!いけっZUZU、からげんき!!」
振り下ろされたZUZUの腕はケッキングを建物の床に叩き伏せる。それと同時に、建物にピキピキとヒビが入る。
「からげんきも、オレが教えた技・・・。強くなったな、ルビー。」
「コンテストだけが目標じゃ、ないから。」
「フッ。・・・そうか。」
そして、それは2人が話している間にどんどんと広がっていきルビーとセンリの足元にまで及んでいく。
「不味いな・・・。ルビー!ポケモン達をボールに!」
「う、うん!!」
それに気づいたセンリが顔色を変えて叫び、2人が慌ててポケモン達をボールに戻した瞬間足元が崩れた。
「ぬおっ!!・・・む?」
「うわぁ!!・・・あれ?」
宙に放り出された2人が、落下すると思った瞬間。
ナギのチルタリスがセンリを、マシロのグロウがルビーを受け止める。
「やるじゃん、ルビー。」
「マシロさん・・・。ありがとうございます。」
「黙ってジムを空けたと思ったら、こんなところで親子喧嘩?」
「またあんたか・・・。」
「ハァ・・・。あっちの子は、アンタに似ず素直にお礼を言えていい子だねぇ・・・。」
ーーーーーーーーーー
ルビーが優勢かと思った戦いは、建物が崩壊したことで中断となり、地上に降りた私達は、向かい合う親子を黙って見守っていた。
「ルビー、何故誕生日を引っ越しの日に選んだか分かるか?」
「・・・え?」
「コンテストへの挑戦を許そう。・・・そう言おうと思っていた。」
そして、静かに話すセンリさんの言葉によっぽど驚いたのか、口をパクパクさせ言葉にならない様子のルビー。
驚いて声も出ないって、きっとこういう事を言うんだろうねぇ。
「お前ももう11。自分の道は自分で決めるものだ。・・・オレにはコンテストの良さはなにも分からんがな。」
「・・・父さん。」
「男が自分で決めたことなら、やり遂げるまで帰ってくるな!それと、カイナで派手にバラ撒いたらしいが、自分の道具はちゃんとしまっておけ。」
「あ、ありがとう。」
そう言ってポロックケースをルビーに手渡すと、ルビーに背を向ける。
「・・・それから、たまには母さんに連絡を入れろ。心配をかけるんじゃない。」
そう言うと、今度は何故か私の前に歩いてくる。
「君にも、礼を言う。」
「え?」
「さっき、ルビーを助けてくれただろう?・・・遅くなったが、私はセンリ。名は何と言う?」
「マシロ。」
「ありがとう、マシロくん。」
それだけ言うと、チルタリスの背中に乗り込む。
「ねぇ?コンテストの挑戦を許すつもりなら、なんで追いかけたの?放っておいても良かったんじゃ?」
「勝手に居なくなったら心配するだろう。それに、自分の口で伝えようと思っていたことだからな。」
「なら、別にこんな親子喧嘩をしなくても良かったんじゃ・・・?」
「ルビーの覚悟を確かめる為だ。」
コンテストへの挑戦を許すのなら、わざわざジムを空けてまで自分で探す必要はない。もしかしたら、特別な理由でもあったのかと思って聞いてみたんだけど・・・、そんなことはなかった。
「ちょっとルビー!!君のお父さんって、口が悪くて肉体言語派だけど、もしかして意外と子煩悩?」
「ボクも驚いてますけど・・・。どうやらそうみたいです。」
スーッとルビーの横に移動して小さい声で話していると、センリさんを載せたチルタリスが飛び立っていく。
「ありがとう、父さん。」
その背中にルビーは小さくお礼を言っていた。
「なによ、意外といい父親じゃないのよ。」
「全くだぜ!」
「でも、あれが父親だとルビーが家出したくなる気持ちも分かるよね。」
「「「確かに!!!」」」
その横で私達は妙な一体感を出していた。
ーーーーーーーーーー
「世話をかけたな。」
チルタリスに乗ったセンリが口を開く。
「全くだよ。息子を探すなら、せめて届け出ぐらいだしてくれないと。」
「タハハ・・・。ごめんなさい。」
「ハァ・・・。アスナはもういいよ。」
センリを攻めたつもりが、アスナが謝ることになってしまいため息をついた。その様子を気にすることなく、センリは言葉を続ける。
「いつから上に?」
「最初から、かな。」
「意外だな。止めなかったのか?」
「私はそのつもりだったんだけど、さっきのマシロって子に好きにさせろ。ってね。」
「あの子に言われたとしても、ナギさんなら途中で止めに入るかと思ってました。」
「・・・私も、そう思っていたさ。」
「??」
少しだけ重たくなった口調に、アスナは首をかしげる。
「アスナは気づかなかったか?あの子、あの親子喧嘩を見ながらずっとこちらを気にしていた事に。」
「え?」
「きっと、邪魔をしようとしたら容赦なく私達を攻撃してきただろう。そんな目をしていた。」
「え〜?あんな可愛い子が、ですか?」
「あの子は何者だ?」
「ジョウト・カントー地方のポケモンリーグチャンピオン。」
「フッ・・・、そうか。やはり、只者ではなかったか。」
「ハイハイ。あの子の話は置いといて、あなた達は一旦本部に顔を出してもらうよ。」
ナギは問題児の新人ジムリーダーを連れてポケモンリーグ協会本部に向かっていった。