「ユレイドル、まきつく!!」
先に動いたのはツツジ。
ユレイドルから伸びる触手がキュウコンに絡みつく。
「へぇ・・・?保守的なことを言っていた割には、好戦的じゃないか。」
「守るだけでいいとは言いましたが、倒してしまっても問題ありませんもの。」
「言うじゃないか。・・・だが、正面からの押し合いでこのあたしが負けると思ってるのかい!?」
瞬間、キュウコンの体から炎が吹き上がり、絡みついた触手を伝いユレイドルの体をも燃やしていく。
「あら、言うだけの事はありますわね。これだけの炎、アスナさんでも出せませんわよ?」
「あんたこそ、そんな悠長でいいのかい?このままだと、消し炭だぜ?」
そういう間にもユレイドルの体に炎が燃え広がり、その体がぐらりと傾く。
(正面からのぶつかり合いで負けたのなんて、アイツぐらい・・・ん?)
カガリが先日戦った白い髪の女の子が脳裏をよぎった瞬間、ユラリと倒れかけていたユレイドルの体がムクリと起き上がる。
「何っ・・・!?」
そして、そのままキュウコンを投げ飛ばすと、襖を突き破っていく。
「ここが畳敷きの民宿で助かりましたわ。ホテルのような、コンクリートや大理石の床だと、こうはいきませんもの。」
「床・・・?チッ、キュウコン!!」
カガリの声と同時に崩れた襖の奥から飛び上がるキュウコンが、ユレイドルの足元の畳を焼き尽くしていく。
そこには、むき出しになった地面に張り巡らされているユレイドルから伸びる根っこがあった。
「ねをはる、か。こいつで体力を回復していたってわけか。」
「ご明察、ですわ。」
「ハッ!好戦的と見せかけて、裏ではちゃっかりセコいことをやってんのな。流石は、ジムリーダー。食えないねぇ。」
「あなたのキュウコンだって、ほとんどダメージがないじゃありませんか。」
鼻で笑うカガリの言葉を軽く流すツツジ。
だが、今の攻撃でダメージがない事に少しだけ驚いた声を上げる。
「あの程度で音を上げるような、ヤワな鍛え方はしてないんでね。」
「それは残念ですわ。」
(それに、あの程度でやられるようじゃアイツには勝てないさ。)
「それじゃあ・・・。根っこをはって動けないアンタに、相応しい舞台を用意してやるよ!キュウコン、ほのおのうず!」
瞬間、ユレイドルどころかカガリとツツジすらも覆うように炎が吹きあがる。
自身すらも巻き込む、遠慮のない攻撃にツツジの表情は歪む。
「クッ・・・。アナタ、正気ですか!?自分すら巻き込むような炎、アナタだって無事では済みませんよ!?」
腕で顔を多いながら焦るツツジとは裏腹に、涼しい顔をしたままその場を微動だにしないカガリ。
「この程度の炎で音を上げるなんて、だらしないねぇ。・・・・・・ん?」
「「「ひえぇ〜〜!!」」」
その時、燃え移った炎が襖を燃やし、奥に隠れていた3人の人影があらわになった。
「あわわわ、おれはプログラマー!
「お、おれグラフィッカー!ちょっと寝てる間にこんな事になるなんて!!」
「ぼくはゲームデザイナー!ホウエン地方って怖い!!」
そして、3人で固まりながらガタガタと震えながら自己紹介を始める。
「まだ人が・・・!!」
「チッ・・・。ウゼェな!自己紹介なんかしてんじゃねぇよ。キュウコン!」
そう言うと、キュウコンの口にエネルギーが溜まり始める。
「不味いですわ!あなた達、早く逃げ・・・!!」
「はかいこうせん!!」
放たれた閃光は3人の方に一直線に向かってく。
「アナタ、なんてことを・・・!!」
「あん・・・?何を言ってんだ、あんな奴ら勝負の邪魔だろ?」
抗議の声を上げるツツジに対してカガリは、またもや涼し気な顔で何でもないように言い放つ。
そして。
「聞こえただろ?さっさと失せな!」
3人がいた方に声をかけた。
「え・・・?」
その様子に困惑の表情を浮かべながら、もう1度3人の方に向き直るツツジ。
そこには固まってガタガタと震える3人と、その横に空いた大きな穴。
その穴は民宿を貫通し、外への1本道ができていた。
「「「ヒィ〜〜〜!!」」」
それを見た瞬間、3人は悲鳴を上げながらその穴を駆け抜けていく。
「ハッ!みっともない連中だね。」
その背中を見送りながら、吐き捨てるカガリ。
だが、ツツジはその様子を驚いた顔で見つめる。
「アナタ・・・。まさか、あの3人を逃がすために?」
「はぁ?そんな訳ないだろ。邪魔だっただけだ。」
ツツジの問いかけに何でもない様に返事をしたカガリだったが、内心ではツツジと同じく自身の行動に驚いていた。
(チッ・・・。確かに、あんな連中助ける義理なんてないはず・・・。マシロと同じ温泉なんかに入ったからか、アイツのお人好しが移ったか・・・。)
「アナタ、お名前は?」
「・・・カガリ。」
「カガリさん。私、少々あなたのことを誤解していたようです。てっきり、目的のためなら手段を選ばない方だと思っていました。」
「誤解じゃないさ。これからアンタは、それを身を以て知ることになる。」
カガリがそう言うと、キュウコンの尻尾の先に炎が灯りキュウコンの頭上に集まっていく。
その炎はドンドンと大きくなり、次第に巨大な火球となっていく。
「あら、今度は大技ですか?ですが、私のユレイドルは常に根からエネルギーを吸い上げています。倒すことは不可能ですわよ?」
「そいつはどうかな?」
「・・・どういうことですか?」
カガリの言葉に眉をひそめるツツジ。
「気づいてないなら、教えてやるよ。アンタのユレイドルをよーく見てみな。」
「・・・っっ!!これは・・・!!」
そう言われ、ユレイドルにを見たときにようやくその異変に気付いた。
「ユレイドルが、回復していない!?どういう事ですの!?」
「分からないなら、教えてやるよ。1つは周囲を囲む炎。これが常にユレイドルの体をジリジリと焼いている。」
「てすが、それだけで回復できないなんて事には・・・。」
「1つって言っただろ?もう1つは、ある意味アンタが原因だ。」
「・・・私?・・・ハッ、まさか!?」
原因が自身にあると言われたツツジは周囲を見渡す。そしてノズパスを見た瞬間、何かに気付いたように空を見上げた。
そこには、グラードンが作り出した擬似的な太陽。
「ようやく気付いたようだね。グラードンがここに居続ける限り、あの太陽も動くことはない。そして、あの太陽によって、この大地は枯れ果てている。・・・つまり、この大地にはユレイドルが吸い上げられるものなんて、何も残っちゃいないってことさ!」
「くっ・・・!ユレイドル!!」
「遅え!!」
そして、ユレイドルに指示を出そうとした瞬間。
それよりも早くキュウコンの作り出した火球がツツジもろともユレイドルを飲み込んだ。
「きゃああああぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴と共に燃え上がる爆炎。
「いくら耐久に優れてると言っても、こんだけやれば倒れんだろ。」
炎を眺めながらそうつぶやく。
すると、遠くで足を止めていたグラードンが動き出すのが見えた。
「ん?ついでにノズパスも倒れたか?」
「・・・っっ。・・・ええ。炎が当たる瞬間、ノズパスが私を庇ってくれましたから。」
カガリの言葉に答えたのは、炎の中から姿を表したツツジ。
その姿は所々が焼け焦げていたが、体は無事の様子だった。
「お陰でグラードンは動き出すわ、服は燃えるわで大変ですわ。」
「ユレイドルもろとも燃やし尽くしたつもりだったんだがな。」
「あら?それなら、加減したのはどうしてですか?わざわざ私の足元を狙う必要もありませんでしたよね?」
「チッ・・・。根を張ったままで、また起き上がられても面倒だからだ。深読みすんな。」
「フフッ。分かりましたわ、そういう事にしておきましょう。」
「そうしろ。ついでに、本なんか持ってないでもっと周囲を見たほうがいいぞ。」
「・・・最近、他の方にも似たようなことを言われましたわ。」
ツツジの脳裏をよぎるのは、いつかのジム戦で戦った女の子。
(しかし、サファイアとは比べるまでもない程の実力でしたわね。しかし、吸い上げられるエネルギーが無いことには先に気づいていたのですから、そんなことをする必要はないことは分かっていた筈なのに。案外お人好しな性格なのでしょうか・・・?)
(チッ・・・。確かに、さっきからあたしらしくねぇ。マシロのお人好しが移ったか?)
そんなツツジの思いとは裏腹に素っ気ない態度を崩さないカガリ。
だが、カガリ自身。内心では自身の行動に困惑していた。
「1つ聞いていいですか?」
「あん?」
「なぜマグマ団に?」
「・・・さぁね。なんでだったかな、忘れちゃったよ。」
「そうですか。」
そんな質問にも素っ気なく返すカガリ。
だが、ツツジはそのことを微塵も気にすることなく言葉を続ける。
「では、もう1つだけ。・・・アナタ、きっとマグマ団には向いていませんわ。」
そして、その言葉を聞いた瞬間カガリは大きくため息をついた。
「ハァ・・・。あたしも最近、似たようなことを言われたよ。マグマ団をやめろ、ってね。」
「あら?良いお友達じゃありませんか。そのお友達、大事にしたほうがいいですわよ?」
「・・・友達じゃねぇよ。」
そう言ってそっぽを向くカガリに対して、ツツジは少しだけ笑う。
「フフッ。そうですか。」
「何を笑ってるのさ?」
「いえ?友達とは言わなくても、きっと良き関係なのだろうな、と。そう思っただけですわ。」
「チッ・・・。・・・ん?」
その時だった。ルネの方角から巨大な衝撃が走り、地面を揺らす。
「どうやら、グラードンとカイオーガの方でもなにかあったみたいだね。ったく、無駄話なんかしてたから世紀の瞬間を見逃しちまったじゃないか。」
「あら、それはごめんあそばせ?」
「心のこもったねぇ謝罪だなぁ、おい。まぁいいさ。それじゃ、アタシは行くぜ。」
ハァ、とため息を付きながら飛び上がるとカガリはそのまま飛び去っていった。
「・・・トドメも刺さずに行ってしまうなんて、本当に甘い方ですわねぇ。」
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「ふぅ・・・。妙に疲れる戦いだったな。」
ツツジとの1戦のあと、カガリが降りたのはミナモの灯台の頂上。
そこから町を、辺りを見渡す。
「しっかし・・・。大地を増やすっつってもよ、こんな枯れ果てた大地なんかを増やしても、ポケモンはおろか、人間だって住めやしないだろうに・・・。本当にこれで良かったのかよ、リーダー・・・?」
見下ろした先に広がる枯れ果てた大地を前に小さく呟くと、ルネの方に視線を向ける。そして、迸るエネルギーにため息をつくと、今度はえんとつ山の方に視線を向ける。
「ま、なっちまったもんは仕方ない。ルネからエネルギーが広がっている以上、あっちには行けないからねぇ。今は、マシロのヤツが何をやってるのか、覗きに行くとしますかね。・・・ッ、これ・・・は・・・!!」
そう言って再度飛び上がった瞬間、カガリは強烈な光に飲み込まれた。
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カガリが光に飲み込まれた同時刻。
「クッ・・・!!今の光は・・・!!ハッ、あの子は!?」
そう言って、ダイゴはさっきまで握っていたはずの少女の方を見る。が、既にそこには誰もおらず少女の手を握っていた筈のダイゴの手は、空を握っていた。
「はぐれてしまったか・・・。」
「ダイゴくん、どうするの?」
「やむをえん。心苦しいが・・・。伝説のポケモンが目覚めた以上、ここで悠長にはしていられない。行こう、フヨウ。」
「分かった。」
ダイゴと共にいるもう1人の女性、四天王の1人であるフヨウに声をかけると、それぞれメタグロスとメタングと共に飛び上がる。
「でも、これ程までに広がるエネルギーの本流。合流するのにも一苦労、だよね。」
「全くもって、その通りだ。・・・うおっ!!」
その瞬間だった。ダイゴとフヨウの側を
「ダイゴくん、今の・・・。」
「分からない。だが、このエネルギーの本流の中を突き進むことの出来る程のポケモンが手を貸してくれるというのなら、これほど心強いことはない!」
この時、ダイゴ達が目にしたのは
そして、その背に乗っていたのは・・・・・・。
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「あれ?今、誰か追い越した?ん〜・・・。流石にこのエネルギーの本流の中にいるわけ無いか。」
いやはや、それよりもこの2体がワザワザこんな遠い所まで来てくれて、手を貸してくれるなんて大感謝だね。
乗っている背中をさすりながら、心のなかでお礼をいう。
それじゃ、頼んだよ。
ホウオウ、ルギア。