紫電の女王の栄光の道のり   作:雅媛

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第一章 紫のウマ娘のトレセン学園入学
1 紫の少女の入学


 正門をくぐるとそこは異世界のようだった。

 

 広く舗装された登校路の両脇は、綺麗に選定された木々に芝生。

 正面には三女神の大きな像が金色に輝き、その像の周りは噴水になっている。

 お金がかかっていそうな設備である。

 正面に見える建物もきれいだし、両側面に見える建物も立派だ。

 

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園は、日本一のウマ娘の学園の名に恥じないぐらい立派なものであった。

 そんな豪華さに、ボクはため息を一つついたのであった。

 

 

 

 前世は日本男児だったボクが、ウマ娘に生まれ変わって早8年。

 飛び級でトレセン学園に入ったのはいろいろな理由があった。

 一番は、噂になりすぎた、というところだろう。

 

 URAが関係しない非公式レースというのは、大小さまざま、日本全国で行われているが、その中でボクが走っていたのは一等質の悪い、闇レースであった。

 表向きは、賞金が出るだけのウマ娘レースであるが、裏では賭け事が行われている、まさに違法なレースであった。

 

 参加者は中央トレセン学園崩れから、地方トレセン学園の元エースまで、様々なウマ娘がいた。

 夢破れ、しかし、走るのを諦められず、このような場に身を落とす彼女らは、みな確かに速かった。

 しかし、そんな中、すべてをぶっちぎって走り続けた幼いウマ娘がボク、ヴィオラレジーナだった。

 

 ストイックに鍛え、勝ち続けたボクは、有名になりすぎ、URAに目をつけられた。

 裏ではいろいろ交渉があったらしく、今までのことを不問にする代わりに、ボクはトレセン学園に入学することになったのだった。

 

 

 

 だが、この華々しい場所にはどうしても慣れなかった。

 

 まずは制服。かわいらしい春服であるが、どうしてもスカートが慣れない。

 生まれてこの方ずっとウマ娘だったが、どうしても前世の知識と意識が強すぎて、スカートに拒否感があった。

 そのため物心ついたころからずっとシャツにズボン、といった格好しかしてこなかった。

 裏レースのころに作ったまがい物の勝負服だって、軍服風のズボンのものだったのだ。

 ところが一転、入学したらスカートの制服しか許されないのだから困ったものだ。

 スカートの下は下着だけとか、防御力が低すぎる。

 仕方がないからスカートの下に1分丈のレギンスをはいているが、それでもやはり心もとなかった。

 

 次に周りの目が非常に気になる。

 ボクのうわさを知っているだろう子たちはひそひそ話をするのはもちろんだが、そうでなくても注目を集めているのがわかる。

 まず、年齢。

 トレセン学園は中高一貫なので、基本入学は12歳、中学1年生からだ。

 しかしボクは8歳、まだ小学校2年生ぐらいであり、ボク自身の発育がいいのを考慮してもかなり幼く見えるだろう。

 そんなウマ娘が制服に着られて入ってきたら、そりゃみな噂する。自分だってそうする。

 

 さらにこの紫の髪が余計目立っているだろう。

 染めているわけではない、地毛である。

 こういった色の入った毛色は、こちらのウマ娘たちにはまれにあるらしい。

 そもそもウマ娘たちは、金髪っぽい栗毛や、銀髪っぽい葦毛までおり、日本人にはない髪色が多く、結構カラフルだ。

 しかし、そういった決まったウマ娘の毛色から外れる、ボクのような毛色のウマ娘、通称色髪は、走らないウマ娘の代名詞だった。

 

 トレセン学園はレースのための学校だ。

 走る速さで評価される側面がある。

 そのため、走れなさそうなボクは遠巻きにされていた。

 幸い、そこまで悪辣な者はいないようで、蔭口までは聞こえてこなかった。

 

 

 

 入学式はつつがなく終わった。

 いきなり試験を受けさせられて、いきなり決まった入学のため、情報収集があまりできていなかったが、生徒会長はシンボリルドルフで、新入生代表挨拶はメジロマックイーンがしていたから、どうやら彼女と同じ学年のようだ。

 前世知識にあった競走馬の世代で考えれば、メジロライアンやメジロパーマーがいるメジロの花の87年組の世代だ。

 まあ、前世知識にあるウマ娘のアニメで考えると、学年と世代が無茶苦茶に混ざっていたので、この世界の学年もどうなっているかわからないが……

 

 まあ、なんにしろ、ボクの目標は決まっていた。

 できるだけ多く勝って、できるだけ多く賞金を稼ぎ、母を楽にさせたいというそれだけである。

 トレセン学園に入学させられたことは、予想外の出来事であるが幸いであった。

 非合法でだれも信用できなかった裏レースに比べ、こちらでもらえるお金は合法である。

 しかも、入学金やら学費やらの問題で、トレセン学園への入学はあきらめていたのだが、それが一切免除である。

 

 別世界に紛れ込んだような気分であるが、チャンスが目の前に転がってきたのだ。

 どこまでできるかはまだ未知数だが、できる限りはするつもりである。

 

 自分の入学式を見に来た母に、小さく手を振る。

 母は、嬉しそうにこちらを見て涙ぐんでいた。

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