紫電の女王の栄光の道のり   作:雅媛

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8 紫電の女王の騒乱

 天皇賞(秋)がおわってから、面倒ごとが一気に増えた。

 

 まず、メジロのおばあさまが天皇賞(秋)での裁定に異議を出すといい始めたのだ。

 確かにGⅠで初めての事態だし、おそらく孫がかわいいおばあさまが、孫可愛さに不器用な暴走をしたのだろう。

 

 ボクの好みには合わないが、初めての事態だし、異議を出すならば出せばいいとボクは思っていたのだが、マックイーンちゃんがおばあさまを説得し、黙らせたのだ。

 自分の不徳で他人に迷惑をかけたくないと。

 ウマ娘同士の話もまとまってるし、URAとの話もついている。

 これでメジロ側もおとなしくなるだろうし、話はおしまい、と思ったが、火種は一気に広がった。

 

 一番最初は、おなじみURA批判である。

 天皇賞(秋)を2000m東京で行うということになったときから、評判が悪かった。

 スタートしてからすぐにコーナーなので外枠が非常に不利なのだ。

 今回の斜行も、外枠不利だったマックイーンさんが無理して切り込んだのが原因の一つであるのは間違いない。

 この辺りはウマ娘側や生徒会からも苦情を入れており、URAも競馬場改良を約束することになる。

 

 この辺りまでは、URAとしても想定の範囲内だった。

 しかしここからさらに騒動が広がっていく。

 

 まず最初に始まったのは奈瀬トレーナー批判であった。

 ウマ娘が不甲斐ない走りをすれば、大体トレーナーが批判される。

 それはいつものことだが、今回は質的にも量的にも異常だった。

 

 奈瀬トレーナーが王子姫といわれるぐらい外見がいい一方、口数が少なく人当たりが悪いのも災いした。

 天才ともてはやされて増長しているだの、性格が悪いだの、個人攻撃まで始まり、さらにクリークさんとの恋愛騒動まで立ち上がったからもうしっちゃかめっちゃかだ。

 更にトレセン学園の一部のトレーナーまで奈瀬トレーナー批判を始めたものだから収拾がつかなくなった。

 

 それに対して、主に奈瀬トレーナーのファンらがカウンターネガティブキャンペーンとして、被害ウマ娘である二人や、マックイーンさんに抗議していたカリブソングさんの批判を始めた。ネット上に三人の悪口があふれる。

 全員が全力で相手という名の第三者を叩くものだから、どんどんエスカレートしていく。

 

 トレーナー同士での批判も始まり、さらに状況が混沌として行く。

 

 

 

 そこに、ルーブル姉さんのエリザベス女王杯での惨敗が重なった。

 これ自体は騒動とは全く関係ない。

 結局ピークが過ぎただけであり、負けたこと自体そう問題があるわけではない。

 

「ヴィオラちゃん……」

「姉さん~!!」

 

 でも、ルーブル姉さんは負けてから、というか本当は夏合宿ごろからかなり情緒不安定になっていたらしい。

 テイオーがフォローしてくれていたようだが、それも今回の敗北で限界に来てしまったようだ。

 ボク自身、姉さんの不調を見抜けなかった不甲斐なさを感じる。

 ルーブル姉さんがこうなったときの対応はそう難しくはない。

 ずっとギューッとしていればいい。

 家に帰れば母やプリンちゃんもいるし、ひとまず実家に連れて帰り、ボクも毎日学校からの通学に切り替えた。

 姉さんに抱き着かなければならないのは何も問題ない。

 姉さんはかわいいし、柔らかいし、いい匂いがするし、かわいいのだ。

 そんな姉さんに抱き着かれて嫌なわけがない24時間抱き着いていてもいい。

 まあ、テイオーの目がちょっと怖いのでそこまではしないが。

 

 姉さんといちゃいちゃする時間が増えて、ボクは幸せの絶頂だったが、他のことに手が回らなくなったのは確かだった。

 

 この時点で、対外関係はかなりぐちゃぐちゃになっていた。

 URAを非難する一派。

 奈瀬トレーナーを中心とした、マックイーン周辺を批判する一派。

 マックイーンを擁護する方向でカリブソングさんたちを批判する一派。

 だから、その矛先がこちらに向くのももう必然だったのだろう。

 

 

 

 そんな中ウチの沖野トレーナーは実績と人当たりの良さには定評があるので(恋愛関係はくそ雑魚最悪野郎だが)、必死にトレーナー間の調整をしていた。

 そうしたらボクらスピカにまでさらに飛び火したのだ。

 

 一つはプレさんへの批判である。

 進路妨害をしたのはマックイーンではなく下がれば躱せたのに突っ込んでたプレクラスニーだといった話が、裁定委員のインタビューという形でスクープされたのだ。

 公開されたパトロールカメラをどう見ても、押されているのはプレさんだが、下がらなかったのが悪いという形で語られたそれは、しかしさらに地雷が埋まっていた。

 インタビューを受けた自称裁定委員は、自分はプレクラスニーの降着を主張したのだが、ヴィオラレジーナ、つまりボクが裁定室まで乗り込んできて脅したため、今回の結果になったという発言でインタビューを閉めたのだ。

 ボクへの批判がでっち上げられた瞬間だった。

 

 センセーショナルだったのか、この話は一気に広がったらしい。

 らしいというのは、ボク自身は見ないほうがいいと周りが気を使ってくれたからだ。

 

「学園内と、自宅を往復している分には問題ないでしょうしね」

 

 情報収集役をしてくれているフローラさんがため息をつく。

 よほどすごい状況なのだろうか。

 全く根拠がなさ過ぎて、逆に否定する材料もない中、話はエスカレートしているらしい。

 嘘と本当が飛び交い、収拾がつかなくなっていた。

 ネット上も無責任な情報が飛びまわっている。

 

 ある意味全部ボクが悪いみたいな方向で収束しそうになっているとかいう話まで聞こえてくる。

 だがまあ、ボクの生活に影響しない範囲なら好きにしていればいいだろう。

 ネット活動と、逃げ切りシスターズの活動が制限されていてなんとなく息苦しさを感じながらも、ボクは傍観していたのだった。

 

 

 

 それが崩れたのは、ボクの日常にマスコミやらなんやらが侵食してきたせいだ。

 まず、マスコミが実家に突撃して来た。

 すぐに警察を呼んで、突っ込んできたやつは捕まった。

 学園から家に帰るボクをつけてきたらしい。

 単にストーカーだった。

 

 だが、そのマスコミが実家映像を流したもんだから、家に居られなくなった。

 学園側が対応してくれて、母と妹のプリンちゃんは学園併設のトレーナー寮に引っ越しになった。

 大騒動になり始めた。

 

 

 

 こうなったらボクも当事者だし黙っていることもできない。

 記者会見でもしてやろうかと思ったが、それもしゃくだな、と思っていたらルドルフさんが引き受けてくれた。

 

「フフフ、私に任せてくれ」

 

 ダサTでそれは格好がつかな過ぎるが、ルドルフさんは明らかにキレていた。

 

 

 

 あまり詳細を語るのも面倒だし、サクッと言うと後はルドルフさんによる虐殺だった。

 天皇賞(秋)の時の裁定時、ボクが控室に入ってから出るまでの録音やら、裁定委員の裁定から報道までの全員の動きを提示して、ボクに対する記事が全くのでたらめだと大々的に記者会見で公表したのだ。

 その上で、数社に対し、出入禁止処分にした。競馬場にまで入るなという徹底っぷりだ。

 理由は、ウマ娘学生の治安が守れないからというものだったが、明らかに侵入不可の場所で撮られた写真を使った記事もいくつもあったので、問題にならなかった。

 

 同時にネット上からも何人も逮捕者が出たりしていた。

 基本調子に乗りすぎて発言をしていた一般人だが、さすがに命を狙うようなことまで言う人はファンでも何もなくテロリストだ。

 

 一時期国会ですら話題に上がったこの騒動だったが、結局ウマ娘系の質の悪いマスコミが何社も潰れ、各名家内部でもいろいろあったらしいが、ボクの生活はすぐに平穏が戻った。

 正直、騒いでいたのは外部ばかりだ。

 学生のウマ娘には関係ない話ばかりだった。

 

 

 

 だがいろいろ影響を受けた部分もある。

 まずボクが、正式にジャパンカップを辞退した。

 騒動の影響もあるし、ルーブル姉さん関係の影響もあるし、そういった関係で調整が全くできてないのだ。

 尻がまたぷにぷにになってしまった。

 

「やわらかくていいきもちー」

 

 とテイオーがボクの尻に顔を突っ込んで寝ている。

 ボクはルーブル姉さんに膝枕されている。

 テイオーに尻枕争奪戦で負けたマックちゃんは、ボクの足元当たりで「よよよー」となっていた。

 

「というかさ、テイオー」

「なに?」

「テイオーってルーブル姉さんのこと好きだったんじゃないの?」

「そうだけど、ヴィオラのことも好きだよ」

「そういうこと言うのやめてよねテイオー! ボクちょろいんだから!!」

「自分で自分のことちょろいっていうのはどうかと思う」

 

 でもテイオー顔がいいし、優しいから好きって言われるとすぐ靡いちゃう気がするし。

 くそっ小悪魔め。

 しっぽでぺしぺしテイオーの頭を叩く

 マックちゃんは饅頭を食べていた。

 

 何にしろこんな状況ではとてもレースに出ても勝てない。

『ジャパンカップで狩りを帰す』という手紙を送ってきた凱旋門三着だったマジックナイトさんにお断りの手紙を送ったぐらいで、ジャパンカップは過ぎてしまった。

 

 ちなみにジャパンカップは、テイオーも出なかった。菊花賞からのローテーションはつらいという判断だ。

 日本のウマ娘の中で一番先着したのは、ネイチャさんの3着だった。ネイチャさん、菊花賞も3着だったし、3着になる特殊能力がありそうである。

 マックちゃんが4着でしょげていた。

 

 

 

 ここで一つ問題になるのは有馬記念だ。

 このまま順当にいけば有馬記念に出ることになる。

 だが、プレさんやネイチャさんはいるし、テイオーもいるし、マックちゃんもいる。

 マイルチャンピオンシップ優勝からダイタクヘリオスさんも出るらしいし、メジロライアンさんも出ると聞いている。

 基本混戦は得意だが、ここまで強敵ばかりだとどうやっても勝てなさそうな気がしてくる。

 ピークなうなプレさんには勝てないし、テイオーにも勝てる気がしない。

 マックちゃんが吹っ切れてさらにパワーアップしていたら絶望的だ。

 ネイチャさんの謎の三位力もあるし、ライブにすら残れない可能性も大いにある。

 全体的に勝てる気がまるでしない、という結論である。

 

 とはいえファンの人もいるので、何も出ないでというのも少しだけ気が引けるのだが……

 

 そうすると中山大障害に出るのもアリだろうか。

 勝てなさそう度で言うとこちらも似たり寄ったりだ。

 春に競ったクリエンスさんとモントルーさんのシンボリコンビは健在だし、パンフレットさんも出ると聞いている。

 最近メジロから出てきたメジログッテンさんなんかもいる。

 ここ最近あんまりぴょんぴょんしていないので、トレーニング不足で負けそうな気がする。

 だけど障害のジャンプは好きなので、同じ負けるならこっちでもいいかなーと思ったり。

 

「どうしようか、ルーブル姉さん」

「んー、私と一緒にずっとぎゅーってしてるとか?」

「それもいいかも」

 

 若干ボクの前では幼児退行しているルーブル姉さんを抱きしめる。

 そろそろ潮時というのも考えると引退も考えてもいいのかもしれない

 ボクの悩みはまだ終わらないのであった。




今後の予定
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渡仏するときにサポートとして一緒についてきてくれるのは

  • 頼りになるシンボリルドルフ
  • 一緒に出掛けてくれそうなアグネスフローラ
  • フランス料理求め二人で迷子になるオグリ
  • またしても何も知らない新人ホクトベガ
  • メジロ参戦 メジロアルダン
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