紫電の女王の栄光の道のり   作:雅媛

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5 紫の少女の学園生活

ということで学園生活が始まったが、当初の予想に反して、とても快適な日常が始まった。

 

当初はクラスになじめるかが心配だったが、案外すぐボクでも馴染むことができた。

基本クラスメイトの皆さん育ちがいいし、性格もいい子ばかりだ。

一人だけ育ちの悪いボクが混ざって大丈夫かと自身で心配していたが、年下なのもあって結構かわいがられている。

中学生のお嬢様方からの無意識もしくはあまり意識されていないマウントは多々あるが、所詮かわいらしいものでしかない。中身が成人の部分があるボクにとってはほほえましいという感想しか浮かばなかった。

そういう態度を取られたら、少しうらやましいなという反応を返せば、みな満足してくれる。さらに、場合によってはちょっとしたおこぼれがもらえるのだからむしろおいしい話でしかないのだ。

唯一同じクラスになったマックイーンちゃんが、何かと絡んでくるが、じゃれてくるレベルである。やれ、テストで勝負だとか言ってくるが、残念ながら所作はお嬢様でも学力は平均ぐらいのマックイーンちゃんではボクと学力勝負にならない。

勉強に関しては奨学金がかかってるし、前世知識もあるから勉強で負けるわけにはいかないのだ。

最初のころはマックイーンちゃんも悔しがっていたが、1月もすると、夜に普通に部屋に乗り込んできて勉強を一緒にするなんてことをしている。ボクのことが嫌いなのかと思っていたが、案外嫌われていないようで安心だった。

 

そんな感じで楽しんでいるが、それでもいくつか話についていけない時がある。

特に所持品関係が顕著である。

新しい尻尾ケアの道具がどうだとかそういう美容関係の話題もあるし、スマホとかのゲームの話もある。そんなみんなの話を聞いているとスマホぐらいは欲しくなってくる。

だが、スマホを手に入れる方法が問題だった。

ぎりぎりで生活している母にねだるのも悪いので、自分で稼ぐしかないのだが……  方法が思いつかない。

闇レースに出ていたころの賞金はすでに生活費に消えているし、今からそういった闇レースに出るわけにもいかない。

 

必要な金額は、通信費が月1万、本体がノートPCにしたいので20万ぐらいだろうか。

それくらいをどうにか稼ぐ方法はないだろうか。

そんな話をクラスでしたら、なんか微妙に哀れまれた。そして、マックイーンちゃんなんか、買ってあげるとか、そんな話をし始めたので、慌てて拒否した。

プライドの問題ではない。プライドで飯は食えないので、プライドの問題なら喜んで受け取っている。

さすがに20万とかいう金額の物をもらうのは、ちょっとしたお菓子とか、香水とかそういうのをちょっとだけ使わせてもらうとか、お風呂で尻尾の新しいトリートメントを使わせてもらうとか、そういった話とは違うレベルの話だ。こんなのをもらってしまうと、おそらくもう、対等ではない。

マックイーンちゃん含め、クラスメイトとは対等でいたいのだ。友達でいたいし、そもそも同じ組織で対等でない存在が混じるのはいろいろ問題を生みかねない。なので明確に理由を説明して断ったのだ。

 

「残念ですの」

 

しょんぼりしてしまったマックイーンちゃんが非常に印象的だったが、それに流されることはなかった。

 

 

 

だが、断っただけではほしいものは手に入らない。

なので、アルバイトを紹介してくれそうな相手に相談することにした。

 

「ということでトレーナー。アルバイト紹介してほしいんだけど」

「ん? なに? ノートパソコン? かわいらしく、おねだりしてくれたら、買ってあげるよ?」

「……もしもし東条トレーナー? うちのトレーナーがまた変なこと言うんですが」

「ヴィオラちゃん!?」

 

セクハラしてくるトレーナーを部屋備え付けの直通電話で、即東条トレーナーに通報した。

どうやら白井トレーナーの師匠のトレーナーと、東条トレーナーが兄妹弟子らしく、うちの白井トレーナーは彼女に全く頭が上がらないのだ。

隣の部室にいた東条トレーナーが飛んできて、ジャンピングソバットを白井トレーナーの首に決めるまで、10秒ぐらいしかかからなかった。

 

実のところ言えば、トレーナーのセクハラ発言が嫌なわけではない。

白井トレーナーは美少女だらけのウマ娘の中でもかなり美少女の部類に入る。小柄だがしっかり走れるだけ鍛え上げられた体型は美しいし、顔もべらぼうに良い。そんなトレーナーにいろいろされるのはボクの前世知識的には拒否感があるどころか、むしろご褒美のたぐいである。

だが、理性が、トレーナーに甘いことを言うとどこかに監禁とかされかねないと警鐘を鳴らすので、基本塩対応で過ごしていた。

 

「それで東条トレーナー、アルバイトしたいんです」

「端末ぐらい、そこのアホトレーナーに買わせればいいじゃない」

「トレーナーさんにお願いするとお礼に何させられるかが、怖いので」

「コスプレぐらいで勘弁してあげてもいいふげっ!?」

「確かにそうね。できればあなたには、生徒会の手伝いをしてもらいたいのだけれども、お金は出ないのよねぇ」

「お金以外には出るんですか?」

「各競馬場へ行くとき、新幹線ならグリーン車が使えて、飛行機ならビジネスクラスが使えたりするわ。視察用ね。ほかにもいろいろ学内の特権があったりするのよね」

「豪華ですね。アルバイトとか考えなければお手伝いしたいのですが」

 

ルドルフさんにも、東条トレーナーにもお世話になっているので、お手伝いしたい気持ちはあるが、お小遣いもない状態は避けたいのだ。

悩んでいると、再度復活した白井トレーナーがまた話し始めた。

 

「冗談はさておき、ヴィオラちゃんって奨学金もらってたよね」

「もらってますね」

「それ使えばいいんじゃない?」

「学費と寮費で全部消えてますよ?」

「いやいや、奨学金って学費だけじゃなくてほかにも出てるでしょ」

「え?」

「ちゃんと確認した?」

「いえ、自分名義の口座とか、入学直前に全額引き出した後放置しているので全く見てないです」

 

ちなみにその時引き出したお金も入学準備、特に制服代なんかで全部消えていた。

あわてて白井トレーナーのパソコンを借りて口座残高を確認したら、準備金だろう20万円ぐらいのお金が入っていた。

これだけあれば買える、ということで、反射的に新しいノートPCを通販でポチる。

 

「ねえヴィオラちゃん、それって制服とか、そういうの買うためのお金じゃないの?」

「あ」

 

東条トレーナーの冷静な突込みに我に返る。

だがすでに、注文ボタンを押した後であった。超特急で明後日ぐらいには届くだろう。

代わりにボクの制服と体操服は、トレーナーのお古含めてそれぞれ2枚しかない。状態が維持された。

完全に選択を間違った。

ボクが下着で走ったり、体操着を1枚しか持ってなかったのを知っている東条トレーナーはあきれたようにため息をついたのだった。

 

 

 

まあ、生活はできるし。

ボクは開き直ることにした。

新しく買ったPCは大活躍だ。

基本トレーナーさんへ、自分の情報を伝えるのに使っている。

毎日3回測定した体重や、間食を含めた食事内容なんかは全部伝えているし、身長やスリーサイズもトレーナーさんに頼んで定期的に測定している。

そういったデータが蓄積され、トレーナーさんに送ることで、今後何をするべきかというトレーニングデータや、食事においての注意点などが返信されてくるのだ。

今まで測定も分析も全部自分でやっていたが、今では測定したデータを送れば、後はトレーナーさんがやってくれるので、非常に快適だった。

 

あとはルドルフさんのお手伝いにも大活躍だ。

結局アルバイトしなくても最低限のお小遣いは奨学金から入ることが分かったので、ボクはルドルフさんのお手伝いをすることにした。

手伝いといっても、やるのは基本的にはちょっとした書類作成だ。全校に配る書類や、配布スケジュールなんかを管理している。

他にもルドルフさんのスケジュールを管理したり食事を食べさせたりといった仕事までしている。なんか秘書みたいな仕事になってしまっているが、結構楽しい。

なんせボクがルドルフさんのスケジュール管理をしているから、うまく日程を開けるとデートに連れて行ってくれるのだ。大体変Tを買ったり、ちょっと甘いものを食べたり、レース場を1周程度併走してもらったりするだけだが、それだけでもかなり楽しかった。

 

なお、国民的ヒーロー兼アイドルのルドルフさんにボクがべったりしていたら、ボクは周りから嫉妬を買うかと思いきや、そんなことは全くなかった。

なんせ、皇帝から直々にプレゼントされるものが変Tである。東条トレーナーの命令で、寮外で着ることを禁止された変Tであるが、ルドルフさんは嬉々として寮内で着ている。

ボクも基本ルドルフさんが変Tを着る時は同じ変Tを着る。ペアルックだ。

そんな光景に対して、美浦寮の皆さんは、ボクを憐みの目で見ていた。

余りにダサすぎる。そういう感想らしい。

皆にとって、ルドルフさんのお近づきは憧れのポジションだが、変T着用必須はそのメリットを振り切って余りあるデメリットらしい。

アルミ缶の上にあるミカンという文字とイラストが描かれたTシャツを着て、ルドルフさんはうれしそうにしていた。

 

 

 

シリウスシンボリさん命名、あまりにダサすぎて児童虐待レベルの仕打ちを受けながら、ボクは楽しく過ごしていた。

 

学園生活は、心配したほど波乱もなく、平凡に過ぎていった。

朝早く起きて、ルドルフさんと一緒に食堂に降りる。大体朝練のメンバーがいるので、彼女らと一緒に簡単な朝食を作って食べる。

ボクが作ると、大体ホットケーキとか、フレンチトーストとか、甘いものが多い。

だが、レシピ担当は毎日変わるので、その人によって料理が変わる。和食になったり洋食になったりと、簡単な料理ばかりだがバリエーションに富んで楽しかったりする。

朝食が終わると、ルドルフさんはお仕事をはじめるので、ボクはルドルフさんのスケジュールの確認をしてから朝練に向かう。

朝練で軽く汗を流したら、シャワーを浴びて、登校である。

授業を受けて、トレーニングをして、洗濯なんかを片付けた後、ルドルフさんの手伝いをして夕食を食べて寝る。

決まったスケジュールを繰り返しているだけだが、それでも非常に楽しかった。

 

現状のトレーニングは白井トレーナーおすすめのマシントレーニングメインである。

朝練で少し走る以外は、トレーニングでは全く走っていない。

筋肉をつけて、体を作るのを目的とした、マシントレーニングメインのトレーニングを繰り返している。

そのトレーニング時間だって長い時間ではないのだ。

大体1日1時間程度。

トレーニング全体で見れば、ウォームアップの柔軟が30分に、クールダウンの柔軟が1時間、さらにその後にトレーナー直々の全身マッサージまでされているからほかの人とそう変わらないが、やっている内容は少なかった。

 

足りないのではないかという不安がよぎる。裏レースに出ていた時は、無茶苦茶に走りまくってトレーニングとしていた。

才能が足りない以上努力しなければならないと信じているボクは、当時、とにかく無茶苦茶な努力を重ねていたのだ。

だが、トレーナーさん曰く、ボクはまだ体ができていないから、過度なトレーニングはダメだという。

体を早く、十分育てるためのベストなトレーニングが、ウォームアップとクールダウンを極端なほど多く行うこのトレーニングであるらしい。

確かにメイクデビューまで早く見ても1年以上だ。じっくりトレーニングするのも悪くないだろう。

マシントレーニングだと、数字がはっきり出るから、成長もわかりやすい。

身長体重スリーサイズと、体のサイズもこまめに図っているから体の成長も数字としてわかりやすかった。

数字として成長がわかるので、そういう点では非常に安心していた。

 

「うーん、やっぱりヴィオラちゃんはいいトモしてるわー」

 

トレーナーさんのことは信頼している。

だが、こうやって太ももや尻に頬ずりされるたびに蹴飛ばしたくなる衝動に駆られるのは、やむを得ないことだった。




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