【閑話】紫の少女と恋人【引退1年目】
さて、恋人になったら何をするべきか。
まずはデートだろう。
そう、デートである。
デートと言ったら……
何をするのだろうか。
残念ながらボクの頭にはデートの具体的内容が全く入ってなかった。
「アルダンさん、デートって何をするんでしょう?」
わからなかったら相手に聞く。
特にボクとアルダンさんは育ちの良さが違うので、価値観の違いもあるだろう。
ということでお互い我慢しないで言うことを約束していた。
「私もわからないですね……」
悲報、ボクたちカップル、デートのやり方を知らない。
よくよく考えたらアルダンさん、トレセン学園入学までは、病弱であまり外にすら出なかった箱入りウマ娘なのだ。
そして入学後は東条トレーナーのスペシャルコースでずいぶん体質が改善されたが、その体質改善のためのトレーニングに走るためのトレーニングで遊ぶ余裕なんてほとんどなかったのだろう。
一方のボクも小さいころから闇レースと勉強ぐらいしかしていない。娯楽は読書と走ることだ。
つまり二人とも遊び方を知らないのだ。
今はアルダンさんの部屋で二人ソファに座ってくっつきながらお話し中である。
ボクの格好も、アルダンさんの格好も、シャツにレギンスだけとかなりラフだ。
ボクがいつもこんな格好をしているので、アルダンさんがまねし始めたら気に入ったらしい。
部屋の中限定だがボクが遊びに行くと大体この格好をしている。
正直くっつきむしのボクとしては、この状況、非常に楽しい。
横に並んで肩に手をまわしてもらいながら、アルダンさんの横胸に顔が当たっている状態でのんびりする。とてもいいにおいがする。
このままこんな感じでぐたぐたして、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入るとか、とてもいいと思う。
だが、アルダンさんは目をキラキラさせてデートに期待をしている。
多分よくわからないけど楽しそうなデートというものを期待している。
こうなったならボクも頑張らざるを得ない。
「ひとまず、ゲームセンターでも行ってみましょうか」
「ゲームセンターですか。不良がいっぱいいるんですよね!」
「いや、今時そういう人いないんじゃないですか?」
ひとまず二人でゲームセンターに向かうことにした。
お外に出るときはちゃんとした服を着ることを、ボクも覚えた。
とはいえ服の数が少ないので、今日も告白した時と同じ服だ。少しずつ増やしたいところである。
アルダンさんは白いひらひらのブラウスに緑のふわふわスカートだ。とてもかわいい。
「今日はゲームセンターですが、今度は服の買い物も行きたいですね。ボクの私服、少ないので」
「そうですね、今度一緒に行きましょうね」
次のデートのプランを話しながら、二人でゲームセンターにたどり着く。
駅前にある大きなゲームセンターだ。
明るくて広くて、人もいっぱいいる。
はぐれないように、手をつないだ。恋人つなぎである。
ちょっとドキドキする。
「ヴィオラちゃんヴィオラちゃん」
「なんです?」
「ヴィオラちゃんのぱかプチありますよ」
アルダンさんが指さす方にぱかプチのクレーンゲームがあった。
その中の一つに、ボクのぬいぐるみだけが大量に投げ込まれているものがあった。
「本当ですね」
「こんな大きいの、ぎゅーって抱きしめたら気持ちいでしょうね」
「……」
ボクはアルダンさんに抱き着いた。
「ヴィオラちゃん?」
「本物のほうがずっと気持ちいいです」
「ふふ、そうね」
「ずっと一緒にいてぎゅーってすることもできますからぱかプチは不要です」
「ありがとう」
ちょっとぬいぐるみに嫉妬したが、とはいえ遊びに来たのだから早速やってみることにしよう。
幸い紫ぱかプチはそう難しくもなくとることができた。
ちょうどいい感じの大きさのボクのぱかプチが取れたので、ボクの頭の上に乗せてみた。ジャストフィットである。
アルダンさんのぱかプチも見つけてとったので、頭の上のヴィオラレジーナはメジロアルダンと仲良く抱き合っている。
「ほかに何かやってみましょうか」
「ダンスゲームとかもあるみたいですね」
二人でそちらに移動する。
アルダンさんはまじめに練習していたからライブアピールは得意だし、ボクもデビュー頃はひどかったが、今では練習も本番も繰り返してかなり上手になっているはずだ。
そう思って二人して挑んだのだが結果は散々だった。
ボクもアルダンさんも、努力してできるタイプであり、天性の何かでできるタイプではないのだ。
だから、矢印に合わせて前後左右を踏めと言われてもすぐに訳わからなくなってしまった。
そんなこんなでボクたちはすぐゲームオーバーしてしまうが、上手い人だと本当に素晴らしくきれいに踊っている。
素直にすごいなと思った。
なお、ランキング一位はテイオーと書いてあった。
知り合いの彼女なら納得できるところであるが、実態は不明である。
夜の帝王さんとかかもしれないし。
プリも撮影した。
二人しておっかなびっくり入ったのだが、音声案内さんがやり方を全部教えてくれたので、箱入りウマ娘二人でも案外簡単に撮影出来た。
記念に取ったものはいろいろなものに張り付けておこう。
そんなこんなで楽しいデートは終わった。
次は服を買う買い物デートだろうか。
他にもいくべきところはテイオーあたりから仕入れておこう。
デートの後は、駅近くのスーパーで食材を買って、アルダンさんの家に帰り、二人で料理をする。
ラモーヌさんはルドルフさんとデートで、今日は帰らないと聞いている。
二人で料理をして、二人でご飯を食べて、二人でお風呂に入った。
「ぬいぐるみじゃなくて、ヴィオラちゃんを抱きしめさせてくれるんですよね?」
とアルダンさんが言うものだから、ボクはそのままアルダンさんのベッドに連れ込まれ、ずっと抱き枕だった。
アルダンさんのとてもいい匂いに包まれながらも、ドキドキして全然寝れない……
なんてことはなく爆睡をしてしまった。
こうやってくっついて寝るのにハマってしまったボクとアルダンさんだが、そうそう毎日そうしていることもできない。
お泊りは外泊許可を取るのが大変だし、ラモーヌさんがいる前であまりイチャイチャしすぎるのも悪いなと思うので、早めに新居を構えることにした。
「本当に悪いと思ってる?」
「思ってますよ」
「思ってますよ」
「……まあ、仲がいいのはいいことよね。早めに同棲始めなさい」
アルダンさんに抱っこされて、あーんしてクッキーを食べさせられるボクを見ながら、ラモーヌさんは呆れたようにこんなことを言っていた。
幸い学園周辺には物件は非常に多い。
メジロ家御用達の不動産屋さんや、母の昔なじみといわれて紹介された不動産屋さんを使って、そう時間もかからずに良い物件は見つかり、付き合ってひと月程度で引っ越すことができた。
最初の心配ほどすれ違うものはなく、ボクは毎日楽しくイチャイチャアルダンさんにくっつきまくる。
だが、それでも全く合わないところはちょこちょこ出てくる。
例えばアルダンさんはラクトアイスやアイスミルクはほとんど食べてくれない。
高いアイスクリーム、ハーゲンダッツやレディーボーゲンしか基本食べてくれないのだ。
スーパーカップは許されなかった。
こうなると他の食べ物も高くないとダメかと思っていたけど、野菜やお肉は案外何でもいいようである。
毎回スーパーで高いアイスをドキドキしながら買う羽目になってしまった。
あと、アルダンさんはボクを甘やかすのが大好きである。
毎回あーんしてくる。ボクの食べる姿が好きらしい。
他にはお風呂は二人で入ってボクの体を隅から隅まで素手で洗ってくる。前はタオルでガシガシ洗っていたが、素手で洗ったほうがお肌にいいらしい。
だが、本当に前まで全部素手でこすって洗ってくるので、とても恥ずかしい。恥ずかしいが拒否は許してくれなかった。
ボクの服を選ぶのもアルダンさんだし、毎日同じベッドでぎゅーってして寝ている。
こう、アルダンさん好みの頼りがいのあるウマ娘になりたいのだが、これは無理そうだ。
頑張れるところだけ頑張ろうと思った。
一方、ボクからアルダンさんに変えてもらったこともあった。
例えば食べる量だ。
アルダンさんは食が細い。
ヒトが食べるのと同じぐらいしか食べない。下手するとヒトより食べないかもしれない。
おそらく体が弱いのも、食べる量が少ないからだろう。
嫌いな食べ物はあまり多くなさそうだが、消化器官があまり強くなさそうなので、スープや煮込み料理を増やし、油っ気を減らしていっぱい食べてもらうことにした。
アルダンさん自身も頑張って食べてくれているので、徐々に体がムチムチしてきている。体力がつけば風邪なんかも引きにくくなるだろう。
そんな小さなすれ違いを少しずつお互い直しながら、ボクたちの同棲生活は始まるのだった。
二部主人公アンケート(決選投票)にもご協力ください。
今後の予定2
読んでみたいお話などもこちらにどうぞ
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=274765&uid=349081
評価・お気に入り・感想お待ちしております。
創作について話したり相談するディスコード鯖
https://discord.gg/92whXVTDUF
二部主人公決選投票です。
-
妹のヴィオラプリンペサ
-
紫娘ヴィオラマリーア
-
白井トレーナー娘アグネスデジタル
-
大外一気ゴールドシップ(黄金船書け)