「そろそろさ、ルーブルに告白しようと思うんだ」
「じゃあ『ルーブル大好き付き合ってください特別』を開催しないとね」
ボクはヴィオラに相談したことを後悔した。
ヴィオラが引退してから1年、天皇賞春でマックイーンにぼこぼこにされたり、夏冬グランプリで覚醒したメジロパーマーさんにぼこぼこにされたりしながらも、どうにか秋の天皇賞とジャパンカップに勝利したボクは、ルーブルに告白しようと決意した。
まだジャパンカップでGⅠ3勝目だが、急ぐ理由はいろいろあった。
一番はルーブルがとてもモテるということだ。
若干荒いところがあるが美人だし気さくなルーブルはとても人気がある。
何度も恋文をもらっているのを知っている。
更にバックについている組織がない(といっても最難関義妹ヴィオラがいるから無理強いはされないが)のもあって、血を狙う名家からひっきりなしにお見合いなんかは来ていると聞いている。
もう一つは周りのイチャイチャに耐えきれなくなってきたのもある。
目の前のヴィオラはメジロアルダンさんと引退直後から付き合い始め、次の3月ごろには妊娠しておなかが大きいまま学生兼生徒会副会長をしている。
あとはルドルフさんも卒業し、メジロラモーヌさんと結婚した。時々遊びに来てくれるが、いつもラモーヌさんといちゃいちゃしている。
正直ボクもイチャイチャしたいのだ。
部屋も一緒なのに、尻枕ぐらいしかできないし、そろそろ我慢も限界に来ていた。
「尻枕をルーブル姉さんが許してる時点でもうわかったようなもんだと思うけどね」
「でもちゃんと告白したいじゃん。だからルーブルの好みを聞こうと思ったんだけど」
「だから『ルーブル大好き付き合ってください特別』開催だって」
なので告白について、悔しいがルーブルに一番詳しそうなヴィオラに聞いたのだが、帰ってきた答えがこれである。
「冗談言ってる?」
「ええー、すごい真面目に答えてるんだけど。テイオーのこともルーブル姉さんのことも大好きだから、こんな状況で冗談は言わないよ」
「冗談であってほしかった」
ヴィオラの答えが本気なのはわかった。
本気で冗談であってほしかった。
「場所は川崎競馬場がいいと思うな。府中からのアクセスもいいし、ナイターもやってるから平日のナイター使わせてもらえるよ。さすがにテイオーが出たらそちらに注目集まっちゃうから、通常開催に混ぜてもらうのは川崎トレセン学園の子にもよくないし……」
「え、なんでそんなに詳しいの?」
「? アルダンさんの時にちゃんと調べて折衝までしたからね」
あのアホみたいなプラン、そこまで進んでいたのか。
止めてよかったと心から思った。
だがボクの窮地は何も変わらない。
「花火を上げるのも考えると、大体予算はこれくらいかな?」
「結構いい値段だね……」
「でも忘れられない思い出になるよ」
「いろんな意味で忘れられないよ。それにもし断られたらどうするのさ」
「そしたらみんなで大爆笑する」
「っ このー」
「ふやややややや」
最近あまり動いていなくてふっくらしたヴィオラのほっぺを引っ張る。
すごく柔らかかった。
「ふええええ…… ほっぺ伸びちゃうよぉ」
「ふん、ボクは真剣なの!!」
「悪かったよぉ、でもルーブル姉さんに告白するなら、大丈夫だよ」
「なんで?」
「ボクは、ルーブル姉さんのことが大好きだからね」
よくわかるような、わからないような結論でヴィオラは話を閉めた。
『ルーブル大好き付き合ってください特別』は、無事、2月上旬の平日水曜のナイターで開催された。
個人協賛レースであり、中央から誰でも出られるレースになったが、出てくるメンバーが豪華すぎた。
豪華というか、ツッコミどころしかなかった。
「2番 シンボリルドルフです」
「現在URA職員として活躍中の彼女ですが、現役時代の実力を見せられるのでしょうか? 期待ですね」
「ふふ、レースはかなり久しぶりだ。お手柔らかに頼むよ」
「ナンデルドルフサンガイルンダヨー!!」
張り切って出てきたのはルドルフさんである。
しかも勝負服。やる気満々である。
「テイオーと一度本気で走ってみたくてな」
「ソウデスカ」
往年の七冠バだ。人気はいまだ高く、ファンが死ぬほど集まっていた。
「3番 メジロパーマーです」
「夏冬グランプリを制し、最優秀シニアウマ娘に選ばれた彼女、トウカイテイオーとの相性が良いのも期待です」
「パーマーサンモナンデイルノォ!?」
本気で泣きたくなる。
パーマーさんはとても苦手な相手なのだ。
あの翻弄するような幻惑逃げに毎回ペースを崩されている。
パーマーさんが出るレースで勝てたためしがないが、なんでこんなレースにいるのだろうか。
「ルーブルは私の妹分でもあるんだ。あるレースでよく一緒に走っていたからね」
「ソウデスカ」
ルーブルが裏レースを走っていたのはボクも知っている。
パーマーさんも裏レースに出ていたのだろう。あの関係しているウマ娘達は団結力が高いので有名だ。誰が構成員か知らないが、パーマーさんもその一人で、きっとルーブルの相手を見極めるために代表として出てきたのだろう。
いい迷惑である。
「4番 メジロラモーヌです」
「懐妊中と聞いておりますが、調子は良さそうです。現役時代の走りがどこまで見せられるのでしょうか」
「ラモーヌサン!?」
「主治医からOKもらってますわ」
「ワケワカンナイヨー」
ラモーヌさんは卒業したルドルフさんと結婚し、そのまま入籍し、現在懐妊中である。
大きなおなかで走っていいのかと思ったが、主治医からちゃんと許可を得ているらしい。
あの人、整形科医かと思ったら、産婦人科もしてるのか。
注射を思い出して身を震わせた。
「5番 ヴィオラレジーナです」
「こちらも懐妊中と聞いていますが、調子は良さそうです。八冠バの力、見せてほしいですね」
「ヴィオラ!?」
「メジロの主治医からOKもらってるからね」
「ワケワカンナイヨー」
なぜかヴィオラまで出走していた。
アルダンさんと告白後、すぐに妊娠が発覚し、即入籍したヴィオラ。
現在在学中妊婦で、学生結婚をした生徒会副会長である。レースの時と同じく、やりたい放題だ。
というか妊婦でその露出の格好は色々いけないのではないだろうか。
だが、本人はまるで気にした様子がない。
今回もラモーヌさんと二人、楽しそうに妊婦話をしていた。
「6番 イソノルーブルです」
「あれ、レース名のルーブルって彼女じゃないんでしょうか……?」
「ナンデルーブルマデイルノサ」
「私の名前がついているのだから私が出ないと」
「ワケワカンナイヨー」
極めつけは本人参戦である。
ボクがルーブルに告白しようとしているレースだという自覚がないのだろうか。
嬉しそうにレースに出てきた。
「私に勝って、ちゃんと告白してね♡」
訂正、小悪魔だった。それでもかわいいと思うから重症だろう。
こんな6人のGⅠウマ娘が集まったレース、ルーブル大好き付き合ってください特別、川崎競馬場ダート2000mが始まるのだった。
結論だけ言えば、レースはボクが勝った。
妊婦二人は当然全然走れてなかったので遅かったし、ルドルフさんも仕事が忙しくてあまり練習できていなかったらしく、現役ほど速くなかった。
パーマーさんはルーブルと逃げ勝負をし始めて、二人して潰れてしまった。
手を抜かずに走ったボクには、そう難しいレースではなかった。
ただ、全力で走りすぎたせいで、疲れ切ってしまい、息が上がってしまった。
本番のレース以上に必死に走った気がする。
「テイオー♪」
「うわっ!?」
そんなボクにルーブルが飛びついてくる。
「テイオー♪ 私をお嫁にもらってくれますか?」
「それ、ボクが先に言おうと思ってたのに」
「えへへ、早い者勝ち」
そういってルーブルはボクにキスして来た。
「ルーブル」
「なぁに?」
「大好きです、ボクと結婚してください」
その返事を聞く前に、ボクはルーブルの唇をむさぼった。
後ろでは花火が打ち上げられていた。
特別協賛、告白ダービーは川崎競馬場での名物になった。
ウマ娘のみならず、ヒトの男女でも行われるようになる。
時に主役が負けたり
時に断られたり
時に予定外のカップルができたり
紆余曲折いろいろ起きるレースだが、最初に始めたテイオーとルーブルは末永く、仲良く暮らしたとさ。
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