カタカナの名前で卒業後も活動していないんじゃないだろうかと思いました。
「そういえば卒業した後の通名、どうしようか」
アルダンさんに抱っこされながら、ボクはそんな話をし始めた。
ウマ娘のカタカナの名前はれっきとした本名である。
ボクのヴィオラレジーナしかり、アルダンさんのメジロアルダンしかり、ちゃんと戸籍にも住民票にもそう書いてある。
だが、さすがに日常生活を送るにはいささかいかつすぎる名前でもある。
だから、人気が出て、タレントになるようなウマ娘でなければ、大体のウマ娘はある程度の時期、遅くとも学園卒業までには、通名を名乗るのだ。
「そうですね。メジロは大体北野か岩崎ですね」
「スポンサーがしっかりしているところはいいねぇ」
通名といっても自由に決めるわけではない。いや、自由に決めてもいいのだが、一から名前を考えるのは大変なのだ。だから、基本はメジロ家のようなそれぞれのスポンサーで、どんな名字にするか決めている。メジロなら北野や岩崎、フローラさんところのアグネスなら渡辺だったりする。
ちなみに名前の方はウマ娘本人が自分で決める。フローラさんなんかは「花子でいいや」とか無茶苦茶雑に決めたので通名「渡辺花子」である。フローラが花とはいえちょっと雑過ぎる気がする。
何にしろ通名である。
ボクやルーブル姉さんのようにスポンサーがいないウマ娘だと、名字から考えないといけない。アルダンさんと結婚することも考えればアルダンさん側に合わせてもいいのだが……
「メジロのみんなは北野や岩崎ですし、できればヴィオラちゃんに合わせたいですね」
と嬉しそうに言うから、名字から考える必要があった。
とはいえ一から考えるのはなかなか難しい。
「そう言えば、お母様はどんな通名を使っているんですか?」
「そう言えばなんだろう……」
親からもらうというのも一つの選択肢であるのは確かだ。だが、母の通名を知らないことに気づいた。
ボクやルーブル姉さんはお母さんだし、イワシミズ姉さんは姐さんと呼んでいる。よく考えたら名前で呼ばれているのを見たことがない。
あの人は何と言うか、いろいろ普通ではないからきっと参考にしてはいけないだろう。やっぱり欲しくなったという理由だけで10歳下の妹を産んだ人は伊達ではないのだ。
「ひとまず名前から考えよう。苗字はお母さんと揃える方向で検討しよう」
「それもいいですね。それで、どんな名前にするつもりなんです?」
アルダンさんはボクのほっぺをムニムニしながら、興味津々に聞いてくる。
「紫って書いてゆかりかなぁ」
安直だが、ボクのトレードマークといえばこの紫色の髪だ。紫に関連したウマ娘なんて多くないだろうし、ちょうどいい名前だと思う。
「そう言えば、何で紫ってゆかりって読むんでしょうね?」
「ゆかりの色が紫だっていうのが古今和歌集の和歌由来で信じられているんだって」
「そうなんですね」
「出典はゆかりふりかけを作っている会社のホームページだけど」
「……それでいいんですか?」
ちなみにあとで国語の教官に聞いたが、大本は源氏物語を「紫のゆかりの物語」というところかららしい。
それで、なんで紫のゆかり、などという理由が、諸説あるが古今和歌集の歌から来ているのではないかという話だとか。
教養が深くなった。
「ということで名前はゆかりで、名字はお母さんに合わせることにするよ」
「わかりました」
最初はゆかりふりかけからの連想だが、おしゃれでありそう悪いとは思わない。
だが、そうして決めた名前が、後ほど後悔することになる。
この後実家に帰って母に通名を聞いたのだが、母の通名の苗字は紫(むらさき)だったのだ。どうやら母も自分の髪の色を見て、適当に紫という名字にしたらしい。親子であり、思考が似すぎていた。
この瞬間、漢字で書いて「紫紫」が爆誕したのだった。
読み方もわかりにくい。むらさきゆかりである。
アルダンさんはやんわりと名前を変えるのを提案してきたが、意地になったボクは結局名前を変えなかったので、こんな変な名前になってしまうのであった。
「人の名前安直と言ってたけど、ヴィオラちゃんの名前のほうがよほど安直で変じゃない」
フローラさんの発言がボクの心に突き刺さった。
続編書こうかなと思っていますが、いろいろ紆余曲折した挙句シルクジャスティスちゃんを書きたくなっています。
書くかどうかは未定です。