飛電或人、世界を代表するIT企業『飛電エントリジェンス』の若き総帥。
10歳で、超難関と謳われる『帝都大学』に入学、在学中、様々な分野の博士号を取得し、13歳で、東南アジアに拠点を構える巨大企業『ビレッジ』にチーフテクニカルオフィサーとして在籍。
一年後、自主退職。アメリカの超エリート名門校『マサチューセッツ工科大学』に留学した。
その数年後、NASAに就職、カルフォルニア州にあるエイムズ研究センターに勤める事になる。
「まさに、溜息が出る程、素晴らしい経歴ですわね。」
「ははっ・・・それ程でもありませんよ。」
今年、34歳を迎える若き総帥は、上質な革のソファーに背を預け、全面ガラス張りの窓辺に立つ美貌の女科学者を横目で眺めた。
時刻は、午後三時。
予定の視察を終え、セクターシティの総責任者であるアイダ博士の執務室へと案内されていた。
或人の隣には、無表情の滅が二人の様子をつぶさに観察している。
「んで、まさか、そんな下らない事を言う為に、態々、貴女の城に案内した訳ですかな? 」
嫌味たっぷりな或人の言葉に、女の口元が皮肉気に吊り上がる。
「全く、随分とせっかちな人ね? 貴方程の才能なら、コア・エナジーなんて必要ないでしょ? 」
アイダ博士は、自分のデスクへと近づくと上に置いてある愛用の煙草を手に取る。
慣れた手つきで一本引き抜き、口に咥えた。
「昨日、私が言った言葉を覚えていますか? 貴女方が今現在使用しているコア・エナジーは禁断の果実だと・・・一歩間違えると、貴女の大事な楽園が消し飛びますよ? 」
或人は、足元に置いてあるアタッシュケースから、最新型のアイパッドを取り出すと、センターテーブルの上に置く。
素早く画面を操作し、核融合炉らしき映像を浮かび上がらせた。
「これは、この島一帯の電力を供給している環境システムだ。調べた所、危険水域まで熱エネルギーが上昇している・・・・。」
「・・・・。」
「当然、貴女だって既に承知の筈だ。 色々と対策を講じている様ですが、上手くいってないみたいですな? 」
鋭い視線が、煙草の煙をくゆらせる美貌の女科学者を睨み付ける。
不意に、女が堪え切れずに笑い出した。
「ああ、おっかしぃ・・・・”アーク”を造り出した怪物とは、思えない発言だわ。」
目尻に溜まった涙を手で拭いつつ、アイダは、灰皿に吸い終わった煙草を揉み消した。
「言っとくけどね? 坊や、私は貴方より長くコア・エナジーの研究をしているのよ? 当然、貴方よりも扱い方を熟知している。」
「・・・・・。」
「本当、低俗すぎる脅しだわ。 頭が良すぎて複雑に馬鹿なのかしら? 」
「馬鹿はお前だよ、婆さん。」
突然の暴言に、アイダの表情が固まる。
隣に座る滅が、諦めたかの様に溜息を一つ零した。
「その厚化粧で重たい瞼を開いて現実を見ろ、コア・エナジーが暴走を始め、冷却装置を破壊してる。 オマケに、この島に住む動植物にも影響が出てるじゃねぇか。」
ソファーから立ち上がった或人が、デスクに腰掛けた形で固まる美貌の女科学者の直ぐ目の前へと近寄る。
「昨日の事故がいい例だ。 コア・エナジーが発するエネルギーが、この島で製造しているガイアメモリを暴走させたんだろ? そんで、ご自慢のガキンチョライダーに後始末をさせてる。」
「・・・・・。」
「俺はな、アンタ等を助けに来たんだ・・・大人しく、環境システムを強制停止させろ、今ならまだ間に合う。」
「そんな事出来ないわ。」
大分譲歩した或人の申し出を、女は真っ向から叩き折った。
その瞳の中には、プライドを傷つけられた怒りと、何か強い使命感みたいな炎が燃え上がっている。
「システムを強制停止させたら、この島一帯の電力供給がシャットダウンしてしまう。そうなったら、電力を糧に生きている実験体達が死滅してしまうわ。」
「だからどうした? この島で働く研究員達の命と比べたら安いもんだろ? 」
「部外者の貴方には分からない。」
アイダは、眼前に立つ或人を押し退け、窓辺へと向かう。
沈みゆく夕陽が、女科学者の姿を真っ赤に染めた。
「飛電教授・・・・貴方にとっては、此処は単なる実験場に見えるかもしれないけれど、私にとっては違うの。」
「・・・・・。」
「この島は、私にとって全て・・・・唯一の肉親である御爺様を獄死させた貴方には一生分からないでしょうけどね。」
アイダ博士の言葉に、何時もは冷静な滅が色めき立った。
殺気を帯びた鋭い眼光で、窓辺に立つ美貌の女科学者を睨み据える。
「警察官僚とお友達なのは、自分だけだと思った? 私達にもね、政府関係者の知り合いは沢山いるの。」
勝ち誇った表情で、女が或人を見つめる。
無言でアイダ博士の眼光を受け止める或人。
真っ赤なルージュの塗られた唇が、弧の形を作る。
「貴方・・・随分と御爺様の是之助氏を憎んでいたそうね? 有りもしない罪状をでっち上げ、”飛電エントリジェンス”の社長の座を奪った挙句、彼を投獄し、死ぬまで追い詰めた。」
「・・・・・・。」
「御爺様は人間的にも経営者としても素晴らしい人物だった・・・・でも、貴方はまるで違う・・・・会社の利益の為なら何でもする・・・汚い拝金主義者。」
ゆっくりとした歩調で、アイダが或人の目の前に立つ。
静かに火花を散らす両者の視線。
そんな二人の様子を、滅は黙って見つめる。
「此処へ来たのもコア・エナジーという金の生る気を手に入れたいからでしょ? だったら下手な正義感を振り回さず、私の出す要求を素直に呑むのね。」
言いたい事だけ言い放つと、アイダは或人から離れ、自分のデスクへと向かう。
呼び出しボタンを押すと、数体の機械歩兵『ガーディアン』を従えた内海成彰が現れた。
「飛電教授をホテルまで送って頂戴。」
「分かりました。」
美貌の上司の命令に、素直に従う若き研究員。
無表情で立つ或人と滅を促し、執務室から退席した。
居住エリア、超高級ホテルのラウンジ。
躰の半分が埋まってしまいそうなソファに座り、或人が果物が山ほど乗った「プリンアラモード」を食べていた。
「あの女に下手な脅しは通用しませんよ? 」
或人の真向かいに座る滅が、長い脚を組み替え、自分の主人を眺める。
「だろうな、”夢見丁の通り魔事件”をマスコミに垂れ流しても、すぐ圧力を掛けて揉み消すだろ。 今迄の事件が公にならないのは、あの婆ぁが裏で警察官僚に圧力を掛けていたからだ。」
鴻上ファウンデーションの現会長、鴻上光生が起こした事件は一つどころではない。
織田信長の複製体が起こした通り魔事件から始まり、新宿で起こった錬金術師「ガラ」による天変地異、また、人造生命体である「グリード」が起こした大量破壊事件でも鴻上光生が深く絡んでいる。
前セクターシティの責任者であるゼウス博士とアイダ博士が、政府関係者に大金をばら撒き口封じをしなければ、今頃、鴻上は牢獄の中だ。
「しかし、今回ばかりは金ではどうしようもない。 コア・エナジーはあの婆ぁでは扱えないからだ。 絶対に俺に泣きつく、その確率は一億パーセントだ。」
口の周りに生クリームの髭を生やしながら、プリンアラモードを咀嚼していく。
「・・・・・分かりませんね。」
「何が? 」
「そうまでして、鴻上会長を護るアイダ博士の意図がです。」
滅の脳裏に、先程のアイダ博士の姿が蘇る。
常人では計り知れない強い意志を秘めていた。
彼女を突き動かす原動力は、一体何なのだろうか?
「前任者であるゼウス博士は、鴻上会長にあっさりと見切りをつけ、キュアノスコーポレーションに自分の技術を売り込み、そこの研究主任に収まりました。」
前日、或人がアイダ博士に言った様に、鴻上は沈みゆく泥船だ。
ゼウスも時限爆弾である鴻上光生の所業に嫌気が刺し、ヨーロッパを拠点に活動している製薬会社『キュアノスコーポレーション』にヘッドハンティングされ、あっさりと受け入れている。
アイダ博士も、遺伝子工学とケミカルバイオロジーの権威として学会にその名を轟かせている。
彼女ほどの逸材なら、どの企業も諸手を挙げて歓迎するだろう。
「知るか、どうせあの老害爺を垂らし込んで、金を搾り取れるだけ搾り取って、コア・エナジーが生み出す恩恵を独り占めにしたいだけだろ? 」
「はぁ・・・・・どうしてこうも下世話な台詞が次々と・・・・。」
「事実だ。 それが人間の心理だからだ。 楽をして大金を稼ぎ、美味い物を食べ、アンチエイジングをして若さを保ち、ケツの青い顔だけが取り柄の愛人共を侍(はべ)らせる・・・此処は、そんな欲望の掃き溜めだ。ウンコの中のウンコだ。」
「目糞鼻糞を笑うという諺(ことわざ)をご存知ですか? 」
びじびじと自分に向かって、スプーンを付け付ける主に、美麗な従者は心底呆れた様子で眺める。
早口で散々悪口を並べ立てる或人であるが、この若き社長も似た様な事をしている。
エベレスト級にプライドが高く、自分の才能を信じて疑わず、多情で、金に物凄く汚く、超ド級のドケチで、ジャンクフード大好きな偏屈屋だ。
アイダ博士が皮肉を込めて「拝金主義」と言ったのも、強(あなが)ち間違いではない。
「さて、俺が送り込んだ”草の者”はちゃんと仕事してるかな? ”アーク”よ。」
内ポケットから一号ライダーのマスコットを付けたスマホを取り出し、テーブルの上に置く。
すると長方形の形をした黒いモノリスの立体映像が浮かび上がった。
「はい、無事に環境システムエリアに辿り着きました。」
「よしよし、流石我が息子。」
ふふんっとほくそ笑み、或人がわざとらしく脚を組み替える。
現在、『滅亡迅雷net』の構成員の一人である迅は、中央エリアの地下に潜入している。
黒いモノリス‐ 人工知能”アーク”の完全サポートの元、セクターシティのセキュリティーの網を掻い潜り、核融合炉へと向かっているのだ。
目的は唯一つ。
アイダとの交渉が決裂した時の保険である。
「悪役みたいな顔になってますよ。」
「煩い。」
『うん? 湾岸エリアで侵入者がいるみたいですね。』
人工知能・アークの報告に、或人と滅が顔を見合わせる。
『現在、Xガーディアンとマスカレード部隊が交戦している様です。』
アークは、各エリアに設置されている監視カメラをハッキングし、リアルタイムでその映像を映した。
3D画像には、右半分が緑、左半分が黒のアーマードライダーが、数体の機械歩兵相手に大立ち回りを演じている。
「アーク、この馬鹿の身元を割りだぜ。」
『了解・・・・・検索完了、鳴海探偵事務所の調査員、左・翔太郎と判明、仮面ライダーの名前は、W。』
流石、電脳を支配する人工知能である。
ものの数秒も掛けず、アークは、侵入者の詳しい経歴を洗い出す。
左・翔太郎。
風都にある鳴海探偵事務所に所属する調査員。
年齢不詳であり、風都署、超常犯罪捜査課と連携し、ガイアメモリによる事件を解決。
『夢見丁通り魔殺人事件』では、仮面ライダーオーズの適合者、火野・映司と共闘し、織田信長の複製体を倒している。
「ククッ、どうやら勝利の女神は此方に微笑んでくれたなぁ。」
先程より更に悪人顔になった或人が、食べ終わった更にスプーンを投げ捨て、スックと立ち上がる。
「社長、どちらに? 」
「決まっている、鳴海探偵の小僧を捕まえる。」
或人は、内ポケットに愛用のスマホをしまい、ホールを突っ切り出入り口へと向かった。
中央エリア地下、環境システム。
その通気口から、一つの影が降り立った。
アーマードライダーへと変身した滅亡迅雷netの構成員、迅だ。
「よっと、目的地に到着。」
縞の鉄板の上へと着地した迅は、手に付いた埃を叩いて落とす。
彼が主人であり生みの親でもある或人から下された命令は、環境システムの心臓部である核融合炉を強制停止させる事であった。
危険水域まで達しそうなコア・エナジーにより発生する熱エネルギーを、沈火させる為である。
「さてと、早速、核融合炉を止め・・・・・。」
そこまで言い掛けた迅の言葉が、急に途切れた。
円形状になった広いスペース。
その中央に設置されている巨大なオブジェ。
そこに黒い塊が蠢いている。
「何アレ、気持ち悪い。」
『どうやらセルメダルの集合体みたいですね。』
迅の言葉に、ファルコンヘッドに内蔵されているセンサーを起動させて、アークが黒い物体の正体を探る。
それは、無数のコアメダルの群体であった。
まるで生き物の様に蠢き、核融合炉上部に取り付いている。
「うん? アレってまさか・・・・。」
何千枚とあるセルメダルの中に、人の手足らしきモノが見えた。
内蔵してあるカメラを拡大させる。
特徴的な青いメッシュが入った髪。
仮面ライダー・ポセイドンの適合者、湊ミハルだ。
「ミハルちゃん!? 何で??」
『理由は、分かりませんが、あのセルメダルの群体は、コア・エナジーが発する熱エネルギーを吸収している様ですね。』
「ううっー、兎に角、ミハルちゃんを助けないと! 」
何がどうなっているのか全く理解出来ないが、本能的に、ミハルを助けなければ、という使命感が突き上げる。
背中から先端に鋭利な刃が付いた、鋼の翼を展開させる。
スラスターを起動し、空中へと浮かび上がる迅。
セルメダルの群体がへばりついている核融合炉の上部へと舞い上がる。
「うわっ、何だよ? コイツ等!! 」
上部に辿り着いた迅が、ミハルからコアメダルを引き剥がそうとする。
しかし、そうはさせまいと、メダルが一斉に迅を攻撃し始めた。
石礫の如く、メダルの雨がマゼンダ色のライダーを叩く。
両手で防御する迅。
気を失っている全裸の少年を抱え、メダルが集まっていく。
「お前は一体何者だ? 何故、私の邪魔をする。」
何時の間にか、メダルは怪物の姿に変じていた。
愛おしそうにミハルを抱え、禍々しい鎧を纏った黒騎士が、眼下から覗く真紅の双眸で、宙を浮遊する迅を睨み据えている。
「それは、コッチの台詞だ! ミハルちゃんを離せ!化け物!! 」
背中に備え付けられている武器『アタッシュカリバー』を取り出す。
ブレード形態へと変形させ、セルメダルの怪物‐エノシガイオスへと躍り掛かる。
素早く真横へと移動し、迅の攻撃を躱すエノシガイオス。
まるで人間の背骨を連想させる長い尾が、迅の身体を薙ぎ払った。
「うわっ! 」
容赦なく壁面へと叩き付けられる迅。
その間に、エノシガイオスはコアメダルへと再び姿を戻すと、ミハルの体内へと入り込んでいった。
『ふん、丁度、新たなコアメダルを造り出したところだ。 お前で試させて貰おう。』
ミハルの身体を乗っ取ったグリードが、ポセイドンドライバーを呼び出す。
同時に光り輝く三枚のコアメダル。
ムカデ、ハチ、アリの絵柄が刻まれたメダルが、ミハルの腰に装着されたポセイドンドライバーへとセットされた。
眩い光へと包まれる核融合炉内。
蛇の尾の如く長い鬣。
右腕に備わった鋭いニードルと、左腕の盾。
両脚には銀色に光る装甲が装着され、鈍い光を放っている。
『拙いです! 迅、今すぐこのエリアから離脱して下さい! 』
高速演算を使い、相手が迅の基本スペックを遥かに上回る事を知ったアークが、退避するよう指示を出す。
しかし、それに素直に従う迅では無かった。
「或人が言ってた、ターゲットの女の子は絶対逃がすなって。」
『湊ミハルは、XY染色体ですが? 』
「どっちでも同じ、俺は、どんな手を使ってもミハルちゃんをゲットする! 」
不測の事態によるミッション中止を命令しても尚、迅は素直に従う気配は、微塵も無かった。
生みの親である或人と同じで、迅も負けず嫌いな面がある。
「好きな子」というのは、所詮建前。
本音は、売られた喧嘩を買っただけであった。
『ふん・・・・愚かな・・・・。』
鋼の翼を広げ、愚かな侵入者が得物を構えて「王」たる自分へと健気にも挑んで来る。
エノシガイオスは、かつて味わった戦による美酒の味を思い出していた。
湾岸エリア、倉庫街。
機械歩兵『ガーディアン』の生産ラインがある工場の一区画に、左・翔太郎こと仮面ライダーWが身を隠していた。
「はぁはぁ、畜生、しつこい連中だぜ。」
何とかXガーディアン部隊と屑ヤミーの群れを薙ぎ倒して、この生産ラインに逃げ込んだが、いかせん数が多すぎる。
一体一体の戦闘力は、鼻糞みたいなモノだが、こう数が多くては流石に此方の体力が持たない。
『翔太郎、気を付けろ! 』
相棒のフィリップの声が聞こえるより先に、身体が動いていた。
仮面ライダーとして培われた経験と、センスが、翔太郎に回避の動きをさせていたのだ。
鋼鉄の壁に穿たれる一本の剣。
やや反り返った特徴的な刀身は、日本刀であった。
「か、仮面ライダーだと? 」
あまりの衝撃に、仮面の下の翔太郎の眼窩がこれでもかと開く。
翔太郎‐仮面ライダーwから数メートルの間隔を置いて立つ一つの影。
黒のライズアーキテククターとイエローを基調にしたプロテクター。
独特な複眼を持つソレは、まごう事なき自分と同じ、アーマードライダーであった。
「最初に言っておく、無駄な抵抗はするな。」
飛電エントリジェンスが持つテクノロジーの結晶体であるゼロワンは、右腕を壁に突き立てられた愛刀へと向ける。
不可視の糸に操られるが如く、主の手の中へと戻る日本刀。
ゼロワンが愛刀を正眼に構える。
「ち、鴻上ファウンデーションのライダーか。」
メタルメモリを取り出し、ジョーカーメモリと交換。
スロットに入れ押し込むとwの左半分が、銀色のメタリックカラーへとチェンジする。
右手には、旋風を纏った「メタルシャフト」を握っていた。
「相手の戦闘力は未知数・・・・慎重に立ち回れよ?翔太郎。」
「分かってる。」
サクロンメタルへとハーフチェンジした翔太郎が、メタルシャフトを構える。
互いに間合いを測りながら、対峙する両者。
最初にその均衡を破ったのは、Wの方であった。
サイクロンメモリにより付加される風の能力(ちから)を利用し、無数の真空刃を放つ。
それを高速移動で次々と躱すゼロワン。
強化された脚力を活かし、一気に相手との間合いを詰める。
繰り出される居合の一撃。
金属同士がぶつかり合う耳障りな音と、橙色の火花が散った。
変身を強制解除され、力無く倒れる迅。
そんな哀れな敗者を、エノシガイオスは冷徹に眺めていた。
「ちっ・・・・つまらん、能力を出し切る相手でもなかったか。」
右腕に装着されている鋭く長い針状外骨格、「ハチニードル」を構える。
背まで伸びているムカデの尾「センターセンチピード」で、獲物に十分毒を流し込んではいるが、用心に越した事は無い。
このニードルで、毒を流し続け、無残な最期を遂げさせてやろう。
冷酷な笑みを浮かべ、ムカチリコンボの毒により機能停止している迅へと近づいたその時であった。
突然、身体の自由が利かなくなる。
ぎこちなく歩みを止めるエノシガイオス。
その胸から、細い腕が突き出し、続いて華奢な肢体を持つ少年が這い出して来る。
エノシガイオスのパートナー、ミハルだ。
仮面ライダーポセイドンから分離したミハルは、よろよろと覚束ない足取りで、倒れる迅の傍らに辿り着くと、背後にいる相棒へと振り返る。
「み・・・・ミハル? 」
「駄目だ・・・・この人を殺しちゃ駄目だよ、ガイ。」
エノシガイオスが、明確な殺意を持って侵入者を殺害しようとしているのは、嫌でも分かる。
一糸まとわぬミハルは、倒れ伏す迅を護る様に、両手を広げた。
「良い子だから、そこを退くんだ、ミハル。 」
「否だ、人を殺しちゃいけないって、アイダ先生が言ってた。」
大量のコア・エナジーを吸収し、メダル生成の器に利用された為か、ミハルは疲労困憊な状態であった。
粗く息を吐きつつ、分離した事により、元のグリード体へと戻ったパートナーを睨み付ける。
「良く見ろ、ソイツは人間じゃない。ヒューマギアと呼ばれる人間に似せた人造生命体だ。」
エノシガイオスの指摘に、ミハルが足元に倒れる迅を一瞥する。
猛毒により焼き焦げた皮膚。
その下から、明らかに人間のモノでは無い、メタリックな外装と、血の代わりに青い液体が流れ出ている。
「分かったろ? ミハル。 ソレは敵だ。難破重工が送り込んだ企業スパイなんだ。」
「・・・・。」
確かにパートナーが言う通り、この男は人間では無い。
しかし、それでもこの侵入者を殺してはいけないという確固たる意志が、ミハルの双眸に宿っていた。
理由は、全く分からない。
でも、この男を殺しては、自分の大事な何かを永久に失ってしまう。
「駄目だ・・・俺は、彼を助ける。」
エノシガイオスから視線を外し、ミハルは倒れる迅へと屈み込むと、素早く状態を調べる。
皮膚が溶解している所を見ると、クラゲ独特の刺胞毒を多量に注入されたのだろう。
ムカチリコンボは、地球上に生息している昆虫や植物の毒を精製する事が可能だ。
今もブスブスと毒が、ヒューマギアの骨格を溶かし、煙を上げている。
早く、中和剤を投与しなければ、取り返しがつかない事態になってしまう。
「ガイ、手伝え、この人を医務室に連れて行く。」
「何だと? 」
パートナーからの予想外の命令に、エノシガイオスが気色ばむ。
狼狽する相棒を無視し、ミハルは己が全裸である事も顧みず、倒れている迅に背を貸した。
気絶した迅を背負い、治療室へと辿り着いたミハル達。
環境システムは、危険区域であり、もしもの為を想定して、潤沢な医療器具を揃えている。
ミハルは、背負っていた迅を処置台へと寝かせ、薬品棚を物色した。
「ミハル、自分が何をしているのか理解してるのか? 」
「知ってるよ、でも俺はグリードだから・・・・人を、命あるモノを護らないといけない。」
「お前の母親がそう教えたのか。」
「そうだよ、ガイだって、先生から教わっただろ? 」
自分の影に同化した相棒に悪態を吐きつつ、ミハルは無駄のない動きで、迅を治療していく。
滑車の付いた点滴棒を引っ張り出し、中和剤が入った点滴パックを吊るして、迅に投与する。
針を刺す手つきも、一時補強の為に巻く包帯も手慣れており、医療専門職顔負けであった。
「これを着なさい。」
一応の応急措置を終え、一息吐いたミハルに、液状化したエノシガイオスが、腕だけ実体化して、椅子に引っ掛けられている白衣を投げて寄越す。
「あ、ありがとう。」
そこで、初めて自分が裸である事を思い出した。
羞恥心に頬を赤く染めたミハルが、渡された白衣に袖を通す。
『一つご質問してもよろしいかな? 』
顔を真っ赤にして俯くミハルと、そんな主に呆れたパートナーの耳に、何者かの声が飛び込んだ。
医療器具の置かれた台車へと視線を向ける二人。
そこには、治療の為、迅から取り外した変身ベルト‐滅亡迅雷フォースライザーが乗っている。
『おっと、失礼、私の名前は”アーク”最新型情報処理システムです。言語の理解や推論、問題解決等をサポートするのが主な仕事です。』
「はぁ・・・・・。」
突然の自己紹介に、ミハルは鳩が豆鉄砲を食った様な顔になる。
相棒のエノシガイオスは、再びミハルの影へと同化すると、二人のやり取りを黙って見つめていた。
『何故、貴方達は環境システムにいたのですか? 』
「それは・・・・・。」
「敵に何も応える必要は無い、ミハル。」
アークに質問され、返答に窮するミハルにエノシガイオスが横槍を入れる。
確かに相棒の言う通りだ。
彼等は、セクターシティの心臓部とも言える環境システムに潜り込んだ侵入者だ。
「・・・・・出てってよ・・・。」
「ミハル? 」
「また俺の身体を使って、勝手にコアメダルを造ったんだろ? 」
鋭い視線を、床に映る己の影へと向ける。
走馬灯の如く駆け巡る記憶。
果樹園での仕事を終え、同じグリードであるガメルと一緒に食堂に向かった。
そこで、メズールとカザリと合流し、一緒に食事をした。
ウヴァは、配属されている部署が違うので、自分達より先に1時間の休憩を取り、先に受け持ちのエリアに戻っていた。
ガメルは、購買でお菓子を買い過ぎ、メズールに窘められていた。
カザリは、明日は非番なので、居住エリアにある大型ショッピングセンターに買い物に行くと言っていた。
メズールは、来週にガメルと有休を取って映画を観に行くのだという。
ささやかだが、楽しい食事を終え、午後の作業に戻ろうとした時、ミハルの意識がぷっつりと途絶えた。
ガメルと一緒に畑を整地する為に、農園に向かった事までは覚えている。
「・・・・暫く君の顔は見たくない・・・・何処かに行ってくれ。」
「・・・・・・。」
顔を背けるミハルに、エノシガイオスはそれ以上何も言う事は無かった。
ミハルの影から分離し、黒い液体のまま医務室からドアの隙間を通って外へと出る。
後に残されるミハルと、アーク。
「俺とガイ・・・・エノシガイオスは、二人で一人のグリードなんだ。」
『グリード・・・・・? 』
「800年前、この島にいた錬金術師達が造り出した人造の生命体の事だよ。」
疑うという感情が無いのか、ミハルは本来敵である筈のアークに、自分達の事とこの島の成り立ちを語って聞かせた。
この島は、貴重な古代遺跡のある孤島であった。
当初、考古学者達が遺跡発掘の為、この島に訪れていたのだという。
その時、彼等は数枚のコアメダルと未知なるエネルギー・・・コア・エナジーを発見した。
発掘隊のスポンサーであった鴻上ファウンデーションは、現地に様々な分野の科学者からなる研究員達を派遣。
その中に、後のセクター・シティの総責任者となるゼウス博士とアイダ博士がいた。
「先生が言ってた・・・・俺達は、人類の希望となるべく生まれたって、滅びゆくこの世界を救う為に生まれた救世主だって。」
『滅びゆく、とはあまり縁起の良い言葉ではありませんね? 』
この島にある遺跡には、当時、王の為に尽くしていた錬金術師達の残した書物が状態良く残っていた。
何故、繁栄の栄華を極めていた国が滅びたのか、何故、万の大軍を薙ぎ払う程の力を持つ「王」が死んだのか、その詳細が事細かに、書物の中に記されていたのである。
「此処を治めていた王様は、とても傲慢で自分の行いが正しいと思い込んでた。だから平気で国民達を苦しめ、他国を占領し、罪のない人々を殺していったんだ。」
『・・・・・。』
「傍若無人な王の振る舞いに、王の側近として生まれたグリード達は反旗を翻した。 先生が言うには、このままでは世界が滅亡してしまうと考えた末での決断だったらしい。」
そして、5人のグリード達は悪王を打倒し、人々に平和を齎(もたら)した。
アイダは、その記述と人間の歴史を重ね合わせたのだという。
地球という限りある資源を喰い尽くし、貴重な動植物を滅ぼす人間を諸刃の剣であると考えたのだ。
『だから、貴方達が生まれたという訳なのですね? 』
「うん、皆誇りを持って、この島を護ってる・・・・悪い奴等にこの島に残る偉大な知識を奪われない為にね。」
一番目に生まれたメズールは、汚染された海を浄化する為に、水質浄化エリアで働き、二番目に生まれたウヴァは、優れた筋力と戦闘力を買われ、この島のセキュリティー・ガードに。
三番目に生まれたカザリは、豊富な知識と技術を生かし技術開発スタッフの一人として活躍し、四番目に生まれたガメルは、その頑強な肉体と怪力を活かし、土木作業等の建築関係で働いている。
そして五番目に生まれたミハルとエノシガイオスは、仮面ライダーポセイドンとしてウヴァ達、セキュリティー・ガードでは対処出来ない、危険生物の処理を行っていた。
『素晴らしい家族ですね。』
「う、うん・・・・時々、喧嘩もするけどね。でも、俺はメズールやガメル、カザリやウヴァが大好きだ。」
多少の癖はあるが、皆、真面目で誠実だ。
己に与えられた役目に対し、誇りを持ち、人の為に従事している。
何時か皆で約束した。
アイダ先生の研究が終了し、全てが終わったら、外の世界を見て回ろうと。
その時、医務室のドアが唐突に開いた。
反射的に身構えるミハル。
ドアを開けたのは、数体の機械歩兵『ガーディアン』を従えたウヴァだった。
機械歩兵達が持つセーフガードライフルの銃口が、一斉にミハル達へと向く。
「銃を降ろせ。 」
コンバットジャケットを身に着け、セーフガードライフルを持つウヴァが、機械歩兵達に命令する。
そして、鋭い視線を素肌に白衣を着るミハルと、カートの上に乗る滅亡迅雷フォースライザーに向けられた。
「ウヴァ、あの・・・・・。」
「お袋、環境システムの医務室でミハルと侵入者らしき男を発見。ミハルは、無事だ。男の方は・・・・重症。担架で運ぶ。」
ミハルの言葉を遮り、右耳に装着しているインカムで、通信相手であるアイダ博士に短く状況を報告する。
機械歩兵に、処置台に寝ている迅をストレッチャーへと移すと、建物の外に待機している装甲車に運ぶよう指示を出した。
「どうして・・・・?」
「ガメルから聞いたんだ。 お前がガイの野郎に連れていかれたってな。」
ウヴァは、今迄の経緯を語って聞かせた。
農園での仕事を終え、締め作業をしていた時にミハルの様子がおかしくなった事。
無断で何処かへ行こうとするミハルをガメルが必死に止め様とした事。
そのガメルに攻撃し、怪我を負わせた事まで。
「お、俺が・・・・ガメルを・・・・・? 」
「安心しろ、セルメダルを数枚抜かれた程度だ。本人はピンピンしてる。」
怪我、と言ってもそれ程大したダメージを受けた訳では無いらしい。
彼等、グリードの核とも言えるコアメダルは無事な為、失ったセルメダルを補えば、又、何時もの様に日常生活を送れるそうだ。
「それより問題は、ガイの野郎だ。 何処へ消えたか知っているか? 」
「・・・・・御免、分からない。」
立場で言えば、ミハルよりエノシガイオスの方が遥かに上だ。
いくら二人で一人のグリードとはいえ、持っているコアメダルの数が違う。
エノシガイオスは8枚、ミハルは1枚。
力関係で言えば、当然あちらが上だ。
『あの、エノシガイオスというグリードの居場所なら、分かりますけど? 』
そんな二人のやり取りに、おずおずと言った感じで、間に入る者がいた。
人工知能『アーク』だった。
二人の視線が、未だカートの上に置かれたままの滅亡迅雷フォースライザーへと注がれる。
「コイツは? 」
「あ、アーク・・・・悪い人じゃないよ? とても良い人。」
「はぁ・・・・お前なぁ。」
「ご、御免。」
『疑う』という感情が欠落しているミハルは、すぐに「良い人」認定してしまう。
ちょっとでも優しくされると、子犬の様に懐いてしまうのだ。
只でさえ、ミハルは中性的美貌を持ち、傍目から見ると女の子の様に見える。
故に、その気が無くても、下心を持って接して来る不貞の輩は少なからずいる。
それを毎回、ウヴァとメズールが追い払っているのだが、いかせん当の本人がまるで気づいていないのだ。
「出鱈目教えやがったらすぐ壊すぞ。」
『貴方に嘘を教えて私に一体どんなメリットが? 』
セーフガードライフルの銃口を向けられても尚、アークは平然と応える。
確かに、仲間を助ける為ならば、此処で嘘の情報を教えるのはナンセンスだ。
それに、アーク自身がエノシガイオスというグリードに興味を持っていた。
「ちっ、ミハル、お前はコイツ等と一緒にメズールの所へ帰れ。俺は、ガイの糞野郎を捕まえに行く。」
セーフガードライフルの銃口を降ろし、肩へと担ぐ。
カートに乗せられている機械仕掛けのベルトを手に持つと、手持ち無沙汰なミハルに振り返った。
「お願い、ガイを虐めないで。」
後の事を機械歩兵達に任せ、医務室から出て行こうとするウヴァの腕を、ミハルが反射的に掴んでいた。
あれだけ、エノシガイオスに酷い目に合わされながらも、ミハルは、奴を憎む事が出来ない。
「・・・・・なるべく加減はしてやるが、奴は大事な家族を傷つけやがった。その分の落とし前はキッチリと付ける。」
「・・・・・・。」
鋭い眼光に射竦められ、ミハルは、何も言えずに掴んでいたジャケットの袖を離した。
5人兄弟の中で、ウヴァは誰よりもミハル達家族を大切にしている。
それは年長者故の責務であり、敢えて父親役を勤め、家族を纏め上げていた。
徐々に、意識が戻って来るのが分かる。
未だぼやける視界。
途端、眩しい照明の光に、左・翔太郎は思わず瞼を硬く閉じる。
「お? 漸くお目覚めか? 探偵坊や。」
聞き慣れぬ声に、閉じていた瞼を開く。
激しい頭痛と吐き気、身体を走る激痛に、翔太郎は喉の奥で呻き声を上げた。
「此処は・・・・・何処だ? 」
「居住エリアにある最高級ホテルのスィートルームだ、探偵坊主。」
男の声に俯いていた顔を上げる。
すると真向かいに、上等な革のソファに座る30代ぐらいの男性が、優雅に脚を組んで座っていた。
天海町に本社を置く、日本有数の大企業『飛電インテリジェンス』の若き社長、飛電・或人であった。
因みに、自分は簡易椅子に座らされ、拘束ベルトで後ろ手に縛られている。
「アンタ・・・・もしかして飛電エントリジェンスの社長か? 」
「ピンポーン、世界最先端のロボット開発技術を持ち、建築業界やアパレル、果ては医療や介護まで手広く活躍している大企業の社長様だ。」
何故かソファの背凭れに踏ん反り返った或人が、嘲りの表情で、囚われの探偵を見下す。
その社長の隣では、秘書兼護衛役の私設部隊『滅亡迅雷net』のリーダー、滅が日本刀を手に直立不動で立っていた。
「・・・・・そっか、俺の邪魔をしたアーマードライダーはアンタか。」
「ブッブー、不正解。カリメロ君残念。」
「か・・・・カリメロ? 」
イタリアで生まれた漫画のキャラクターの名前で呼ばれ、翔太郎が面食らった表情になる。
そんな翔太郎を他所に、或人は徐に立ち上がると、ゆっくりとした歩調で此方に近づいて来た。
「実は、ちょっと困った事態になっててね・・・・風都で優秀な探偵である君に是非とも協力して欲しいんだ。」
翔太郎の座らされている簡易椅子の背後へと周り、そこで歩みを止める。
背凭れを掴み、上から翔太郎を見下ろした。
「今、仕事中で手が離せない。 依頼があるならウチの鳴海所長を通して後日してくれないか? 」
翔太郎が或人のモデル並みに整った顔を見上げ、いつもの軽口を叩く。
港湾セクターにある生産ラインで、自分を襲撃したのは飛電或人である事は間違いない。
一体何故、IT界の神童と謳われるこの男が、鴻上ファウンデーションが持つこのセクター・シティにいるのかは、皆目見当つかないが、ろくでもない頼み事である事だけは分かる。
「所長? もしかして鳴海亜樹子ちゃんの事か? 半年前に風都署の刑事と結婚した。」
「え? 何でアンタがそんな事知ってるんだよ。」
「うーん、実を言うと彼女のお父さんとは知り合いでね・・・結婚式にも招待されていたんだけど、ちょっと手が離せない仕事が入って辞退したんだ。」
或人は、内ポケットから仮面ライダー一号のストラップが付いたスマホを取り出す。
画面を何回かスクロールし、目当ての写真を見つけると、椅子に縛られている翔太郎に見せてやった。
そこには、「或人叔父様へ(⋈◍>◡<◍)。✧♡」という題名で、結婚式に撮影した集合写真が映し出されている。
その他にも、結婚式の動画や、新居で旦那である照井竜とラブラブ直撮り写真まで添付されていた。
「俺聞いてねぇぞ・・・・・。」
「そりゃ、君に話す必要がなかったからじゃない? 」
前に亜樹子から、自分の父親に超金持ちの知り合いがいると聞いた事があるが、まさか世界有数のロボット産業の大企業『飛電エントリジェンス』の社長だとは思わなかった。
衝撃の事実に、翔太郎の顔から完全に表情が抜け落ちる。
そんな寸劇を繰り広げる二人の間に、滅の不機嫌な咳払いが聞こえた。
見ると、獲物を狙う鷲の如く、鋭い眼光が、若き社長を睨みつけている。
「あー・・・・本題に戻るが、お前に選択権は無い。俺の命令に従って駒になれ。」
「否だね、いくら親父さんの知り合いでも、アンタの手先になる気は・・・。」
「そっか、どうやら交渉する相手を間違えたらしい。」
あくまで従う意思がない翔太郎をあっさりと離し、室内に設置されている豪奢なテーブルへと移動する。
そこには、Wに変身する為に必要な『Wドライバー』が置かれていた。
或人は、懐から緑色のT1型ガイアメモリを取り出し、ドライバーのスロットに挿し込む。
スイッチを押すと、Wドライバーが輝き、一人の少年のホログラフィーが浮かび上がった。
「フィリップ!? 」
そこにいたのは、翔太郎の相棒、フィリップだった。
どんな方法を使ったのか、又、何故、T1サイクロンメモリをこの男が持っているのか知らない。
只、この男がメモリとドライバーを使って、フィリップの精神体をホログラフィーとして呼び出していた。
「やぁ、来人君、久しぶりだね。」
「冴子姉さんの誕生会以来ですね・・・・飛電教授。」
意外な事にこの二人は知り合いらしい。
何故か引き攣った顔をしているフィリップは、茫然としている相棒の翔太郎へ一瞥を送った。
映画版仮面ライダーの主題歌最高。