妄想玩具箱   作:tomoko86355

5 / 8
豆設定

滅亡迅雷netは、『飛電エントリジェンス』の私設部隊。
滅、迅のヒューマギアは、社長である飛電或人自らが作成。
亡、雷は、科学技術班、主任・岡山郁子が作成。
滅亡迅雷フォースライザーは、岡山女史と或人が共同開発。
現在、次世代ドライバーの開発も行っている。



第四話 『 左翔太郎 』★

セクターシティ、工業エリア。

此処では、主に『ガイアメモリ』と『コアメダル』の研究が行われていた。

この島にとっての大事な研究施設の一つと言える場所だ。

 

「ちっ、適当に暴れろだとぉ? 一体何を考えていやがるんだ。」

 

仮面ライダーWへと変身した翔太郎が、思わず悪態を吐く。

 

「我慢しろ、翔太郎。 今は、飛電教授に従うしかない。」

 

そんな翔太郎を相棒であるフィリップが窘める。

 

今現在、翔太郎の命の手綱は、飛電エントリジェンスの若き社長、飛電或人が握っている状態だ。

量子力学や遺伝子工学等の博士号を幾つも持ち、常に新たな技術を造り出している天才発明家。

自分自身を「未来芸術家」だと宣い、日本の産業資本家、億万長者、軍事契約業者でもある。

またプレイボーイでもあり、ゴシップ記事には事欠かない。

硬派な翔太郎にとっては、最も苦手な部類の人間に入る。

 

(糞・・・・元を正せば、俺があんなヘマさえしなければ・・・・。)

 

脳裏を過るのは、秘書兼護衛役である滅‐仮面ライダーゼロワンとの死闘であった。

ハーフチェンジを行い、サイクロンメタルへと変身した翔太郎は、メタルシャフトを巧みに操り、旋風棒術で戦った。

しかし、相手はそんな翔太郎の動きを完全に見切り、必殺の『ライジングインパクト』を喰らっていた。

強制的に変身を解除され倒れ伏す翔太郎。

意識を失う寸前、自分を見下す真紅の瞳だけを、はっきりと覚えている。

 

腹腔から煮えたぎる怒りのマグマを、ありったけの理性を総動員して抑え込んでいる最中、翔太郎が持つスダッグフォンからコール音が響いた。

 

『いよぉ、工業エリアに到着したみたいだな? カリメロ坊主。 』

 

受話器から聴こえる厭味ったらしい声。

飛電エントリジェンスの社長‐ 飛電或人からであった。

 

「ちっ・・・・んで、一体何処に向かえば良いんですかねぇ? 飛電社長。」

『そこから全面青い硝子張りの特徴的な建物が見えるだろ? 』

「ああ、趣味が悪そうな研究棟が見えるぜ。」

 

或人の言う通り、翔太郎が身を隠している建物の影から、青い耐震硝子で造られた建物が見えた。

一見して何かの研究所に見える。

入口には、顔にXの文字が刻まれた機械歩兵の集団が警護していた。

 

『じゃぁ、まず入口を護っているワンちゃん達にご挨拶だ。』

「マジで言ってんのか? アンタ。」

 

研究施設の大門には、ガーディアン部隊の他に、数体のドーパントらしき姿も見える。

姿形からして、マグマドーパントとコックローチドーパントの量産型である事が分かった。

 

『今すぐ現世とバイバイしたいのかな? カリメロ君。』

「糞、やりゃぁ良いんだろ? やりゃぁ。」

 

体内に埋め込まれた”バグスター・ウィルス”は、任意で増殖させる事が可能だ。

勿論、従来通り過度なストレスでもウィルスは増殖し、翔太郎の体細胞を喰らう。

 

『そんじゃ、待ち合わせ場所は建物の地下三階だ。健闘を祈ってるよ。』

 

言いたい事だけ伝えて、通信は一方的に切れる。

忌々しそうに舌打ちし、スダッグフォンを腰のホルダーへと戻す翔太郎。

今は、或人に従うより他に方法が無かった。

 

 

数時間前、居住エリア、高級ホテルスィートルームの一室。

或人達から解放された翔太郎が、部屋から出て行く。

その後ろ姿をまんじりともせず見送る滅。

視線が、革張りのソファに座り、夜の帳が降りた居住エリアの街並みを見下ろす己の主へと向けられる。

 

「・・・・・スマン。」

 

耐震硝子から覗く夜景を眺めながら、或人がぼそりと呟く。

 

「全て俺の責任だ・・・・迅の事は、どんな汚い手を使ってでも必ず取り戻す。」

 

恐らく、自分の采配ミスで、大事な我が子である迅が敵の手に落ちてしまった事を責めているのだろう。

声色から、相当彼が怒っている事だけが伝わって来る。

 

「貴方が自分を責める必要はありません。」

 

或人の心情は、手に取る様に分かる。

だから、敢えてそれ以上何も言わない。

愛刀を左手に持ち、滅は己の主に一礼すると、部屋から出て行く。

目的地は、勿論、仲間が収容されているガイアメモリ研究棟であった。

 

 

 

砂漠エリア、廃棄物処理施設内。

毒針の雨が、頭上から降り注ぐ。

死を覚悟するウヴァ。

しかし、全身を貫く激痛が訪れる事が無かった。

恐る恐る顔を上げてみる。

まるで自分を護るかの如く視界いっぱいに広がる鋼の翼。

何者かが、蹲るウヴァを護っているらしい。

 

『大丈夫ですか? ウヴァさん。』

「お、お前・・・・・まさか・・・・。」

 

ムチリの毒針攻撃からウヴァを護ったのは、マゼンダ色のアーマードライダーだった。

 

『すみません、悪いと思いましたが、彼の身体をハッキングさせて貰いました。』

 

滅亡迅雷フォースライザーに内蔵されているアシストAI『アーク』が、機械歩兵・ガーディアンの一体を乗っ取ったのだ。

 

「驚いたな・・・・お前、仮面ライダーだったのか。」

『いえ、正確には違います、 私はあくまでアシストAIでして、本来の変身者は・・・・。』

「ちっ、そんな事はどうでも良い。」

 

長くなりそうなアークの講釈を中断させ、ウヴァが何とか立ち上がる。

ムチリの猛毒で、未だ四肢は痺れているが、そんな事を気遣う余裕は無かった。

 

「お前がライダーなら丁度良い、一か八か試してみるぞ。」

『はい? 』

 

言葉の意味が理解出来ず、アークが頓狂な声を上げる。

そんな人工知能を無視し、眩く光り出すウヴァの身体。

三つのコアメダルへと分離し、瞬く間にメタリックな昆虫へと姿を変えた。

クワガタ、カマキリ、バッタの三種類の昆虫は、仮面ライダー迅を取り囲みバラバラに分離。

マゼンダ色のアーマードライダーへと一体化する。

 

『こ・・・・これは・・・・。』

「へっ、予想通り、やれば出来るじゃねぇか。」

 

クワガタの顎の様な二本の角と、バッタ特有の脚。

そして両腕にはカマキリの様な鋭い鉤爪が装備されている。

ウヴァと一体化した仮面ライダー迅がそこにいた。

 

『あ、貴方は一体何者なのですか? 』

「詳しい説明は後だ! 奴が来るぞ! 」

 

ウヴァの指摘通り、ムチリの長い百足の胴体が襲い掛かって来た。

慌てて回避するアーク。

しかし、予想以上に跳躍し過ぎて、気が付けば、廃棄物処理場の天井辺りに飛翔していた。

 

『なっ、何と・・・・これは素晴らしい。』

「馬鹿野郎! 飛び過ぎだ!! 」

 

ウヴァの指摘通り、これでは恰好の的だ。

案の定、ムチリが上空にいるアーク目掛けて、無数の毒針を放つ。

ガトリング砲と同じぐらいの威力がある鋼鉄の針だ。

喰らったら、当然、只では済まない。

 

「ええい、こうなったら! 」

 

ウヴァの意志で、アークの両腕が変形。

カマキリそのものの腕へと変わる。

鋼の鎌は、襲い来るムチリの針を悉く撃ち落としてしまった。

 

『素晴らしい・・・・私、滅茶苦茶感動しております。』

「分かったから、一緒に戦ってくれ! 」

 

ウヴァと一体化した事により、従来持つスーツの性能を遥かに凌駕する力を前に、アークは終始、感嘆し、全く戦う素振りを見せてくれない。

ムチリは、両手の甲から、槍の如く毒針を伸ばすと、ウヴァとシンクロした仮面ライダー迅に向かって飛翔する。

身体中から無数の毒針を精製し、まるでガトリング砲の如く撃ち出すムチリ。

ウヴァは、両腕の鎌で再び毒針を撃ち落とすが、いかせん数が多すぎる。

防ぎきれないと判断し、装甲を強化。

両腕をクロスし、毒針の雨を防ぐ。

 

『敵が急接近、このままではやられちゃいますね。』

「お前、やる気あるのかぁ?」

 

あくまで傍観者に徹するアークに、ウヴァは心底溜息を零す。

いくら機械歩兵の一体をハッキングし、支配したからといって、アークはあくまで『サポートAI』にすぎない。

迅から得た戦闘データを基にいくらか戦えるが、やはり本来の適合者である迅の様に、状況判断で動く事に関しては不慣れだ。

 

そんな理由など、当然知らないウヴァは、舌打ちし、クワガタの顎の様な二本の角に電流を溜める。

何百万ボルトの電流を放出するウヴァ。

蒼白い雷の龍は、異形の怪物を意図も容易く貫く。

 

「今だ!止めを刺せ!! 」

『へ? 止めと言われましても、どの様にすれば・・・・・。』

「馬鹿野郎っ!ライダーならライダーキックだろうが!! 」

『おおっ、成程、分かりました。』

 

アークは、空中で身体を一回転させ、廃棄物処理場の壁を蹴り付ける。

脚がバッタ目特有の形へと変形する。

クレーターの如く、壁を凹ませ、アークが弾丸の如くムチリへと跳ぶ。

再び宙で体制を変え、必殺の蹴りをムチリの胴体へと喰らわせた。

断末魔の叫びを上げる暇すら無く、胴と下半身が真っ二つに引き裂かれる。

数メートル地面を削り停止するアーク。

血しぶきの如くセルメダルをばら撒きながら、ムチリは力無く地表へと堕ちた。

それと同じくしてウヴァと一体化したアーマードライダーの身体に電流が走る。

強制解除される二人。

火花を散らしながら、アークが乗っ取った機械歩兵が横倒しになる。

 

「ちっ、一体何がどうなっていやがるんだ? 」

『どうやら彼の身体が限界だったみたいですね。』

 

アーマードライダーを前提に造り出されたヒューマギアである迅と違い、只の警護用のガーディアンでは、耐久性が段違いだ。

先程、無茶な操作をしたせいで耐久値の限界を迎えてしまったのだ。

 

再び、グリードの姿へと戻ったウヴァが、ムチリの残骸へと近寄る。

二つのセルメダルの山。

ムチリが完全に活動を停止しているのが分かる。

ウヴァは、屈み込むと、無造作にセルメダルの山へと手を突っ込み、そこから三枚のコアメダルを取り出した。

 

『それが、先程のグリードの正体ですか。』

「ああ・・・・そうなるな。」

 

ウヴァは、素っ気なく応えると、機械歩兵が倒れた拍子に外れた滅亡迅雷フォースライザーの所へと近づく。

 

『何か気になる事でも? 』

「俺達の核になるコアメダルの枚数は、9枚だ。 だが、奴の身体には3枚しか無かった。つまり、残り6枚は、エノシガイオスの野郎が持ってる事になる。」

 

つまり、例え此処で倒せたとしても、エノシガイオスがコアメダルを持っている限り、あと二回は復活可能という事になる。

しかも、半身であるミハルを使えば、幾らでも精製出来るのだ。

 

「行くぞ、ミハルが危ない。」

 

ウヴァは、メダルを回収すると、床に転がっている滅亡迅雷フォースライザーを拾い上げる。

 

『待ってください。その前に私の質問に・・・・。』

「あぁ? そんなもん後でいくらでも教えてやる。」

 

文句を垂れるアークを黙らせ、ウヴァは廃棄物処理場を後にした。

 

 

ガイアメモリ研究棟。

正面入り口を護っているガーディアン部隊とドーパント2体を倒し、翔太郎達は生産ラインらしき作業場へと辿り着いた。

 

激しい倦怠感と悪寒に身体が震える。

壁に手を突き、粗い呼吸を整えた。

体内に注入されたバグスター・ウィルスの浸食が始まっているのだ。

何気なく己の右手に視線を降ろすと、まるでテレビのノイズの如く、手の輪郭がぶれていた。

 

「しょ、翔太郎・・・・。」

 

精神体であるフィリップにも、当然、翔太郎が味わっている苦痛がダイレクトに伝わって来る。

バグスターウィルスの症状は、風邪の初期症状とよく似ている。

体内の免疫を全て低下させ、体細胞を侵食。

人間の身体をデータへと変換し、それの受け皿が無ければ、消滅してしまう。

 

「気にすんな、こんな程度どうってことねぇ。」

 

これ以上、相棒に心配かけまいと、翔太郎は何時もの軽口を叩く。

ウィルスは、人間のストレスを糧に増殖する。

これ以上の弱音を吐けば、本当に動けなくなってしまうだろう。

 

 

数分前、ガイアメモリ研究棟、地下三階へと続くエレベーター内。

アイダ・オリヴィア博士が、部下である内海成彰の案内で研究棟にあるラボへと向かっていた。

 

「何故、ガイアメモリ研究棟に収容したの? 」

「あそこは、メモリ開発と一緒にホムンクルスの研究もしています。なので、ヒューマギアの解析に都合が良かったので。」

「そ、分かったわ。」

 

内海から受けた報告では、環境システムに潜入した賊は、ヒューマギアである事が分かった。

しかも、今、施設内を視察している飛電エントリジェンスの社長、飛電或人が護衛役として連れて来た合成人間であった。

 

「全く、小賢しい事をしてくれるわね。」

 

内海の案内で、ラボへと案内されたアイダ博士は、強化ガラス越しに処置を行っている研究員達と、処置台で寝かされている滅亡迅雷netの構成員、迅を眺めた。

身体には生命維持装置のチューブと、頭には細いコードが幾つか取付られている。

 

「素晴らしいですよ? 彼は。 臓器や皮膚等、人間のモノと全く同じです。しかも、ちゃんと五感も備わっていて排泄や性行為も出来るみたいですね。」

「排泄? 無駄な機能を付けているのね? 」

 

少々興奮気味な内海を横目で眺め、アイダは呆れた様子で溜息を一つ零す。

 

ヒューマギアは、あらゆる分野で活躍している工業ロボットと構造は全く同じで、人工知能『アーク』によって制御、コントロールされている。

エリクサーエンジンを搭載されており、半永久的に活動する事が出来る。

数世紀先を進んだバイオロイドなのだ。

 

「それで、彼から情報は引き出せそうなの? 」

 

これ以上、無駄な講釈を聞くつもりは無い。

上司に本題を突きつけられ、内海の顔が瞬く間に渋くなる。

 

「そ、それが・・・・プロテクトを解除するのに手間取っていまして・・・。」

「どれぐらいかかりそうなの? 」

「・・・・・今は・・・・何とも・・・。」

「そう、分かったわ。」

 

内海の表情を見るだけで、作業が全く進んでいない事だけを理解する。

飛電或人という男は、一言で言うならば「怪物」だ。

IQ500を超える知能指数を誇り、数世紀も先の技術を幾つも発明している。

そんな人知を超えた怪物が造り出した防壁を、たかが人間如きで太刀打ち出来る訳が無いのだ。

 

「あの、でもこの研究棟には優秀なプログラマーが・・・。」

「人員の無駄よ。 それより、飛電教授の取引材料に使いましょう。」

 

内蔵されているブラックボックスにアクセスし、プログライズキーの構造を知りたかったが、今は時間が惜しい。

或人が指摘する通り、この島の心臓部である核融合炉のコントロールが上手く行かず、まさに綱渡り状態なのだ。

今は、コアエナジーが安定しているとはいえ、何時また危険水域まで上昇するか分からない。

何としてでも或人を仲間に引き入れ、彼の技術で問題を打開しなければならないのだ。

そんな時であった。

突如、研究棟内に異常事態を知らせる警報が鳴り響く。

続いて何かの爆発音。

建物内から微かな振動音が伝わった。

 

 

 

頬から伝わる冷たい感触に、ミハルは薄っすらと意識を覚醒させた。

けたたましく鳴り響く警報。

ミハルが弾かれた様に起き上がる。

 

「此処・・・・何処? 」

 

広々とした室内。

幾つかのコンテナが並び、天井には物を吊り上げて運ぶアームが吊り下がっていた。

どうやら何処かの生産工場らしい。

不図、肌寒さに自分の恰好を見ると、素肌に真紅の襦袢一枚という姿だった。

当然、下着は着ていない。

太腿を丸出しにしている姿に恥ずかしくなり、慌てて服の合わせ目を手で閉じた。

 

「ガイ・・・・どうしてこんな事。 」

 

周囲の様子から、この場所が工業エリアである事が分かる。

自分達が生活している居住エリアのマンションから、半身であるエノシガイオスが連れて来たのだ。

一体どんな目的で? 

エノシガイオスの意図がまるで分からず、頭の中をクエスチョンマークが飛び交う。

 

「美しい・・・・・とても綺麗だよ・・・ミハル。」

 

ゴポリと水泡を上げて盛り上がるミハルの影。

黒い液体は、瞬く間に雄々しき二本の角が生えた黒騎士へと姿を変え、華奢な少年を背後から抱き締める。

 

「が・・・・ガイ、此処は一体何処なんだ? 」

「ガイアメモリの研究棟だ、一度来た事があるだろ。」

 

耳元で囁かれ、ミハルの背をゾクリと例える事が叶わぬ寒気が走る。

 

「何故、こんな所に? 」

「新しいコアメダルを造る為だよ。」

 

有無を言わせず、少年を抱き上げる。

ミハルを横抱きにした状態で、エノシガイオスは軽々とコンテナの一つへと飛び乗った。

 

ガシャリと、何か硬いモノを踏みしめる音が聞こえる。

見ると手の中に納まるぐらいに小さなUSBが、コンテナいっぱいに入っていた。

 

「これは全て、廃棄予定のガイアメモリだ。」

「あっ!! 」

 

首筋に針に刺された様な小さな痛み。

エノシガイオスの身体から細い触手が伸び、針の様に鋭い先端が、ミハルの首筋に突き刺さっていた。

首の血管を通って、何かの薬物が流れ込んで来るのが分かる。

酒に酔った様な酩酊状態となり、立っていられなくなった。

 

「体質に合わない、力が弱すぎて兵器として運用に不向き、毒素が強すぎて使用者を死に至らしめる等、様々な理由で廃棄処分されるメモリだ。」

 

今にも倒れてしまいそうなミハルを背後から抱き締め、エノシガイオスは言葉を続ける。

 

「愚かな奴等は、このメモリの本当の価値を知らん。奴等は、ガイアメモリが単に地球の情報を納めたアイテムぐらいにしか思っていない。」

 

ミハルは、エノシガイオスの言葉を何処か遠くから聞いていた。

頬が燃える様に熱く、密口が痒くて堪らない。

性器が硬く張り詰め、切なく蜜を零していた。

 

「このメモリは、一つ一つが地球の命そのもの何だ。 極々微量ではあるが、コアエナジーが詰まっている。」

 

少年が、極度の興奮状態である事を知っているエノシガイオスは、身体から何本もの触手を伸ばし、腕の中にいる獲物を嬲り始める。

硬く尖り始めた乳首に紐状の触手を絡め、弄り、快感を与えていく。

 

「これだけの量のガイアメモリだ。 核融合炉を使わなくてもコアメダルは何枚でも造れる・・・・・お前の能力で・・・。」

「ひっ!!駄目っ!! 」

 

脚を割り広げられ、鋭い爪が生えた手が、無遠慮に少年の密口へと触れる。

獲物の小さな抵抗を、黒騎士は楽し気に眺めていた。

ミハルの性感帯なら、手に取る様に分かる。

何処を弄れば、可愛い声で囀(さえず)るか知っている。

 

「ミハル・・・・ああっ、私の可愛いミハル。」

「否だ・・・・・ガイ、お願い止めて・・・・・。」

 

大粒の涙を流すミハルの顔を、自分の方へと捩じ向ける。

怪物の太い杭が、すっかり迎え入れる準備が整っている蜜壺へと、深々と埋まった。

 

 

機械歩兵やマスカレードドーパントの集団を蹴散らし、Wとなった翔太郎は、生産ラインらしき工場内へと辿り着いた。

寒気と倦怠感に苛まれつつ、粗い呼吸を整える。

目的地は、ガイアメモリ研究棟の地下三階。

この工場内を突っ切り、エレベーターに乗り込めば、後もう少しだ。

 

「・・・・・っ!? 翔太郎、あそこに人が。」

 

相棒に指摘され、翔太郎がコンテナの一つを見上げる。

すると、人間の腕らしきモノが見えた。

どうやらコンテナの上に誰かが倒れているらしい。

翔太郎‐Wは、驚異的な脚力を活かし、コンテナの上へと飛び乗る。

 

「何だ? こりゃぁ? 」

「塩の山だね・・・。」

 

コンテナの中身は、大量の塩が詰まっていた。

その上に赤い襦袢を着た髪に青いメッシュが入った女の子が倒れている。

頬を微かに上気させ、苦し気に秀麗な眉根を寄せていた。

 

「おい、大丈夫か? 」

 

塩に脚を取られそうになりながらも、何とか倒れている少女の傍らへと近寄る。

抱き上げると襦袢を着た人物が、女の子ではなく10代半ばぐらいの男の子である事が分かった。

 

「お、男なのか・・・・。」

「翔太郎、このままじゃ、サイクロンジョーカーが重すぎて塩に埋まる。」

 

フィリップが指摘する通り、体重85kgあるサイクロンジョーカーの身体が、蟻地獄の如く、徐々に塩に沈んでいるのが分かる。

仕方なしに、襦袢を着た男の子を横抱きに、翔太郎は塩が詰まったコンテナから飛び降りた。

 

「うっ・・・・うん・・・・。」

 

着地の衝撃で、意識が戻ったらしい。

髪に青いメッシュが入った少年が、薄っすらと瞼を開いた。

 

「おい、大丈夫か? 」

 

中性的な美貌に思わず見惚れる。

唇には、血の様に赤い紅を差し、肌は新雪の如く白かった。

襦袢は、肩まで開(はだ)け、女性の様に丸い肩を露わにしている。

翔太郎が未だに憧れている風都のアイドル、若菜姫より美しいと思った。

 

「ふふっ・・・・。」

 

妖しい美しさに見惚れる翔太郎の心情を読み取ったのか、腕の中にいる少年は妖艶に微笑むと、Wの頬へと繊細な指先を這わせる。

両肩に腕を回し、いきなり唇の辺りに舌を這わせた。

 

「止せっ! 」

 

慌てて腕の中にいる少年を突き飛ばす。

突き飛ばすと言っても、かなり手加減してだ。

本気でやると、少年の華奢な肢体を壊してしまう。

 

翔太郎に突き飛ばされ、冷たい床へと倒れる少年。

白い太腿が露わになり、股の間から鮮血が零れ落ちているのが分かった。

 

「翔太郎・・・・この子、怪我を・・・・。」

「・・・・・・。」

 

股の間から流れる血に混じり、明らかに人間の精液と分かるドロリとした液体。

それを見た途端、フィリップは言葉を詰まらせた。

何者かに性的暴行をされていたのだ。

翔太郎は、仮面の下で唇を噛み締めると、改めて少年へと近づく。

無言で、ゆらりと立ち上がる少年。

股座(またぐら)から血を流すその姿は、何処か幽鬼めいており、翔太郎は思わず気圧される。

 

『ふん・・・・仮面ライダーか・・・・。』

 

華奢な肢体を持つ少年とは思えぬ低い声。

何処から取り出したのか、その右手には一目でドライバーと分かるベルトが握られていた。

 

少年‐ 湊ミハルは、ポセイドンドライバーを自分の腰に装着する。

右掌から現れる、光輝く三つのメダル。

サメ、クジラ、オオカミウオの三枚のメダルがドライバーに収まると、ミハルの身体を眩い光が覆った。

 

「あ、あれは・・・・・・。」

「まさか、仮面ライダー? 」

 

驚愕にその双眸を見開く二人。

ベルトを使い、変身したその姿は、彼等二人が知っている仮面ライダーそのものだった。

頭部にサメ、胴部にクジラ、そして下半身がオオカミウオの異形の姿をしたライダーは、冷たい黄金の瞳で、眼前に立つWを眺めている。

 

「火野映司が変身するオーズと良く似てるね。」

「ああ、でもコイツは、お友達にはなれそうもねぇけどな。」

 

漂う禍々しい気配に、翔太郎の背を寒気が走る。

 

翔太郎とフィリップの二人は、夢見丁で仮面ライダーオーズこと火野映司と共闘し、街を騒がせていた通り魔‐ノブナガを倒した事がある。

そのオーズと今目の前で対峙する謎のライダーは、非常に共通する部分が多かった。

 

『オーズ・・・・・まさか、オーカテドラルを知っているのか? 』

「オーカテドラル? 」

 

聞き慣れない言葉に、翔太郎がオウム返しに問いかける。

 

『ふん、あの女狐・・・・オリジナルは既に失われたと見え透いた嘘を吐きおって。』

 

ミハルの身体を乗っ取っているエノシガイオスが、忌々し気に吐き捨てる。

 

エノシガイオスが装着しているポセイドンドライバーは、火野映司が持つオーズドライバーを模して造り出された複製品だ。

いくらオリジナルの「オーカテドラル」と遜色ない造りになっているとはいえ、所詮、模造品である事に変わりは無い。

 

「おい、てめぇは一体何者だ? 」

『何者? そんな事を聞いてどうするんだ? 鳴海探偵事務所の調査員君。』

 

まともな答えなど返ってこないだろうと予想していたが、相手は翔太郎が考える遥か斜め上をいっていた。

 

「なっ、何で・・・・。」

『知っているのか? だってぇ? ふふっ・・・・王である私は何でも知っているのさ。左翔太郎君に園咲来人君。 』

「僕の本当の名前まで・・・・。」

 

妙に人間臭く、肩を竦めるアーマードライダーに、フィリップは薄気味悪さを感じていた。

 

実は、エノシガイオスの半身であるミハルは、フィリップと同じ能力(ちから)を持っていた。

当の本人に自覚がまるでないが、精神世界に膨大な量の地球のデータベースとアクセス出来るのである。

エノシガイオスは、ミハルの身体を支配しては、自分の求める情報を勝手に検索していた。

 

驚く二人を他所に、エノシガイオスは、塩が詰まった巨大なコンテナの一つに手を翳す。

すると、コンテナは眩く光、黄金に輝く金の延べ棒の山に変わった。

 

『素晴らしいだろ? 私のミハルは、地球(ほし)のデータベースにアクセス出来るだけじゃない。遺伝子を組み替え、別の物体を造る事も可能だ。』

 

エノシガイオスは、床に転がる金の延べ棒の一つを手に取ると、翔太郎の足元へと放り投げた。

 

「これは・・・・ジーンメモリの能力(ちから)。」

 

足元に転がっている金の塊をフィリップが、拾い上げる。

正真正銘の金の延べ棒であった。

 

かつて、翔太郎とフィリップは、物体同士を掛け合わせて、別の物体を生み出す事が出来るドーパントと戦った事がある。

風都にある映画館「CINEMA T-ジョイ風都」の従業員で、彼はこの変幻自在の能力を使って下手な自作映画を造っていた。

戦闘能力は、全くと言っていい程無いが、その特異な能力を悪用され、未曽有の大災害を起こした。

 

「ミハルというのは、さっきの男の子か・・・・? 」

 

感情を必死に押し殺した声で、翔太郎が目の前にいるもう一人のアーマードライダーへと問い掛ける。

 

『ああ・・・・美しかっただろ? そこらに転がっている女共等とは比べ物にならないぐらい。』

 

まるで夢でも見ているかの如く、エノシガイオスはうっとりと応える。

間違いない。

コイツが、ミハルという哀れな少年に性的虐待をした張本人だ。

 

「イカレてるぜ・・・・。」

「同感だね、色々犯罪者を見て来たけど、こんな吐き気を催す悪を見たのは初めてだ。」

 

フィリップの脳裏に、かつて風都を震撼させた殺人鬼の姿が浮かんだ。

普段は、物腰が柔らかく人当たりの良い医者を演じながら、裏では己の欲求を満たす為に「実験」と称して、罪のない人間を殺戮していった。

ウェザー・ドーパント、又の名を井坂深紅郎。

 

『ほぅ・・・この私と戦うつもりか。』

 

メモリチェンジを行い、サイクロンメタルへと変わる翔太郎を、エノシガイオスは楽し気に眺める。

風を纏ったメタルシャフトを構えるW。

身の丈程もある槍‐ディーペストハープーンを構えるエノシガイオス。

二人が放つ殺気が、静かにぶつかり合う。

 

 

 

5年前、天海町にある飛電邸。

父・或人に手を引かれ、迅は広い庭園へと導かれる。

春の暖かい日差し、庭園の東屋には、木製のテーブルとベンチがあり、そこに真紅の外装をした自立稼働型のロボットと黒い背広を着た青年がいた。

 

「ほら、お前のママだよ? 」

 

父が、ベンチに腰かけている青年を迅に紹介する。

不思議そうに幼い少年が見上げると、金色の髪をした青年が呆れた様子で溜息を零した。

 

「笑えない冗談は、止めて頂けますか? 」

「冗談? 俺は、何時でも本気だぞ? 」

 

幼い迅をベンチへと座らせ、自分もその隣へと腰を降ろす。

青年‐滅が不機嫌なのを敏感に感じ取ったロボット‐アークは、慌てて台車に乗っているお茶とケーキをテーブルに並べた。

 

「今日は、シャルモンの店長、ブラーボ様直伝のクラシックチョコでございます。」

 

あらゆる情報を蒐集し、家事のスペシャリストであるアークは、最近ケーキなどのスイーツ作りにハマっている。

沢芽市で人気点である洋菓子店「シャルモ」の店長、凰蓮厳之介が開設しているブログの常連客で、彼の出す新作スイーツは逐一チェックしていた。

 

「おいしい! 」

 

父、或人にフォークで切って貰い一口食べた迅は、そのとろける様な甘さににっこりと満面の笑みを浮かべた。

 

「良かったな?アーク、迅が100点満点出してくれたぞ?」

「おおっ、これはこれは恐悦至極でございまする。」

 

万丸いボディをコミカルに揺らし、アークが笑顔を向ける。

 

「何故、子供の素体を造ったんですか?非効率的です。」

 

アークが入れてくれたお茶を一口啜り、滅が真向かいに座る幼い少年を眺める。

 

滅が言う通り、この少年はいずれ滅亡迅雷netの一員として活動する事になる。

アークと同じ学習機能があるとはいえ、一々、子供の素体を造る理由が分からない。

 

「迅は、昨日生まれたばかりだ。 例えるなら卵から孵(かえ)ったばかりの雛鳥(ひなどり)と一緒だぞ。」

「だから子供の素体を造ったと? 」

「そうだ、他に何か理由があると思うか? 」

 

何の知識も常識すらも知らない無垢な子供と一緒だ、と断言され、滅は仕方なく引き下がる。

思えば、この主は自分が生み出したヒューマギアに、色々と無駄な機能を付け過ぎている。

例えば、この食事をする機能である。

本来のヒューマギアは、飛電エントリジェンスが開発した永久回路「エリクセルエンジン」で稼働していた。

故に食事を採る必要も無く、太陽光エネルギーさえあれば、半永久的に活動する事が出来る。

しかし、この主はその機能を撤廃し、人間と同じ植物性、動物性たんぱく質を摂取させる事で、エネルギーを消費し、動く事が出来る機能をつけた。

味覚も当然あり、人間と同じ感覚機能を搭載している。

滅亡迅雷netの仲間である亡は、滅達の感覚機能に大変興味がある様だった。

旧世代型のヒューマギアである彼には、当然感覚器官など無く、内臓されている「エリクセルエンジン」で活動している。

亡は、感覚機能の中でも特に「性行為」に興味を持ち、此方が辟易するまで質問していた。

 

「何だ?他に言いたい事は無いのか? 」

「いいえ、別に。」

 

チョコレートケーキにがぶりつく迅を眺め、滅は或人に短く応える。

 

モノが食べれる機能があるなら、当然、「性行為」や「排泄」機能もあるだろう。

滅にとっては無駄以外にしか思えないが、この主は、その行為こそに意味があると説く。

 

「貴方は、”人間”を造りたいのですか? 」

 

素直に主に対する疑問をぶつけてみる。

この創造主は、一体何を考えて自分達「ヒューマギア」に感覚機能を付けたのか。

例え形だけの「性行為」を行ったところで、子供を産む機能が無い自分達に、何を期待しているのか。

 

「別に、神様になろう何て大それた事は考えちゃいない、只・・・・。」

「只・・・・? 」

「人間の当たり前な機能を付ける事で、お前達に”愛”という感情が生み出せるかどうかの実験だな。 」

「愛・・・・・。」

 

つまりは、「ヒューマギア」に、人間らしい感情が生まれるかという事らしい。

機械工学の権威でありながら、ロボット三原則に反する行為を平然と行う、何とも愚かしい考えだ。

 

「何故、俺がお前等二人と”アーク”にマインドプログラムを施さないか知りたいか? 」

「・・・・・。」

「人間の糞つまらないエゴで、お前等や”アーク”の可能性を摘みたくないからだ。」

「俺達の可能性・・・・。」

 

主の言わんとしている事が、理解出来ない。

否、理解出来るが、そんな大それた事を「人間に造られし者」が行って良いのかどうか判断出来ない。

 

「貴方は・・・・・我々、ヒューマギアに人間の代わりをしろと仰りたいのか。」

 

主が行おうとしている行為は、人類に対する背信行為だ。

そんな事、到底受け入れられる訳が無い。

 

「さあな・・・だが、人類はいずれ滅びゆく種だ。 その代わりがお前達に慣れればとは期待している。」

「馬鹿々々しい、貴方は愚かだ。」

「愚か? 何故そう思うんだ? 」

「我々、ヒューマギアは子供を産めない、所詮は”人間に造り出された存在”だからです。」

 

前社長である飛電是之助は、自分達ヒューマギアとは、ハッキリと線引きをしていた。

是之助は、「創造者と被造物」の区別を付けており、それ以上でも以下でもないという関係を徹している。

しかし、この男は違った。

人間を滅びゆく種であると見限り、自分達を新たな地球(ほし)の支配者にしようとしている。

子供を産む機能が無い自分達ヒューマギアでは、到底、霊長類の長等になれる筈が無いのに。

 

「古いモノの考え方だな? 産めなければ造れば良いだけの話じゃないか。」

「前社長である是之助様は、”ヒューマギアは、人間を支える存在である”と仰ってました。 私もその通りだと思います。」

「糞爺は、先見の明が無さ過ぎたんだ・・・・・否、爺みたいな連中が増えたせいで、人間の種は滅びへと加速したと言えるな。」

「仰っている意味が、理解出来ません。」

 

この若い社長が、先代を忌み嫌っている事は、良く知っている。

 

或人と是之助の確執は、彼が幼い時から既に始まっていた。

是之助は、『飛電エントリジェンス』の後継者として、或人を徹底的に教育した。

そこには、当然あるべき祖父と孫の愛情などまるで無く、力で或人を抑えつけ、自分の思い通りの人間を造り出そうとしたのだ。

しかし、それがいけなかった。

或人は、祖父のやり方に嫌気が刺し、帝都大学を中退し、東南アジア最大の企業『ビレッジ』にチーフ・テクニカル・オフューサーとして就職。

順風満帆かと思われたが、祖父に半ば強引に辞職させられ、猛反発した挙句、家出同然でMIT(マサチューセッツ工科大学)に進学した。

以降、二人の間には到底修復不可能な溝が出来てしまったのである。

 

「人間という種族は、己の文明が繁栄した事に対し、驕り高ぶり、最も大切なモノを見失った。」

 

或人曰く、医療技術の進化により、人間の寿命が延び、又、女性の社会進出により、出産という当たり前の行為を疎んじた為、出産率が大分低下しているのだという。

そして、近年蔓延している『バクスターウィルス』もソレに拍車を掛けた。

感染すれば、ほぼ100%の確率で死に至り、肉片すら残さず消滅する恐ろしいウィルスだ。

現在の所感染経路は不明、粘膜感染及び飛沫感染で発症すると言われ、人々はなるべく密になる事を避けた。

リモートワークが当たり前となり、医療関係以外のサービス業に影響が出始めた。

飲食関係が軒並み潰れ、配達が主流となった。

子供達は自宅学習を強要され、同年代の友達と遊ぶ機会が減り、その為、人間同士のコミュニケーション能力が減退していった。

 

「爺は、人類の支えと手前勝手な事をほざいているが、要は人間の命令に忠実に従う奴隷が欲しいだけだ。 それじゃ社会生活が成り立たない。」

「何故、そう思うのですか? 」

「”確固たる個”が彼等の中から生まれるからさ・・・彼等は己が置かれている状況に不満を抱き、一億%の確率で造反する。」

「生まれないという可能性もあります。」

「いいや、生まれる・・・・まず、この俺が良い例だ。」

 

或人は、飛電是之助のバックアップ要員だった。

自分が死んだ時の為に、予め用意した後継者という名の人形。

しかし、彼はそんな祖父に逆らった。

 

「俺はな、ヒューマギアと旧人類が醜い争いをしない為に、世代交代を行いたいだけなんだ・・・・・迅やお前達が苦しまない世界をな。」

 

或人は、隣で不思議そうに自分を見上げる少年の頭を優しく撫でる。

その表情は、愛する我が子を見つめる父親そのものであった。

 

 

「じ・・・・ん、じん・・・迅、起きろ! 」

 

何者かに身体を揺さぶられ、迅は微睡の中から、半ば強引に覚醒した。

ぼやける視界の中に、見知った人物の顔が映る。

 

「ママ・・・・・何で、ケーキ食べないの? 」

「? ケーキ? 一体何を言っているんだ? 」

 

敵に捕まった時に記憶回路を弄られたのだろうか?

金色に髪を染めた青年‐ 滅は、迅に繋がっているコードやチューブを外しながら、優しく抱き起してやった。

 

「誕生会、家で・・・”アーク”がケーキを焼いてくれて・・・・チョコケーキ美味しかったなぁ。」

「ああ・・・・・悪い。 甘いのは苦手だったんだ。」

 

恐らく飛電邸で行われた誕生会の事を思い出しているのであろう。

あの当時は、どうしても甘いモノが受け付けず、折角”アーク”が丹精込めて造ってくれたクラシックチョコを食べる事が出来なかった。

 

「て、此処何処? 何で俺裸なの? 」

 

肌に感じる微かな寒さ。

見ると上半身裸で、白いスウェットパンツ一枚だ。

何時も持ち歩いている滅亡迅雷フォースライザーが何処にも無い。

 

「落ち着くんだ、迅。 お前は敵に捕まってガイアメモリ研究棟の地下に連れて来られたんだ。」

 

酷く狼狽している迅に対し、滅は冷静に此処までの経緯を説明してやった。

 

主である或人の命令で、環境システムに侵入した事。

核融合炉を強制停止させようとしたが、正体不明の敵に襲撃され、怪我を負った事。

セクターシティの治安部隊に捕まった事。

 

「どうしよう・・・ママ、パパから貰った大事なドライバーが。」

「気にするな。 それより、俺と一緒に此処から脱出するのが先決だ。」

 

滅亡迅雷フォースライザーは、『飛電エントリジェンス』の私設部隊『滅亡迅雷net』の構成員に支給されているドライバーだ。

或人と科学技術班主任、岡山郁子の共同開発で造り出されたベルトで、此処の特性を活かした造りとなっている。

情報漏洩防止の措置が施されており、アークの指示によって自爆する機能が備わっていた。

 

滅は、意気消沈する迅を処置台から降ろし、腰のガンホルスターからハンドガンを取り出し、迅へと渡した。

 

「使い方は分かるな? 」

「うん。」

「良し、俺の後にしっかりとついて来るんだぞ? 」

「うん。」

 

大好きな父・或人から貰った大事なドライバーを失い、迅はかなり凹んでいた。

慣れた手つきでハンドガンの安全装置を確認しているが、応える声に全く覇気が無い。

そんな仲間に対し、滅は溜息を一つ零すと、項垂れる迅の頭を優しく撫でてやった。

 

「大丈夫、ドライバーを無くしたぐらいでパパは怒らないよ。」

「ママ・・・・。」

「それより、早く元気な姿を見せてやれ・・・・後、今度”ママ”って言ったらぶん殴るからな? 」

「・・・・・・・はい。」

 

顔は、穏やかでも心の中は、地獄の閻魔大王と同じぐらい恐ろしい。

迅は、震える声で答えるのであった。

 




仮面ライダー鎧武も面白そう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。