妄想玩具箱   作:tomoko86355

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グロンギ族について。
妄想設定では、当初日本にはグロンギ族しかおらず、故にグロンギ語が共通言語だった。
リントも当然、その一人ではあるが、優れた技術を持つ代わりに他の四種族と違いメタモルフォーズする能力が無い。
故に、ゲゲルと呼ばれる成人の儀式の標的になり易く、初代オーズとなる王は、自分の部族を護る為に、武器=クウガを造り出した。
王の目論見通り、ン・ダグバ・ゼバ含む四部族を休眠状態まで追い込むが、王は、「自分こそが地上の支配者に相応しい。」と他国侵略の為に更なる研究を進める。
そして、生み出されたのが『オーメダル』と『オーカテドラル(オーズドライバー)』だったとされる。
因みに、クウガは、ン・ダグバ・ゼバを撃破後、力を全て使い果たし、墓所で長い休眠状態になっていた。


第5話 『800年前の王 』

太平洋に浮かぶ孤島‐『蒼樹ヶ島』。

伊豆諸島に並ぶその絶海の孤島は、近隣住民から『呪いの島』と呼ばれていた。

曰く、渡ったら最期、誰一人として還って来た者は一人もいないのだという。

 

 

「これが先代オーズが使用していたコアメダル? 」

 

プレハブ小屋の二階。

簡素なオフィスディスクに置かれた三枚のコアメダルを眺め、アイダ・オリヴィアは、頬杖をついていた。

外では、建築用の重機が24時間休まず稼働し、騒音を立てている。

幸い、此処は、本土からかなり離れた位置にある孤島なので、いくら騒がしい音を立てようが近隣住民から苦情が出る事は一切ない。

 

「そうだ、800年前の王が使用したと言われる伝説のオーパーツだよ。」

 

真向かいに座る大柄な男‐ 鴻上光生は、熱病に掛かったのか如く、美しい女性科学者に説明する。

 

この鷹、虎、バッタの文様が刻まれた三枚のメダルは、鴻上一族が代々受け継いで来た代物であった。

彼の先祖は、とある国の小国を統べる王であった。

現代科学では、決して解明出来ぬ摩訶不思議な秘術を行使する錬金術師達を多数従え、コアメダルと呼ばれる人間が持つ欲望のエネルギーから生まれるメダルを使い、グリードと呼ばれる5体の人造の魔物を造り出したのだという。

 

「私はね? オリヴィア、この島が我が先祖ゆかりの地ではないかと思っているんだ。」

「・・・・・そう。」

 

荒唐無稽なホラ話だ。

確かに、鴻上一族が代々受け継いで来たと言うこのメダルは、現世に存在しえない鉱物で造られたモノだ。

この男の話は一応筋が通っているし、現に人間の感情エネルギーから抽出された『オーメダル』なるモノは、石油や太陽光エネルギーの代わりとして使用されている。

 

「貴方は、どう思っているのかしら? 清人君? 」

 

アイダの視線が、窓際に立つ黒縁眼鏡の青年へと向けられた。

 

「正直、興味ありません・・・・それより、早く環境システムの視察をさせて頂きたい。」

 

アイダの元教え子である真木・清人は、腕に乗せている不気味な人形に話し掛けた。

 

現在、帝都大学物理研究所に在籍しているこの青年は、鴻上ファウンデーションが持つ生体研究所の研究員として働いている。

一応、非常勤扱いではあるが、大学を卒業後は、研究所の主任の椅子が確実に保証されていた。

 

「ふふっ、相変わらずせっかちさんね? そんなに慌てなくても、コア・エナジーは逃げないわよ。」

 

この教え子が、重度の対人恐怖症である事は、良く知っている。

 

鴻上生体研究所が、豊富なコア・エナジーを内包するこの孤島を発見してから十数年の月日が経つ。

朽ち果てた遺跡以外、何もなかったこの『蒼樹ヶ島』は、見違える程変わり、厳つい研究棟が幾つも建っている。

 

 

真木のリクエストで、島の南西にある環境システムエリアへと向かう事になった。

舗装されたばかりの道路を一台のマイクロバスが走る。

 

「そういえば、真木君に可愛らしい後輩ちゃんが出来たって噂を聞いたんだけど。」

「飛電・或人君の事ですか。」

 

腕に丸坊主の不気味な人形を乗せる真木の表情が、少しだけ曇る。

 

飛電・或人は、IQ500以上の知能指数を持つ怪物だ。

周囲から神童と謳われ、16歳で飛び級して帝都大学へと進学した真木ですら、或人という少年は異質に映る。

 

「彼なら、帝都大にはもういません。」

「いない? 」

「はい、2年前に大学を中退しました。」

 

かつて、或人は園咲文音教授が責任者として勤めていた、帝都大学遺伝子実験施設で『ガイアメモリ』の研究を行っていた。

ガイアメモリとは、地球に記憶された現象・事象を再現するプログラムが封じられたUSBメモリである。

しかし、2年前に園咲文音が謎の失踪。

研究データは全て持ち去られ、ガイアメモリの研究は打ち切られた。

 

「なので、記憶にはありません・・・・というか、彼の存在は、不愉快過ぎて思い出したくもありません。」

「ハハッ、珍しいな、普段感情を表に出さない君がそれ程嫌うとは。」

 

前の座席に座っている鴻上が、豪快に笑った。

 

鴻上の言う通り、この真木清人という人物は、感情の起伏がまるで無く、重度の対人恐怖症であるが故に、不気味な人形キヨちゃんがいなければ、まともに会話すらも出来ない。

そんな人格に難がある真木ですら、飛電或人という少年(?)を猛烈に毛嫌いしていた。

あの少年を一言で現わすならば、「外道」という言葉がしっくりとくる。

まだ10歳というあどけない年齢であるにも拘わらず、性格は偏屈で毒舌家、皮肉屋であり、熟女好きのエロ餓鬼だ。

自分達の上司であり、師でもある園咲文音に数々のセクハラ行為を働いた挙句、自分にも言葉の暴力を浴びせて来る。

あの少年・・・・否、悪魔は事もあろうに、実姉から貰った大事な人形に屈辱的とも取れる悪戯を度々していた。

眼を離した隙に、ビギニの水着を履かせたり、ペンキの中に落としたり、時には植木鉢に顔だけ出した状態で埋めていた事もあった。

その度に泣き叫び、取り乱す真木を観て、動画に録画し、事もあろうにSNSにばら撒いたのである。

子供ならではの悪戯にしても流石にこれは悪質であった。

 

 

20数年後、ガイアメモリ研究棟、廃棄場。

吹き飛ばされるW。

鉄のコンテナに背中から激突し、ズルズルと下へと落ちる。

 

「下らん・・・・もう少し楽しませてくれないのか? 」

 

エノシガイオスこと仮面ライダーポセイドンは、身の丈程もある槍『ディーペストハープーン』を華麗に一回転させる。

 

800年間の長い眠りから覚め、7年という短い月日が経過した。

その間、アイダという女の命令で、暴走したドーパントやヤミーの始末をやらされていた。

最初は、良い運動だとばかりにヒーローごっこを楽しんでいたが、それもすぐに飽きた。

 

「ううっ・・・・糞が・・・・。」

 

頭を強かに打ち付けたのか、全身を襲う激痛と吐き気で、意識が遠のきそうになる。

 

強い・・・・・今迄、メモリ絡みの事件で様々なドーパントやヤミーと呼ばれる怪人、又はロイミュードという機械生命体とも戦った。

しかし、今眼前に対峙するこの怪物は、そのどれとも当てはめる事は無かった。

否・・・・只一人だけいる。

不死の軍団「NEVER」を従え、風都に恐怖をばら撒いた男。

その名前は、大道克己。

 

『翔太郎、悔しいが今の君ではコイツに勝てない。』

 

今の相棒は、とてもベストコンディションとは言い難い状態だ。

バグスターウィルスに浸食され、免疫が極度に低下している。

激しい倦怠感と寒気に、とても立っていられる状態では無い筈だ。

 

「悪いな、相棒・・・・どうしても、引き下がる訳にはいかねぇ。」

「翔太郎・・・・。」

 

よろよろとメタルシャフトを杖代わりに立ち上がる相棒に、フィリップはそれ以上何も言えなくなる。

Wとして長くコンビを組んでいるからこそ分かる。

翔太郎は、正体不明のこの怪物に取り込まれている少年を救うつもりだ。

一度も言葉を交わした事も無い相手。

しかし、それでもこの左翔太郎という馬鹿な男は救うだろう。

何故なら、彼こそが真の仮面ライダーであるからだ。

 

「ふん・・・・・まだ立ち向かって来るか・・・・。」

 

絶望的な実力差を見せつけられても尚、この左翔太郎という男は折れる様子が無かった。

 

エノシガイオスの脳裏に、炎の剣を持つ一人の戦士の姿が浮かぶ。

遥遠い昔、エノシガイオスが人間であった頃の話だ。

戯れにとある大国を侵略している最中に、彼等は現れた。

「世界の均衡を護る為に、お前を討つ。」

と奴等は言った。

全くもって身の程知らずな連中である。

だから何時もの様に軽く手を捻ってやった。

五大精霊が宿る聖剣を操るだけあり、彼等はそれなりに強かった。

配下であるグリード達と、ほぼ互角の実力を持っていた。

しかし、エノシガイオスの敵では無かった。

アンクから半ば毟(むし)り取ったコアメダルでタジャドルコンボを発動した。

剣士達は、エノシガイオスが放つ熱風にあっさりと倒され、鎧を引き剥がされた。

 

「まさかな・・・・・そんな筈は無い。」

 

あれから既に800年以上の月日が経過している。

目の前に立つ、このか弱い存在が、あの炎の剣士である筈が無いのだ。

 

「相棒、エクストリームメモリだ。」

「・・・・・。」

「どうした? フィリップ。」

「駄目だ・・・今の君じゃエクストリームメモリは使えない。」

「何だと? 」

 

この怪物に立ち向かう為には、Wの最終強化フォームとも言えるサイクロンジョーカーエクストリームでなければならない。

しかし、ボディ担当である翔太郎には、バグスターウィルスという重大な欠陥を抱えている。

その為、エクストリームメモリに備わっている防衛システムが、翔太郎を異物として認識している為、フィリップと完全融合出来ないのだ。

 

「糞っ! あの野郎・・・・・っ! 」

「翔太郎っ! 危ない!! 」

 

フィリップの声と、身体を貫く衝撃が走ったのはほぼ同時であった。

身の丈程もある槍の切っ先が、翔太郎の左肩を貫き、壁へと縫い留める。

 

「ぐぁああああっ!! 」

「命を賭けた決闘の最中に余所見をしてはいけない。」

 

Wの装甲が砕け散り、鮮血が噴き出す。

”ディーペストハープーン”の刃は、ボディメモリの特殊装甲を易々と貫き、翔太郎の左肩に大穴を穿っていた。

 

「嘆くな少年、大丈夫、死は誰にでも訪れる。ある日、無慈悲に・・・・な。」

「くっ・・・・貴様ぁ。」

 

ポセイドンの手が、Wドライバーへと伸びる。

火花を散らし、引き剥がされるドライバー。

変身が強制解除され、元の人間態へと戻った翔太郎をポセイドンが投げ捨てる。

 

「ふむ、これがミュージアムが造り出したドライバーか・・・・成程、ゼウスの奴が夢中になる訳だ。」

 

血だまりの中、藻掻き苦しむ翔太郎を他所に、ポセイドンが先程、引き剥がしたWドライバーを眺める。

800年前、ガラ達、錬金術師が造り出した『オーカデドラル』と何ら遜色ない兵器だ。

流石に、子供が扱うには危険すぎる。

 

エノシガイオスは、暫く手の中でソレを弄んでいたが、何時までも持っている訳にもいかず、あっさりとドライバーを握り潰してしまう。

砕け散るWドライバー。

激痛で霞む視界の中に、ドライバーの破片が床へと堕ちて行く。

 

「さて、それではお祈りの時間だ・・・・楽に死ねます様にとな。」

 

冷酷な金色の双眸。

血に濡れた槍の切っ先が、血だまりの中で横たわる翔太郎へと狙いを定める。

最早、此処まで。

探偵が死を覚悟した瞬間、意識が暗闇の中へと失墜していった。

 

 

 

セクターシティ、砂漠エリア。

小高い丘付近に、全身黒ずくめの男が立っていた。

フレームの無い丸眼鏡に、左腕には丸坊主の不気味な人形を乗せている。

 

「20数年振りのセクターシティですか・・・・すっかり様変わりしたものです。」

 

微かに吹く風が黒ずくめの男‐ 真木清人の頬を撫でた。

その後ろから、黄色い防護服を着た人物が現れる。

透明なフィルムは、付着した砂と泥で汚れ、顔を見る事は出来ないが、その体形で辛うじて男である事が分かる。

 

「プ、プロフェッサー真木、置いてけぼりにするなんて酷いですよ。」

 

疲労困憊っといった様子で、真木の隣まで歩み寄る。

 

「別に、ついて来いと言った覚えはありませんよ? 狩崎君。」

 

隣で、今にも死にそうな程、喘鳴を繰り返している小柄な男を、真木は無表情に見下ろしていた。

 

真木は、とある組織の命令で此処、セクターシティへと侵入していた。

内部に潜り込ませている『協力者』のお陰で、誰にも気づかれる事無く順調に、島の心臓部へと辿り着く事が出来た。

一部のお荷物を除いて。

 

「Oh、人の親切は素直に受けておいた方が良いですよ? 真木先生。」

「親切? 今回のミッションは私一人で遂行するのがベストです。 失礼だが、君がいてはマイナスでしかない。」

「可愛い教え子のピンチを助ける気持ちは無いんですかぁ? 」

「バイスタンプの研究は、組織から君達親子に任されたモノ、私には関係ありません。」

 

けんもほろろな師の態度に、狩崎は内心舌打ちする。

 

戦闘どころか体力面ですらも、凄まじく劣る狩崎が、無理を通して人外の怪物と化した師、真木に同行したのには大きな理由があった。

現在、彼等は所属している組織の命令で「ある研究」を行っている。

 

1971年、今から50数年前に中南米の遺跡である『オーパーツ』が発見された。

オーパーツは、政府の特務機関を経て、自分達が所属する『財団』へと渡り、現在、狩崎親子が研究を続けている。

中南米から発見された『ギフスタンプ』から、様々な生物のゲノム(遺伝子情報)が発見され、バイスタンプの開発へと繋がった。

しかし、此処で大きな壁に衝突してしまう。

人間に押印する事で生み出される悪魔(と呼称される精神エネルギー)をコントロール出来ないのだ。

実体かした悪魔は、持ち主の意志に全く従わず、破壊衝動に駆られ、手当たり次第に暴れ回る。

これでは、当然、商品としての価値はまるで無いのと同じだ。

 

(我慢、我慢・・・・短気は損気よ。 僕の推測が正しければ、ガイアメモリにヒントが必ずある筈。)

 

現在、狩崎親子が取り組んでいる研究は、バイスタンプを利用してのアーマードライダーの誕生だ。

リバイスドライバーの構想はある程度、仕上がってはいる。

しかし、いざ試作品を造り出しても、押印しても全く反応しなかったり、逆に使用者を怪物へと変貌させてしまう。

リバイスドライバーが完成しなければ、最悪、狩崎親子は『財団』から放逐されてしまう。

学会では、既に死者扱いである狩崎親子は、途端、路頭に迷う事になるだろう。

あんな屈辱的想いを二度と味わうつもりなど、当然ない。

 

 

足を取られる砂地に辟易しつつ、真木と狩崎は、旧い研究施設らしき建物へと辿り着いた。

真木の説明によると、この研究棟は、放射能汚染された大地を再生させる研究が行われているのだという。

 

「もう防護服を外しても大丈夫ですよ? 」

 

未だに稼働している為か、この建物は外と違ってちゃんと放射能が除去されている。

窮屈極まりない防護服から、やっと解放されて、狩崎は大きな伸びをした。

 

「それにしても、テラフォーミングの研究をしているにも拘わらず、全然進展ないのはWhat do you mean?(どういう事)」

「態(わざ)とですよ・・・・此処は、彼女達にとっての聖地ですから。」

「Sanctuary(聖地)? 」

「ええっ、コアエナジーの研究は、此処から始まりました。」

 

真木の思考が、遠い彼方の記憶の中へと飛ぶ。

帝都大学理学部に在籍中、恩師であるアイダ教授に半ば無理を通して、この孤島を見学した事があった。

当時は、まだ『蒼樹ヶ島』と呼ばれていた時である。

既に鴻上生体研究所に就職の内定が決定しており、鴻上会長と共に島を訪れた。

 

 

「全く、何処の鼠が潜り込んで来たのかと思ったら、貴方だったの?清人君。」

 

背後から聴こえる妙齢な女性の声に、二人が弾かれた様に振り返る。

するとそこには、右隣に10代後半辺りの白髪の少年を従えた防護服の女性が立っている。

ガスマスクを外したその顔は、セクターシティ総責任者であるアイダ博士であった。

 

「お久しぶりですね。アイダ先生。」

「一年前に死んだと聞かされていたけれど、まさか生きているとは思わなかったわ。」

 

アイダ博士は、ガイアメモリ研究棟で起こった騒ぎを、何者かの陽動だと見抜いていた。

だから、現場を部下である内海に任せ、彼女は、此処砂漠エリアへとやって来たのである。

 

「随分と小賢しい真似をしてくれるわね? 飛電教授と組んで一体何を企んでいるの? 」

「私の名誉の為に申し上げますが、飛電社長と私は全くの無関係です。」

 

心外だ、とばかりに普段無表情な真木の眉根が不愉快気に歪む。

蛇の如く執念深い真木は、学生時代に或人から受けた陰湿極まりない苛めを覚えていた。

真木の人間不信は、或人のせいであると言っても過言ではない。

 

「母さん、コイツ等一体何者なの? 」

 

それまで黙って、アイダ博士の隣に立っていた白髪の少年‐ カザリが口を開いた。

鋭い眼光が、数歩離れた位置で対峙する真木と狩崎を睨みつけている。

 

「害虫よ・・・・生きていてもこの世界に害しか振り撒かない連中。」

 

防護服を脱ぎ、白衣のポケットからロストドライバーとガイアメモリを取り出す。

金色のメモリには、二人の人間が互いの手を握り合い、Uの字を描いた文字が刻まれている。

 

「何も母さんが戦わなくても、僕一人で十分だよ。」

「あの男を甘く見ては駄目、奴は最も危険な紫メダルを全て持っているのよ。」

 

紫メダル・・・・通称、恐竜メダルは、数あるコアメダルの中でも最も異質とされている。

生まれた時から既に完全体であり、カザリの元となったオリジナルやその仲間達を意図も容易く屠(ほふ)っている。

噂では、オーズ最強フォームの一つであるプトティラコンボの一撃ですら傷一つ付ける事が叶わなかったと聞く。

 

「もう一度、地獄に送り返してやるわ。」

 

ロストドライバーを腰に装着し、金色のガイアメモリのスイッチを押す。

ドライバーのソケットに接続すると、「ユートピア」という承認音が聞こえ、博士の身体を無数の粒子が取り囲み、Vのバイザーを付けた金色のライダーへと変身した。

 

「Oh・・・・流石にこれは、I'm not me(拙いんじゃないの)? 」

「狩崎君、君はさっき私を手伝うと言ってましたね? 」

「What are you saying?(え?そんな事言ってないよ?)」

「Good ending for you(貴方に、良き終末を) 」

 

懐から判子の形をしたアイテムを取り出し、問答無用で隣にいる狩崎の胸に押し当てる。

押印された狩崎の胸に巨大な魔法陣が生成。

そこから、炎を纏ったドラゴンが這い出して来る。

 

「なっ!? 」

 

あまりの出来事に、驚愕の表情を浮かべるアイダとカザリ。

炎のドラゴンは、自分を生み出した創造主を護るかの如く、二人に立ち塞がった。

 

「What on earth?(い・・・一体何が? ) 」

「Are you going?(さぁ、いきますよ。) 狩崎君。」

 

生体エネルギーを奪われ、げっそりとやつれた狩崎が、突然、現れた炎の怪物に驚く。

そんな教え子を他所に、真木は己の身体を黒い霧へと変え、驚嘆して腰を抜かしている教え子を包むと、何処へともなく姿を消した。

 

 

 

工業エリアを一台の特殊装甲車が走り抜けて行く。

運転席には、人間態へと戻ったウヴァが、ハンドルを握っていた。

 

『 成程、つまり貴方方、グリードは、アーマードライダーのサポートユニットとして生み出された訳なのですね? 』

「ああ、本来、俺達グリードは、ポセイドンの強化ユニットとして生まれたんだ。ポセイドンドライバーが、俺達のコアメダルをスキャナーして、融合するんだよ。」

 

ウヴァが、助手席に置かれた滅亡迅雷フォースライザーに内蔵されている人工AI、アークに説明する。

 

元々、ポセイドンドライバーは、オーカテドラルの複製体だ。

オリジナルは、オーカテドラルにセットされたコアメダルをオースキャナーで読み取る事で、様々な形態へと変身する事が可能だ。

このシステムは、或人が開発したプログライズキーと全く同じで、故に廃棄場での死闘でウヴァと融合出来たのである。

 

「だからだな・・・・奴が俺達を下に見るのは、ポセイドンドライバーの適合者だってだけで、俺達を道具扱いしてきやがった。」

 

奴・・・とは、勿論エノシガイオスの事である。

エノシガイオスは、同じ同胞である筈のウヴァ達を蔑み、「道具」として見下して来た。

生みの親であるアイダ博士が幾ら窘め、忠告しても全く従う様子が無い。

オマケに大事な末弟であるミハルの命を盾に、脅迫めいた事までしてくる始末であった。

 

「もう、我慢の限界だぜ。 奴は、今すぐ俺が潰してやる。」

 

自然、ハンドルを握る手に力が篭る。

ウヴァが運転する特殊装甲車は、真っ直ぐガイアメモリ研究棟へと向かっていた。

 

 

ディーペストハープーンの切っ先が、倒れる翔太郎の頭蓋目掛けて突き刺さる。

穿たれる凶悪な刃。

その瞬間、翔太郎の意識は一気に覚醒し、飛び起きる。

 

「漸く目を覚ましたか。」

 

一番、聞きたくも無い男の声に、粗い呼吸を繰り返していた翔太郎が頭上を振り仰ぐ。

すると、数歩離れた位置で、上質な革張りのソファーに腰掛ける飛電或人と目があった。

 

「なっ・・・何で、此処に・・・・? 俺は一体・・・・・? 」

 

エノシガイオスによって、左肩を負傷し、止めを刺された筈だ。

しかし、外傷はまるで無く、激痛も嘘の様になくなり、変身も解除されている。

しかも、此処はガイアメモリ廃棄場ではなく、今現在、或人達が宿泊している高級ホテルのスィートルームであった。

 

「無様に殺されそうになった君を私が態々助けてやったんだ・・・・まぁ、あそこで君が死んでも、バックアップはしっかりとってあるから幾らでも復元可能なんだけどね? 」

 

優雅に脚を組みなおし、或人が膝に置いてあるアイパッドを木製のダイニングテーブルに置く。

或人は、監視カメラをハッキングして、エノシガイオスとWこと左翔太郎達の戦いを監視していた。

無様にやられ、命とも言えるWドライバーを破壊された挙句、ジョーカーメモリまで奪われた翔太郎を寸での所でデータ化し、此処に転送したのである。

 

「てめぇ・・・・誰のせいでこんな目にあったと思って。」

「君達のせいだろ? ロクにクライアントの正体も調べもせず、のこのこセクターシティにやって来たんだから。」

 

テーブルの上に置かれたアイパッドに軽く触れる。

するとある人物の立体映像が浮かび上がった。

 

丸いフレーム無の眼鏡に、全身黒のスーツ、そして左腕には禿げ頭の不気味な人形を乗せている。

 

「この人は・・・・・・。」

「この如何にも陰気で、部屋で蛙の解剖をやってそうな男の名前は、真木清人。かつて鴻上生体研究所で所長を勤めていた奴だ。」

 

驚愕で固まる翔太郎に、或人が盛大に溜息を零しつつ解説してやる。

 

「来人君、君も軽率だ。 何故、ガイアベースにアクセスしてコイツの素性を調べなかった? もし、調べていたら依頼等受けなかった筈だ。」

 

或人の視線が、翔太郎の傍らで浮遊している鳥型のメモリへと向けられる。

 

「・・・・・・確かにその通りだ・・・・アレが最初から敵の罠だと見抜いていたら・・・・。」

「止せよ、フィリップ! お前のせいじゃない。」

 

無用心だった。

当時は、財団Xから逃れて来た研究員だとばかり思い込んでいた。

鳴海探偵事務所の所長、鳴海亜樹子が開設したホームページ。

そこに届いた一通のメール。

助けて欲しいという短い文章と共に、指定された場所の地図。

翔太郎が落ち合い場所に訪れると、マスカレードドーパントの集団に襲われている一人の男性がいた。

Wに変身し、辛くも傷だらけの男を救助する。

 

「須藤君だっけ? 君等が助けた財団Xの元研究員。 身柄を預けた風都署から煙の如く姿を消したそうだ。」

「・・・・・。」

 

テーブルの上に置かれたアイパッドに映し出される立体映像。

そこに映る人物は、間違いなく翔太郎が助けた、須藤と名乗る研究員だった。

あの時は、眼鏡など掛けておらず、髪もぼさぼさで血と泥で衣服が破れていた。

当然、左腕に気味の悪い人形等乗せてはいない。

 

「おいおい、何処に行こうってんだ? 」

 

起き上がり、スィートルームの出入り口から出て行こうとする翔太郎の背に、或人の呆れた声が掛けられた。

 

「決まってんだろ、ジョーカーメモリを取り返しに行くんだよ。」

 

これ以上、この厚顔不遜を画に描いた様な男と、会話をする気は無かった。

 

確かに、敵の張り巡らした罠に簡単に堕ちた翔太郎達にも非はあるだろう。

しかし、元を正せば、この男が『バグスターウィルス』に感染させなければ、十二分に勝機はあった。

 

「一体どうやって取り返すつもりだ? もしかして、バイクから人型ロボットに変身する今の子供達が白けて見向きもしない隠し玉でもあるのか? 」

「・・・・・・。」

「それとも呼べばすぐ飛んで来る特撮史上最強秒殺ロボでも待機しているのかなぁ? 」

「・・・・・・。」

「黙ってないで何とか言ったらどうなんだぁ? カリメロ君。」

 

背後から浴びせられる容赦の無い罵詈雑言。

悔しいが、或人が言う通り、ドライバーを失い、ガイアメモリを奪われた今の翔太郎は、ハッキリ言って無力だ。

エノシガイオスに対抗し、ジョーカーメモリを取り返すには、この最低最悪な男に協力して貰わなければならない。

 

「今は冷静になるんだ翔太郎、飛電教授の力が無ければあの怪物には勝てない。」

「そうそう、来人君の言う通りだ。 下手に肩肘張らず、私にお願いすれば良い。」

 

ニヤニヤと笑うその顔は、あまりにも兇悪過ぎて、翔太郎の内に煮えたぎる怒りを抑える事が出来ない。

翔太郎は、相棒の制しを振り切り、室内から出て行く。

後に残される二人。

或人が、上質な革張りのソファーへと背を預け、もう一度大きな溜息を吐きだす。

 

「どうするつもりですか? 」

「あぁ? 」

「翔太郎です・・・・あんな状態で今外に出たら、確実に殺される。」

「うん・・・・仕方ないね。臍が明後日の方向に向いちゃってるから。」

「教授!! 」

 

まるで他人事の様な或人の口調に、等々我慢出来ず、普段温厚な筈のフィリップが思わず声を荒げた。

 

確かに罠だと見抜けなかった自分達にも落ち度はあるだろう。

だが、元を正せば、いきなり横槍を入れ、拘束した挙句、契約を迫り、枷と称して『バグスターウィルス』に感染させたのは、他でもないこの男だ。

 

「大丈夫、コイツがある限り、何度死んでも復元出来る。」

 

激昂するフィリップを他所に、或人は手の中に弄んでいたメモリをテーブルの上へと置いた。

無限回廊を横倒しにした様な、ディスプレイマークの白いメモリ。

かつて風都を恐怖のどん底へと堕とした狂気のテロリスト、大道克己が使用していたメモリだ。

 

 

 

昔々ある所に、とても欲張りな王様がいました。

王様には、とても優秀な錬金術師達が沢山いました。

王様は、その錬金術師達に命令して『オーメダル』と『オーズドライバー』を造らせました。

「欲望」というエネルギーから造られたメダル『オーメダル』。

『オーカテドラル』というベルトのバックルを装着し、『オースキャナー』と呼ばれるアイテムで『オーメダル』をスキャンすると、王様は『オーズ』と呼ばれる怪物に変身しました。

更に王様は、忠実な部下として錬金術師達に『グリード』と呼ばれる人造の怪物も造らせました。

王様は、その力で他国を侵略しました。

他国も、自分達が持つ自慢の兵力で対抗しましたが、欲張りな王様には敵いませんでした。

 

 

「Is that the king 800 years ago?(それが800年前の王様?)」

「that's right.(そうです。)」

 

真木は、壁に描かれている古代の絵を指先でなぞりながら、背後で腰を降ろしている教え子に応えた。

 

此処は、砂漠エリアにある旧研究施設の最下層。

壁一面には、古代人が描いたと思われる壁画と、異形の姿をした石像が並んでいる。

 

ボルゲーノバイスタンプを強引に押印された狩崎は、生命エネルギーをごっそりと奪われた為か、かなり疲労困憊な状態であった。

いくら、アイダ博士とグリードのカザリを抑える為とはいえ、やり方が汚すぎる。

しかし、現状、この男に逆らうのは得策ではない為、狩崎は腹腔内で暴れ回る怒りを何とか抑えつけていた。

 

「But I don't know.(でも、分からないね。)Why is this country with such great technology and power destroyed?(何で、そんなに凄い技術と力を持っていたこの国が滅んでしまったのさ?)」

 

難しい日本語を喋る気力が無い狩崎は、敢えて母国語で師である真木に問う。

 

「I do not understand.(分かりません。)Unfortunately, there is no book that describes the details.(残念ながら、その詳しい記述を記した書物が全く無いからです。)」

 

親切心なのか、真木も英語で教え子の質問に応えてやる。

 

その王である子孫の鴻上の言葉を信用するのであれば、800年前の先代オーズは自滅したのだという。

愚かにも神になりたいと願った王は、全てのコアメダルを己が肉体へと取り込み、そして暴走してしまったのだ。

 

「? 流石ですね・・・・予定通りです。」

 

不図、真木が日本語でボソリと呟く。

すると天井から黒いゲル状の液体が染み出し、床へと伝っていった。

粘着性のある液体は、大きな液溜まりとなり、人型へと形を作っていく。

中から、髪に青いメッシュが入った少年が現れた。

真紅の襦袢を身に纏い、中性的な美貌をしている。

 

「・・・・・ゼググパゾボザ(ゼウスは何処だ。)」

 

暫しの間、真木と狩崎を眺めていた少年‐ミハルは、目的の人物がそこにいない事に大分腹を立てている様子であった。

秀麗な眉根を不愉快気に歪め、二人の男を睨み付ける。

 

「パダギダヂパゼググザバゲンザギシビンゼグ。(私達はゼウス博士の代理人です。)」

「ザギシビンザド?(代理人だと?)」

 

真木の言葉に、少年が苛々した様子で舌打ちした。

そんな不思議なやり取りを、床にへたり込んだ状態で眺める狩崎。

彼の長年の研究から、彼等二人が『グロンギ』と呼ばれる古代人の言葉で会話しているのは何とか分かる。

 

「ザバゲパドデロギゴガギギゾグゼグ。バボゼパダギダヂグザギシゼブスボドビバシラギダ。(博士はとても忙しい方です。なので私達が代理で来る事になりました。) 」

 

警戒する少年を宥める為か、真木は内ポケットから小さな箱を取り出した。

蓋を開けると、中には赤、緑、黄色の三色をしたコアメダルが納められている。

 

「ボセゼギンジョグギデロサゲラグババ?(これで信用して貰えますかな?)」

 

差し出された三枚のコアメダルと真木の顔を交互に眺めていた少年は、仕方が無さそうに溜息を吐きだす。

そして、右手に握り締めている何かを、真木に見せた。

 

「一応、君達を信じよう・・・・それと、君が話すグロンギ語は訛りが酷い。お陰で聞き取るのに苦労する。」

 

真木に渡したのは、USB状のアイテム‐ ジョーカーメモリであった。

真木もコアメダルが入った箱を、ミハルの身体を支配しているエノシガイオスへと渡す。

 

「Hey, teacher, who the hell is this kid?(ねぇ、先生、この子一体何者?)」

 

とうとう我慢出来なくなったのか、狩崎が師の着ている背広の袖を引っ張る。

しかし、真木はそんな教え子の質問に応える事は無かった。

腰が完全に抜けて立つ事が出来ない狩崎を、軽々と肩に担ぎ上げ、エノシガイオスに背を向ける。

 

「They will come here after defeating the demons who are stranded.(足止めしている悪魔を倒して彼女達が此処に来ます。)Escape from this island before it becomes a hassle, right?(面倒な事になる前に、この島から脱出しますよ?)」

 

再び黒い霧へと姿を変え、教え子を抱えた真木が地上へと向かう。

横抱きに師に抱えられた狩崎の視界に、蜃気楼の如くオーズへと姿を変えるエノシガイオスの姿が焼き付いた。

 

 

ウヴァ達がガイアメモリ研究棟に辿り着くと、現場は酷い有様になっていた。

正門を警護していたXガーディアンの部隊がほぼ壊滅。

同じ様に護衛として置いていたドーパント達も、塵へと還り、無残に壊されたガイアメモリが散乱している。

 

「糞! 遅かったか! 」

 

滅亡迅雷フォースライザーを右手に掴んだウヴァが、忌々し気に舌打ちする。

研究棟を襲ったのは、エノシガイオスの奴でほぼ間違い無い。

ミハルの肉体を利用し、何を企んでいるのか皆目見当が付かないが、このまま放置する訳にはいかなかった。

 

研究棟の様子を伺う為、ウヴァが一歩踏み出したその時であった。

頭上から刃の如く突き刺さる殺気に、条件反射で後方へと跳ぶ。

眼前スレスレで閃く、銀色の閃光。

日本刀を構えた黒のアンダースーツに金色の装甲。

昆虫を連想させる複眼が、数歩離れた位置で対峙するウヴァを睨みつけている。

 

「ち、飛電エントリジェンスのアーマードライダーか。」

 

一体何処から潜り込んで来たのか、飛電社長が連れて来たライダーは、一人だけでは無かった様だ。

舌打ちし、元のグリード態へと変身するウヴァ。

途端、左腕で掴んでいた滅亡迅雷フォースライザーが、ウヴァを止める。

 

『待って下さい、ウヴァさん! この方は敵ではありません! 』

「何だと? 」

 

戸惑うウヴァ。

対峙する未確認のアーマードライダー・・・・滅も愛刀の柄を握っていた手を緩める。

 

「アーク? 良かった! あのムカデ怪人に壊されちゃったかと思ったよ! 」

 

仮面ライダー・ゼロワンから少し離れた位置で立っていた迅が、ウヴァの右手に握られている滅亡迅雷フォースライザーを見て、思わず駆け寄ろうとした。

その腕を滅が掴んで制止する。

 

「滅? 」

「無暗に近づくのは危険だ。」

「でも・・・・・。」

 

滅の言葉は常に正しい。

幾ら彼等の大事な仲間である『アーク』が敵では無いと言っても、そう簡単に信じるのは危険過ぎる。

 

「ち、面倒臭ぇなぁ。」

 

未だ警戒している二人の様子に、ウヴァはガシガシと頭を掻くと、グリード態から人間へと戻った。

元々、彼等は敵同士である。

しかし、廃棄物処理場での戦闘後、ウヴァとアークとの間には奇妙な信頼関係が出来ていた。

 

「おい、返してやるからちゃんと受け止めろよ? 」

『え?ちょ、ちょっとウヴァさん? 』

 

アークの了解も得ず、ウヴァはあっさりと迅達に滅亡迅雷フォースライザーを投げ渡す。

条件反射で受け取る迅。

漸く返って来てくれた友達に、自然と顔が綻ぶ。

 

「何のつもりだ? 」

 

何故、ウヴァがフォースライザーを返したのか、その意図が全く理解出来ない。

 

「ソイツには借りがあるからな・・・・これでチャラって事にしといてやる。」

「・・・・・。」

 

どうやらこのグリードは、自分達と戦うつもりが全く無いらしい。

滅は、仕方なく愛刀を鞘へと納めた。

 

 

カザリとフュージョンした仮面ライダー・ユートピアが、ドラゴンデッドマンに必殺の”ライダーキック”を放つ。

胴体に大穴を開けられ、爆散する炎の竜。

華麗に着地を決めるも、突然、バランスを崩し、変身が強制解除された。

力無く倒れ伏すアイダ博士。

フュージョンが解けたカザリが、グリード態のまま真っ青な表情で実母へと駆け寄る。

 

「母さん!! 」

「だ、大丈夫・・・・少し眩暈を起こしただけよ。」

 

愛する息子に心配を掛けさせたくないアイダは、無理に笑顔を作ってみせる。

 

「やっぱり、このメモリは危険だよ。 ノンスタード(規格外)メモリでも毒素が強すぎる。」

 

血の気が完全に失せ、額にびっしりと汗を掻く母親を抱き起す。

 

ロストドライバーを使用し、メモリに内在している毒素を中和しても尚、ユートピア・メモリは使用者の生気を吸い尽くす。

しかし、数多く存在するガイアメモリの中でも、ユートピアメモリはエターナル同様抽出が大変難しく、その代わり、パワーはどのメモリよりも絶大だ。

 

「は・・・早く、真木達を追い掛けないと・・・・嫌な予感がする。」

 

息子の肩を借り、何とか立ち上がる。

 

真木清人は、紫メダルの適合者だけではなく、人間的思想でも退廃的で危険な男だ。

帝都大時代は、その優秀さから色々と目を掛け、鴻上生体研究所の研究員へと推薦してやったが、今から思えば愚かな事をしたと悔いている。

 

「せめてメズール達と合流してからの方が良い。」

「駄目よ・・・・そんな時間は・・・・。」

 

突然、研究棟を巨大な地震が襲った。

立っていられなくなり、二人共床に膝を付く。

どうやら、地震の発信源は、最下層にある墓所からであった。

 

 

その異変は、セクターシティ全体に及んでいた。

 

 

遠くで誰かが自分の名前を呼んでいる。

徐々に覚醒していく意識。

閉じていた瞼を開けると、あまりの凄惨極まる光景にミハルは、思わず言葉を失っていた。

 

紅蓮の炎に蹂躙される樹々。

地に倒れ伏す血塗れの人間達。

破壊され尽くした街。

まさに阿鼻叫喚の地獄絵図である。

 

「どうして・・・・こんな・・・・。」

 

意味が全く理解出来なかった。

今の自分は、半透明の姿で虚空を漂っている。

 

「・・・・っ! アレは・・・・!? 」

 

ミハルの視界に見知った姿が映った。

漆黒の長外套(マント)を纏い、異形の甲冑を纏う王に従う五人のグリード。

ウヴァ、メズール、カザリ、ガメル・・・・そしてもう一人は、ミハルが全く見た事も無いグリードであった。

 

『ミハル・・・・私は、お前を救えなかった・・・・。』

「エノシガイオス・・・・。」

 

頭の中に直接響く声は、ミハルの半身であるグリード‐ エノシガイオスであった。

深い哀しみを湛えた声。

ミハルの視線が、”王”に抱かれた16歳ぐらいの少年へと向けられる。

自分と全く瓜二つな容姿。

蝋細工の如き血の通わぬその身体は、誰の目から見ても、命の灯が既に消えている事が分かる。

 

『奴等は・・・・”ソードオブロゴス”と呼ばれる組織の剣士共は、秩序を正すという戯言をほざき、私の光を奪った。』

「・・・・・。」

『これは、後で分かった事だが、奴等を我が国に差し向けたのは、大国の王達だった・・・”オーメダル”と”オーカテドラル”の力を恐れた奴等は、”ソードオブロゴス”に助力を求めたのだ。』

 

”オーズ”の強大な力と、卓越した内政手腕で、数々の大国と対等な立場で外交をしていた王であったが、突然、聖剣を持つ5人の剣士達が王への謁見を求めた。

彼等は、世界の秩序を護る使命があると述べ、王が持つ『オーメダル』が世界の均衡を崩す危険な代物であると指摘した。

そして、今すぐに『オーメダル』と『オーカテドラル』を渡し、コアメダルの研究を中止しろと手前勝手な事を述べて来たのだ。

当然、王はそれに反対した。

 

「・・・・・ガイ・・・俺は・・・・。」

『そう、君はミハルの器だ。 肉体は再生出来たが、魂だけはどうしても生成出来なかった。』

「・・・・・・。」

 

恐るべき事実を聞かされ、ミハルは言葉を失う。

 

『ガギギデスジョ、リザス。(愛してるよ、ミハル)』

「ジャレソ。(やめろ・・・。)」

『パダギドゴラゲパゲギドグバシンドンラヅゲギ。(私とお前は正統なリントの末裔)ドサギジンンボンベヅジゾロバサボンヂゾドシロゾグ。(渡来人の混血児共からこの地を取り戻す。)』

「ギダダギ、ギラガサバビゾ(一体、今更何を) 」

 

そう言いかけたミハルの眼前に、三枚の光輝くメダルが現れた。

赤、黄色、緑のメダルには、鷹と虎、そしてバッタの絵が彫り込まれている。

 

『パダギンボガレザスザ。(私のコアメダルだ。)ジャドドドシロゾグボドグゼビダ。(やっと取り戻す事が出来た。)』

「・・・・・。」

『ボンゾボゴパダギパバリビバデデ、ゴラゲゾジョリガゲサゲス。(今度こそ私は神になって、お前を蘇らせる。)』

 

三つのコアメダルが、ミハルの身体へと取り込まれていく。

びくりっと痙攣するミハル。

意識が再び奈落の底へと堕ちていった。

 




セイバー、リアタイで視聴しとけばよかった。
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