妄想玩具箱   作:tomoko86355

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P・C・S・A・・・・内閣官房長官・徳田護が対ハイテク犯罪を想定して造り出した特殊公安部隊。
その構成員の殆どが仮面ライダーで占められており、風都署の刑事、照井竜、警視庁の刑事、泊進ノ介、詩島 剛、チェイサー、自衛隊からは、不破 諫、刃 唯阿等が所属している。
又、自分の腹心の部下として、三体のロイミュードを従えている。




第6話 『決断 』

少々、乱暴に真木から落とされた狩崎は、硬い地面とキスをする羽目になった。

 

放射能汚染された砂漠エリアから数キロ離れた貯水エリア。

清んだ空気が、狩崎の鼻孔をくすぐる。

 

「It's terrible, teacher.(酷いよ、先生。) 」

「You are the one who followed you, right?(勝手について来たのは貴方ですよ?) 」

 

未だ腰が抜けて動けぬ教え子に、真木はまるで路傍の石でも眺める様に冷たく一瞥する。

そして、胸ポケットからスマホを取り出すと、何処かへと連絡を取り始めた。

師の背中を眺め、舌打ちする狩崎。

結局、目ぼしい収穫はまるで無かった。

どうやらガイアメモリからヒントを得るという発想は、完全な空振りに終わってしまった様だった。

そんな不貞腐れる教え子に、真木は通話が終わったスマホをポケットに仕舞い、代わりに掌に収まるスタンプを取り出す。

砂漠エリアの旧研究棟で、狩崎の胸に押印したボルゲーノバイスタンプだ。

 

「狩崎君、君に課題を一つ上げましょう。」

「what? 」

 

投げ渡されたスタンプを条件反射で受け取る狩崎。

師の意図が全く分からず、掌に収まるボルゲーノバイスタンプと真木の顔を交互に見比べている。

 

「そのボルゲーノバイスタンプは、あくまで試作品です。それと君が今研究しているリバイスドライバーを完成させなさい。」

「良いの? これって”敵に塩を送る”って事になるけど・・・・。」

 

やっと失われた体力が戻って来たのか、狩崎はボルゲーノバイスタンプを右手に握り、よろよろと起き上がった。

この男は、自分がある組織から送り込まれたスパイである事を見抜いている。

なのに、敢えてセクターシティに同行する事を簡単に許し、おまけにバイスタンプの研究で行き詰っている自分に、解決策まで与えているのだ。

 

「私は、”真理の探究者”・・・・君達親子の事や財団の事等、興味ありません。」

「へぇ・・・”真理の探究者”ねぇ・・・。」

 

この男は、自分が知っている真木・清人とは明らかに違う。

昔の師は、終末論を唱え、世界の終わりを静かに眺める狂人だった。

一体、この男に何が起こったというのだろうか?

 

「狩崎君、君にヒントをもう一つあげましょう。」

「ヒント? 」

 

教え子に背を向ける師は、右手の人差し指を一本だけ立てる。

 

「原初の人間を探しなさい。 ボルゲーノバイスタンプ、リバイスドライバー、そして適合者たる原初の人間の三つが揃って初めて君の研究は完成するでしょう。」

 

一本、一本指を立て、真木が教え子へと振り返る。

その双眸は、紫色の怪しい輝きを放っていた。

 

 

腹腔内を荒れ狂う怒りを抑え切れぬまま、左・翔太郎は、ホテルの長い廊下を歩いていた。

Wドライバーどころかジョーカーメモリすらも失われた今の翔太郎は、飛電・或人が言う通り、無力に等しい。

あの仮面ライダー・ポセイドンに対抗するには、Wの最終強化形態であるサイクロンジョーカーエクストリームだけである。

しかし、バグスターウィルスに感染している今の翔太郎では、エクストリームメモリが異物として判断し、使用する事が出来ない。

八方塞がり、完全なお手上げ状態である。

 

「うわっ、何だ、何だぁ!? 」

 

突然の地震が、建物全体を大きく揺らす。

立っていられなくなり、床に片膝をつく翔太郎。

まるでマグマの噴火の如く、商業セクターの地面が割れ、蒼白い光の柱が何本も突き立つ。

 

「翔太郎っ! 」

 

激しく鳴動し、立っていられない翔太郎に向かって、鳥型のメモリが使づいた。

エクストリームメモリと一体化した相棒のフィリップだ。

その後ろには、両手をポケットに突っ込んだ飛電或人が、特殊ガラスの壁を眺めている。

 

「どうやら、恐れていた事が現実になりそうだな? 」

 

旧約聖書に描かれる終末の様な外の光景に、或人がぽつりと呟いた。

 

 

 

その報告を受け、内海・成彰は小さな溜息を吐き出した。

森林セクターの管理者として与えられた管制塔の自室。

工業エリアでの一件後、彼は身支度を整える為に、総責任者であるアイダ博士の命令を無視し、逸早く此処へと移動していた。

 

「結構、気に入ってたんですけどね。」

 

視線が、オフィスデスクの上に乗る、小さな写真立てに向けられる。

4人の子供達に囲まれ、生まれたばかりの赤子を抱いて幸せそうに笑う女性。

このセクターシティの総責任者であるアイダ博士と、彼女が生み出したグリード達である。

この写真は、アイダ博士がセクターシティの総責任者として主任した一年目に撮影されたモノであった。

撮影したのは、勿論、内海自身であった。

 

内海は、”財団”からアイダ博士と鴻上光生を監視する為に送り込まれたスパイだった。

”財団”は、両名を危険視しており、敵対行動を見せる様ならば、内々に消せ、と命令を受けていた。

しかし、内海は出来なかった。

鴻上は己の欲望に忠実な愚か者であるが、それに反し、アイダは人間としても科学者としても優秀過ぎる人物だった。

部下の面倒見も良く、島に派遣された研究員も彼女を慕い、皆、一丸となってコア・エナジーの研究に取り組んでいた。

荒れ果てていた蒼樹ヶ島が、研究島としてこれだけの発展を遂げる事が出来たのは、一重にアイダの手腕によるところが大きい。

知らず知らずのうちに、内海は一人間として彼女を尊敬していた。

 

このセクターシティは、理想郷だ。

小さな諍(いさか)いはあるが、それでも皆が上手くコミュニティを築き上げている。

 

内海は、重要書類と三枚の紫メダル、そして二本のガイアメモリが収まったアタッシュケースを左手に持つ。

そして、自分のデスクに置かれたトランスチームガンを手に取り、躊躇いも無く引き金を引いた。

忽ち煙が発生し、内海の身体を包む。

すると瞬く間に、蝙蝠の意匠を持つ怪人へと姿を変えた。

 

「さようなら、アイダ博士。 」

 

蝙蝠の怪人‐ ナイトローグは、そう小さく呟くと、デスクに置かれた写真立てを伏せた。

 

 

 

各セクターから、巨大な蒼白い柱が天へと昇っている。

その異変を目撃した滅達は、ウヴァと共に一路、アイダ博士がいる砂漠エリアへと向かう事にした。

 

『凄まじい量の放射能ですね。 生身の人間が此処に入ったら一分も持ちません。』

「仕方ねぇよ。 お袋が誰にも近づかせない様にする為に、敢えて汚染地区をそのままにしといたんだからな。」

 

特殊装甲車の運転席に座ったウヴァが、後部座席に座る迅の膝に置かれた滅亡迅雷フォースライザーに向かってそう応えた。

因みに滅は、変身を一旦解除し、助手席に座っている。

 

成り行き上とはいえ、隣でハンドルを握るグリードは、自分達、滅亡迅雷netの敵だ。

主である或人の命令で、仕方なく協力関係にいるが、油断は決してしないつもりである。

 

「エノシガイオスというグリードについて、もう少し詳しく教えて貰おうか。」

 

この異変を引き起こした張本人、エノシガイオス。

環境システムで、迅が対峙し、ムカデ、アリ、ハチの三枚のコアメダルを使用して、ムカチリコンボという強化フォームへと変身してみせた。

そして、その圧倒的とも言える力で、意図も容易く迅を捻じ伏せたのである。

 

「・・・・・奴は、俺達グリードの末弟、ミハルの半身だった。」

 

ウヴァは、記憶の糸を手繰り寄せる。

 

強大過ぎる力を持つポセイドンドライバー。

その適合者が中々見つからず、研究は難航した。

だが、自分達の生みの親であるアイダ博士は、かつて帝都大で同期であった園咲文音の生み出したWドライバーの特殊なシステムにヒントを得たのだ。

使用者の肉体と精神を二つに分け、変身者に掛かる負荷を軽減させる。

その為、最後に生まれたグリードは、二人で一つのグリードという、歪な形になったのだ。

アイダ博士の目論見通り、ミハルと精神体であるエノシガイオスは、無事適合する事が出来た。

それどころか、博士の予想を遥かに上回る戦闘の数値を叩き出したのである。

 

「最初、奴は言葉を話すどころか、俺達にすらその姿を見せる事が無かった。」

 

十数年にも及ぶ、長い共同生活。

末弟のミハルは、少々臆病すぎる性格をしていたが、争い毎を極度に嫌い、気の合うガメルと常に一緒に行動していた。

しかし、ミハルが14歳の誕生日を迎えるとその態度は豹変。

共生関係にあるミハルを力で抑えつけ、一番の親友であるガメルを傷つけたのだ。

 

「奴は、お袋の目を盗んじゃミハルの身体を使い、紫メダルを大量に造る様になった。」

「紫メダル? 」

「ああ、通称”幻獣メダル”・・・お袋に言わせると、現代の科学技術では決して生み出す事が出来ない幻のコアメダルらしい。」

 

エノシガイオスは、ミハルの意識を抑えつけ、肉体を乗っ取ると環境システムに侵入し、核融合炉とミハルの能力(ちから)を使って、コアメダルを精製していた。

そのせいか、ミハルは極度に衰弱し、仕事場である農園で倒れてしまったのだ。

 

「お袋は、何度もエノシガイオスとミハルを分離しようとしたが、駄目だった。持っているコアメダルの枚数が違い過ぎるし、下手に分けるとミハルが死んじまう。」

 

そう、何時しか力関係は、逆転していた。

ミハルは半身であるエノシガイオスを抑え切れなくなり、半ば、奴隷の様に従う様になっていたのである。

おまけにコア・エナジーが不安定になり、島周辺の海域にまで、その影響を及ぼした。

あれ程、美しかったサンゴ礁が全て死滅し、生息していた魚も、放射能で汚染されてしまったのである。

 

「・・・・・可哀想だが、ミハルという少年は諦めるしかない。」

「何だと? 」

 

冷酷とも取れる滅の言葉に、ハンドルを握るウヴァが気色ばむ。

 

「このままコア・エナジーの暴走が加速すれば、島が崩壊するのも時間の問題。そうなる前にエノシガイオスというグリードを倒す必要がある。」

 

誰よりも家族愛が強いウヴァには申し訳ないが、人命の多さとたった一人の少年の命では、何方の天秤が傾くかは自明の理。

ならば、其方を優先するのが当然ではある。

 

砂漠エリアに向かう前に、セクターシティで業務に準じている研究員や作業員達には、避難勧告を通達したが、彼等が全員この島から離れるには時間が無さ過ぎる。

それに、この島が崩壊したら、大量の放射能が撒き散らされ、日本海域や本土にどんな影響を及ぼすのかも分からなかった。

 

「ちっ!! だけどよっ!! 」

 

ウヴァも、それは痛い程理解してはいる。

元々、彼等の生みの親であるアイダ博士が、飛電或人を視察に招待したのは、この島が今置かれている現状を理解して貰う為だ。

まさかエノシガイオスが、これだけ早く事を起こすとは予想出来なかった。

こうなってしまった以上、滅の言う通り、末弟のミハルには犠牲になって貰うより他に術は無い。

 

「大丈夫、パパならきっとミハルちゃんを助けてくれるよ。」

 

悲観的な空気が場を支配する中、能天気な声が後部座席から聞こえた。

滅亡迅雷フォースライザーを膝に乗せている迅だった。

 

「僕のパパは凄いんだぜ。何てったって世界最強の天才科学者だからね。どんな最悪な場面でも、パパの言う通りにしたらみんなハッピーエンドになるんだ。」

「迅・・・・。」

 

飛電或人という男は、迅の言う通り天才的な発明家であり、様々な策謀を巡らす策士だ。

きっと、この事態もある程度は予想していただろう。

しかし、滅は迅と違って楽観視する事が出来なかった。

一重に、或人(ヤツ)の最悪極まる人物像がいけない。

 

愛息子である迅を、或人は溺愛していた。

だから、迅の前では恰好良くって正義感の強いヒーロー像を演じ続けていた。

だが、そう思い込んでいるのは迅だけで、周囲の人間達(勿論、自分や他のメンバー達も含む)は、全くの真逆だった。

偏屈で毒舌家、皮肉屋で浮気性で超ド級のMで、気分屋のドケチ野郎だ。

自分に歯向かう奴等は、徹底的にオーバーキルし、逆らう事を許さない。

それ故、敵もかなり多い。

一番、代表的なのが、内閣官房長官・徳田護という人物だった。

彼は、ハイテク技術を持つ反社会的勢力に対抗すべく『P・C・S・A(Paranormal crime special agency-超常犯罪特務機関)』という組織を発足した人物である。

構成員の殆どが、仮面ライダーで占められ、代表的なのが、風都署の刑事、照井竜、警視庁の刑事、泊進ノ介、自衛隊出身の不破諌や刃唯阿等がいる。

又、噂によるとロイミュードを数体、自分の懐刀として従えていた。

或人達、飛電エントリジェンスも技術提供を行っている為、官房長の徳田とは、それなりどころか大事なクライアントという関係だ。

しかし、「あんな鋼鉄超合金とまともな会話等出来るか。」と、或人本人は徳田の事を蝦蟇か蝮の如く嫌っているのである。

嫌う理由は一つ、徳田の『絶対的法の番人』というスタンスにあった。

彼は、徹底して中立的な立場を貫き、一切の妥協を許さなかった。

技術提供を行っている飛電エントリジェンスも同様で、譲歩を呼び掛けても一向に耳を傾ける事はしなかった。

それが、或人の癪に障り、「鋼鉄超合金ロボ、六法全書人間、時代錯誤のヒーロー。」と言いたい放題暴言を吐き捲っている。

勿論、徳田自身も或人を危険視しており、態度こそ紳士的だが、必ず何かしらの兇悪事件を起こすだろうと、日々厳しい視線を此方に向けていた。

 

 

砂漠エリアへと向かう黒塗りの特殊装甲車内。

後部座席に座る飛電或人が、盛大なくしゃみをかましていた。

 

「うわっ、何だよ? 汚ねぇなぁ! 」

 

真向かいに座る翔太郎が、露骨に嫌な顔をして、鼻を啜る若い社長を眺めている。

 

二人は、地震の発生源である砂漠エリアに向かっていた。

そこは、重度の放射能に汚染されている危険区域だ。

二人共、防護服に身を包み、ハッキングしたXガーディアンの一体に運転を任せ、問題の砂漠エリアへと向かう。

 

「飛電教授、貴方の目的は一体何ですか? 」

 

翔太郎の隣に腰掛ける相棒のフィリップが、胸の中に溜め込んでいる疑問をぶつけてみる。

此方は、エクストリームメモリの機能により、3Dの立体映像で映し出されていた。

 

「目的? そんなモノを聞いてどうする? 」

 

ティッシュで鼻をかみ、ゴミ箱に投げ入れる或人が、胡乱気な視線をフィリップへと向けた。

 

「個人的好奇心です。」

 

そんな或人に対して、フィリップも素っ気なく返す。

この男の目的が、コアエナジーである事は一目瞭然だ。

鴻上ファウンデーションと企業提供を行い、潤沢な資金を出資しているのも、新たなエネルギー源として注目を集めるコアエナジーの利権欲しさであるに違いない。

 

「このオッサンの目的は、コアエナジーだろ? 会社の利益の為なら何でもする社長様だもんな。」

 

金と名誉と女が何よりも好き、という或人の悪名は、勿論、翔太郎も知っている。

女性週刊誌や様々なゴシップ記事のネタに、事欠かない男だ。

今回も、汚い手段を弄して、コアエナジーを独り占めにするつもりだろう。

 

「そう思いたきゃ勝手に思ってろ、カリメロ君。」

「・・・・っ、そのカリメロっての止めろよ、俺は左翔太郎様だ。」

「落ち着け、翔太郎。」

 

今にも跳び掛かりそうな相棒を、フィリップが何とか窘める。

ビギンズナイトやミュージアムの件で大分、人間的にも成長したと思っていたが、この煽り耐性の無さだけは、治らなかったみたいだ。

 

「どんなに鳴海荘吉氏のコスプレをしても、君は絶対彼を超える事も代わりになる事も出来ない。」

「何だと! 」

「そこだよ、私の安い挑発にすぐ反応する。それが、荘吉氏と君の違いだ。」

「・・・・・。」

 

痛い所を或人に指摘され、翔太郎が喉の奥で唸り声を上げる。

 

翔太郎にとって、鳴海荘吉は憧れの対象であり、決して超える事が出来ない壁だ。

何時いかなる事態でも決して冷静さを失わず、自らの感情を押し殺し、成すべき事を成す。

正に、翔太郎が憧れるハードボイルドを体現したかの様な人物が鳴海荘吉であった。

 

「貴方は、前鳴海所長をご存知なんですか? 」

「ああっ、彼とは文音先生・・・君のお母さんを巡って対立していたからね。」

 

フィリップの何気ない質問に、或人はあっさりと応える。

 

帝都大時代、或人は文音の美貌にすっかりやられ、彼女が責任者を務めている遺伝子工学科に入った。

彼女の右腕として、その類稀な才能を遺憾なく発揮し、身も心も文音に尽くした。

そのかいあり、或人は一本のT1メモリ‐ スカルメモリを生み出した。

 

「恋敵である私が言うのもなんだが、鳴海荘吉という男は、心技体全てを兼ね備えた人物だった・・・まぁ、超ウルトラスペシャルな頭脳を持つ私には到底叶わなかったが。」

「・・・・・はぁ。」

 

一応、念の為に言っておくが、母・文音は風都の資産家、園咲琉兵衛の妻である。

フィリップが幼い時は、誰もが羨むおしどり夫婦だった。

そんな琉兵衛の存在を完全に忘れ、或人は師である文音との甘い過去に浸っている。

目の前に、琉兵衛と文音の愛の結晶たるフィリップこと園咲来人がいるにも拘わらずにである。

 

「鳴海荘吉は、どんな逆境に立たされ様と、決して諦める人物ではなかった。どんなに叩きのめされても立ち上がり、果敢に立ち向かった。」

「・・・・・・。」

「この超天才的、人類の英知の集大成である私ですら認める男だったのだよ。」

 

遠い過去の記憶。

師であり初恋の女性、園咲文音の隠された正体。

次世代型ガイアメモリとそれを使用する新型ドライバーの開発。

愛する文音に振り向いて欲しい一心で、次世代型ガイアメモリ第一号のスカルメモリとロストドライバーを造り出した。

文音の笑顔を観たいが為に、彼女に新型メモリとドライバーを見せた。

しかし、予想に反して、彼女は戸惑い、怒り、何故この二つを造り出したと幼い或人を問い詰めた。

或人は、文音の剣幕に怯えつつ、彼女のラボにあった研究資料を盗み見た事。

彼女が、新型メモリとドライバーの開発、そして更にその先をいくガイアメモリの研究が上手くいっていなかった事。

自分なら、彼女の苦境を救える。

だから、新型ガイアメモリとロストドライバーを造り出したと正直に話した。

だが、それが間違いの始まりだった。

文音は、夫である園咲琉兵衛の野望を知り、ガイアメモリの開発に道具として使われる息子、来人を救う為に敢えて、研究が上手くいっていないと嘘を吐いていたのである。

つまり、或人が良かれとしてやった行為は、彼女にとって余計な事だったのだ。

 

 

そんな何とも言えない気まずい空気が流れる中、一同を乗せた特殊装甲車両は、目的地である砂漠エリアに到着した。

旧研究棟の前には、先客が既にいるのか、二台の装甲車両が停車している。

 

「あ、あれは・・・・。」

 

防護服を着た翔太郎が、研究棟の建物を突き破って天へと上る蒼白い光の柱を見上げた。

商業セクターで、見た代物と全く同じモノだった。

 

「高濃度のコアエナジーだな。 このまま放出が続けば、この島にある海域の生物は全滅するぞ。」

「な、何だと!? 」

 

或人の口から出た思わぬ言葉に、翔太郎は驚愕に双眸を見開く。

 

コアエナジーとは、即ち地球の生命エネルギーの事だ。

アイダ達、研究員は、そのコアエナジーを元に『オーメダル』や『ガイアメモリ』を造り出している。

 

「早く何とかしないと・・・・。」

 

エクストリームメモリと一体化しているフィリップが、呻く様に呟いた。

これだけ高濃度のコアエナジーが、噴出を続ければ、この一帯にどんな悪影響を及ぼすか分からない。

 

一同は、早速、研究棟へと入り込んだ。

 

 

「ああっ!! 」

 

悲鳴を上げ、床へと叩きつけられる女性科学者。

変身が強制解除され、倒れた拍子で外れたドライバーが床へと転がる。

 

「母さん!! 」

 

生みの親であるアイダ博士の元へと走るカザリ。

しかし、その眼前を、上半分を失った骸骨の様な頭と、白い紙屑の様な骨が纏わり付いた上半身を持つ怪人‐ ギフジュニアの集団が立ち塞がる。

 

「糞っ!何なんだよ! コイツ等! 」

 

ドレッドヘアーの様な鬣がうねり、そこから無数の光弾を母、アイダ博士に襲い掛かろうとしているギフジュニアの集団へと放つ。

爆散し、爆風の衝撃で吹き飛ばされる骸骨の群れ。

しかし、床がコールタールの如く液状化し、そこから次々と骸骨の兵士達が這い出して来た。

 

「ちっ! 母さんから離れろよぉ!! 」

 

倒れ伏すアイダ博士を庇う様に、カザリが立つ。

この怪物共を生み出したのが、末弟の半身、エノシガイオスである事は間違いないだろう。

どんな方法を用いたのか分からないが、奴はコアエナジーの力を使って、ギフジュニアやドーパント達を操っている。

早く奴を何とかしないと、此方がやられてしまう。

 

そんな焦燥感に駆られている時であった。

蒼白い雷撃が、襲い来る骸骨集団を薙ぎ払う。

続く氷の槍と鋭い棘が付いた岩の弾丸。

ギフジュニアを貫き、引き裂いていった。

 

「大丈夫か? カザリ!? 」

 

疲労困憊のカザリと気絶したアイダ博士を救ったのは、同じ兄弟であるウヴァ達だった。

途中、合流したメズールとガメルの他に、見た事も無いアーマードライダー二人がいる。

アーマードライダー達は、互いの得物を取り出すと、骸骨軍団へと躍り掛かった。

 

「・・・・・メズール? 」

 

グリード態へと変わったメズールに抱き起され、アイダが薄っすらと閉じていた双眸を開く。

メズールは愛する母に抱き着きたいのをぐっと堪え、治癒能力で母親が負った傷を癒していった。

 

「一体何なんだぁ? コイツ等。 」

 

両腕をブレード状へと変化させたウヴァが、骸骨兵達を斬り裂いて行く。

 

「霊廟で眠っていた古代人の遺体だよ。 どんな方法を使ったのか、エノシガイオスの奴がコアエナジーを使って操っているんだ。」

「し、死体! ゾンビ! 怖い!! 」

 

深夜帯に放映されている恐怖映画を思い出したのか、ガメルが鋼鉄の籠手を振り回し、自慢の怪力でギフジュニアを殴り飛ばした。

 

「て、事はコイツ等を幾ら倒しても無駄って事か。」

「そういう事になるね、核融合炉を強制停止させてコアエナジーの供給を止めない限り、エノシガイオスの奴は無尽蔵にヤミーやドーパントを造り出す。」

「それは本当か? 」

 

そう応えたのは、兄弟のウヴァではなく、黄色を基調としたスーツを纏うライダーであった。

愛刀‐子狐丸を巧みに操り、ギフジュニアを斬り伏せていく。

 

「ウヴァ、この人達は誰なの? 」

「あー、説明すると長くなるんだが・・・・。」

「飛電エントリジェンスのアーマードライダー、滅亡迅雷netの迅でーっす、宜しく。」

 

鞄から剣へと変わる変形武器、アタッシュカリバーを肩に担いだ仮面ライダー迅が、飄々とした態度で挨拶する。

この場にそぐわぬあっけらかんとした態度に、同じ仲間である滅は、軽い頭痛を覚えた。

 

「滅亡迅雷net? まさか、飛電或人の私設部隊か。」

「まっ、待て!カザリ! コイツ等は確かに俺達の敵だが、今は仲間になってくれてるんだ! 」

 

迅の無用心な自己紹介に、途端気色ばむカザリを、ウヴァが何とか窘める。

エノシガイオスという共通の敵を倒す目的で、一時休戦状態になっていると、概要をざっくりと説明した。

 

「ふーん、そう? 信用は出来ないけど、仕方ないね。」

 

互いの利害が一致しているとはいえ、飛電エントリジェンスの社長、或人が母にした侮辱的行為は、万死に値する。

それは、ウヴァも同じなのだが、危機的今の状況を打開するには、致し方が無かった。

 

 

ハッキングしたXガーディアンが運転する特殊装甲車が、砂漠エリアにある旧研究棟へと到着した。

重い音を立てて、ハッチが開き、中から防護服を着た或人と翔太郎が装甲車両から降りる。

その後を、鳥型のエクストリームメモリが追い掛けた。

 

「テラフォーミング実験がされていると聞いたんだけどなぁ。」

 

ガスマスクを装着した或人が、草木一本生えぬ砂だらけの世界をぐるりと見回す。

 

この死のエリアは、コアエナジーから排出される有毒な放射能物質に汚染されていた。

アイダ博士率いる鴻上生体研究所のスタッフが、惑星開発を前提として人間が生活出来る様に環境を意図的に変化させる実験が行われていたのだ。

しかし、この有様を見る限り、実験は上手く行っていないらしい。

 

「テラフォーミング実験は、2年前に延期されている。此処で事故が起きたのが理由らしい。」

 

或人の疑問に、セクターシティのデータバンクをハッキングしたフィリップが応えた。

 

フィリップの説明によると、今から2年程前に、放射能を除去する装置が故障し、作業を行っていた研究員がその事故に巻き込まれた。

多数の死傷者を出す程の酷い事故だったらしい。

上層部は、事故の原因を究明する為、暫くの期間、このエリアを封鎖する事にした。

 

「2年間も放置ねぇ・・・・きっと、何か裏であるに違いない・・・て、カリメロ君何処に行くんだぁ? 」

 

そんな二人を他所に、一人だけさっさと古びた研究棟へと向かう翔太郎の背に、或人の呑気な声が掛けられた。

 

「此処でグダグダやってる暇はねぇ。 とっととエノシガイオスの所に行ってメモリを取り返す。」

 

呆れた様子で自分の後を付いて来る或人に、翔太郎は振り返る事無く、ぶっきらぼうにそう応える。

 

「奴にドライバーを壊されたのを忘れたのか? 運よくメモリを取り返せても、君は肝心のWに変身出来ない。」

 

或人に痛い所を突かれて、翔太郎は舌打ちする。

 

ガイアメモリ生産ラインでの死闘で、翔太郎は湊ミハルの肉体を乗っ取るグリード、エノシガイオスと相対し、Wドライバーを破壊されている。

その際に、自分と適合出来る唯一のメモリ、『ジョーカーメモリ』を奪われてしまった。

 

「見たところ君には、生体コネクタが無い。 それじゃ、よしんばメモリを取り返せても全く意味が無い。」

「教授、止めて下さい。」

 

翔太郎の背後で、煽りまくる若き社長を相棒のフィリップが窘める。

それに構わず、翔太郎は後ろの或人を完全無視し、研究棟の中へと入っていった。

幸い、此処は放射能が完全に除去されているのか、防護服に備え付けられているガイガーカウンターが安全値を示していた。

 

「どうやら、私の部下達はこの下にいるみたいだな。」

 

1階に或人の秘書である滅と滅亡迅雷netの構成員である迅の姿が何処にも見当たらない。

現在、彼等は地下の霊廟で、アイダ博士が生み出した人造生命体・グリード達と一緒にギフジュニアの軍団と死闘を繰り広げていた。

 

「好い加減、教えて欲しいんだけどな。」

 

防護服とガスマスクを外した翔太郎が、数歩離れた位置にいる或人を睨み付ける。

 

「アンタ、一体どうやってあの化け物を止めるつもりなんだ? 」

 

今迄、溜めに溜めた怒りと疑問を、飛電或人へとぶつける。

 

これだけ余裕綽綽とした態度で、地獄絵図が描かれている砂漠エリアの研究棟まで来たのだ。

きっと何かしらの秘策を持っているに違いない。

 

「止めるのは、私じゃなくて君だ。 」

「はぁ? 」

「このエターナルメモリを使って、君がヤツと戦うんだ。」

 

訝しがる翔太郎に、或人がわざとらしく白いガイアメモリを見せる。

 

「でも、翔太郎には生体コネクタが・・・・。」

「そんなモノ、今のカリメロ君には必要ない。だって、このメモリが”彼自身”だからだ。」

 

背後に立つ、エクストリームメモリが造り出したフィリップの立体映像に、或人が応える。

 

「どういう意味だよ? 」

 

或人が何を言わんとしているのか、皆目見当がつかない。

苛立ちだけが無性に募り、鋭い眼光が目の前に立つ若い社長を睨み付ける。

 

「カリメロ君、君は確かガイアメモリ生産ラインで、エノシガイオスというグリードに重傷を負わされた・・・・・だが、その傷が今は何処にも無い。何でだろうねぇ? 」

「・・・・っ!? 」

「答えは簡単、だって君はあの生産ラインで一度死んでいるからだ。」

 

或人の口から出た衝撃的な事実。

翔太郎の表情が固まる。

 

「私が造り出したバグスターウィルスに感染した君は、データ人間になったのだよ。だからデータが幾ら破壊されても、このバックアップがある限り、君は何度でも復活が可能なんだ。」

 

エターナルメモリには、翔太郎の生体データが記録されている。

その為、いくら瀕死の重傷を負って死に至らしめたとしても、元データが収まっているエターナルメモリを使用すれば、幾らでも復元可能なのだ。

 

「嘘だと思っているだろ? なら、隣にいる来人君に聞きなさい。 彼ならきっと懇切丁寧に教えてくれる筈だ。」

 

驚愕に震える双眸が、右隣に立つ立体映像の相棒へと向けられる。

しかし、フィリップは何も応えない。

否、応える事が出来ない。

命よりも大切な相棒が、かつての自分と同じ肉体になってしまったという事実に。

 

「喜べ、君は不変の存在へと進化したんだ、おまけに大道克己が決して辿り着く事が出来ない高見に今、立っている。」

 

かつてエターナルメモリの適合者だった死者蘇生兵士『NEVER』のリーダー、大道克己は、適合率が80%であった。

だが、今の翔太郎はそれを遥かに超える適合率を叩き出している。

この状態ならば、生体コネクタを使わずとも、エターナルメモリと融合する事が可能だ。

 

「・・・・・っ、ふざけるな・・・こうなったのは全部貴方が・・・・。」

「そう、私のせいだな・・・でも、こういう状況を招いたのは君達・・・。」

 

あくまでも厚顔不遜な態度を崩さない或人の胸倉を、唐突に翔太郎が掴み上げた。

あまりの怒りに拳が震える。

そんな翔太郎を黙って眺める或人。

敢えて殴られるのを承知なのか、抵抗する素振りを見せなかった。

 

暫くの沈黙。

暴力では、何も解決出来ないと悟ったのか、翔太郎が掴んでいた或人の胸倉を離す。

 

「何だ? 殴らないのか? 」

「・・・・おやっさんが言ってた、男の仕事の8割は決断だ、そっから先はおまけみたいなもん・・・だってな。」

「・・・・・・。」

「確かにてめぇは、殴りたい程腹が立つけどな、でも・・・・こういう結果を招いたのは俺の責任だ・・・・此処でアンタを殴っても何の解決にもならない。」

 

翔太郎は、或人の手からエターナルメモリを毟り取る。

黙ってされるがままになっていた或人は、口元に皮肉な笑みを貼り付けた。

 

「そうか・・・・鳴海荘吉は、結構優秀な人材を自分の後継者に選んだみたいだな。」

 

何かを納得したのか、或人は一人頷くと、地下へと続くエレベーターへと向かう。

その後に黙って従う翔太郎と相棒のフィリップ。

彼等の双眸には、何かを決断したのか、強い意志の光が宿っていた。

 




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