少しの間、公園にて日菜と談話を楽しんだ紗夜は、一旦公園を出る事にし、日菜と共に商店街へと戻ってきていた。未だに、何故自分が過去に来てしまったのかは分からない状態であったが、今考えた所で明確な答えは浮かんで来ないと察してる事もあって、一旦それは”保留”する形で落ち着いていた。
「おねーちゃん!ちょっと寄っていきたいとこがあるんだけど、良い?」
「・・・・・・?別に構わないけれど、どこに行くの?」
「おねーちゃんは行った事ないかな?きっと行けばおねーちゃんも気にいると思うから着いてきて!」
妹にかなり強めに手を引かれながら何処かへと案内される紗夜だったが、それに特に怒るでもなく苦笑を浮かべつつ、されるがままにされていた。もしも、この時代の彼女であるならすぐさま振り払って、何処かへと行ってしまい、日菜を悲しませていた事だろう。
「ささ!おねーちゃん、入って入って!」
「ちょっと日菜!押さないで・・・・・・って、ここは・・・・・・」
日菜に案内されたのは、Afterglowというバンドでキーボードを担当している、羽沢つぐみの家・・・・・・『羽沢珈琲店』だった。確かに、この時代の紗夜であるなら、行ってないという事は事実に当てはまるのだが、元の世界ではもはや”常連”とも呼べるくらいには足を運んでいるくらいに思い入れのある店となっている。
「いらっしゃいませ・・・・・・って、日菜さん!」
「やっほー!つぐちゃん!今日はおねーちゃんと一緒に来たんだけど、席だいじょーぶ?」
「はい、大丈夫ですよ!じゃあ、こちらの席へ」
つぐみに促され、日菜と紗夜は近くの椅子に腰掛け、メニュー表を見始める。
「羽沢さん。私はコーヒーとフルーツケーキを・・・・・・」
「えっ?え、えっと・・・・・・紗夜さん・・・・・・ですよね?私の名前・・・・・・知っていてくれたんですか?会ったのって、まだ数えるくらいしか無かったような気がしますけど・・・・・・」
「確かに。おねーちゃんがつぐちゃんと話してるとこなんて見た事ないけどな〜?」
「・・・・・・はい?あっ・・・・・・」
思わず、元の世界のように注文をしてしまった紗夜は、自分の迂闊さに頭を悩ませていた。この店によく来ていたとは言え、それは元の世界での話であり、この世界での彼女は初の来店であるはずだ。当然、そんな事を知る由もない二人にしてみれば、先程の紗夜の慣れたような注文の仕方と、つぐみに対する接し方について疑問が浮かぶのは至極当たり前のことだろう。
「い、いえ・・・・・・以前、宇田川さんにこのお店をお薦めされた事がありまして、その時にあなたの事やメニューの事などを聞いたので・・・・・・」
「あこちゃんに?あ、あぁ・・・・・・そういう事だったんですね。はぁ〜、驚いた・・・・・・」
苦し紛れに出た嘘だったが、どうやら二人とも納得してくれたらしく、ほっと息をつく紗夜だった。結局、先程頼もうとしていたコーヒーとケーキを改めてつぐみに注文した紗夜は、少し肩の力を抜き、一つ深呼吸をした(ちなみに日菜は紗夜と同じメニューを注文した)。
「はぁ・・・・・・私としたことが・・・・・・」
「大丈夫、おねーちゃん?なんかすっごく疲れてるみたいだけど?」
「問題ないわ。それで言うなら、あなたの方こそ大丈夫?仕事終わりで疲れているのでは無いかしら?」
「っ!う、ううん!全然疲れてないよ!そんなに大変なお仕事じゃ無かったし!」
こちらが心配していると言うのに、逆に心配をされてしまった事に対して、日菜は若干の戸惑いを見せていた。
「そう。帰ったら必ず肌のスキンケアとストレッチをするようにしなさい?あなたの事だから、私が言わなくてもしているとは思うけれど・・・・・・しているわよね?」
「え?うん、してるけど・・・・・・おねーちゃん、今日はどうしたの?なんか・・・・・・昔みたいに優しくなってる気がして、すっごくるんってする!」
「優しくしているつもりは無いわよ。姉として、同じギターを嗜むライバルとして、当然のことを言っているだけに過ぎないわ。それとも何?叱って欲しいのかしら?」
「えぇっ!?それはやだよ〜!」
店内に日菜の声が響く。幸いにも店内には二人しかいなかった事もあって、迷惑をかけるという事はなかったが、見せないで大声を出す事自体がよろしく無い事であるので、家に帰ったら軽く説教をしようと心に決めた紗夜だった。
その後は、注文したコーヒーとケーキを姉妹仲良く存分に堪能し、満足な気分に浸りつつ帰路につくのだった(店を出る際、しれっとつぐみと連絡先を交換した)。
次回で、Roseliaのメンバーと邂逅します。
この時代のRoseliaと未来の紗夜のやりとりをお楽しみに!