オレをアリスと呼ばないで   作:淫ヴェルズ

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第4話 不穏

 

――――――――――Side/???

 

『・・・ザ・ザザ・・応答せよ。聞こえている者がいれば直ちに応答せよ!F部隊!誰か生きている者はいないのか!?』

 

『ッ!こ、こちらF部隊。現在、【特定種別A種】と交戦中!被害甚大でこちらの部隊だけでは抑えがきかないよ!!増援を求むッ』

 

 無線越しに爆発音や電撃が走る音がノイズと共に響く。

 

『!!ッ同行したC部隊とG部隊はどうしたッ正確な現状の説明を求む』

 

『G部隊は隊長が戦死!残りの人員をベルタ隊長の権限で統合!C部隊は・・・全滅しました!』

 

 ダダダッ!

 

 銃声が途切れることのない無線。報告を聞き事態は最悪な方向へ進んでいる事を理解させられる。

 

『もうッ電源が落ちたのになぜ復旧しないッ?非常灯じゃ明かりが心もとない!』

 

『原因は調査中ですッ!非常電源が機能しているようですがシステムに異常がみられ、こちらからのコントロールを一切受けつけない。上層以外全く把握できていないのが現状だ!!段階的に機能に制限が掛かっている!いつまで通信機能も持つか―――』

 

 急に途切れる通信。不気味なまでにしじまが広がる。

 

『・・・・・・』

 

『どうした!戦闘は終わったのか!?』

 

 先ほどまであんなにうるさかった戦闘音がピタリと止んでるのだ。

 

 向こうで何が起きている――――――?

 

 

『ああもう、クソッ!こんなの、どうしろってのッ!みんな退けッ!一端逃げろおおおおおおおお!』

 

 ズ、ズズズ――――――

 

 ああああああああ逃げろ逃げろっ!

 

 何かが這いずる音と共に悲鳴が木霊する。

 

『どうした何があった!F部隊応答せよッ』

 

『――――アハハハハハハ』

 

 不意に女の笑い声が響く。その声はどこまでも不愉快で狂気を感じさせるものであった。

 

『まさか貴様は・・・』

 

『『『『アハハハハハハハハハハハハハッッ』』』』

 

 通信が、途絶する。

 

 状況は最悪だ。システムが完全にダウンし封じ込められていた【特定種別A種】のロックが解除。奴らは上へ上へと向かっている。完全開放となると”黒殖白亜”でも対処は厳しいのか。

 

 いずれ確実に司令室のある第一階層まで登ってくる。あの正気とは無縁の怪物どもを止めるなど不可能に近いが増援を送り時間を稼ぐぐらいのことはできるはず。奴らは非常に特殊な思考ルーチンで行動しA種同士を鉢合わせると大抵は共食いを行う・・・のだが状況から複数の敵と対面していた。

 

 今までと動きが違う!いつから協力プレイに絆が芽生えた。

 

 共食いは期待できない。こうなっては出し惜しみしている場合ではない。全ての部隊を動かすしかない。

 

 ・・・統括室長には事後承認になるが致し方ない。

 

(クソ、これではマスターに褒めて頂けない)

 

 あの方は別件にかかりきりだ。今はとにかく時間を稼ぐほかない。なんなら第二階層から脱走した外界の冒険者どもをぶつけるのもいいかもしれない。少しでも注意が逸れればなんだっていい。幸い第一階層だけは別のシステム系統であるおかげかコントロールは可能。

 

  ”ここ”から脱出しようとする冒険者の処分は中止にし下の階層まで誘導するとしよう。使える物はなんでも使う。常識を超えた相手に手段は選んでいられない。

 

 どんなに犠牲が出ようと目的さえ達成すれば問題ないのだから。

 

「おい、私だ。ああそうだ【祈り手】に仕事の時間だと教えてやれ」

 

 

 

 

 

「ええと、と、目覚めた気分はいかがでしょうか?」

 

「いかがでしょうかぁ~??いいわけあるかッこの野郎がッ!」

 

 恋都ははみ出た内臓が腹の中に戻っていくのを見ながら叫び、そこらに転がっている千切れた俺の腕を投げつけ抗議する。

 

 あいた!

 

 避けることもせず命中し倒れこむイグナイツ。楽しそうに笑っている。

 

 俺は完治した腹部を撫でる。実際に治る過程を観察していたのだが目にしてようやく不死者である実感が湧いた。

 

(治癒力が異常過ぎる)

 

 何度も薬の効力を思い返していた。自分の目指した成果だが想定外に絶大過ぎた。

 

(俺は本当にッ不死になったのか・・・?そんな馬鹿なことが・・・)

 

「やっぱり伝説の不死者でも死ぬのは辛いみたいですね。苦しまないよう即死させるようにと心掛けているのですがあの状態だとどうも・・・」

 

「お前の馬鹿力でじわじわと圧殺されたんだがッ?これのどこが即死だ。口から内臓がこんにちはだぞッ!俺の体をいいようにしやがって!!恐ろしいな!!?」

 

「うう、申し訳ございません」

 

「謝りながら俺の腕食うなよ!後ろ向いて喰えッ視界に入れるな!ゴミカス!!」

 

 ベットで仰向けになる俺に背を向けイグナイツはベッドに腰を掛け食事を始める。

 

 俺はボタンが外され腹部だけはだけた服を付け直そうと試みるも右手だけではどうしようもできずイラつきベットを殴りつける。身に着けた服は元が黒色のドレスだからか真っ赤な血で染まってもあまり目立たないが生臭さまでは隠せない。

 

 あいつが今食っているであろう俺の腕。根元から引きちぎられた俺の右手は新しく生えてきた。それでも他の火傷と骨折はそのままでだ。

 

 やはりこちらはどうにもならない、か―――

 

 あああああ!博士め余計な真似をしやがって。結果論になるが恨まずにはいられない。

 

 元が頑丈すぎるのと薬による得た異常な再生力のためイグナイツの攻撃でもなかなか死にきれずにいるのだ。半ば意識があるせいで意識が完全にトぶまでの間、痛みを過剰に味あわされた。

 博士が自爆テロに巻き込まれた俺を助けるためにやったことだと分かっていても結果がこれでは恨み言の一つも出る。そもそもの要因として俺をこの世界に召喚した天っ才少女も悪い。そう考えると自爆テロったアウターも悪い。行き場のない怒りが渦巻く。

 

 せめて足さえあれば・・ここまで惨めな気持ちにはならなかった。文字通り自立できやしない。

 

「はぁ、流石に全部は食べきれないかな」

 

「全部ってなんのことだ?」

 

 食事を終えた彼女が無言で指さす方向に気怠い体を引き起こし俺は振り返る。

 

「ウ”ェッ!!??」

 

 焼き爛れた肌から血を滴り落とす。所々の肉が吹き飛んでおりそれがいくらでも積んである。垣間見える虚ろな目たちが監視者のように睨みつけているようだった。

 

 ―――そこには俺の死体が山のように積んであった。あんまりな光景に絶句する。

 

「ちょっと待て!どれほどの間俺は気絶してたんだ!?こんなものなかっただろッ」

 

「かれこれ半日ほどでしょうか。衝動そのものは10時間程度で収まりましたがその後はずっと寝ておられましたよ」

 

「10時間も殺されてたのかよ!!つーかあれは何!?なんなの!!!」

 

「千切れた肉体からたまにああやって王子様が生えるんですよ」

 

 死体の山から俺を取り出し見せつけるイグナイツ。プラナリアじゃあるまいし俺はいつから無性生殖できるようになったんだよ。薬を精製する過程で何度もアウターで実験したが被験体にこんな効果を観測した覚えはない。

 

 本当にどうなってるんだ、俺の体は・・・これは何かの試練か?そんなに悪い事したか!?

 

「て、おい!俺の体になにしてんのッ!?変なところを触るんじゃないッ!」

 

 虚ろな目をした俺の死体を弄るイグナイツ。

 

「ええと、男の人の体って初めて見るんですがやっぱり女とは違いますね。”ここ”とか特に面白いですし。あとちょっと臭いですね。すんすん」

 

「馬鹿野郎ッそこ触るのやめろ!死体とは言え俺なんだぞッッ!あとそれ死臭!」

 

 手の匂いをフンフンと嗅ぎながら何かを感じ入るイグナイツはまるで子供のようだ。

 

 無邪気というかなんというか・・・信じられるか?こいつ20歳らしいぞ。本当に俺より年上かよ。論理観なんてもはや期待できない。人殺しても平然としていられるようなやつだ。致命的にどこかずれている。思考も、存在も。そりゃ隔離もされるし残当だな。

 

 チカチカと点滅する消灯が未来を暗示するようだった。この先何が待ち受けるのか。それは誰にもわからない。背筋を這いよるこの不安が気のせいであればよいが・・

 

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