オレをアリスと呼ばないで   作:淫ヴェルズ

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第47話 理不尽な開廷

 

 騒めきに満ちた秩序の庭。

 

 新緑の生命力とは相反す穢れた魂魄がグルグルとかき混ぜる。

 

 グチャグチャ。

 

 声ともつかない雑音が罪人を責め立てる。

 

 獣に囲まれ恋都は愁然と望まぬ役回りをこなす。

 

「さっさと答えてみろよッ真実って奴を!!」

 

「――――――――ッッッ」

 

 ――――妙なことになった。いったい何が起きている?これはいったいなんだ??

 

 これも無聊を慰める夢の主の囁きなのか・・・

 

 恋都は・・・ただ狂気に身を委ねるしかなかったのだ。

 

 

 ――――――――

 

 ――――――――――――――

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 崩落した聖域を何者かが縦横無尽に駆けまわる。

 

 壁を蹴り、不安定な足場をも驚異的な体幹で踏破する。

 

 恋都は・・・アリスを連れ去りグレイズたちを置き去りにした。手の内でアリスは蠢くも抵抗はない。

 

 勝手だと自覚はある。

 

 だがそこまで義理を尽くす相手でもないと適当に見切りをつけての行動だった。決断からの行動が早すぎて予想通りクラウンでも異能で予見できなかった。まあ普通あの流れなら一緒に同行する。察知するまでのラグはあるみたいだな。

 

 まあ、問題はここからだ。 

 

 意気揚々に王城に向かったはいいが荒れた中庭を抜ける際、恋都は突然濁流に巻き込まれた。

 

 濁流の正体。それは人の波。

 

 おしくらまんじゅうのようにぎゅうぎゅう詰めの編制が突然脇道から現れ恋都とアリスを飲み込んでいった。

 

 なんだこいつら、と確認する。誰もがボロボロのエプロンドレスと血みどろの麻袋を顔に被っていた。背丈はバラバラだが子供の範疇。恋都は思わず腕に抱えるアリスと不審人物たちを見比べる。顔立ちはわからないが麻袋の隙間からくすんだ金髪が覗いていたからだ。

 

 ッ・・・なんと獣臭いことか。血の匂いも凄まじい。

 

 アウターの浮浪児がこんな匂いをさせてたなと余計な記憶が覗かせる。

 

 恋都はいったい何者だと問うが集団は笑っているような汚い唸り声を上げるだけで会話にならない。群体の中では俺の様な存在はひと際目立つ存在だった。故に我慢ならなかった。不愉快にも程がある。どいつもこいつも風呂に入れよ!

 

「アリス、よく掴まってろ」

 

 恋都は周りがひしめき合うだけでは拘束するには足りないと決め込みジャンプで飛び上がろうとする。

 

 が、大地から足が離れない。

 

 腰に違和感を感じ、確認すると俺を囲む女たちが服やベルトを握りしめていた。まるで足が杭のように大地と接地しているようだった。

 

「―――!?」

 

 女の腕力とは思えない、ものすごい力。

 

 今の完全無欠な健康状態であるエリートたる化身の俺の行動を止める時点でただの人間ではない。

 

 隙を見て群衆の内の一人から頭にかぶる麻袋を引きはがすも・・・・後悔し、そっと戻す。

 

 ピピャヒキャキャアアアア!!!!!!!!

 

 ・・・・・見なければよかった・・更に気分が悪くなった。

 

 そうこうする内にどんどん流されていく。大きな流れには抗えない。勝手は許さないと敵意が見え隠れする。

 

 これはまさか夢の住人による妨害かッ?

 

 アリスも掴まれどうにもできず身を任せ流されるままに植物の茂みで編まれた迷宮を進むと開けた場所に出る。他と違い整備された綺麗な庭園。その中央になぜか法廷を彷彿させる法壇や傍聴席が存在感を放つ。

 

 だが証言台があるはずの中央には代わりに大きな断頭台が二つ隣り合わせに設置してあった。無視のできない異物。ギロチンの刃が鈍く光る。

 

(なんだ、あれは?)

 

 やはりこれはまだ見ぬ夢の住人による妨害か。俺とアリスはまんまと領域へと引きずり込まれてしまったのだった。

 

 

 

 

 会場はすでに怨嗟に浮かされ会場は燃え滾るマグマのように沸いている。裁判所の傍聴人は口々に怒りを吐き出しボルテージが上がっていく。俺には人語として聞き取れず獣のような唸り声にしか聞こえない。本当にそれで会話をしているのか?聞くに堪えない。

 

 人間だが人間ではない。一度たりとも言葉を知らずに生きてきた獣の戯言が地鳴りのように空気を震わせる。

 

 カンッカンカンッ!

 

 呆気にとられる俺をよそに耳障りの良い凛とした音が鼓膜を貫く。ガベルが裁判長によって打ち付けられ傍聴人のざわめきが鳴りを潜める。

 

 法壇に座る赤く煌びやかな装束を纏う少女。薔薇をモチーフにした小さな冠を頭に乗せ茨の刺々しい装飾が目立つ。それ付けてて痛くないのかと思う反面、ユニークなデザインと評価する。

 

 こいつ・・・女王か?

 

 その風格から真っ先に連想する気品。

 

 裁判長・・・つまり、こいつ刺客か!

 

 不思議の国のアリスに登場するキャラクターにそんな奴がたしかにいた。

 

 でも少々幼すぎやしないか?

 

 ・・・服がぶかぶかだし。格好といい、立場的にやはりあれが物語の女王とでも?

 

 群衆の中で思案する恋都だが一瞬小さな女王と目が合う。

 

 確かにそいつはクスリと笑ったのだ。

 

「これより裁判を開廷する。被告人は前に」

 

 女王の舌足らずな開始宣言と共に入口から黒い鉄球のついた足枷を引きずらせ入廷する二人の人物。黒く血で滲んだ麻袋を被った女性が両脇を固め二人を引きずるように乱雑に引きずられていく。

 

「―――――――――――――――」

 

 その人物を見て俺は息を飲んだ。見間違いでは・・ないよな・・?

 

 罪人が入廷すると観客からヤジが飛びゴミが降り注ぐも誰も咎める素振りを見せない。

 

 なんだなんだ何が始まるんだと恋都は罪人の顔を再確認する。何度確認しても”奴”であった。

 

 一人は悠然とした態度で余裕を装う白衣の男性。口元に笑みを浮かべるも青ざめた顔は隠せていない。明らかに疲弊している。指先や足先の爪がすべてはがされているおり拷問を受けたことが覗える。

 

 ・・・・知らない顔だ。中央に聳える二つの断頭台へと連行され抵抗することなく拘束具に繋がれていく。

 

 

 それよりも問題はもう一人だ。

 

 その人物の容姿は女性にしては長身で現実味のない端正な俺好みの顔立ち。白髪から飛び出た獣のような耳と力なく垂れるふさふさの尻尾が特徴的であった。体中ボロボロで手枷と足枷から延びる鎖が首輪に繋がれており口元と目が糸で縫い付けられていた。男とは違い一層厳重な拘束。相当暴れたのだろうと予想するのは難しくない。

 

 ああ、俺は、こいつを知っている。

 

 

「――――――イグナイツッッ!!」

 

 

 傍聴席を埋め尽くす麻袋の集団。全員が似た格好をした金髪の女性なのはこの際どうでもいい。

 

 どうしてこうなったのかと誰かに問い詰めたかった。

 

 恋都は脇に抱えたアリスを捨て置き聖剣を片手に勢いよく駆ける。こちら側を隔てる鉄柵を乗り越え物語の渦中に飛び込む。

 

 イグナイツは意識があるのか俺の呼びかけにピクリと動くも反応はそれだけだった。

 

 正直俺がこんなに大胆な行動を起こすとはと内心驚いていた。

 

 ・・・どうにも我慢がいかなかった。あれほどまでに傍若無人でエゴイストで狂気に満ちた怪物が、散々俺をいいようにしてきたあのイグナイツが、こうも調教された犬のようだと無性に腹が立つ。牙を抜かれてしまったのかと直接確認してやらねば気が済まない心算であった。

 

 こんな情けの無い奴に俺は翻弄されたのかと・・これでは俺の立つ瀬がない。

 

 力だけが取り柄の奴がなに勝手に俺の知らないところでやられている!?

 

 今の俺を見ろ。

 

 目が潰されてるとか関係ない。全盛期の俺が見れるのは今この時だけ。夢が続く限りの期間限定なんだぞ!?

 

 それなのにお前は地面ばかりに俯いていつまでも蟻の数でも数えているつもりなのか。

 

 そんな奴ではないだろが!!お前みたいな女は蟻をプチプチと執拗に潰しているのがお似合いだ!!!

 

 蟻と俺、どちらかなど比べるまでも無い。

 

 情けの無い姿を晒すな!

 

 ここで・・・この衆目でどちらが上か理解させてやるよ!!ケツ舐めやがれクソがよ!!

 

 恋都は爆発しそうな複雑な思いを抱え勢いよく飛び出したものの柵を乗り越えた。

 

 

 ――――――だがその先は、なぜか弁護士側の席であった

 

 

「――――――!?????」

 

 何が起きたのか、まったく認識が及ばなかった。何とはなしに女王に顔が向いたのは”ここ”の支配者が彼女であるとなんとなく理解していたからか。

 

 

 もうすでに次の演目は始まってしまっていたのだ。

 

 

「いやー待ってたよー。遅れるって聞いていたけどよく間に合ったね、弁護人ちゃん」

 

 女王はニコニコと微笑みながら指を鳴らす。するとどうだ。道中の戦闘などでボロボロだった俺の服が途端に礼服に様変わりする。だいぶ着心地がよろしい。いい素材使ってるな。

 

 ・・・着心地とセンスの感想はひとまず置く。やはりこの女の仕業か。それとこの立ち位置、一つ疑問がある。物語としては弁護側ってもともとアリスの役割じゃなかったか?あれ証人だっけ?

 

「どういうこと?話が違う”ッ!!」

 

 突然ヒステリックな金切声が響く。声の主はちょうど俺の対面側からだ。

 

 ・・・??・・な、なんだ・・あいつは。

 

「どうしたのかな。検事ちゃん。急に声を上げるなんてびっくりしちゃったよー」

 

 わざとらしく小首を傾げ指で頬を突く女王。小馬鹿にしているようにも受け取れるその態度が勘に触れたのか検事ちゃんは発狂したように机を叩き叫ぶ。

 

「なんで弁護人がいるののおおおおおおお!!聞いてないッ!聞いていないッ!嘘つきッ!!?こんな奴知らないッッ!!」

 

「もーうるさいよーぷんぷん!弁護人の数の埋め合わせが間に合ってしまったんだからしょうがないんだよー。まあこれも必然の運命だと諦めて楽しもーぜ。イエイ!イエイ!」

 

「ちょッ!ちょっと待ってくれ。弁護役は本来あの子だろ!?人違いだ!」

 

 恋都は傍聴席の最前列でぽつりと取り残されたアリスを指さし間違いを指摘する。

 

 それはアリスの役割だろ。それでは話が破綻する!アリスこそが主人公なんだぞ!

 

 それなのに・・・女王は興味なさげに首を振る。

 

「・・・別にあいつでもいいけど、あの子に弁護人ちゃんが務まる?大丈夫?心神耗弱っぽいしなんかやだー女王は不服だなーあんなの」

 

「・・それは、そうだがっ」

 

 指摘はまさしくその通りだと思う。一言も喋ることもなく自己主張に乏しいアリスに弁護などできるはずもない。そもそも断頭台の二人と面識があるのかもわかっていない。それでどう弁護するんだ。男のほうは俺も初めて見る顔だ。天鳴より引き抜いたどの情報にも載っていない。グレイズと同じパターンか、それとも・・・

 

(・・・・・・・・・・どうする?)

 

 物語が進行し始めている。その事実が恋都を焦らせる。不純物を排す為にクラウン達から強引に離れたのに、その恋都自身ががっつり物語に食い込んでいるのでは意味がない。それもアリスと入れ替わる形。

 

 それもこれも軽率な行動の代償か―――

 

 だが、なぜアリスが不在なのにストーリーは進行する?進行できるのか!?これ、まだ取り返しがつくのか・・・?

 

 その上で・・俺は逆に女王に聞きたかった。物語の都合上ここはアリスじゃなくて本当にいいのかと。こうもあっさりと主要人物である女王に拒否されると思ってもいなかった。チシャ猫と同じ存在の女王が否定の意を示すとなると、やはりこいつが物語の進行を妨害している刺客・・?

 

 待て、決めつけるには早計過ぎる。女王は元からアリスに対し無理難題を押し付ける人物だった・・気がする。

 

 敵対的なスタンスはむしろ正しいような。

 

「あ、そうだッッ!あいつの代わりに君が弁護人ちゃんをやればいいよ!うんうんそれがいいよ~決定~裁判長たる女王ちゃんも認めちゃう~はい勝手に承認。いえ~い早い者勝ち~」

 

「はあ!?聞いてない!そんなの無効!認めないッッ!!無効無効無効!死ねッ!」

 

「はい裁判長バリアー。これによって無効を無効とします。この宣言に更なる無効は処理しませ~ん。はい女王の勝ち!やはり偉いな~女王ちゃんは~」

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あああ死ねえええええッ!!」

 

 思い付きで弁護人に任命されたことに恋都はますます困惑する。

 

 あ、そうだって・・なんだその適当さ・・・まさか敢えて俺と言う不純物を取り込み物語を破綻させるつもりなのか?

 

 俺は・・・罠にかかってしまったのか。獣共の洪水に巻き込まれた時点でアウトだっのか!?

 

 検事が食って掛かるように声を上げるも女王は気にしていない。検事からやかまし気に顔を背け何かを探るように俺を見据えている。光の無い漆黒い眼から感情が読み取れない。笑っているようでその実笑っていない。仮面を張り付けている。

 

 何もかも見通しそうな相貌を前に俺はたまらず目をそらす。妙なプレッシャーと好奇心を発する小さな女王はとても子供には見えなかった。

 

 強大な何かを相手しているようだった。これまた初めて相対するタイプの相手。

 

 考えが・・・まるで読めない。

 

「弁護人ちゃんもその方がいいよね~やっぱり司法国家を謳う手前、形だけでもやっておかないと反乱起きちゃう!処刑が見世物の時代は終わったんだもんねー素敵な時代にレボリューション~!」

 

 いや、どこの世界に処刑場と併設した法廷があるんだよ。これ見よがしな殺意が隠しきれていない。死が直結しているため司法国家を名乗るにしてはどうにも野蛮だ。最初から死刑確定の結果の決まった茶番の表れか?

 

 品性とはあまりにも遠く良識はどこへいってしまった。

 

「不死者の分際でえええええ、邪魔なんだよおおお!そうだ!さっさと辞退しろ恥知らずああああああッ!!!どっかにいけよおおおお!死ねよぉッ頼むから死ねよォッォ!!」

 

 対岸の検事席からの呪詛が今度はこちらに飛び火する。罵倒と共に投げられた石が頬を切る。完全に女王からのとばっちり。歯ぎしりがここまで聞こえる。なぜこうも俺に怒りを向ける?

 

 ・・・あまり顔を合わせたくないが仕方なく正面から検事の姿を拝む。

 

(・・・・・どういうことだ?)

 

 驚くことに検事もまたアリスと同じ金髪碧眼。身体的特徴もまた同じで決定的に違うのは服装と年齢だろう。半狂乱の彼女の顔は感情のままに歪むもそれでもまごうことなき美人の範疇。でも、そのスーツはサイズ的に少し無理があると思う。裁判長あんなのありかよ。なんか言え。指摘しろ。

 

 いや・・・それはいったん置いておこう。

 

 特筆すべき点。彼女は・・・大人であったのだ。 

 

 アリスが順当に成長すればこのような姿になるのだと妙に納得してしまう。子供の様な言動と癇癪で台無しだが成人している。とても子供が出せる色気ではない。

 

 これが検事として機能するのか甚だ疑問ではある。

 

 ・・・・とりあず手でも振っておくか。しかも両手でだ。体も揺らそう。ぐわんぐわん。

 

「ああああああああああああああああああああああッッッ!!!!不細工な猿が手を振ってるうううう!!!むかつくううううッ!!!!アリスが犯されてるよおおおおおお!」

 

「あははは!君もアリスじゃないか~しっかりしてよね検事ちゃん」

 

「う、うじゅう、うじゅるぅ。女王ッアイツを殺してよっ殺せ殺せッツッ!視界にいるだけでイライラずるッ!!」

 

 おかしそうに女王は笑うも、やっぱり笑っていない。怖い。笑うフリをしながら俺の事をしっかりと見ている。どうしてこうも恐れを抱くのだ・・・

 

 それにしてもアリスかぁ・・・こいつもアリスなのかぁ・・・どうなっている。

 

 しかも俺が不細工だときた・・・・少しだけ仲良くできそうだなと思えた。

 

 

 

 はあああああ、まともな奴が一人もいない。気狂いどもに法は正しく適用できるのだろうか?

 

 どうにも状況が混迷になってきた。やっぱり二人もアリスがいるとか意味が分からない。唯一無二の成長したアリスが現れるとか想定できるか。俺が攫ったアリスと、どちらかが偽物と考えるべきだろうが判断に足る要素が余りにも少ない。なんで二人もいるんだよ。

 

 アリス検事は明らかに頭がおかしいし、こいつではないと考えたいしそうであってほしい。これは個人的な願望だ。

 

 だがオリジナルアリスが長い年月を果て正気を失った可能性を具現化したとも捨てきれない。あれがアリスと仮定するならこのまま物語を進めることは問題ない、のか・・・?

 

 一応裁判と言う盤上にはいるのだしな。

 

 裁判が開廷しようとしているのは条件が揃ったからともとれる。主役のいない物語など始める意味も無い。こいつがアリスとかすごく嫌だなあ・・・でも喋るし意思疎通もできる。いままで出会って来たアリスっぽい奴の中では初めての個体。相対的な批評だが考えようによってはある意味まともではなかろうか。

 

 もう一つの可能性として、実はアリスって複数いるのではなかろうか。帽子屋もチシャ猫もアリスが一人とは言及してはいない。観客どももアリスと同じ格好をしているのも意味深で謎だ。

 

 夢の住人は助言はするが肝心なことは何も言わない秘密主義者だ。ああしろこうしろと勝手に願いを仄めかす。他人頼りの干渉者。自ら干渉できない制限があるのだろう。誰しも産みの親は殺したくないか。ただ単に自身の手を汚したくないだけなのか。

 

 その癖アリスを助けろと言うだけ言って現地解散する始末。そかもそれが殺害だと宣う。涼しい顔で静観する女王もその同類だろうから油断ならない。夢の住人ってどいつもこいつもキメてんのか。

 

 もう何を基準に考えればいいのかわからない。考えるほど底なし沼に飲み込まれているようである。それもこれも魔術やら異能やらの超常現象の存在が大きい。それらは元の世界の常識からかけ離れ、大きな力を持つためか異世界人の俺にはどれほどのものか測りかねる。

 

 この世界における現実と非現実の線引きが不透明すぎてなんでもありのように感じてしまうのだ。これで正常な判断などできるものか。先ほどのアリス検事の不死者発言もこの世界の住人にとって知っていて当たり前の情報なのかもしれない。情報アドバンテージは常に向こうにある。

 

 ・・・これ以上考えても無駄な気がしてきた。俺が選ばれた理由も不透明。真実を見極めるためにもこの裁判には弁護人として関わるしかない。目の前のアリスは検事役で現れた。こいつがオリジナルの魂かどうかはまだわからないがイグナイツを救うにはアリスと敵対することになる。

 

 支配者たる女王に巻き込まれた時点で物語から逃れることはできそうにない。つつがなく進行させるにも情報が必要だ。

 

 この裁判でアリスが本物かどうか見極めてやるしかないのだ。

 

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