オレをアリスと呼ばないで   作:淫ヴェルズ

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第50話 古い研究記録

 

 これはとても古い記録。

 

 ゲームマスターたちの使命の軌跡。

 

 形骸化した源泉知らずの夢の跡を未だに追い続ける者がいた、それだけのお話。

 

 ことの始まりはやはり900年前だろうか。

 

 

 ・・・・・・いや全ては娘が産まれてから変わってしまった。

 

 

 

 ――――――――――Side Extra/グリム

 

 

 

 ゲームマスターことグリムは今日も煙草を吹かす。

 

 嗜好品としては時代錯誤で古臭くもなぜか手放せない風味。まさしく歴史の詰まった味であった。なるほど外で流行るわけだと意味も無く頷く。

 

 高い金を払い得るのは一時的な快楽と抜けない毒素。体に悪い物はどれもが魅力的で依存性の高いものが多い。それが何だと言うのだ。リスクがあるからこそ、ここまでおいしいのだ。命が脅かされるからこそ毒素に混じった一握りの快楽が光る。命という高いを代償で得られる快楽は何物にも勝る。

 

 やはり外界に来たのは正解だったなとグリムは改めて確信した。

 

(そろそろ・・・現実を見るか・・・)

 

 膨大なデータの山に囲まれながらひたすら邁進していたあの頃もこうして現実逃避気味にタバコを吹かしていた。それすなわち停滞の意。

 

 どれほど同じ実験を繰り返してきたことか。時間だけがただ過ぎ去りゆく。

 

 終末戦争時に勇者アリスによって引き起こされた想定外の事象。

 

 天を割り”超越者たち”に恐れと希望を抱かせた。

 

 あれはまさに我々が長年求めていた福音そのもの。

 

 ”奴”が始めた終末戦争を安全圏から高みの見物を決め込み静観していた者はこぞって絶句した。同族の誰かが始めた、ただの大規模儀式だとばかり当初は思われていたのだ。それがあんな結末を引き起こすと誰も予想だにしなかった。

 

 そこからは水面下で熾烈な争いが起き誰もがあの現象を引き起こした張本人を手中に収めようとしたが終末戦争に関わりを持たぬ者が殺到した時には既に遅く、渦中に身を投じていた私が全てをなぎ倒し制したのであった。

 

 グリムは終末戦争を引き起こした計画の首謀者すらも欺いてやったのだが・・・勇者アリスの確保に一カ月もの時間を要してしまった。

 

 

 ・・・・あれから300年。手にした栄光への切符は切られることなく、未だに成果は上がらずにいた。

 

 鍵は揃えど肝心の使い道がわからない。

 

 地の底から届かぬ天を仰ぐ毎日だ。

 

 増え続ける勇者アリス・・・いや、オリジナルアリスの子供。

 

 本来の力が霧散し使い物にならなくなったオリジナルアリスの代用品。

 

 次代を担う器たる真なるアリスを作り続けるもオリジナルの力には程遠い。待望せし正統なる後継者に未だ打診無し。

 

 いちいち懐胎させ出産させる手間が惜しく効率を求めオリジナルアリスの肉体を改造したおかげで産まれてくる”器”の量を劇的に増やすことに成功したがそのほとんどが自我を持たない個体ばかり。

 

 とてもアリスを名乗るには程遠い。こんな存在ではアリス足り得ない。敵にも味方にも恐怖を紡いだあのアリスとは決定的に違う。

 

 産まれる度に選別を行い、いつしか品質ごとにランク分けをするようになっていた。産まれる個体はなぜか女性のみ。理由は未だ不明。

 

 研究の規模が広がるうちにコミュニケーション能力があり自我の芽生えた個体・・・いわば守護者はこの研究所でスタッフとして迎えるようになった。

 

 そして、アリスの血を引く個体にはそれぞれにランクがA~C種まであり、B種が守護者にあたる。

 

 

 <特定種別B種>

 

 B種個体はオリジナルアリスの特色が薄く遺伝的には掛け合わせた男性側の遺伝子に引っ張られた個体である。

 

 精神に異常はなくアリス種特有の金髪碧眼が見られないがどの個体も美形揃い。美の造詣のバランス感覚はどの種にも共通するようだ。

 

 ・・・なぜか角や尻尾が生えていたりするが原因は不明。遺伝子的にはその様な因子は含まれていないはずなのにだ。

 

 とにかく戦力としては頼もしく保有魔力量がとにかく多く魔術適性”大”。A種、C種と違い魔力を有効活用できることから外界人どもに負けないことのなによりもの証明。

 

 アリス種特有の驚異的な身体能力も持ち合わせ、軽度の【フルドリス】も機能していることが確認されているが他の種ほど機能していない。

 

 まさしく外界人とのサラブレッド。”器”として最重要な異能が遺伝していないため完全に失敗作だが本来”ゲームマスター”が使役すべき守護者と比べても優良そのもの。中でもとびきり優秀な個体は戦闘特化の”黒殖白亜”や外界での情報工作を担当する”黎迷”に配属される。

 

 

 問題は残りの個体だ。

 

 

 <特定種別C種>

 

 生産される個体のほとんどがC種で占める。C種は自我がなくアイデンティティを確立しない。見た目がオリジナルアリスと完全に一致。特に異能は持ち合わせず成長は少女と大人の中間形態で打ち止め。約三割は生まれて間もなく原因不明の突然死をするのだが、そうでない個体は食事も睡眠も必要ない。

 

 攻撃を受けても無抵抗でありされるがまま。生物としての防衛機構は存在しないがA種並みの非常に強力な【フルドリス】が確認されている。

 

 永遠たる彼女たちの役割は性的興奮剤で発情させ確保した良判定の雄と交配させ母体にするか、処理の意味も込めて”いろいろな”材料にするしか使い道がない。交配が必要となるためそこから更に産まれてくる新たなる個体はアリスとしての純度が低下するのは避けられない。少しでも純度を高めるためには共食いしかない。純度を補うために同じ血族を加工し同族の肉を摂取させるのは仕方のないことであった。

 

 試行錯誤の結果、母体としてはきわめて優秀となりそこからA種が産まれることも増え僅かな可能性に賭けオリジナル以外の個体による生産は継続中。

 

 

 

 そしてだ。

 

 <特定種別A種>

 

 本命である次代の器たるA種・・・個体数は非常に少ないがオリジナルの特徴を色濃く受けているのだが精神性に異常しかない個体ばかり。他と一線をかくす点としてやはり異能の存在が大きい。

 

 金髪碧眼でありC種と違い少女の形態で時が止まるが異能の影響なのか異能が身体に反映される。

 

 コミュニケーション方法が独特であり一人でいる時は大人しいが周りに生物がいると積極的に殺害を試みる。

 どれ程かといえば昔、A種を遠方の都市に放ったことがあるのだが生きる者全てを殺戮したったの二時間で陥落。他人がいるかどうかで行動範囲や活動時間に大幅に違いがみられる。ちなみにその個体は現在も行方不明であり専属の回収部隊も半壊した。A種は制御不能と結論付け兵器運用は諦める切っ掛けとなった。

 

 異能の影響から身体に大きな変化が見られる。ぬいぐるみのアリスは体がぬいぐるみそのものであり目がボタンで腹には白い綿が詰まっているし、貪食アリスは竜のような尻尾と角に翼を携える。異能はどれも強力無比。この世界の法則から外れたそれはまさに勇者の異能そのもの。A種はやはり正統なるアリスの継承者に最も相応しい。

 

 

 

 地の底も底。第三階層にて管理しなくては世界は簡単に壊れていた事だろうが終末戦争で見せた事象をまじかで観測した私からすればそれでも物足りなく感じてしまう。

 

 彼女らは本当に次代のアリスになれるのであろうか。

 

 あとどれほど繰り返せばいいというのだ。

 

 ――――――――あの時もっと早くにオリジナルアリスを回収していればこんな苦労を背負う事もなかっただろうに。

 

 

 

 それもこれも全てはオリジナルアリスの状態に起因する。

 

 例の事象の後に回収したオリジナルアリスは発見当初、狭く汚い牢獄の中で何も身に着けておらず自分の指や排泄物を喰らっており、まるで動物の様に飼われていた。

 

 召喚された当初の屈託のない笑顔はどこに消えたのか過度なストレスで彼女は自身が誰なのかもわからない。何より・・・勇者の象徴たる異能を失っていたのだ。

 

 一緒に回収した記録によればアリスの召喚者であり管理者であった”奴”は実験と称し極めて原始的な拷問をオリジナルアリスに行っていた。なぜこんなことを・・と理解できなかったが記録を読み進めるうちにオリジナルアリスが勇者の力に起因しない絶対的な不死性を獲得していることが記述されていた。

 

 ・・だからすぐに傷が消えるのか。”奴”がアリスの異能でなく不死性に注目した理由―――同時に”奴”が終末戦争を起こした本当の理由を理解してしまう。不遜にも我々のルーツに触れるつもりか。だが、私には関係の無い話。ただただ獣の様に調教されきった半狂乱のアリスをどう活用しようかと思案を張り巡らせるばかりであった。

 

 予定通り地上制圧のための自身の拠点を戦場跡に作り、周りで探りを入れる不死の残党を排除しながらもオリジナルアリスのメンタルケアを施すのに余念がなかった。その甲斐あってかある程度持ち直したがオリジナルアリスからは碌な情報は引き出せなかった。話すことはすべて意味不明。保有する不死性は謎。異能の詳細もわからず徒労に終わってしまう。

 

 とんだ無駄骨だったと後悔するも事態は別の所で動いていた。

 

 勇者の血には異能が宿る。

 

 そこに私は目を付けた。

 

 戦時中に採取した遺伝子を使用し片手間にオリジナルアリスを孕ませ産ませた子供を使い”守護者”の代用として精製・運用しようと考えていた。勇者の異能は低確率で遺伝する。それは終末戦争後に有力者と結婚した勇者の血筋から確認されており戦勝国間で勇者の奪い合いに発展しているほどだ。

 

 少し遅れたが本来の予定通り人類撲滅の為に行動する。それもまたゲームマスターの使命。この世界構造の”現状の打破”は諦め、産まれた個体を幼い頃から殺戮人形として育て外界の主要都市にでも放れば半壊させるのは容易いと割り切って計画を変更していたのだが・・・その時産まれた個体は産まれると同時に異変を引き起こした。

 

 それはほんの一瞬と言える時間。だが計器はしっかりと記録していた。世界が一瞬別のモノへと変貌し後には断層のような物が残っていた。

 

 ただそれだけで拠点は半壊。私も死にかけた。これを引き起こした個体も死亡。

 

 その時ばかりは笑いが止まらなかった。小規模だったがあの現象とまったく同じ。それから60年はアリスに夢中だった。

 

 長い時間を苦し気に呻くアリスと共に歩んだ。

 

 そして様々な実験を経てある結論を導き出したのであった―――

 

 オリジナルアリスの異能は失われておらず、アリスから抜け落ち終末戦争の戦場跡を漂い続けておりA種はそれを誘因すると。

 

 

 

「・・・・・・クソッ」

 

 血塗れのガラス越しにグリムは悪態をつく。久々の異能個体ということで出産に立ち会っていたのだが出産途中で母体の腹を破り腫瘍の塊が飛び出した。膨張する肉の塊は止まることなく肥大化していきガラスを突き破ろうとまでしていたが、そうなる前に自身の異能で発火し消滅。

 

 異能持ちの個体が産まれてくるのはかれこれ19年ぶりなのに自己崩壊を引き起こしてしまったか。あの醜い見た目では異能を持っていても器たりえない。たまにあるのだ。まるで産まれてくることを否定するように死ぬ個体が。

 

 グリムは実験室に踏み入るが、まもなく母体の死亡も確認。また振り出しか。

 

「あちゃーこりゃまたやべーですね。後片付けの手配はしてるんで休んだらどうですか」

 

 背後からかかる声に返事をしながら振り向く。

 

「ああ、頼む。ただくれぐれも悟らせないようにな。B種どもはA、C種と同じ種であることを知らないのだからな」

 

「大丈夫ですよって。B種にとってA種は敵でしかないですしC種の存在は明るみに出ることはないです。ただ実験の過程でA種が死んだって感じで」

 

「流石に疲れた・・・後の事は頼むぞ”クリムゾン”」

 

 白衣を身に着け眼鏡をかけた女性の背後からゾロゾロと防護服に身を着けた守護者が洗浄の準備に取り掛かるのを尻目に自室へと赴く。

 

 クリムゾン=ロード207

 

 私と同じくこの昏迷なる地に舞い降りた”ゲームマスター”の一人。

 

 初期のころから私の行動を支援してくれる協力者。

 

 普通”ゲームマスター”同士で結託することはないのだが彼女は変わり者らしく自ら協力させてほしいと申し出をしてきた時には死ぬほど警戒したものだ。

 

 誰もが栄光を掴もうと必死に努力し妨害し合い人殺しの成果を競うものなのだが、今の今まで怪しい様子も兆候も見られない。

 

 私のファンを自称するだけあってか行動力が尋常ではなくオリジナルアリス回収の数日後に接触してきた。隠密行動に徹していた私を追跡する程の力の持ち主。アリスを奪いに来たのかと思えばそうでもない。

 

 それから何十年もの月日は流れ信用する程度の関係性にはなったが・・・

 

 

 

 

「ふぅ・・」

 

 ベットに身を窶すも久しぶり過ぎて自分の物とは思えなかった。

 

 実験は・・行き詰っていた。

 

 あれからもう500年は経つのか。外界では多くの国が衰勢を繰り返しているというのに研究に新たなる進展はなく同じような毎日を繰り返してばかり。

 

 このダンジョンに探りを入れる他のゲームマスターからの刺客を撃退することが何も感じない程に普遍化していた。

 

 体制は整い、指示は無くとも勝手に守護者たちが処理するまでに成熟していたのだ。

 

 ああ、ため息の一つも出るというもの。クリムゾンと精査し合い導き出した理論は間違っていないはずなんだ。

 

 過去にオリジナルアリスの力を定着させた素体と遜色のない器たる個体を作り上げたはいいがどれも上手く定着してくれない。

 

 オリジナルアリスの消えた異能は今もこの地に漂っている。それは呪いとなり振り撒いている。

 

 この地が不帰の古戦場跡と揶揄されるようになったのはなにも私のせいではない。確かに対外敵用ダンジョンを構えこの地に探りを入れる冒険者や国の調査団を壊滅させてきたが都市部に潜入させた”黎迷”からの報告ではこの地に訪れた行方不明者の数がどうしても一致しない。つまりダンジョンとは関係なしに死んでいることになる。

 

 終末戦争があった因果な土地なこともあり周辺国からは忌避されている。迷信深い外界の探索者が減らないのはひとえに黎迷による情報操作の賜物。こちらとしても器を作るには粋のいい雄の個体は必要。

 

 豪雪地帯の探索は非常に危険であり隠されたダンジョンに辿り着くだけでも優秀と捉え配合相手に相応しいと基準を設けた。おかげで交配相手に困らずにいるがやはり冒険者は愚かだと思う。

 

 あるかどうかもわからない数百年前の遺失物や財宝を求めやってくる。確かに存在するがそのほとんが分厚く凝り固まった地層のような雪の大地に埋まっている。回収の労力を考えればとても採算が採れない。拠点の拡張時に発掘できれば儲けものぐらいの認識だ。そんな現実を知らない冒険者はこの地が禁忌指定を受けた後でも秘密裏に訪れる冒険者の足は絶えなかった。帰還率がどれ程低くとも夢を求め邁進する生き方はもはや病気だ。

 

 勝手に死ぬ分にはいい。それに不可解な出来事が絡まなければだが・・・

 

 

 古戦場跡は確かに妙な出来事が起きやすい。冒険者の間で囁かれる噂の大半はデマであるが一部は紛れもない真実。それもすべてオリジナルアリスの異能の影響だと考えている。

 

 オリジナルアリスの異能は本体から離れ今もこの地で漂っている。ただの憶測ではなく紛れもない真実。根拠となるのはやはり不定期に計測される小規模な空間異常。魔力を乱す雪の中でこれを行えるのは異能のみ。オリジナルアリス捕獲時に回収した記録とも類似点が多く見られ数値も一致する。

 

 そして器たるA種が産まれた際、必ずA種を中心に空間異常が引き起こされる。力は拠り所を求めるようにA種の持つ異能に引かれA種の肉体に無理やり定着しようとするも1分も経たずに霧散してしまう。最高で20分以上もの間定着した個体もいたがその時も拠点が半壊。

 

 私とクリムゾン、当時の守護者の面々と総力を挙げて協力することでなんとか収拾がついたが二次災害で他のA種が脱走し立て直しに時間がかかる事となった。

 

 異能に引かれているのは間違いないが、異能だけではだめらしい。それはAの因子を植え付け異能が発現した外界人ではまったく誘引できなかったことで証明している。どうもそれ相応の肉体、つまりオリジナルアリスに近い姿をした者でなければいけなかった。

 

 

 最近では薄気味のわるい亡霊のような少女の姿が目撃されるのが悩みの種だ。B種の間で噂になっているのだ。怪談話のようにA種に似たボロンボロの格好の少女が枕元に立っているという。最初はA種がまた脱走したのかと再度収容されたA種の確認をしたものだが身体的な特徴が一致する個体はいなかった。こんな感じの霊的存在の報告が後を絶たない。B種たちの定期的な診察は欠かしておらずメンタルは正常そのもの。B種は霊的感覚も優れていることから幻覚などでは決してないと断じている。

 

 

 これではいつまでたっても目的を達成できない。他のゲームマスターと違いせっかく”あの人”のお陰で寿命の制限から解き放たれ時間というイニシアチブを手にしたはずなのに・・・

 

 最近では次代のアリスは諦めて現存のA種を使い力の定着時間を出来るだけ引き伸ばし行使させるべきだというクリムゾンの主張が正しく思える。A種は異能を使用時、霧散したオリジナルアリスの異能を誘因・定着化させる。

 

 問題は非常に危険すぎるという点だ。A種による異能の行使、つまりは暴れている状態でありそのためには餌となる他の命が傍にいなくてはいけない。

 

 B種はA種が勝手に脱走していると疑問に思っているが実際の所A種を脱走させているのは私の仕業だ。

 

 時偶に実験として守護者相手に何も告げずに脱走したとしてA種をぶつける。甚大な被害を被るが戦闘特化のB種でもなければ相手にもならず異能を長く稼働させるには、それ相応の実力者が相手でないといけない。外界人では大した期待も出来ないため、B種の兵力がある程度の基準を満たしたタイミングを計り仕方なくやっているのが現状だった。

 

 クリムゾンもどうやってアリスの制御をするかで行きずまっている。結果が出せていない以上私も意地を張り続けることに意味はない。何事も完璧を目指してしまうのは悪い癖だと自覚している。

 

 もう一度相談するべきだろう。

 

 ・・・でも最後に一つだけ試そう。これが不発に終わればその時は・・・

 

(アリスよ何が不満なのだ。何が足りないんだ)

 

 漂う力には意思が存在している。器に定着した際、喜びの感情しか見せないA種の表情に明確な変化をもたらす。その表情は必ず憎悪に歪んでいた。

 

 だったらなぜその力をもって復讐をしない?お前の怒りはそんなものなのか?

 

 私も悲しいよ。存在意義を果たせない人生は灰色だ・・

 

 目蓋は重く深い闇の中へと意識は消えた。そばで顔の無い少女が見ていることも知らずに。

 

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