オレをアリスと呼ばないで   作:淫ヴェルズ

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第64話 再転生

 

  ――――――――――Side//////・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ」

 

「・・・・・・・・」

 

「ねえ死んだの?ねぇ」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・死んじゃった」

 

 それでも首を絞めるアリスの手の力は緩まない。アリスとなった恋都の顔を至近距離からじーと眺めながら力いっぱいに締め付ける。骨が折れ血が溢れても構わない。なんとなく命が消える瞬間を感じていたかった。

 

 それからしばらくしてようやく軛が外された。

 

 いつまでも繋がってはいられない。

 

 彼は、いやアリスは何処とも知れぬ場所で一人寂しく死んだ。それでも間違いなく最後に彼は一人の女の子を助けたのだ。

 

 そこは褒めてあげないとね。

 

 でも、ずっと待ってたのに彼は遅れてやって来たのだ。一言も謝りもせずに。

 

 ずっとずっと一人で待っていたのに・・・・・

 

「ごめん嘘、嫌いだけど同じくらい嫌いだよ。あなたはこうしてアリスを助けてくれたもん。だから好きとか愛してるとか思えたらよかったんだけどやっぱり嫌い。でも、さようならは言ってあげる。きっとこのことは忘れないよ。だって今日から新しき”Alice”があなたとして生きていくんだもん」

 

 Aliceはベットに腰を掛け抜け殻に語り掛ける。

 

 冷たく横になる過去の自分。あれだけ消し去りたかったみすぼらしい小さな器。

 

 どうしてか今では慈しみすら感じる。のど元過ぎれば他人事でいられる。なんとも現金な話だなとAliceは笑う。

 

 厳密には今回の異変に彼は関係ない。古い古い因果に導かれ合流してしまっただけの話。それでも”アリス”は知ってしまったのだ。彼の存在を。知ってからずっと考えていた。どんな人なのか。どんな顔なのか。優しい人なのか。

 

 思えば思う程肥大化していく彼の存在。関係ないとわかっていてもAliceには憎くて悔しくても、興味が尽きなかった。

 

 ただ知っていてほしかったのだ。この想いを。迷惑なのは百も承知。僅かな希望を胸に来るかどうかも分からない彼をずっと待ち望んでいた。その思いは時間を超越し偏在する神域まで至らせた。

 

 Aliceは待っていた。ずっとずっと都合のいい救世主様の到着を・・ただただ祈っていた。

 

 そして・・・彼はやってきてくれた。

 

「・・・・くヒひっ、ありが とう ぎギギ」

 

 指を鳴らし鏡を出現させる。そこに写るのは怪我一つないありのままの彼の姿。思った通り綺麗な顔立ちをしている。やはり彼は”アリス”だけの”王子様”であったのだ。それを手ずから殺してやった。これでもうAliceを止めれる者はいなくなった。

 

 この肉体が彼のであったと考えるだけで愛おしくて堪らない。矛盾している。死んでから好きになれそうだなんておかしな感覚だ。

 

 でも、やっぱり嫌いだな。生きていたらいたできっと殺したくなる。想像の中の彼でなければ愛でることもままならない。実態を知ると汚らしくてたまらないのだ。

 

 

「アリス・・・・??」

 

 

 内なる感傷に浸るAliceの前に何者かが現れる。

 

「ア、アリス・・よ、よかっだニ”ャァ!無事に転生したんだニ”ャ!う”ぅよかっだぁアリスぅアリスぅぅ」

 

 急に響く耳鳴りのする”煩わしい”声にAliceは顔を向ける。チシャ猫は現れるやいなや姿の変わったAliceを抱きしめる。

 

「・・・・・・・・・・」

 

 感涙咽び泣くチシャ猫の力強い抱擁を受け止めながら周りを無感情に見渡す。

 

 多くの成り損ない共がAliceを見ていた。

 

大望が成就したと皆が祝福をする。

 

 瓦礫の上に降臨したAliceを取り囲み忌み子の誰もが歓喜していた。その全てがC種と分類されるアリスが産み落としたゴミのような子供たち。実際はアリスの魂の一部を勝手に分化しその際発生したアリスの名を語るガラクタ。

 

 アリスのような幻想体はある”特定の”相手同士でなければ新たなる生命を産み出さない。産まれるのは歪んだアリスの残りカスの分身のみ。喋れもしなければ主体性も無い。ただ生きるだけの無垢なるお人形。とてもじゃないがこの舞台に降り立つ資格も無い。醜態をさらし笑いものにされる恥さらしども。

 

 それがウジ虫の様にせめぎ合い密集している。主役たるAliceの登場で自我でも芽生えたつもりか。

 

 なんと―――――歪で醜い存在だろうか。

 

 

 

 そう、Aliceが強く認識した瞬間、その場に居る全員が細かく切り刻まれた。

 

 

 

「・・・・え・・えっ」

 

 先ほどまでその誕生を祝福していたC種たちが雨の様に降り散る。血を吸った大地は黒く濁り、肉の破片が飛び散る。

 

 余りにも信じられない光景にチシャ猫は呆然とする。

 

 チシャ猫にとってC種はアリスの子供であり、C種と分類された彼女らも親である彼女を慕っていた。会ったことはなくともみな傍に感じていたのだ。誰もが血の繋がりし家族だと認識していた。

 

 そこが致命的な認識の差異であった。

 

「・・・・・・気持ち悪い」

 

 Aliceは不快感を隠そうともしない。

 

 この身に宿る彼の気持ちが今ならよくわかる。まともな子供を作れない生物としてのずれ。自身の歪さへの諦観とそんな風にしか形を与えれなかった”あの子”への懺悔。遺伝子の断線に変異。そんな紛い物の体で製造者の望むレールの上で生きていかねばならない未来の展望の無さへの虚無、無気力感。

 

 彼は変異し、この世界で新たな価値観に触れたことで自然回帰に近いの思想に辿り着いた。

 

 いい考えじゃない。嫌いだけどそこは賛同してあげよう。

 

 この世は醜い粗悪品で溢れている。

 

 きっとわかってあげられるのはAliceだけだ。そしてAliceがどれ程までに奴らを嫌っていたかも彼なら理解してくれる。そうに違いないのだ。

 

 そこに愛はなく好き勝手に作られた血の繋がった他人に愛着が湧くはずもない。家族面されても殺意が湧くだけだ。

 

 C種は何者にも成れない”アリスの役”から炙れ劣化した模造品。真のアリスは1人だけでいい。どんなに後継が産まれてこようとも役が空くことも増えることは無い。唯一無二の”アリスの役”から溢れたせいで自意識が乏しく個性もほとんど現れない。

 

 出荷され店先にて整頓され陳列する商品のような、どこまでも平坦な無個性の輝き。どこからどこまでも広がる同じ顔は気味が悪い。

 

 アリスとは程遠く、恥知らずにも同一存在だと誇るレプリカなど視界にも入れたくない。

 

 辺りに立ち昇る薄汚れた惨劇の結末も、Aliceはただ転生したら最初にやろうと思っていたことを実践したに過ぎない。これもまた既定路線。当然、気分はいい。

 

 

 存在は喰われ加工され繁殖するだけのC種にとっての希望だったのかもしれないが、それはただの幻想でしかなかったのだ。救いなどどこにも無かった。

 

 

 ああ、なにもかも皆殺す。

 

 

 それは最初から決まっていたことだったのだ。過去を振り払いたいAliceにとってC種は忌まわしき過去の象徴でしかないのだ。傷口は広がる前に切り落とすに限る。断たねば病巣は広がるばかり。

 

 ああ、なんて気持ちがいいんだ。これが新しき時代の始まり。せっかくだから、お望みの通りに神とやらをやろうか。

 

 なにも救いはしない神だがな。

 

「は は ハは、、くひはハハははははッふふフフフふふふフふひひヒひひ――――ッ!!!あぎゃぎゃきゃアアアア!!」

 

 

 

 

――――――――――Side/チシャ猫

 

 

 血と肉が雨の様に舞う落ちる中を男がクルクルと手を広げ回る。

 

 楽しくて楽しくて仕方がないとばかりに大声で笑い続ける。

 

 グチャグチャと足裏を鳴らし、己の子供の死体の上で踊り狂う。

 

「アヒャヒャヒャヒヒヒャふひゃきひアハはははハッッ”アリス”うううううううう見ている”アリス”ウウウウッッ!!アフっヒふはハハははッきゃはきゃききいきィィィィ!!!!!」

 

 チシャ猫はただ震えていた。何もかもが違う。この惨状を前に笑う男の姿。気が遠くなる時間を超えた計画は見事に成就し転生を果たしたアリスの新たなる肉体。

 

 なの・・・だが・・・・

 

 これは本当に私が知るアリス、なのか・・・?

 

 

 

 

 

 チシャ猫の計画の始まりは・・・偶然であった。それは唐突に現れたのだ。

 

 女王に疎まれ現実世界での情報集に勤しみながらもただアリスの惨状を前に見ているしかできなかった無力で無能な時代。

 

 アリスの異能より産まれしチシャ猫にはアリスに対し直接的な干渉が不可能。アリスの改造された惨状を前に見つめるしかできなかった。

 

 ・・・現実からアリスの魂が逃げ込んだ時の夢世界の崩壊で多くの同胞が消え去った。この時点で無事なのは僅か数名。栄華を極め永遠だと思われた夢の王国は落陽を迎えていた。

 

 屍すら残さず消え去った同胞たち。かつての活気は不気味なまでに静寂が余計な安寧を約束する。

 

 アリスを模した獣が徘徊し陰鬱な空気を吐き出す。世界にすら大きな空白が生まれそこで語られるべき物語も消失。支配者たる女王の働きからなんとか一線を越えずにいた。

 

 チシャ猫たる私ですら本来の役割を忘れる始末。精神は不安定であり無意識に行動してしまう。まるで痴呆者。故にまともにアリスの魂の世話ができたのは女王のみ。

 

 ・・・・・本当は私がお世話したかった。

 

 女王に嫉妬していたのは自覚している。それが一番なのだと想いを誤魔化し慰めていた。王城の窓の外からアリスの世話を”楽し気に”する女王の姿を眺めるしかなかったのだ。

 

 

 その姿を見かける度に憎悪が積もる。暇さえあればずっと外から眺めていた。

 

 アリスは・・・みんなのものなのに・・・どうして私は除け者にされているんだ・・・??

 

 余りにも悔しくてつい魔が差してしまう。腹いせで女王の唯一の下僕である頭の悪いトランプ兵を唆し仲違いさせることに成功する。

 

 トランプ兵が最後の一人であるジョーカー君もまたアリスに掛かりきりの女王に構ってもらいたいのは見抜いていた。本心を隠し職務に忠実であろうとする純粋な彼を見てどうにも誑かしてやりたくなった。

 

 同じ境遇、同じ辛さを味わう者として簡単に心の隙間に入り込めた。

 

 私はこんなにも歪んでいるのに、なぜそうも純粋でいられるんだ??端役の分際で・・・

 

 そのままのこのこと私の言葉を信じたジョーカー君を現実世界に放り出しA種へと変身することを強要した。奴の役は端役も端役。自力では世界観の移動もできない。存在も保てずすぐにでも消えてしまう。

 

 A種に変身してアリスの外装を纏うしか生き残れない。

 

『ふにゃぁぁぁしゅ、しゅごい。これすっごいアリスだよおおおしゅごいにゃあああああ、あ、あ”、あ”いぐ』

 

 私も自分だけのアリスを手に入れた。

 

 A種に変身したことでその精神も変容。その結果精神崩壊してしまったが何でも言う事を聞いてくれるアリスジョーカーが誕生した。ホーム内でも死角となる寂れた区画で監禁し弄ぶ。

 

 女王に対する不満をぶつけるように情念をぶちまける。本物のアリスにはとてもできないようなこともたくさんやった。気持ちが、よかった。この偽物め!この偽物め!!どうだ参ったか!

 

 好きだと言え。愛してるって言え。私の名前を言ってみろ。誰が主人なのか言うんだよ。

 

 感情はなくとも僅かに震えるそんなアリスが堪らなかった。

 

 女王の代わりに恐怖政治を敷いてやった。

 

 外での生き甲斐が初めてできた。

 

 ”本物の”アリスの世話をする傍ら下僕の姿を探す女王を見ていると最高に幸せだった。

 

 

 

 だが所詮は紛い物のアリス。

 

 わかっていながらもそうやって愛でることでしか自身の不安定な精神を保てなかった。

 

 

 

 真実を知ったのはそれからしばらくしてからだ。

 

 

 あれは、現実世界での調査のことだった――――――

 

 頭に、声が響いたのだ。

 

 いつものようにアリスの惨状に心を痛め帰路へと付こうとした時、魂の抜け殻であるアリスの肉体から確かに聞こえた。

 

 なぜかその声が直感でアリスのものであると本能的に理解もした。だがおかしい。アリスの魂は夢の中へと逃げており、肉体は伽藍洞。ありえないと思いつつもどこか期待していたのだ。

 

 興味を惹かれ、恐る恐るその声に耳を傾けた。

 

 私は何かを期待してしまった。

 

 思念で囁く者はたどたどしくもこちらへと会話を試みる。言葉は途切れ途切れ。チシャ猫は根気よく付き合う。

 

 そしてその正体を知る。抜け殻の中に誰も知らないアリスがいた。

 

 このアリスは夢世界に逃げたアリスが作り出した防衛本能より分かたれた人格。アリスの子供と違い余計な混ざりものの無い正真正銘の一なるアリスの片割れ。精神を守る盾として、身代わりとして生じた彼女もまたアリスであった。

 

 だが盾がいてもなおアリスには耐え切れず彼女を置いてアリスは逃げた。

 

 仕方がない事だった。

 

 アリスは永遠の少女。その精神は幼いまま大人にならざるおえなかった。その証拠に体だけは大人のそれだ。夢世界の魂が痛々しくも見事に疲弊っぷりを体現しているのがそれだ。

 

 アリスは二人に割れていた。過度なストレスから生み出されし彼女はどこかに消えた片割れのアリスを求め寂しがっていた。

 

 母性本能が、、、疼いた。

 

 この事実は誰も知らない。私にしか頼ることができない残されたアリスが哀れに思ってしまった。それと同じくらい嬉しくもあった。

 

 なんせアリスを独占できたのだから。

 

 この時点で代用品でしかないアリスジョーカーのことは完全に興味を失っていた。そのまま放置した。

 

 だってそんなのに構う暇があるなら本物に時間を費やすに決まっている。

 

 彼女の為ならなんだってできた。愛しくも大切な存在へとなるのも時間の問題であった。チシャ猫もまた消失した自己を埋めるように主たるアリスに依存していた。

 

 だから本来の救済計画にも手を加えた。

 

 ”アリスの役”には今全く同じの魂が二つ同席している。

 

 二つに分かれたことが産まれた子供に歪んだ多様性をもたらしたのだとも理解した。表面化しないだけで終末戦争の頃からもう一人のアリスは存在していたらしい。その頃からもう精神はボロボロだったのだ。

 

 C種とはもといたアリスの無気力と諦観の象徴。

 

 A種はもう一人のアリスの憎悪と孤独を凝縮した皆殺しの器たち。もう一人のアリスの精神を最も引き継いだ存在。

 

 ・・・・B種に関してだがダンジョンマスターの実験は見当違いもいいところだがその執念はまったく別の結果を作り上げた。いわば、アリス性よりも男側の遺伝子に魂を引っ張られたどこまでもニュートラルな存在。アリスの血脈でありながらアリスからもっとも遠い者たち。

 

 私はそんなB種が嫌いだった。知らずと同族の肉を食みオリジナルアリスを虐待するゲームマスターに仕える者など死ねばよいのだ。

 

 私は自身を必要としてくれるアリスが好きだった。

 

 そんなアリスこそ転生すべきだと・・・アリスに相応しいと・・・・そうなればずっと一緒にいてくれる。愛してくれるのだと信じていた。

 

 

 そう、思っていたのだ。

 

 

 どうしても忘れられないのだ。

 

 あの時に見たアリスの姿が忘れられない。甲斐甲斐しく女王に世話をされる大人のアリス。それをじっと窓の外から見るしかない私。

 

 私も――――アリスが欲しくなってしまった。

 

 模造品でなく本物の・・・私だけのアリスが・・・

 

 

 

 

 

 

 それが・・・どうして・・・こうなるんだ・・・???

 

 チシャ猫は思わず後ずさりをしようとするもアリスに腕を掴まれそのまま頬を叩かれる。

 

 何度も何度も、何度も―――ッ

 

「遅い・・遅い遅い遅い!この無能ッ!」

 

「ア、アリス・・やめ・・」

 

 髪を掴み上げられ殴られる。

 

「Aliceをどれだけ待たせたら気が済むの?いいよねぇ、あなたたちは見ているだけの傍観者気取り。いつも見下してたんでしょ?かわいそう、かわいそうだってッ!!そういう傲慢さが人を傷つけるってわかんないかなぁ、わかんないのかなぁぁっぁ??」

 

「ご、ごめんなさい!ごめんなしゃい”!!」

 

 殴打は止まらない。鼻血を流しながら謝り続けるがそのままお腹へと膝が打ち付けられ息は漏れる。

 

「うぶぅ・・なん、なんでこん、や、やべてくだしゃいぃごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

「ほら、謝るってことは非があるのはお前なんだよ。それをごめんごめんと謝罪で済ませようとする面の皮の厚さ。誠意がさ、足りないよね。気持ちがまるで籠っていない。やっぱり他人事なんだね、お前は」

 

「そ、そんなことはないです!」

 

 ボゴォッ、声にならない声が出力される。

 

「ッッけヒ―――かはぁ、や、やめてくださいアリスゥ」

 

「ほらそれ、とってつけたような語尾はどうしたの?やっぱりここには偽物ばかり」

 

「そんな・・ことはニャいニャぁ・・・」

 

「チシャ猫はそんな言葉遣いを・・しない。まともに会話しないで、気持ち悪い」

 

 チシャ猫には分からない。なんでこんなに怒っているのかがわからない。ただ悲しくてしょうがない。何が気に障ったのだろうか。訳も分からず謝るしかなかった。それが相手を苛立たせると知らずに。

 

「さっき逃げようとしたよね。あなたも”アリス”を見捨てるの?」

 

「ち、違うニ”ャッ。ミャーはアリスのことがッッ」

 

「ふーんそっか、くふふ嬉しいなぁ」

 

 急に、拘束が解かれ押し倒される。背中からチシャ猫が倒れ込む。

 

 あらゆる惨状からも未だ顕在の旧アリスのベットの上、背中にグニャリとした感触。。

 

 そこには勿論アリス、いや恋都の死体が据えられている。そこでチシャ猫はアリスに押し倒されていた。

 

「ア、アリス・・・・?」

 

「Aliceのこと好きなんだよね。――――――だったら股開けよ」

 

 アリスの腕がゆっくりとチシャ猫の肢体を撫でる。

 

「やめ・・やめるのニャ・・こんなのアリスらしく・・・ッブェ痛い、よ」

 

 問答無用で顔を殴られる。

 

「Aliceの何を知っているの?くふ、ずっと気になってたんだ。"アリス"が今までされてきたことってそんなにいいものなのかって。そんな見た目をしているんだもの。そういうことなんだよね・・?ねぇ・・ねぇ?」

 

「は―――――ハヒッ喜ん で」

 

「――――――――ブヒャヒャハハッハハハハハッッ!」

 

 チシャ猫は言われるがままに股を開く。唇を強引に奪われ乳房が乱暴に曝け出される。

 

 呆然と、アリスに尽くす。

 

 ただ、空を眺めていた。

 

 これは悪い夢なのだと。

 

 涙が人知れず虚空へと消える――――

 

 

 

 

「お母さん・・・」 

 

 結局チシャ猫はアリスのことを何も理解していなかった。そう何も。

 

 このアリスの分身とも言えるA種の行動原理から推測できていればあるいは・・・盲目に献身的に依存するチシャ猫にそれがわかるはずもない。

 

 余りにも残酷な仕打ちだった。

 

 

 

 このアリスは――――――チシャ猫の知るアリスではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁ・・」

 

 

 すこぶる調子がよかった。気分がいい。こんなにもAliceは自由であった。

 

 夢のあとは現実がある。永い悪夢は醒めれば現実に帰るのは必然。どこまでだって続いていくのだ。

 

 Aliceはここにいる。

 

 新たなる世界の門出。始まりは酷く曖昧。

 

 終わりから始まり帰路への補装も遂に終えた。新たなる”  ”は正統なる者の前に内なる欺瞞を示す。

 

 約束の時は終え契約は履行された。供物は貪られ新たなる祝福が、理が生まれ新たなる星となる。

 

 世界は更なる悲鳴を上げ揺れるだろう。

 

 

 真なる幻想たる神が幻出した。

 

 

「痛みを知ればいい。公平に、均等に、Aliceの気が済むまで不幸で満たされればいい。関係者気取りの傍観者どもが、そこで指をくわえて見ているがいい。このAliceこそが真なる絶対者だ」

 

 ・・・ついでに迎えに行こうイグナイツを。あの子だけは・・特別なのだもの。

 

 

 

 

 因果は収束する。万里蔓延る宿業の因縁は躍る。掌握するは狭間で生を謳歌する者なり。

 

 神の威光のままにあらゆる因果の清算が始まった。

 

 終わりが始まる。

 

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