ーー半年後、
「ふぁぁぁぁぁ。ねみぃ〜」
あくびを噛み殺し、学校からの帰り道を進む。今日も梓の所に寄って適当に依頼を受けよう、と考えていた。蓮華の通う勾田高校から梓の家は近い。ダラダラと歩いて10分、梓の家が見えてきた。
『たいようの家』
純白の外装に広すぎる庭。平屋だが広大な敷地面積を有しているため、狭いと感じさせない造り。ここが梓の家で、外周区以外で唯一の"呪われた子供たち”のための児童養護施設である。もちろん、表向きは普通の児童養護施設と名乗ってはいるが。
「おじゃましますよ、っと」
「きゃあぁぁぁ!?」
蓮華はその玄関ーーから入らず、少し離れた所の窓から入った。無論、その部屋には梓がいるのだが。
「大きい声出すなよ、うるせぇな」
「いちいち窓から入んないでよ!びっくりするでしょ!!」
「玄関から入ったら、チビどもに遭遇すんだろ」
「……へたれ」
「うぐっ!?」
実は以前、蓮華は助けた少女に怖がられ、号泣されたことがある。それ以来、蓮華は少女の前に姿を出さない様にしている。
「んなことより、依頼よこせ!」
「はいはい。と言っても、今日は一件しかないけどね」
「すくねぇな。他に取られたか?」
資料を受け取りながら、蓮華は尋ねる。いつもなら最悪でも二件以上はあるから、疑問に感じた。
「あ〜、木更のとこに一件横流ししたからね」
「んだよ、蓮太郎に取られたのかよ」
「文句言わない!木更、今月の収入ゼロって泣き付いてきたんだから」
「そりゃ……しゃーないな」
引き攣った笑みを浮かべながら、蓮華は同意する。相変わらず貧乏なんだな、と心の中で同情。
「そんじゃま、ちゃちゃっと討伐してくんよ」
「油断しないでよ!怪我なんてしたら怒るから!」
「へいへい」
適当に返事をしながら、当然の様に窓から出ていった。その姿を見送りながら、梓は1人思う。
「結局、まだ独りなんだね……」
* * *
蓮華は現場近郊で依頼されたガストレア、モデル・カイロポッドーーつまりムカデのガストレアーーを発見した。
ただし、バラバラに切り刻まれた状態で。そしてその傍らには、血を滴らせた双剣を握る少女が立っていた。
呆気にとられる蓮華の前で、少女は剣を鞘に納め携帯を取り出し電話をし始めた。
「パパ?こっちじゃなかった。……うん、わかった」
短い通話が終わり、少女が蓮華の方を向く。返り血を浴びて真っ赤な顔の中でも瞳が一段と怪しく、そして赤く輝いていた。
「ああ〜と、イニシエーターの子かな?とりあえず、お疲れ様」
手に持っていた銃をホルスターに納めながら、少女に近づく。少女は睨む様に蓮華を見上げる。警戒されないよう、笑みを浮かべながら蓮華はなおも近づく。
「オレが後の手続きやろっか?あ、それとも今電話してたパパさん?が来るのかなーー」
「……うるさい」
「……ッ!?」
一閃。
蓮華の首目掛けて、少女はなんの躊躇いもなく剣を振るった。反射的に一歩身を引いたが、蓮華の首の薄皮は裂け、血が溢れる。
「よけないで。うまく斬れない」
「誰がそんなの聞くか!!」
大きく後ろに飛び、距離を取る。しかし、少女もイニシエーターとしての超人的身体能力で距離を再びゼロにする。勢いそのままに振るわれる凶刃。しかし体勢を整えた蓮華は冷静に剣の軌道を読み、避けつつ少女に向け拳を二回放つ。
「ッシ!!」
「……!?」
拳は的確に少女の手首を捕らえ、2本の剣を手放させる。間髪入れずに剣を蹴りあげ、少女の武装解除。そのまま少女を押さえ付ける。
「本来フェミニストなオレは、こんなことしたかねぇんだけどな」
「離せ!」
「離したら、また殺しにくんだろが。とにかく、お前のパパさんかIISOに連絡するしかーー」
ない、と最後までいうことはできなかった。蓮華の頭と心臓の位置に銃弾が迫っていたからだ。
「ッアァ!?」
咄嗟に後ろに倒れ込み、なんとか回避するも、一発が蓮華の頬をかすり傷をつけた。だが、そんなことに気を取られる時間もなく、追撃の第二射が来る。
「なめんなッ!」
全身をバネのように使い、大きく跳躍。空中で体勢を立て直し、ホルスターから銃を抜くと同時に速射。牽制の意味も込めて2、3発お見舞いしておく。しかし、それもことごとく切り刻まれてしまった。
「パパ、アイツ撃ってきた。斬っていい?」
「よしよし。だがまだダメだ」
「うぅ〜」
後から来た男に向けて撃った銃弾が、いつの間にか剣を拾い直していた少女に防がれてしまった。少女は追撃を要求するが、男に止められ不貞腐れてしまう。
「アンタがその子のパパさん?」
「いかにも。小比奈は私の娘だ」
男は胡散臭い格好をしていた。シルクハットにタキシード、不気味な笑みを浮かべた仮面を被っていた。
「君の相手をしたいのは山々だが、この後予定が詰まっていてね」
「アンタ、何者だ?」
「私は世界を滅ぼす者。誰も私を止める事は出来ない。行くよ、小比奈」
「はい、パパ」
その言葉を残し、夕闇に溶けるように消えていった。
「なんなんだよ、いったい……」
やっと原作の内容に触れれました。
次の投稿ではもっと進めれる様にガンバります。
それではまた次回。