この世界は狂っている。
そう理解したのはいつだろう?
初めて王都を見た時、人々が亜人の奴隷に暴力をふるっている所だったかな?
それとも、それを止めるではなくゲラゲラと下品な笑いを上げながら見ていた兵士達を見た時だったか?
・・・・だが、そんなことよりも印象に残っているのは他の勇者達の奴隷とされていた【癒】の勇者と出会ったことだろう。
私が出会ったとき彼は首輪をつけられた上で薬物付けになっていた。
ボロボロの服に傷だらけの肌、常日頃から罵声を浴びせられ暴力を受けていた。
その姿は私の価値観から絶対に許せないものだった。
・・だから、守った。
罵声を浴びせられそうになると戦線を崩して王女や男装の麗人に魔物や魔族をぶつけてやった。
常日頃から受けていた暴力は私が代わりに受けた。
歪んだ愛情を向ける【砲】の勇者は背後から気絶させ続けた、勇者と言っても与えられた能力をただ振るうようなもの達だ大したことは無い。
最初の頃は良かった。
だが、共に旅をしているうちに私は成長限界になった。
レベル70、人類の中ならば間違いなく最強格までになった、だが勇者には成長限界はない。
初めの頃は技術や経験でどうにかできたが、勇者達のレベルが80、90と上がってゆくにつれて私の力ではもはや勇者達を止めることは出来なくなった。
【術】の勇者には今まで以上に殴られ罵声を浴びせられた。
【剣】の勇者には鎖で繋がれ身体中を切り刻まれた。
【砲】の勇者には歪んだ愛情を教えこまれた。
そして、【癒】の勇者は私以上に殴られ罵声を浴びせられ傷つけられていった。
私は戦場では活躍した。
勇者達以上の戦果を上げパーティー内での地位を維持できた。
そして、私が戦果を上げるだけ【癒】の勇者に与えられる暴力は増えていった。
「だけど、それもこれで終わりですね・・・」
今、私の目の前では勇者達が魔王との決戦を始めようとしていた。
私が3年前にこのパーティーに入った時から待ちわびていた魔王との決戦。
「ブレット!!魔力弾で撹乱を!」
ピンクの目に悪い色の髪を持ったスタイルのいい女が仲間に向けて言葉を放った。
「あいよ!【砲】の勇者の腕の見せどころだな!!」
それに答えるように黒い褐色肌で体格のいい男が声を張り上げて言った。
「ブレイド!あなたは『神剣ラグナロク』でとどめの一撃を!」
また女が別の仲間に向かって声をかけた。
「お任せあれ【剣】の勇者たるこの僕に切れぬものはない!」
金髪に緑色の目を持つ男装の麗人が自信を持った声で答えた。
「レーヴェ!あなたはブレイドの援護を!」
女は私に向かって声を放った。
「分かりました【剣帝】たる私の誇りにかけて勝利を」
私は女、【術】の勇者フレアに対して静かに答えた。
【剣帝】私が得た世界で唯一のクラスにして普通の人間でありながら勇者達と戦える理由・・・。
「第七階位魔術で私が隙を作ります!」
「さすがは【術】の勇者フレア様、神代の魔法で支援していただけるとは」
【術】の勇者フレアの言葉に【剣】の勇者ブレイドが軽い口調で答える。
この場面だけを見ればとても強大な魔王との戦闘を始める前には見えない。
「勇者どもォォォォ!!」
勇者パーティーと対峙する魔王から激しい憎悪の声が溢れ出た。
「貴様らは この死の大地まで・・・奪おうとするのかぁぁああ!!!」
魔王は心からの叫びを上げながら私達に攻撃を始めた。
「ブレット!」
「あいよ!!」
ードドドドドドー
【砲】の勇者がまず最初に撹乱のため肩にかついだ大砲の砲撃を魔王に放った。
「グッ!」
ーボーンッ!ー
魔王は回避のため上空に逃げるが【砲】の勇者が放った魔力弾が命中し動きを止めた。
そこにすかさず【術】の勇者の魔法が放たれた。
「くらいなさい第七階位魔術【ニョルニル】」
【術】の勇者の魔法が放たれ魔王に向かっていった。
天空から降り注ぐ黄金の雷、まさに神話の魔法であった。
「グオォォォォォッ!!」
ーゴゴゴゴゴー
魔王は勇者の放った魔法を真正面から受け止め、なんと止きってしまった。
「『神剣ラグナロク』に光が満ちた!」
そこに【剣】の勇者が一瞬のうちに接近していった。
「消え去るがよい魔王よ!!」
そう叫んで刃を振り下ろそうとした。
決まった、このまま行けば倒せる。
今までの戦闘を思い出してこれから起こることを想像した。
だが、そう上手くは行かないのが戦場だ。
「余を誰と心得る?」
魔王が私たちに投げかけた。
そして、僅かな間を置いて叫んだ。
「魔族の王を、舐めるなっ!!」
そう魔王が叫ぶと背後の羽から小さな黒い魔族が溢れ出した。
「キシャァァァァ!!」
「邪魔だ」
ーブシャッー
私は【剣】の勇者の後ろから前に飛び出し黒い魔族を切り裂いて行った。
それに遅れまいと【剣】の勇者も前に飛び出す。
「ん?」
私は自身の武器の刃を見た。
普段から魔力を纏わせて切れ味と強度を上げている刃に刃こぼれがいくつも見えた。
ただの刃こぼれだ、だが今までこの刀に刃こぼれが起きたことは無かった・・・。
気づいた時には遅かった。
「なっ!」
「キシャァァァ!!」
私は向かってくる魔族にいつも通り刃を振るった。
だが、その刃は魔族を断ち切らずに砕かれた。
「ぐっ!」
魔族の鋭い爪に私は腹を貫かれた。
ーボッンー
「大丈夫かっ!?」
「あぁっ・・・」
「助かった・・」
私と【剣】の勇者は【砲】の勇者の援護によって、何とか魔族の刃から逃れた。
「あいつ・・」
【術】の勇者フレアから声が聞こえた。
「私達の魔力を・・・」
間を置いて出て来た声は少し震えていた。
「吸収した・・・?」
今、私達の目の前では魔王が強大な魔力をその身に集めながらこちらを見ていた。
集めている魔力の中には私や勇者達のものが多く含まれていた。
「勇者たちよ、これが魔王の力だ!」
魔王の声が聞こえた。
その直後、魔王からの攻撃が放たれた。
「ハァァァァァッ!!」
ードーンー
私は咄嗟に回避をとった。
だが、傷つき魔力の少ない状況ではまともに回避することもできず私は攻撃を受け動けなくなった。
「おい愚図、ヒールを使え!!」
【剣】の勇者の声が聞こえる。
だが、私は声を出せない、魔族から受けた攻撃によって血を流しすぎた。
咄嗟の防御に残った魔力も使い指1本動かすことができない。
徐々に音が消えていき何も聞こえなくなった。
そんな中【癒】の勇者が魔王に向かって走り出した。
その後ろで【剣】の勇者が死んだ。
【癒】の勇者は魔族の攻撃を避け、魔王の眷属を倒すことで魔王の元までたどり着いた。
そして、魔王の攻撃を避けきり【癒】の勇者は魔王に触れた、すると魔王の体は消滅していき魔族の少女が現れた。
その少女から宝石?を奪うと少女は眩い光を放ちながら消え去った。
「ァ、う、あ」
何とか声を出せるようになった私は【癒】の勇者に話しかけようとした。
【癒】の勇者はこっちに気が付き走って戻ってきた。
「ヒール!」
【癒】の勇者が私にヒールを放った。
「レーヴェさん!!」
「ケ、アル、?」
「あぁ、俺だ!」
【癒】の勇者ケアル、薬漬けにされた彼が私に話しかけていた。
「無事、で、よか、った」
「レーヴェさん!こっちを見てください!」
ケアルが何か言っているがもうよく聞こえない、目の前にいるはずの彼の顔がぼやけてよく見えない。
でも、私は彼が無事に意識を取り戻して生き残ってるだけで充分だから、伝えよう。
「ケ、ア、ル」
「なんですか!」
「ごめ、ん、なさい」
「レーヴェさん!!レーヴェ!!レーヴェ!!」
私はケアルにそう言うと意識を手放していった。
もう、限界だった。
だから、せめて謝罪してから逝くことにしたんだ、これからのケアルの幸せを願って1人で逝くことにした。
それだけだ、だから泣くなよ、ケア、ル・・・。
そう思いながら私は意識を手放した。
次回にケアル視点を挟んだ上で二週目の世界に突入します。
更新は未定です。
レーヴェの今後
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復讐パーティー入り(わかるよね)
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ハーレムメンバー入り(わかるよね)
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敵対する(ケアルと戦う)
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敵対する(人類の敵になる)
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ケアルとの恋に発展(ヒロインになる)
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なんでもいいから戦え(恋愛無し)