ケヤルが倒れた。
私はその事実を確認すると周囲を見渡した。
「特に無いようね・・・」
私が警戒していた人間の姿は無く、妹と王女の声が響き渡る庭園があるだけだった。
「クレハ、落ち着いて」
「姉さん!・・ですが、ケヤル様が・・」
「今、王女が見ているから、近くに行っても邪魔なだけよ」
「はい、そうですね・・」
私がクレハに忠告すると、クレハは悔しげに呟いた。
肝心の【癒】の勇者ケヤルは先程から全くと言っていいほど動いていない。
勿論、息はしているが・・・未来でも相当な痛みを訴えていた事から、とても大丈夫には見えない。
「クレハさん、ケヤルの治療をしなければならないので今日はこれでお帰りください」
フレア王女はケヤルを心配しているように言い放つ。
私は未来を知っているため、これが嘘だと分かっていたが一瞬騙されそうになった。
それ程までに、フレア王女の演技は板に付いていた。
「は・・はい・・では、ケヤル様が起きたらお伝えくださいませ」
クレハは鎧を気直しながらフレア王女に伝言を伝えだした。
私は、フレア王女とクレハが意識を逸らしているうちに気配を消し、周囲に溶け込んだ。
「剣を・・再び与えてくれてありがとう、絶対この恩は忘れない。必ずお返しすると・・・」
クレハは胸元に拳を当てながら言うと歩き出した。
そして、扉の前に立つとフレア王女とケヤルの方を向き「では、失礼します」と頭を下げてから庭園を後にした。
「・・・・・」
しばしの沈黙。
フレア王女はクレハが完全に居なくなったことを確認すると大きく息を吐いた。
「ハァァァァ、唯一の取り柄の【回復】すらろくに使えないなんて、これは駄目ね」
先程での笑顔を完全に捨てて、フレア王女はケヤルのことを蔑むように見下ろした。
「まったく、こんな使えないのが同じ勇者だと思うと虫唾が走りますわね」
フレア王女の罵声は終わらない。
どこまでも、自己中心的にケヤルのことを見下して額に手を当てて蔑むような視線を当て続ける。
「あまりにも無能よ!!」
最後の方は、感情の高まりが抑えられなかったのか、明らかな怒鳴り声を上げた。
「いやいや、すごいですぞフレア様!これはただの【回復】ではございません!!」
フレア王女が感情のまま叫んでいると、隣にいた老人が興奮した様子で言葉を出した。
「・・・何が違うって言うの?」
「本来の【回復】は自己治癒力を魔力によって活性化させるもの、つまり人体が自分で治せる傷しか治せないのです。だが、彼の【回復】は違う!無からの創造あるいは時間の回帰!いずれにしても神の領域!!」
老人はフレア王女の質問に、興奮したまま答えた。
その様はもはや狂気と言っても差し支えない。
老人の姿はまさに人間の貧欲さを示すようであった。
「(正気とは思えないわね、何とかしなければ・・)」
私は、この国の狂気の一端に触れ脅威を感じていた。
「異常なまでに苦しんだところに秘密があるに違いない!こ・・これを解明出来れば・・!わしは・・わしは!!」
老人はもはや、目の前にある力に興奮を隠せずに叫んだ。
聞いていたフレア王女も老人の言葉を聞き流して、命令を出した。
「そう・・ならコレを使えるようにする事ね、薬だろうが洗脳だろうがなんでもいいわ」
口元に歪んだ笑みを浮かべながら王女は言う。
「【回復】を拒絶しないように調教しなさい」
王女の顔は、『ニヤァァ』っと聞こえそうなほど歪んでいた。
かく言う私もその狂気を感じ、この場で切るべきか迷ったが、足がつくことを考えてやめにした。
「(どうにかしなければ・・・)」
「御意に・・」
私が今後の展開を思い浮かべているうちにもフレア王女は足音を立てながら庭園を出ていき、老人と私だけが残った。
「(とりあえず、これから何処に向かうか確認しなければ・・・ケヤル、待っていて。今度は必ず助けるから)」
【癒】の勇者を運ぼうと、城の衛兵に声をかける老人を眺めながら決意した。
その時の私の顔は酷く歪んでいただろう。
次はケヤル視点かな?
アンケートの結果を元にしてヒロイン化させようと思います。
次回更新は未定です。
一応、ルート分岐としていくつか用意してあったので番外編なんかを用意しようか考えてますが、ありですかね?
とりあえず、どの番外編が見たいか確認のためのアンケートです。
番外編どれがいい?
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王国に復讐、全てを破壊する
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ケヤルと敵対、敗北し洗脳される
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恋愛なし!復讐RTA始まるよ!
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人類の敵エンド