「ようやく目を覚ましたか【癒】の勇者よ」
目を覚ました俺は真っ先に魔法使いの爺の姿と声を聞いた。
ームクッー
「体に異常はないかのう」
何事もないように体を起こす。
しばらく虚空を見る、自分に何があったのかを理解し歪んだ笑みを浮かべる。
魔法使いの爺はこちらを見下ろす形で俺を見ているから、俺の笑みには気づかない。
「ひっ!!来るな!!」
一周目のことを思い出しながら精一杯怯えたフリをする。
「もう嫌だ!あんな痛いのも怖いのも嫌だぁ!!」
自分でやっておきながらなんとも滑稽だ。
俺の心のなかでは憎悪の気持ちが溢れてくるというのに…だがこれも奴らに復讐するために必要なことだ。
そのために必要なことならば甘んじて受け入れてやろう。
「落ち着けっ!!無理に【回復】させようなんて誰も言わん」
流石にまずいと思ったのか魔法使いの爺は俺をなだめるために戯言を言った。
一周目を知っている俺からしてみれば滑稽なだけだがな。
「……本当?」
俺はあくまでも愚かに信用したように答える。
「あぁ本当だ、わしと話をしようじゃないか」
うまく騙せたと思ったのか爺は俺のことをうまいこと使おうと欲望に溢れた言葉で俺に質問を投げかけてくる。
「まずは、お主がどうして倒れたのかを教えてくれんか?」
俺がその質問に答えようとした時、爺の背後にあった扉が開いた。
「……」
ついに来たかと身構える俺。
そしてゆっくりと開く扉から出てくる人の革を被った悪魔。
フレア王女の姿であった。
「ケアル…気がついたのですね、あぁ…良かった」
貼り付けた笑みを浮かべ茶器を持ったフレアは俺を心配するような声を出す。
かつての俺はこんなやつに騙されていたんだと憎しみが湧き上がってくる。
「【癒】の勇者の力は凄まじいですね」
爺の声も聞かずフレアはティーカップに紅茶を注ぐ。
俺はその毒入り紅茶の注ぐ音を何もせず聞いていた。
「【剣聖】の力は千人の兵士よりも上…今後の【剣聖】の功績はあなたの功績に等しいですわ」
紅茶の香ばしい香りが俺の鼻を襲う。
「さすがは【癒】の勇者です」
思ってもない言葉を吐き出すフレア。
よく言えたもんだと逆に感心した俺はより一層の復讐心を募らせる。
「いや…そんな「そうですね」こ…」
平民らしい謙遜の言葉を吐こうと言葉を発すると別の人間の声が覆いかぶさった。
「そう思いますねフレア王女」
「え、えぇ。本当に…」
その場に現れたのはレーヴェさんだった。
本来ここで現れるはずのない人だった、一周目で俺のことを守ってくれた強い人…そして俺のせいで死んだ人だ。
「どうして【剣帝】と名高いあなたがここに?」
フレアはメッキが剥がれないよう慎重に言葉を発した。
「妹を救ってくださった【癒】の勇者に感謝を伝えたかったものですから」
レーヴェさんはなんてことの無いように答える。
事実なんてこと無いのだろう。
「【癒】の勇者と会話をしたいので、しばらく二人だけにしてもらってもよろしいでしょうか?」
「…えぇ、構わないわ。行きましょう」
「は…」
フレアと魔法使いの爺は部屋を出ていった。
その表情はよく見えなかったものの、少し忌々しげだった。
「【癒】の勇者ケアル。私と少し話をしましょうか」
「は、はいっ」
一周目と変わりないレーヴェさんの姿に安心感を感じながら俺は彼女の言葉を待った。
「まず最初に妹のことを救ってくれてありがとう」
「い、いえ…それくらい当たり前です」
レーヴェさんは俺の目を見ながら微笑みを浮かべ感謝を口にした。
こそばゆく感じながら俺は答えた。
嬉しい気持ちと恥辱心が合わさったなんとも言えない言葉だった。
「次に…その紅茶は飲まないほうがいいわよ」
先程の微笑みから一転し真剣な声で伝えられなのはフレアがいれた毒入り紅茶だった。
「この紅茶を飲んだが最後…薬物漬けにされて抵抗すらできなくなるわ」
「……」
その忠告はまるで自分が見てきたような言葉だった。
いや、知らないだけで見てきたのかもしれないな…可能性なんていくらでもあるんだし。
「それで提案ですが……この場から一緒に逃げませんか?」
「一緒に?」
「はい」
聖女のように優しい目を浮かべ彼女は俺の手をにぎる。
一瞬のうちに復讐の決意が揺らいだ。
レーヴェさんと一緒ならば十二分に逃亡は可能だろう、優しくて慈愛に満ちた優しさを持つ彼女と一緒ならば一周目に得られなかった幸せを得ることも可能だろう。
「すいません、それはできません」
だが、それはできない。
一瞬レーヴェさんの言葉にうなずきかけた俺だったが、一周目に見たレーヴェさんの苦しみや最後を思い出すと下火になりつつあった復讐心がうねりを上げながら溢れた。
「そう…それがあなたの決意なのね…」
レーヴェさんは悲しげな表情を浮かべ去っていった。
胸が締め付けられる気持ちだったが、これも復讐には必要なことだと思うことにした。
「会話は終わりましたか?」
「は、はい…あの喉が乾いたのでその紅茶を飲んでもいいですか?」
「えぇ、どうぞ」
フレアが笑みを深めまだ温かい紅茶を差し出した。
ーさぁ復讐の始まりだー
苦しむ声を上げ崩れ落ちた俺はわずかに口角を上げながら意識を失った。
次回はレーヴェ視点だと思います。
番外編どれがいい?
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王国に復讐、全てを破壊する
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ケヤルと敵対、敗北し洗脳される
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恋愛なし!復讐RTA始まるよ!
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人類の敵エンド