ウマ娘 クリスマス合同   作:ウマ娘 クリスマス合同

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【一生大事なプレゼント】 ─ 『アグネスタキオン』作:他人丼

「カフェ、最近どうやら私は体調がおかしいんだ」

 

 唐突に話を切り出されたマンハッタンカフェは困惑する。

 

「藪から棒にどうしたんですか……? 貴方らしくない」

 

 カフェは友人といっていいのかどうか分からないアグネスタキオンに聞いた。

 カフェは怪しんだ。

 研究者であるはずのタキオンが自分の体調が悪いことをどうも自覚していなかったというのはなにか引っかかる。またなにか新しいことを思いつき自分に試そうとしているのではないだろうか、と。

 

「また実験の口実ですか……」

「いや、実験の口実ではなく本当に体調がおかしいんだ。そこで、友人である君に相談しに来た訳さ」

 

 タキオンがカフェのことを友人と思っていたことにカフェは少し驚いたが今はそのことは重要ではない。

 彼女が実験の口実以外でこんなことを言うのだ、本当に悩んでいるのだろう。

 

「どうしたんですか?」

「いやなに、最近ある特定の条件下で体調に異変が生じてね、私でもなぜそうなるか分からないのだよ。私はオカルトは信じていないんだがもしかすると……と思った訳だよ」

「だから私のところに来たんですね」

「そういうことさ」

 

 確かに彼女の頭脳をもってしてでも原因が分からないならオカルトが原因かもしれないと疑うのもわかる。

 

「それでどんな条件で何が起きるんですか」

「何が起きるかと言われれば動悸が起きたり謎の高揚感、頭がクラクラしたりもするね」

「ただの風邪では……?」

「それが風邪ではないんだよ。しっかり検査したさ」

「なるほど……」

 

 彼女がしっかり検査して原因不明となるとオカルトを信じたくなるのもわかる気がする。

 

 

「それでどんな時に起きるんですか?」

「それがトレーナーくんと一緒にいるとなるんだよ」

「……はぁ?」

 

 カフェはタキオンが何を言っているか理解するのにしばし時間を要した。

 

「不思議だろう? 私はトレーナーくんからなにかしらの成分が出てるのかと睨んでいるのだが……」

「あぁ……そうですか……」

「しかし調べて見ても何もおかしいところはなくてだねぇ……」

「トレーナーさんと一緒なのが嫌でそういうことが起きている可能性は?」

「いや、それはないと断言出来る。私にはトレーナーくんが必要不可欠だ、彼がいないと私はレースにも出れないただの脚が弱いウマ娘だよ」

「は、はぁ……」

「それに彼が作るご飯は美味しいしね、毎日作って欲しいくらいだ」

 

 天才とバカは紙一重とはこのことか。

 なぜそこまで分かっていて自分がどういう状況か分からないのだとカフェは呆れた

 

「……それでトレーナーさんと一緒なだけでおかしくなるんですか?」

「そういう時もあるが大体はトレーナーくんが私になにかしてきた時だねぇ」

(そういう時もあるんですね……)

「なにかしてきた時とはどういう……? いえ、待ってください。どうせ長くなりそうなので飲み物でも用意します」

「お、気が利くねぇ。わかってるとは思うが私は紅茶で頼むよ」

 

 話が長くなりそうなことを察したカフェは自分用のコーヒーとタキオンの紅茶を淹れにいった。

 

 

 

「さて、何から話したものか……」

「おかしいと感じだしたところからでいいんじゃないですか?」

「それもそうだね、あれは去年の今頃……そう、去年のクリスマスくらいのことだ」

 

 

 

「うー寒い寒い、こうも寒いとトレーニングの効率が落ちてしまう。そうだ、トレーナーくん今日のトレーニングは休みにしないかい?」

「ダメ、昨日もそう言ってトレーニングしなかったじゃないか、寒むくて動きたくないからって休むなんて……1日くらいならいいけど2日続けては絶対にダメ」

「いや、私は寒いからトレーニングしたくない訳ではないのだよ。気温が低いとトレーニングの効率が落ちるから気温が上がるまではしない方が総合的に見て良いと判断したんだよ」

「暖房の効いたトレーナールームで湯たんぽ抱えて上着着て言われると説得力ないね」

「うぐ……仕方ないだろう、寒いものは寒いんだ。今日だって布団から出るのに死を覚悟したんだ」

「わかったからトレーニングを……」

「いーやーだー! さーむーいー!」

「はぁ……わかった、ちょっとそこで待ってて。何とかするよ」

「それでこそ私のトレーナーくん! 任せたよ!」

 

 〜30分後〜

 

「ただいま」

「おかえり、その手に持ってる袋はなんだい?」

「君のために防寒具一式を買ってきたんだよ」

「え、いいのかい? 一式なら結構しただろうに……」

「いいよいいよ、いつも頑張ってるしね。後もうクリスマスだからクリスマスプレゼントってことで」

「……ありがとう、トレーナーくん。仕方ない、クリスマスプレゼントを貰ったんだ。今日からはこれを着てトレーニングすることにするよ」

「そう言ってくれるなら俺もプレゼントしたかいがあるよ」

「さて、私は今からこれに着替えるから先に行っておいてくれ、もしかして覗きたいかい?」

「はいはい、先に行ってるよ。覗いたら何されるかわかったもんじゃないしね」

「なぁに、少し薬を飲んで貰うだけさ」

「それは恐ろしい、俺はさっさと出ていきますよ」

 

「……どうやら行ったみたいだね。さ、私も着替えるとしよう」

「しかしトレーナーくんはセンスがあるな、デザインも申し分ないし機能性としては完璧だ。……しかし着ると心拍数が上がったのは何故だろうか? まあ些細なことだろう、気にするようなことではないさ」

 

 

 

「と、いうことがあったんだよ」

「は、はぁ……なるほど……」

 

 カフェは困惑した。

 今の話を聞く限り病気ではなく別の可能性が急速に浮かび上がってきたからである。

 

「ちなみに今着てる服もその時に貰ったものなんですか……?」

「ああ、そうだよ。これを着ると心拍数の上昇や謎の高揚感があるからやはりトレーナーくんに原因があると思うんだ」

 

 カフェの中の疑惑がどんどん確信に変わってくる。

 そこでカフェは一つ質問をする。

 

「トレーナーと一緒なにかしている時にもその症状が出るんですか……?」

「必ずしもという訳ではないよ。そうだなぁ……トレーナーくんと接近した時に同じような症状が出るね。ふむ、こう考えるとやはりトレーナーくんが原因か……」

「まあ、そうでしょうね……」

「やはりそうか! 果たしてトレーナーくんの何が原因なんだろうか……」

 

 タキオンが質問に答えた瞬間、カフェの中で疑惑が確信に変わった。

 

「大体わかりました、今からいくつか質問をするので正直に答えてくださいね」

「構わないとも! これで原因がはっきりするなら質問なんてなんともないさ!」

 

 タキオンが答えるとカフェはブックカバーがつけられた本を1冊取り出す。

 そして数ページめくり、質問を始めた。

 

「ではまず一つ目です。トレーナーさんと一緒に居る時ふわふわしたり謎の高揚感がありますか?」

「それはあるね、というか最初に言ったじゃないか」

「大事なことなので」

「ふぅん……まあいいさ次の質問を頼むよ」

「はい、トレーナーさんと触れ合った時、例えば手を繋いだ時に高揚感などが強くなったりドキドキしますか?」

「その通りだ、一緒に出かける時なんかは一層強くなるね」

「……出かけた先でトレーナーさんと別れて帰る時謎の喪失感がありますか?」

「その通りだ! ……もしかして知っているのかい?」

「次の質問です、トレーナーさんがもしあなたの傍からいなくなった時にどう思いますか? また、そうなった時はどうしますか?」

「トレーナーくんが居なくなるなんて考えたことがないがそうだなぁ……悲しいね、凄く悲しい。それでどうするかだがどんな手を使ってでも私の元へ戻すよ」

「最後の質問です、出来ればトレーナーさんとずっと一緒に居たいですか?」

「もちろんだとも! 私の隣に居ることができるのはトレーナーくんだけだよ。ずっと私の隣りに居てもらわないと困るよ」

「そうですか……」

「しかし考えてみるとトレーナーくんから依存性のある物質が出てるとしか思えないな……カフェ、その本は薬物依存について書かれているものかい?」

「はぁ……違いますよ……」

 

 カフェは呆れた表情で深いため息をついた。

 そうしてブラックのはずが何故か甘いコーヒーを一口飲んでタキオンに質問の結果を答えた。

 

「最初に言っておきますが今の質問には点数があるんですがあなたは満点でした」

「ほう、満点かい。ということはその本の内容に私の症状が合致しているということだね」

「まあ、そうなりますね」

「それでその本は何について書かれている本なんだ? やはり病気に関してかい?」

 

 病気といえば病気だろう。

 しかしこれは肉体的なものでもなんでもない。

 

「この本のタイトルは『恋してるかもと思った時に確認、実践すること』といいます」

「……は?」

「それであなたは確認項目が全て合っていました、つまり……」

「ま、待て待て待て待て! な、ななな、何を言ってるんだ君は!?」

 

 タキオンの顔がみるみる赤く染まり、尻尾も曲芸のように振り回している。

 

「現実を受け入れてください、というか質問する前から粗方わかってたんですよこっちは」

「何を言い出すんだ君は! 私がトレーナーくんに恋だなんて……」

「10人が見たら10人がそうだと言うと思いますけどね」

「えー!?」

「えーじゃありません! だいたいなんですか去年のクリスマスの話は! ブラックのはずのコーヒーが甘くなったんですからね!」

「しかしカフェ……」

「しかしも何もありません、確定で恋です。それ以外有り得ません。この本にもそう書いてあります」

「うぐぐ……待てよ、なんで君はその本を持っていたんだい?」

「ぐ……」

 

 タキオンが聞くとカフェはやられたという顔をした。

 

「おやおやぁ? まさか君も誰かに恋をしてるかもと思ったのかなぁ?」

「黙ってください」

「はははっどうやら図星のようだねぇ」

「私はいいんです!」

 

 カフェの顔がみるみる赤くなっていくのを見てタキオンはさらにからかう。

 

「大方君も君のトレーナーくんに恋心を抱いているという訳だね?」

「……それ以上からかうなら本気で怒りますからね」

「ほう、どういうふうに怒るんだ……い……?」

 

 カフェがそういった瞬間から部屋の電気が点滅しだし、物が勝手に動きだした。

 いわゆるポルターガイストが起きていたのだ。

「…………」

「わかった! 私が悪かった! おっとそうだ実験の時間だからこれで失礼するよ!」

 

 そう言ってタキオンは部屋から逃げ出した。

 

「ふぅ……オカルトなんかは信じていなかったのだがカフェといると信じざるを得なくなるな……」

「しかし私がトレーナーくんに恋など……彼はただのモルモットのはず……」

 

 しかし1度恋だと言われて考えてみるとどうにもそんな気がしてならない。

 あの時もあの時も、思い返せば恋だと言われても違和感がない。

 

「有り得る……のか?」

 

 考えても考えても埒が明かない。

 そこでタキオンは行動に移すことにした。

 携帯を取り出しトレーナーに電話をかける。

 

「やあトレーナーくん、今月の25日は絶対に空けておくように。ん、何故かって? そ、それはもちろん実験のためだよ! ああそうだとも、決してで、デートなどではないから安心するように!」

 

 そう言い放ち少し乱暴に電話を切った。

 

「……よし、クリスマスに備えて準備しなくては」

 

 後は野となれ山となれ。

 タキオンは何も考えないことにした。

 

 

 

 迎えたクリスマス当日。

 タキオンそのトレーナーは昼前に集まり、色々な所へ出かけた。

 まず映画を見た。内容はよくある恋愛ものだった。

 そこでトレーナーが「なんか俺たちみたいだな」などと言うものだからタキオンは顔を赤く染めた。

 その次はタキオンが前々から行きたがっていた喫茶店で昼食を取った。

 そこで思い出話に花を咲かせた。

 やれあの時のレースは良かっただの、やれあの薬は変な効果だっただの、とにかくタキオンとトレーナーが一緒に歩み始めた時からの思い出を沢山話した。

 しばらくして喫茶店を出た時に少し用事があるからと少し別行動になった。

 タキオンは今日一日で疑惑が確信に変わっていた。

 

(やはりカフェの言うとおりこれは恋なのだろう。こうも当てはまっていれば認めざるをえない。しかしこの想いはどうやって伝えたらいいんだろうか……私がトレーナーくんを好きだとしてもトレーナーくんが私を好きだという確証は無い。もし想いを伝えてこの関係が壊れてしまったら……)

 

 タキオンは悩んだ。もう日が暮れそうだと言うのにずっと悩んだ。

 そうしているうちにトレーナーが帰ってきた。

 

「いやぁごめんごめんおまたせ……ってどうした、なんかあったのか? 浮かない顔してるけど」

「え……ああ、いや少し考え事をね」

「また実験のこと? クリスマスなんだから今日くらい実験から離れなよ」

「……そうだね」

「もう日が暮れるしそろそろ行こっか」

「行くって……どこにだい?」

「ほら、あっちにあるイルミネーション見に行くって最初に言ったじゃないか」

「そういえばそうだったね」

 

 2人はイルミネーションの元へ歩く。

 イルミネーションはよくある木に装飾をしただけの一般的なものだった。

 しかし夜空に向かって伸びる木を見た時タキオンは焦った。

 

(今日を逃がせばもう二度とチャンスはこないかもしれない……)

 

 今日この日を逃せばおそらく想いを伝えることなどできないだろう。

 

「綺麗だなぁ……ってもうこんな時間か!」

 

 トレーナーが時間を気にしだした。

 時刻は7時を少しすぎたところである。

 トレーナーはいいだろうがタキオンは寮生活だ、あまり遅くなってはいけないと気を使ってくれた発言だろう。

 今しかないとタキオンは覚悟を決めた。

 

「なあ、トレーナーくん。少しお願いをしてもいいかな?」

「内容にもよるけど……」

「なぁに、簡単なことさ。これからもずっと私と一緒に居てくれないか?」

 

 タキオンが今言える精一杯の告白。

 しかし返事はなかなか返ってこない。

 タキオンは失敗したと思い、目に少しずつ涙を浮かべた。

 そうしてトレーナーが質問に答える。

 

「一緒に居るのは別にいいんだけど24時間はちょっと厳しいかなぁ……」

 

 なんとも間抜けな返事だった。

 タキオンは慌てて訂正する。

 

「バカ! 24時間な訳ないだろう! できるだけ一緒にいて欲しいという意味だ!」

「ああ、それなら全然問題ないよ」

「本当かい!?」

「ほんとほんと」

「この先ずっとだよ!? 私達が歳をとってもって意味だからな!」

「タキオンとならこの先ずっと一緒でもいいよ」

「そうか、そうか……」

 

 タキオンの目から我慢していた涙がどんどん溢れてくる。

 そしてトレーナーに抱きつき胸にある想いをぶつけた。

 

「どうやら私は君のことが好きらしい」

「まあそうだろうね、そうじゃなかったらこんな反応しないでしょ」

「だが君は私のことが好きかどうかが分からないんだ」

「俺はタキオンのことが好きだよ、そうじゃなかったらずっと一緒にいる約束なんかできないじゃないか」

「なあ、実はクリスマスプレゼントがあるんだが貰ってくれるかい?」

「お、何をくれるのか楽しみだな」

「ふふっ少し目を瞑ってくれ」

「はいはい」

 

 トレーナーが目を閉じタキオンは少し背伸びをする。

 唇と唇が触れただけのしかし想いは確実に伝わるキスをした。

 

「こ、これがプレゼントだよ……どうだろうか?」

「大満足だ、一生覚えておく」

「それは少し恥ずかしいんだが……」

「でもあれだな、俺もプレゼント用意してたけどこの後じゃ少しパンチに欠けるな」

「私は君がくれるならどんなものでも構わないよ」

「じゃあ……はい、これ」

 

 トレーナーはカバンからマフラーを取り出してタキオンの首に巻いた。

 

「去年マフラー渡してなかったから今年はって思ってね。うん、よく似合ってるな」

「暖かいな……最高のプレゼントだよ」

「満足して貰えたようで俺も嬉しいよ。さて、時間も時間だし今日は帰ろうか」

「そうだね、明日も会えるんだ。焦ることはないさ」

 

 そうして2人は家路についた。

 満天の星空の下で手を繋ぎ、歩幅を合わせて2人はこれからずっと同じ道を進んでいくだろう。

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