それから1週間程。その間はいつも通りだった。
小町が来たり、宵崎が来たり、4人組が来たり。
……たまに、誰か知らんがうるさいのが来た時は、宵崎父の為に鍵をかけて締め出した。隣のベッドには寝たきりの奴がいるんだ、体に響いたら困る。
変わったことと言えばそうだ。小町は何やら頑張っているらしい。部活かサークルかなんかに入ったらしく、ここに来るのも練習終わりらしい。ちなみに宵崎は朝とか昼とかに。4人組(あとうるさいの)は放課後辺りに来るためこれらの来室イベントが被ることはない。
あと4人組の女神こと、望月から人形展のペアチケットを2枚貰った。「もうすぐ退院だし、家族と一緒に見に行ったらどうか」と言われたのだ。が、小町がなにやら別のことで頑張っているため水をさしたくないなと思っている。だからといって誘う友達もいない。つまりは持て余しているわけだ。
とまぁそんな日々を過ごす俺。今日も病室の扉がノックされて宵崎が入ってくる。寝たきりの宵崎父と一通り話して荷物を渡したあと、ニーゴの曲を聞いて黙ってる俺の所に宵崎がやってくる。
「……宵崎か。よう」
「……ちょうど曲終わったところ」
「分かるんだな」
「私もその曲好きだから。八幡」
「そうか」
「…………」
「…………」
ちなみに、なんだかんだ良く病室に来てしばらく一緒に話している(?)間に宵崎とはコミュ障仲間になった。名前教えたら呼び捨ての名前呼びにしてきた。呼びやすいらしい。
なんつーか、ずっと黙ってるが表情で何考えてるか分かりやすい。お互い黙ってても不思議と宵崎に関しては居心地いいんだよな。
「……あの」
「ん? どうした宵崎」
「……奏」
「ん?」
「私、宵崎奏……名前で呼んで欲しい。ほら、隣にお父さんもいるから」
「あー……」
「ダメ?」
確かに、宵崎という苗字が寝たきりとはいえ2人いるのはややこしいか。数少ないボッチ同士だしな。
「そうだな。……奏」
「……! うん、八幡」
なんだか、宵崎__いや、奏は嬉しそうに帰って行った。
……いや、初めて名前呼びとかしたからあれなんだが。これ、あれだな。恥っず。
「八幡」
「ん?」
「……もうしばらくしたら、退院だよね」
「まぁな」
実を言うと、あと数日で退院になる。リハビリもしていて、足ももう問題なく動く。つまりもうすぐ学校に通わないといけない。……やだなぁ、面倒くさい。
「連絡先、聞いてもいい? また、話したいな」
「構わん。ほれ」
「……?」
俺のスマホを宵崎に渡すと、宵崎は首を傾げた。
「あぁ、俺やり方知らないんだ。見られて困るもんもねぇし、勝手に追加しておいてくれ」
「あぁ、うん。わかった……っ、これは……」
「奏、どうした?」
宵崎がスマホを操作していると、ふと宵崎がなにかに気がついたように止まる。俺もきになって覗き込むと、そこには「Untitled」と言う題名の曲があった。念の為に言えば、俺は曲をひとつも端末に入れてない。ニーゴの曲も某あなたのつべとかいう動画アプリからである。
「……知らない曲だな。どんな曲なんだ?」
「あ、待って八幡。それは__」
「何だ、これは__」
奏の静止も間に合わず。俺がその曲を再生するとスマホが光りだして、その光に俺と宵崎は巻き込まれた。
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_____
「ここは……」
見覚えのない場所だ。空き教室だろうか。椅子もあって座れそうだ。周囲を見渡して奏を探すが、見つからない。
「……」
歩き回って治りかけの足を壊しても困る。とりあえず椅子に腰かけておけば問題は無いはずだ。たまたま手元にある本でも読んで待ってようか。
そうして椅子に座ってしばらくすると、ドアがノックされる。そうして入ってきたのは、
「きたな、比企谷。早速依頼が来てる」
「八幡……」
バーチャルシンガーであるはずのMEIKOと、一緒に連れられてきた奏だった。いや待て、依頼? なんの話だよ
「俺はまだ受けてないぞ」
「いや、私が受けた。比企谷、お前がやれ」
「はぁ……」
横暴な。でも、まぁ依頼人が知ってるやつなのがまた。俺はため息をつきながらMEIKOを無視して奏に向き直る。
「奏、お前は何か困ってんのか?」
「それは……」
「困ってんなら話位は聞いてやる。なんだ、知り合いだしな」
「……分かった。困ってる。聞いて欲しい」
「ん」
無視したMEIKOも、空気を読んだのか黙って奏をみつめている。
奏は、話し始めた。
「私には、救いたい人がいるの。その人を助けたい時、どうすればいい?」
「……とりあえずまずは、話をして、聞いてみろ。ある程度悩みぐらいは分かるかもしれねぇ」
「もし、その人がどうして悩んでるのかも分からなかったら?」
「あー……」
助けたい、が、本人すら悩みが分からずどうすればいいのかわからんってことか。ずっと1人な俺にそんな経験は無いから、はっきりいって知らん。が……
「なら尚更こっちから話せ。話せば相手は反応する。その様子から、相手のことが深く知れるだろ」
「…………」
「もし、探りを入れて拒絶されるようなら切り上げろ。受け入れてくれたなら、しっかり相手のことをよく見ろ。人ってのは案外、細かい動作や言葉に現れるもんだしな」
「相手のことを深く知る……そっか。ありがとう。参考になった」
「……あ、そうだ。奏、これ渡しとく」
奏に、望月から受けとったものの、持て余していたチケットを差し出す。
「人形展がこの病院のすぐ近くでやっててな。せっかくだしそいつと行ってみたらどうだ? 話すきっかけにもなるしな」
「ん……分かった。ありがとう、八幡」
嬉しそうに受け取る奏。何がそんなに嬉しいのか、俺にはよく分からんが。まぁ、解決するかどうかは後は本人次第だな。
「聞いてくれてありがとう。それじゃ、また」
「あ、おいどうやって……」
気がつけば、奏はいなくなってた。俺、帰り方知らんのだが? と困惑していると、後ろから声がかけられる。
「依頼解決おめでとう、比企谷」
「いや、これで解決するかは本人次第だ」
MEIKOだ。ごめん、ずっと黙ってたから正直忘れてた。俺といい勝負してるぜ。
と、そんなことを考えているさなかMEIKOは話続ける。
「それでも、きっかけを掴むくらいにはなったと思うぞ。あ、そうそう。ここから帰るには、スマホからUntitledをもう一度再生すれば出られるからな。今日の活動は終わりだ。もう帰れ」
「あいよ」
俺は促されるままにUntitledを止めたのだった
とりあえずセカイまでいけたのでOK!