やはり俺のセカイは間違っている   作:reira

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前回正月に予約投稿したつもりが出来てなかったので初投稿です。

あけましておめでとうございます(2回目)


比企谷八幡は退院する

 相変わらず小町は何やら忙しそうで、最近はあまり見舞いにも来なくなった。

 奏は毎日決まった曜日に来る。そして、ちょっと話をして帰っていく。奏はかなり聞き上手で、話していて楽しいくらいだ。まぁ、二人とも話すのが苦手だから黙り込む時があるが、沈黙も存外悪くないように思える。

 あの4人組はバンドをしているみたいで、練習帰りに寄ってくる。そのためか時間ギリギリにくる。かなり気遣ってくれているみたいだが、1人は俺の事を怖がっているようだ。わかる。俺もいきなり女の子が4人も来たら怖いもの。

 あと、黒服と柄の悪そうな奴が複数人時々来る。取り調べかよ。事故を起こしたトラックの大元、鳳グループのかなり上役だそうだ。めっちゃいいイヤホン買ってもらった上にかっこいいヘッドホンをおまけにつけてきた。おかげで、周囲を気にせずニーゴの曲を楽しめる。

 

 とまぁ、リハビリしながら見舞いが時々きて。そんな日々が過ぎていき、そろそろ退院の時期が迫ってきていた。

 

 

 __________

 

 

 _____

 

 

 

「お兄ちゃん」

「小町、久しぶり」

 

 退院当日。忙しいらしく、全然来ていなかった小町が最後だからと来てくれた。

 

「なんか忙しいみたいなのに、すまんな」

「いいっていいって。ごみいちゃんが今更なこと言わないの」

「ごみ……」

 

 普通に罵られた。まぁ、過去にも事故って入院してたらしいから扱いになれているのかもしれないが。

 

「もう一人で歩ける?」

「おう、心配ねぇよ」

 

 ちなみに松葉杖も使っていたものの、鳳側から完治するまで面倒を見ると言ってくれたので手術も行っている。なので歩いても痛みがない程完璧に治っていた。問題は歩き慣れてないがためにリハビリがクソほどしんどかったくらいのものだ。運動しよ。

 

「はいはい、黙って考え事とかしてないで。帰るよ。お兄ちゃん」

「いや、解説大事だろ」

「読者はお兄ちゃんの入院中の描写とか求めてないから。ほら、さっさと帰る帰る」

 

 地の文を読むな。小町よ。

 

「いや、地の文どうこうじゃなくて全部声出てるからね?」

 

「アッハイ、さーせん」

 

 そのまま、俺たちは無言で帰路に__

 

「あ、ご飯の準備しなきゃ。何食べたい?」

「ラーメンで」

「うわ即答だね。じゃあ、買い物行かないと」

 

 ラーメンの買い出しをして帰った。

 

 

 __________

 

 _____

 

 

 

《比企谷家》

 

 久々の我が家。といっても、ほぼ引越ししたばかりだから新居といった感覚だ。

 部屋に帰った俺は早速ソファに寝っ転がり惰眠を「ほら、ごみいちゃんご飯食べるよー」くそう、いいとこだったのに。

 

「帰ってそうそう寝ようとするとか、さすがごみいちゃん」

「さすがごみいちゃんってなんだよ……ナチュラルにごみ扱いするな」

「粗大ゴミの日いつだったかなー、早くひきとってもらわなきゃ」

「おいこら」

 

 流石にちょっと頭にきたのでアイアンクロー(もちろん妹に手は出さない威力極低)からの髪の毛わしゃわしゃ攻撃をすると、小町も「きゃー!?」とカラカラ笑っていた。

 一通り終えて落ち着いた頃に、夕食もといラーメンの準備をする。ちなみに濃いめのラーメンが食べたい(病院食は薄味)と頼んだら豚骨ラーメンになった。

 ふと気がつくと、足元に猫が来てにゃーんと鳴いていた。

 

「ん、カマクラも元気だったか?」

「まぁ、ちゃんと世話はしてたから。忙しくて相手まで出来なかったけど……今日くらいはいいか。カマクラー」

 

 カマクラはにゃーんとないて小町の方へ。そのまま、餌を出しにとキッチンに向かった。それを眺めながら、俺はソファで横になってニーゴの新曲を再生する。ちょうど新曲が今日発表されたのだが、今の今まで聞けなかった。

 

「ん、これは……」

 

 イヤホンから流れる、鋭い刃のような恐怖。俺は衝撃を受けていた。

 今まで、ニーゴの曲はまるで寒空の街頭のような、ぼんやりと温かい曲だった。その、どこか温かい曲が、何となく自分の失ったものを映し出しているような気がしていた。

 それが、今回は一変。周囲を切り裂いて拒み、悲しみを叫ぶ自身にはどうしようもない恐怖を叫んでいるかのような曲だった。……いちゃんいや、なんだろう。不思議と鮮明と浮かぶ気がする。そう、俺もこういった恐怖を感じたことがあって……お兄ちゃん俺は、それから__

 

「お兄ちゃん!!!」

「おわっ!? な、なんだ!?」

 

 思索に耽っていると、隣から小町の大きな声と肩パンで現実世界に引き戻された。地味に痛てぇ。

 

「ご飯できたよ! さ、食べよ!」

「お、おう」

 

 なんだか、小町がこちらの顔色を伺っているような気がする。心配かけちまったな、多分……

 俺は頭をかきつつ小町の後を追うように、ラーメンが2つ置かれたダイニングテーブルに着く。

 

「それじゃ、いただきます!」

「いただきます」

 

 そうして、二人で食事を始める。小町も結構しっかりラーメンを食べていた。

 

「そういや、お前は学校どうだ。もう1ヶ月過ぎたし、ずっと忙しそうだったが」

「あ、えーとね。驚かないで聞いてくれる?」

「ん? おう。なんだ?」

「小町、アイドルになるの!」

「うん、そうか」

「そうだよ!」

 

 一瞬、ザ・ワー○ドが起こったかのような静かな静寂が訪れる。

 

「……うん、は? え? アイドル? 小町が?」

「うん!」

 

 ……何言ってるのかよく分からん。が、まぁうん。なら忙しそうだったのも納得がいった。

 

「……ま、色々大変だろうけど頑張れよ。俺もなんかあったら手伝うわ」

「お兄ちゃんが来たら色々問題だけどねー。女学園だし」

「そういや小町はそうだったな……ま、頑張れ」

「うん! 小町、頑張る!」

 

 なんだか、嬉しそうに話してる小町の影に時々最強の矛と最強の盾を抱えた商人のような暗いものが見える気がする。矛盾じゃん。

 どうにかしてやりたいものだが……

 

 

 __________

 

 _____

 

 

 お兄ちゃんが帰ってきた。

 何とか取り止めのない話をしながら帰宅して、カマクラに餌をあげて部屋に戻る。ここまでは良かった。

 

 ラーメンの準備も終えてリビングに戻ると、ソファの上でなんだか恐怖に震えているお兄ちゃんがいたのだ。何故かは分からないけど……凄く苦しそうに見えて。私はお兄ちゃんにパンチまでして呼んだ。イヤホンをしていたみたいだけど……お化け屋敷の曲でも聞いていたのだろうか。とにかく、私はそんなお兄ちゃんをみていられなかった。痛そうにしていたけど、ごめんね? 

 私も、早くみのりちゃんみたいに希望を届けられるようになりたいな。誰よりも、お兄ちゃんに。

 

 なんだか私がアイドルすることに驚いてた。まぁ、それはそうか。急だもん。

 

 そういった私をみて、お兄ちゃんは驚きながらも

 

「……ま、色々あるだろうけど頑張れよ。俺もなんかあったら手伝うわ」

 

 背を押してくれる。それが、たまらなく嬉しかった! 

 

「うん! 小町、頑張る!」

 

 __お兄ちゃんのためにも。

 

 今は言えない言葉を、そっと胸にしまった。

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