魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第5話 再会、瓦解、魔法少女かい?(後)

話すことはたくさんありそうな気がしたが

私は整理するのが苦手なので思いついた順に話すことにした。

 

「まずは……ここにいたモンスターをやっつけたのって影ちゃん?

ありがとう!!」

 

「なに言ってるの。知らないわよそんなの」

 

「え!!」

 

「私はあなたが研究所を飛び出したからついていった。

索敵用のビットで様子見してたら見つかった。おわり」

 

「それだけ!?」

 

「う、うるさいわね……」

 

私は素っ頓狂な声をあげてしまったので慌てて口を隠した。

 

じゃあモンスターがいなかったのはただの間違いで、

影ちゃんは私についてきただけ。

何も不自然なことは起こってない。

 

そう思いたかったんだ。

 

「影ちゃんはなんで研究所に……?」

 

「……」

 

私は当然の疑問を口にしていた。

私の知る限り影ちゃんはあの研究所に所属する魔法少女ではない。

魔法少女に憧れて見学……と一瞬考えたが何となく違うように思えた。

 

影ちゃんは魔法少女が好きではないみたいだから。

 

影ちゃんは長い間、黙って下を向いていたが、

意を決したのか真剣な表情でこちらを見た。

 

「今から私のいう話……笑わないで聞いてくれる?」

 

私は静かに頷いた。

 

「おほん。ちょっと緊張するわね……おばあにも話したけど全く信じてもらえなくて。

そんな話を思いつくなんて~小説をよく読んでるもんね~って微笑まれたわ……。

研究所に電話を入れてやったらイタズラ扱いされたし」

 

「え~っと、……それで?」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!! この話、何回やっても緊張するのよ!!」

 

影ちゃんは深呼吸をすると、こちらを再び向き直った。

 

「じゃあいくわよ……!!」

 

「はい!!」

 

何かの発表みたいで私も緊張してきた。

 

「言うわよ……」

 

「うん……!!」

 

「スゥウウウウ……本当に言うわよ……!!」

 

「は、早く言って」

 

「わ、わかってるわよ」

 

 

 

 

 

「この世界はなんと……同じ時間を繰り返しています!!」

 

辺りは静かなままだった。

私は影ちゃんの次の言葉を待った。

よくわからなかったので。

 

影ちゃんはこちらの顔をちらちらのぞきこんできた。

 

「影ちゃん、それで?」

 

「言い方が悪かったわね。ごめんなさい。

時間がそう……巻き戻っているのよ!!」

 

「え……ええ? 巻き戻ってないよ!! 今!!」

 

「今はね!! えっと……どう言ったらいいのかな……タイムマシン!!

あれで過去に戻る感じ!!」

 

「あ!! なるほど!! 今のでわかったかも!! 影ちゃん説明うまい!!」

 

「ふ、ふふ。そんなにうまかったかしら……!!」

 

影ちゃんはふふん、と鼻をならした。

そのまま落ちていた木の枝を拾うと先生みたいに手でぱしぱしと振った。

 

「それでタイムマシンはどこにあるの影ちゃん?」

 

「ないわよそんなもん」

 

「ないの!?」

 

「今から図解するから静かにしてなさい。

この日のために夜な夜な頭の中で整理していたのよ……私は」

 

影ちゃんは地面に木の枝で同じ長さの線を2本ほど縦に並べて引いた。

 

「下がいま私たちがいる世界、上が前の世界よ!!」

 

「え? 線だけど……空中に前の世界があるってこと?」

 

「そんなわけないでしょ!! これは年表的な直線!! こっちが未来!!」

 

影ちゃんはふたつの直線の右側に線を足して矢印にした。

 

「ご、ごめん。

私、A子さんが1分あたり50メートルの速さで10分間歩いた距離も

この前、友達に教えてもらってやっと理解できて……それで……」

 

「わ、私も大きな声出して悪かったわ……まさか空中とか言い出すと思わなくて……。

ふざけてるのかと勘違いしたわ」

 

二人で謝りあう。

やっぱり影ちゃんとはうまくやっていけそうだなと思った。

 

「話を戻すわ。上の一番右……つまり先端ね。ここで何かとてつもなく悪いことが起こるのよ!!」

 

「何かとてつもなく悪いこと!?」

 

「そう……何かがね……。私はその記憶がうっすら残っているんだけど、

あの男……村田零が原因だということだけははっきりと覚えているのよ!!」

 

「ええ? 博士はそんな悪い人には見え……ないけど」

 

「そんなことないわ!! あいつのせいでお母さんは……寂しく……」

 

影ちゃんが言いよどむ。

私は深くは聞かないことにした。

誰にだって言いたくないことはあるはずだから。

 

影ちゃんは気を取り直したのか説明に戻った。

 

「それでこの世界はなんと……世界ごと時間が戻ったのよ!!」

 

「ええ!?」

 

影ちゃんが上の線の先端から下の線の途中につながるように線を引く。

私は何の意図があるのかよくわからなかった。

 

「何で!?」

 

「何でって……知らないけど。なんかあったんでしょ。

とにかく私はそのことを覚えていて、それで今にいたるのよ」

 

「ちょ、ちょっと待って。全然わからない。影ちゃんは何でそんなことわかるの?」

 

「いやだからなんとなく覚えていて……あと夢とかで」

 

「夢?」

 

私がそれとなく反応した言葉に影ちゃんが眉を吊り上げた。

 

「なに? 馬鹿にしているの? 予知夢とかもあるんだけど?

さては全部、私の妄想じゃないかって思ったでしょ!! 真田天!!」

 

「そ、そんなことないよ。続けて続けて」

 

「とにかく!! 世界は巻き戻ったの!! 知らんけど!!」

 

影ちゃんが引っ張った線の先をばしばし叩いた。

なるほど。

これが今の時間だ。

 

「でもこの書き方だと前の世界もまだ存在するってこと? 縦に並んでいる……」

 

「いや、してないんじゃない? もう消滅したんでしょ、たぶん」

 

「ええ!? 世界が消滅しちゃったの!?」

 

「そ、そんなに驚かないでよ。私も適当に言っただけだから」

 

しゅん、としている私をよそに影ちゃんは説明を続けた。

 

「とにもかくにも、それでそのことをみんな忘れてるんだけど私は覚えているのよ、なぜか」

 

影ちゃんはうんうんと頷いてる。

ちゃんと説明できているというアピールみたいだった。

 

「それでね、なんかこの点、私はふとそれに気づいてね。

あ、ちなみあなたは何か記憶がどうとかあった? 真田天」

 

「うーん、私は特になかったかなあ」

 

少し考えたが特に思い当たる節はなかった、たぶん。

 

「そう。じゃあやっぱり私だけなのかなあ……気が重いわ」

 

「まあまあ、私は信じるよ」

 

「……ありがと。それで前の世界と今の世界は同じことが起きるみたいなのよね」

 

「え? じゃあこれから起きることもいっしょってこと?」

 

「たぶんそう!! だから私たちの行動次第で変えていこうって感じよ!!」

 

「うーん、まだちょっとわからないかも。

この世界が過去に完全に戻ったら影ちゃんも記憶を失うってことにならないかな……?」

 

「え!?」

 

私の疑問は影ちゃんの頭の中にはなかったようで考え込んでしまった。

もしも完全にこの世界が過去に戻ったから私やみんなにその記憶がない、

という話だったら影ちゃんもでは?と思ったのだ。

 

「じゃあやっぱり私だけは未来の人よ」

 

「それだとこの世界の影ちゃんもいるはずだから影ちゃんが増えちゃわない……?」

 

「……」

 

「ま、間違ってたらごめんね」

 

「いや、いいわ。やっぱりこの説はなし。最初からイマイチだと思ってのよね」

 

影ちゃんは足でごしごしと下の線を消す。

無情にも今の世界を完全に消してしまった。

 

「やっぱり横説ね。この世界は過去に巻き戻っているのではない……復元された未来の世界なのよ!!」

 

「ええ??」

 

さっきと全く違うことを言う影ちゃんに私の頭は混乱した。

影ちゃんは意気揚々とさっきとは別の位置、前の世界の線を延長するように線を引いた。

 

「いい? 前の世界で何かとてつもなく悪いことが起きるのはいっしょ。

そしてそこから続くように……同じ世界がもう一度繰り返されているの!!」

 

私はなんだか頭が痛くなってきた。

この手の話はあまり得意ではない。

とりあえず思った疑問を影ちゃんに投げかけることにした。

 

「えっと……この新しい世界はどこからどうなっているの?」

 

「……むちゃくちゃ昔から続いているわ、たぶん」

 

「でもそれだと誰かが違うことをやったら歴史が変わっちゃうってこと? どうなるの……?」

 

「……」

 

「え、影ちゃん?」

 

 

 

「ああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!」

 

「!?」

 

影ちゃんは木の枝を振り上げると今までの図をバツ印に斬り刻んだ。

 

「私は謎の美少女、村田影!!

嘆きに満ち、闇に覆われた世界からタイムマシンに乗り過去にやってきた!!

黒幕は私の父親……村田零!! お母さんを見捨てた許せない男よ!!

絶望までのカウントダウンはあと数日!!

さあ!! 私といっしょに世界を救うのよ!! 魔法少女!!」

 

 

 

「な、なるほどお……!!」

 

私は勢いに押されて納得するのだった。

 

 

 

 

 

研究所の食堂。

数十分前までそこは楽しく、歓談が行われていた。

今はもうその影はない。

 

「大丈夫ですか? 真赤さん?」

 

「伊藤……さん!!」

 

片方の少女が、倒れている少女の方を見る。

その眼に光は宿してなく、まるで獲物を見るような冷徹さを帯びていた。

 

「まさかこれほどまでになるとは。あなたもトイレに誘っておけばよかったですわね」

 

「全部……わかってたんだな……!!」

 

怒気を含んだその声も、まるでそよ風のように受け流し緑の少女が答える。

 

「戦える人はいなさそうですわね。とはいえ急速に魔法力を奪われて気を失っているだけでしょう。

いちいち人間の命を奪うメリット、相手にはありませんもの」

 

「何を……言ってるんだよ!!」

 

赤の少女――この騒ぎが起こる前と比べれば、その赤色は消えかけた蝋燭を連想させる。

 

その少女が周りを見る。

 

先ほどまで、ともに話し、笑っていた4人が倒れ込んでいる。

その髪の色は完全に黒色へと変わっていた。

 

「許さねえ……あの野郎……!!」

 

「まあ落ち着きなさい、この世界ではあなたはもう戦えないでしょう」

 

「僕は……まだ……!!」

 

「天さんを向かわせたのは恐らく似たような状況がかつてあったのでしょう。

その時は天さんがその場で防いだ、といったところでしょうか」

 

「伊藤!! 僕をあいつのところに連れていけ!!」

 

「では条件を出しましょう。私があなたに聞きたいのはひとつ。

あなたは何の記憶を引き継いでいますか?」

 

「また意味深なことを……意味がわからないんだよ!!」

 

「田中こころを助けて喫茶店に行った日を覚えていますか?

私たちが研究所に向かっている途中、私が立ち眩みをしたでしょう?

あの時にあなたも何かを感じませんでしたか? 天さんと合流する少し前です」

 

「何かってなんだよ……!! 何もないよ……!!」

 

「そうですか」

 

緑の少女は赤の少女から視線を外すと、食堂の外へと足を向けた。

 

「おい!! 条件って言ったろ!!」

 

「悪いことは言いません。そこで大人しくしてなさい。

私の邪魔をしなければ危害も加えませんよ。無駄なので」

 

「この……!! 何で上から目線なんだよ!!」

 

「しかし何もない、ですか。私はちゃ~んと思い出しましたよ」

 

緑の少女が突然に高笑いを上げる。

獣の鳴き声に似たそれが、静寂を蹂躙するように響き渡る。

 

「私のことを大好きな真田天さんのことを、ね……」




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