魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第2話 急募!! 魔法少女は明るく楽しい職場だよ!! 経験者優遇!!(前)

「というわけで、有力なのはズバリ……ポスター作り!!

世界が闇に包まれること、その原因が研究所であること、私たちと世界を救う旨を書いて

町中に貼り付けを……」

 

ノートに箇条書きされたいくつかの案から、

ポスター作りの文字に紫のペンで大きな丸を付けられている。

その他は路上パフォーマンス、ラジオ、トークイベントなどの文字が並んでいる。

 

ほとんどは私の出した案だが、作戦会議の役に立ってよかった。

 

「町中に張り付けて魔法少女を集めて……集めて……」

 

「……影ちゃん?」

 

影ちゃんが下を向いてわなわなと震えている。

気分でもすぐれないのだろうか?

 

突然こちらを、きっと睨んで叫んだ。

 

「集まるかあーーーー!!!!」

 

影ちゃんの口からものすごい音圧が発射される。

私は目をきゅっと閉じて嵐が収まるのを待つのだった。

 

「何これ!? 怪しい団体の怪しい勧誘じゃない!?

きょうび、小学生でもこんなの付いてこないわよ!!」

 

「お、落ち着いて影ちゃん」

 

今、いるのは私の家の私の部屋。

中央の小さなテーブルに向かい合って、

私と影ちゃんは話し合いをしていた。

 

目下の議題は協力を募るため、どうやって魔法少女を集めるかということだった。

なるべく多くの人を、自然に集める方法。

私たちはいくつかの案をブラシュアップしていったが、結果はこの通りだった。

 

扉からノックの音が聞こえる。

私はどうぞーと声を張り上げた。

 

お母さんが飲み物を持って入ってきた。

 

「あら……盛り上がっているようね」

 

「ひ、光さん!! うるさくしてすいません!!

飲み物も……ああ!! お気遣いなく!!」

 

急に影ちゃんは背筋を伸ばして、かしこまった。

家に上がる時もだったが、

お母さん相手だと礼儀のパラメータが二段階くらい上がるみたいだ。

 

「いいのいいの、お客さんなんだから。

なんだか初めてって感じがしないのよね~影さん」

 

「そ、そうですかー」

 

急激に棒読みになる影ちゃんを微笑ましく思いつつ、

私は飲み物に手を取った。

 

私と影ちゃんは今回では前回の記憶をはっきりと覚えている。

もっと正確に言えば思い出すことができたのだ。

そのことに関しては恐らく、

世界がこうなってからすぐに私と影ちゃんが出会えたからという予想をしていた。

 

そうなるとお母さんもある程度ことは覚えているのかもしれない。

 

「それは? たくさん書いてあるけど」

 

お母さんがテーブルのノートに気づいた。

影ちゃんは慌てて隠そうとしたのか

体を前のめりにしていたが、私は笑顔で答えた。

 

「……えへへ、秘密の作戦会議」

 

「あら……素敵。ちょっと見せてもらえる?

路上パフォーマンス、ラジオ、トークイベント……アイドルかしら?

お母さん、ラジオがいいなあ~。深夜よく聴くのよ~」

 

「なるほど……!!」

 

影ちゃんは紫のペンを取り出すとラジオの文字に花丸をつけていた。

お母さんの意見には10票分くらいの価値があるらしい。

 

なんだかこのまま話し合いをしても同じ流れになりそうな気がしたので

私はお母さんに聞いてみた。

 

「お母さんだったら自分の話をたくさんの人に聞いてほしい~って時、どうする?」

 

「え? 私? そうね……まずは……」

 

お母さんは少し考えると口を開いた。

 

「身近な人とお話する!!」

 

「身近な人と……」「お話しする!?」

 

私と影ちゃんの声が重なる。

あまりにシンプルな解決方法で驚いてしまった。

 

「お言葉ですが光さん、身近な人だけではたくさんの人とは言えないのでは……?」

 

「最初はそうかもしれないけど、話す練習にもなると思うし。

たくさんの人とお話したいなら、近くの人ともお話できなきゃでしょ?」

 

その言葉は私の心に響いた。

確かに近くの人にもうまく話せないのに、

他の人が私たちの話を聞くというのは難しいかもしれない。

 

「そうやって少しずつ輪を広げていけばいいのよ~。

いきなりみんなは難しいかもしれないけど、縁と縁がつながって……なんてね。

参考になったかしら……?」

 

「はい!! すごく!!」

 

影ちゃんは勢いよく答えた。

じゃあ頑張ってね、とお母さんはにこやかに出ていった。

 

「ねえ、聞いた聞いた? さすが光さんね……。

そもそも私たち二人で何とかするのが現実的じゃなかったのよ、路上パフォーマンスとかできないし!!」

 

私は身近な人という言葉について考えていた。

この場合の身近な人というのは誰だろう。

 

魔法少女としていっしょに戦ってくれる……。

私の頭には二人ほど、その顔が浮かんできた。

しかし、喉につっかえたようにすんなりと言葉は出なかった。

 

なぜかは自分でもわからなかった。

 

「花ちゃんと……真赤ちゃん」

 

「花は前にあなたといた子ね。真赤は……パーティーが大惨事になった子だっけ?」

 

その言葉を聞いて私の胸はずきりと痛んだ。

そうだ、前の時に真赤ちゃんはどうなったのだろう。

 

今は何ともなさそうだけど、覚えてないんだろうか。

戦いに巻き込んじゃうのは、果たして正しいんだろうか。

 

もしも覚えてたら、私のことをどう思ってるんだろう。

 

「いいんじゃない? とりあえずその子らを当たってみるってことで」

 

花ちゃんと真赤ちゃんは良い子だし、頼りになる。

だからといって協力してもらうのが正しいのかはわからない。

でも何も知らないままなのも、きっと良くないことだと思った。

 

やっぱりちゃんと話さなければいけない。

 

「うん。私、明日の放課後に話してみる」

 

「じゃあ私もいた方がいいかしら。話したことないのよねえ……」

 

「大丈夫。私からちゃんと言いたいから」

 

一人でいいの? と影ちゃんは心配そうにしてくれたが、私は頷いた。

これだけは私の口から伝えたい、そう思った。

 

縁と縁がつながるように、願いを込めて。

まずは身近な人から。

 

「ところで影ちゃん、私たちこうして前の世界のことを覚えてるわけだけど……

もしかして何回も繰り返しているのかな? これ」

 

「さあ? こんな不思議体験そうそうないし、一度や二度じゃないの。知らないけど」

 

 

 

 

 

翌日、私は普通に朝起きて、普通に学校に行って、普通に授業を受けていた。

ひとつ違ったのは授業中に集中できないとき考えるのが、

今晩のご飯のことじゃなくて真赤ちゃんと花ちゃんにどう話すかということ。

 

私はその日の授業が終わると隣のクラスへすぐ向かった。

席はどこだっただろう。

 

私は端の方で固まっている5人組から真赤ちゃんを見つけた。

真赤ちゃんは楽しくおしゃべりをしているようで、私は嬉しく――

 

嬉しくなったんだ。

 

 

真赤ちゃんが私に気づいた。

どうやらわざわざ私がきたので大事な用があると思ったらしい。

 

他の四人に待つように言って、輪の中から抜け出した。

 

「やあ、真田さん。魔法少女の話?」

 

その声色はいつもより明るい感じに聞こえた。

 

この場合の魔法少女の話というのはお仕事の話、の意だろう。

私があいまいに返事をすると、真赤ちゃんは四人に先に帰るようにうながしていた。

何だか申し訳ない。

 

改めて私と真赤ちゃんは二人で向かい合った。

 

「花ちゃんは? もしかしてもう帰っちゃった?」

 

「伊藤さんは今日休み。体調、悪いんだってさ」

 

花ちゃんが休み。

心配な気持ちが胸からわいてくる。

前に別れた時、雰囲気がいつもと違ったのはそういうことだったんだろうか。

 

薄暗い感情を押し込んで私は真赤ちゃんと向き合った。

せっかく時間を割いてくれたのだから、

今は真赤ちゃんに話さないと。

 

私は既に考えていたフレーズを口に出した。

 

「あのさ、真赤ちゃん……異動願いってまだ出してる?」

 

「出してるけど? それをやめろってこと?」

 

「あ!! そういうわけじゃなくて……」

 

私は口ごもった。

ストレートに言ってしまえばそういうことだった。

 

前の私だったら、きっと真赤ちゃんのお手伝いをしていたのだろう。

 

「じゃあどういうこと」

 

「その……何というか真赤ちゃんにはやめてほしくないしやめてほしくて……」

 

「へ?? 辞めるのを止めるってこと??」

 

私も言っていて混乱してきた。

どっちの意味にも取れるし、どっちの気持ちもある。

 

「ああああ……」

 

「大丈夫?

いったん外の空気を吸うっていう選択肢もあるんじゃないかと思うよ、僕は」

 

私は頭を振って気を取り直した。

 

「よくわからないけど、異動願いを出すのは個人に認められてる権利だから、

申し訳ないけど――」

 

「だ、だめ!!」

 

「なんで?」

 

言っている真赤ちゃんの瞳が鋭くなる。

私は、それでも引き下がらなかった。

 

「だって……真赤ちゃんが危ない目に……」

 

「……?」

 

真赤ちゃんが不思議そうにこちらを見る。

やんわりとした言い方ではもう限界だと思った。

 

私はすうっと息を吸って深呼吸をした。

 

変な子だと思われてもいい、それで真赤ちゃんが助かるなら。

 

話そう、全部。

私の覚えている限り。

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