魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第1話 初めまして!!!! 私たち魔法少女です!!!!(前)

目覚まし時計のベルのような音が、けたたましく鳴り響き

私の意識は覚醒した。

 

真っ白でどこまでも続いていきそうな廊下。

白っぽい照明は点いてるものと点いてないものが交互に並んでいて、少し薄暗かった。

私はというと両の足で突っ立っていて、もともと進んでいたのか、あえて立っていたのかもよくわからない。

 

ベルがまだ鳴り響いてる。

前に学校で火災訓練をした時に似たような音がしていた。

それよりもやや低く、一音一音が長い。

 

そうだ、これは――。

 

「魔法少女のスクランブル要請!!」

 

私は走り出すと何かの目的で、どこかの部屋へと向かった。

右、左、しばらく進んで右手側の2つ目の部屋。

 

私は入ってすぐのロッカーを開けると、その中を確認した。

長細いロッカーに斜めに立てかけてある棒があからさまに目立っている。

何だか洗濯する時に使う物干し竿みたいだなと思ったが、私はそれを迷わず手に取った。

 

そうそうこれは――。

 

「魔法の棒!! 良し!!」

 

私はその棒に力を込める。

すると棒の先端から何だか黄色い刃のようなものが生えてきた。

 

「大鎌モード!! 良し!!」

 

今度は手に持った棒の両端をつかみ、押し込む。

棒は連結部分で太さが変わっており、細い方が太い方へとするすると入っていった。

本当に物干し竿みたいだ。

 

「鎖鎌モード!! 良し!!」

 

扉の内側に付いていた鏡を確認する。

 

「身だしなみ!! 良し!!」

 

緊急とはいえ魔法少女たるもの社会人の一員であり

常に身だしなみに気を付けるべし、ということらしい。

魔法少女手帳の規則にも書いてあった、気がする。

 

鏡を見るついでに私は自分の髪色を確認した。

黒髪がベースだったが特に前髪と髪飾りから結んだ先のサイドテールが

うっすらと黄色を帯びていた。

 

そうだ、これは私の――。

 

「魔法力!! 良し!!」

 

魔法力。

さっきの鎌を出したのがこの力だ。

ざっくりいって、私はこの力で悪さをする怪物と戦っている。

 

自分の髪を見ていて何か足りないような気がしていた。

ふと、ロッカーの下の方に真っ黄色の物体を見つける。

私は少し口元を緩ませ、それを手に取って頭にかぶった。

 

「安全!! 良し!!」

 

確認はだいたいこんなものだろうか。

同じチームの花ちゃんと真赤ちゃんはまだ来る様子はない。

いつものように私が一番乗りだったから、ことによると現地で合流するかもしれない。

既に戦っているなら早く合流しないと。

 

ベルがいったん止むと怪物の出現した場所を告げる。

ここからすぐそこの商店街。

自分も知っている場所で体が熱くなるのを感じる。

早く行かないと。

 

だって私は――。

 

そうだ私の名前は――。

 

「真田天、行ってきます!!」

 

誰に告げるでもなく、そう宣言して私は駆けて行った。

たぶん自分を奮い立たせるために。

 

 

 

 

 

その日、商店街は騒然としていた。

いつも各店つぶれない程度に慎ましやかに賑わってはいるが、

今日のそれは明らかに異なった類のものだった。

 

真っ黒で、ゾウくらいの大きさで、けれど形はサンショウウオのような

怪物がのたのたと商店街の入り口付近を歩き回っていた。

近くの人間は既に避難したのか人影はない。

 

「うわあ。両生類型だよ。僕、苦手なんだよね。休んでいい?」

 

入り口の前にいた髪が赤みがかった少女がつぶやく。

 

「苦手……の内容によりますね。真赤さんの力量なら問題ないかと思うのですが、どこが苦手だと?」

 

髪が緑がかった少女が凛とした口調で問う。

 

「ぬめぬめしたところ」

 

「では却下いたします。いっしょに戦いましょう」

 

「え~……いやだなあ……何か手当が付くわけでもないのに……早く帰りたいなあ……」

 

「つべこべ言わずぶっ倒しますわよ。いざ……」

 

 

 

『モンスターども!!!! 私が相手だああああ!!!!』

 

 

 

「む!? この声は……!? もしやあのお方が……!! ああ!!

金色の光を身に纏い邪悪なる怪物と勇猛にも相対するあの姿はー!?

そう!! 私のピンチを救ってくれる……私だけの天使……」

 

「僕、帰っていいかな?」

 

 

 

「アークは天!! 私も天!!」

(滑舌よくはきはきと!!)

 

「魔法少女ォ!!」

(手の平を広げて真っすぐ前へ!)

 

「ガルガンチュアァァァアアァァァアアアァァァ……!!」

(すごい巻き舌のまま魔法の棒を頭上でくるくる高速回転!!)

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアァック!!」

(右手は前に思い切りよく!! 左手で棒を横に構えつつ魔法力を展開して大鎌モードへ!!)

 

 

 

「はあ!!!!」

 

気合を入れると体が黄色のオーラで満たされていく(魔法少女だから)

それはさながら、燃え上がる炎のよう。

 

「遅刻遅刻ーーーー!!!!」

 

私は大鎌を怪物の頭部にぶっ刺すと、そのまま思いっきり切り裂いた。

 

「アークスラッシュ!!」

 

怪物は音も上げず、大鎌が通った裂け目から風船が弾けるように霧散していく……というのが理想。

散らばった破片がまだピクピクと動いて微妙にこっちに寄ってきてるのが現実。

 

「おりゃあああああ!! スーパーアークスラッシュ!!

ハイパーアークスラッシュ!! ネオアークスラッシュ!!

えーっと……アークファイナルスラッシュ!! ネオアークファイナルスラッシュ!!」

 

「何か最終奥義っぽいの出てるね」

 

「天さん、絶好調ですわね……!!」

 

一発ずつ大鎌を振り下ろす。

破片はその形をとどめれなくなり、細かい粒のようになって風に流れていった。

 

私は既に到着していた二人のもとへ駆け寄った。

 

「はあ……はあ……二人……とも……大丈夫……」

 

「君の方が大丈夫じゃなさそうなんだけど? 走ってきたの?」

 

今、私を心配してくれ子は高橋真赤ちゃん。

真っ赤なマフラーがとてもお洒落な子だ。

とても大事なものらしくて大切に年中付けているんだって!!

夏場はちょっと大変そう。

最近の日課は異動願いを出すこと。

お願いが叶うといいね!! 真赤ちゃん!!

 

「ふふ……そんな頑張り屋さんなことが天さんの素敵なところですよ……はい、お水を」

 

「ありがとう……花ちゃん……!!」

 

今、お水を差しだしてくれた子は伊藤花ちゃん。

今日も頭一面に広がるいろんなお花がとっても色鮮やかで見ていて楽しい気分になる。

お花に水をあげるため鞄には今日も2リッターのペットボトルが標準装備だ。

でも夏場は虫が寄ってきてちょっと大変みたい。

私たち3人のリーダーをやっていて、とても丁寧な言葉遣いでしゃべる!!

 

「私たちも今きたところなのですが、目撃証言によると2匹目がいるみたいですわね」

 

「……ふう。よし!! 早く探して商店街の平和を取り戻そう!!」

 

「そんな大げさ話でもないけどね。暴れないタイプだし」

 

「でも」

 

私は商店街の入り口付近のお店を見た。

何やら古めかしい本がいっぱい並んでいる本屋さん。

家族でたまにいくラーメン屋さん。

どちらも怪物が近づいたあとはなく、無事なようだった。

 

「やっぱり、誰かが悲しい思いをしたら嫌だから……」

 

「……まあ、そうだね」

 

「ふふ、では早いところ2匹目を倒してしまいましょう」

 

「……うん!」

 

「では改めまして……モンスター対策部、Cチーム!! 行きますわよ!!」

 

「ゴォー!!」

 

「ほい。たまには仕事するかあ」

 

黄色、緑色、赤色。

私たちそれぞれが自分の色を発し、周囲がきらびやかに照らされる。

 

それは周りを包み込む、とても温かい光……。

 

 

 

私たちは汗をかいてきた。

花ちゃんがだらだらと汗をかきながら解説をする。

 

「モンスターは学説によれば魔法力に反応するとも言われています。

これでおびき寄せれたらいいのですが……」

 

「もうちょっと離れて歩かない? 互いが熱源になっててすごいあつい」

 

「夏を先取りしたと思いましょう」

 

「真田さんはヘルメット取ったら? それ初心者用のでしょ」

 

変わらずマフラーに口をうずめながらこっちを向く真赤ちゃんに

私はうーんと唸って答えた。

 

「念のため……というより付けてると安心するからかな……なんとなく。

初心、わするるるるるるるべからずって!!」

 

「るが多い。さすがにそこまで多くない」

 

「え、そうだっけ? でも心配してくれてありがとう真赤ちゃん!!」

 

「別にそんなんじゃ……蒸れて臭いそうだと思っただけだよ」

 

マフラーをもふもふと両手でいじりだす真赤ちゃん。

その様子を見て、なんだか微笑ましい気分になった。

 

魔法少女とモンスターの戦いは

魔法少女の持つ魔法力とモンスターが持っているとされる反魔法力の削り合い。

モンスターの生み出すエネルギーが魔法少女を襲ったとして、

本能的に魔法力が防御に回るため、危険はそれほどない。

 

魔法力が不安定な魔法少女向けに

魔法伝導率の良いヘルメットが支給されているが、

大半の者はすぐに慣れるため使わなくなる。

 

「蒸れ蒸れの天さんの匂い、いかなるものなのでしょうね」

 

「え!?」

 

「間違えました。天さん!! あちらをご覧ください!! 人が!!」

 

「ずいぶんとダイナミックな間違え方をしたね」

 

花ちゃんが指をさした方は商店街の大通りから少し離れた公園。

そしてそこには女の子……とその目の前にさっきより一回り小さい怪物が見えた。

女の子は砂場に転げており、足がすくんで動けないという様子だった。

対する怪物はその女の子をまじまじと、全身の中でも恐らくは頭にあたる部分が向いていた。

 

「危ない!!」

 

「待って!!」

 

走ろうとする私の手が強く握られる。

真赤ちゃんが私の手を両手でつかんでいた。

 

「刺激したら危険だよ。 策を練ろう」

 

「そ……そうだね!! ありがとう真赤ちゃん」

 

「ふむ、なるほど。真赤さん何か考えがおありで?」

 

「見たところまだ動きそうな雰囲気はないね。直接は攻撃せず別方向に注意を誘ってから女の子を……」

 

 

 

ぼごお!!!!

 

 

 

鈍めの音が響き渡る。

すかさず見ると両生類型の怪物がその頭をぐらぐらと揺らしていた。

傍にはさっきまではなかった、でかめの石が落ちていた。

つまり誰かが投げた。

 

「攻撃したの誰!? 伊藤さん!?」

 

「何で私ですの!? 真赤さんは私のことをどうお思いで!?」

 

「真田さんは結構聞き分けいいじゃないか!? 君は結構暴走する!!」

 

「言いがかりですわよ!! 言いがかりですわよ!!」

 

私はでかめの石……の更に先、怪物をまたいで滑り台の上を見ていた。

もっと正確に言えば、滑り台の上の人影――

仁王立ちをする自分と同じくらいの年齢の少女を見ていた。

 

「こっちだ!! 化け物ー!!!!」

 

少女が隠し持っていたのであろう石を振りかぶってぶん投げる。

これまた絶妙のコントロールで石は怪物の頭部に命中した。

怪物の頭と、瞳らしき部分が滑り台の方を向く。

 

「よし!!」

 

少女が滑り台から飛び降り、反対側へと駆け出す。

怪物はそちらを向きしばらく静止したかと思うと、

瞬時にどたどたと走り出す。

 

予備動作のない、無機質な動きで。

 

私はそれとほぼ同時にうずくまっていた方の少女に駆け寄った。

少女は泣いていたが、外傷はないようだった。

怪我はないか聞いたら静かに頷いてくれた。

 

「花ちゃん!! 真赤ちゃん!! 女の子をお願いするね!!」

 

私は返事を待たず、もう一人の女の子――怪物に投石をして走っていった方の子を追いかけた。

頭にあったのはその女の子のことばかりで、怪物のことは一瞬忘れていた。

 

胸の鼓動が早くなっているのは走っているから、というだけではないような気がした。

 

走る。走る。右へ。左へ。

怪物の背中は、見えてはいるものの向こうの方が速い。

曲がる時に一瞬、立ち止まっているからかろうじて引き離されない。

 

いや、もしもさっきの女の子が私と同じくらいの足の速さならば――。

追いつかれないよう、意図的に曲がり角の多いルートを選択しているということだ。

 

だが、人間の体力には普通、限界がある。

戦う術を持たない魔法少女以外の人間が追いつかれたら、

それは怪我では済まない可能性を意味する。

 

怪物が再び止まり、狭い小道へと入っていく。

 

まずい。

 

あの先は袋小路だったはずだ。

 

私は脚に、精いっぱいの力を込めて走った。

痛みも疲れも感じる余裕すらなく。

 

 

 

 

 

やっと追いついた先はやはり壁になっていて、

怪物が急停止して鎮座していた。

隠れる場所はなかったはずだ。

影になって見えないが少女もそこにいるはずだった。

 

壁際、酒屋さんの裏の方へ人影が出てくる。

そこで私はやっと少女の姿を確認できた。

女の子は酒屋さんの裏にあった瓶を詰めていた箱を手に取ると、それを持ち上げた。

 

「ごめんなさい!! 後で片づけまーす!!」

 

怪物の方へ瓶がばらばらに撒かれ散乱する。

そのまま箱を高く掲げると、そのまま怪物の頭部を殴りつけた。

 

「おりゃ!! おりゃ!! おりゃ!! おりゃああああ!!!!」

 

4発。

怪物は頭部をぐらぐらと揺らし狼狽えていたものの、すぐに女の子に向き直った。

 

「くっ……やっぱり魔法少女じゃないと怪物は倒せないの……?」

 

怪物がこちらの番といわんばかりに身動きを取ろうとしていた。

 

でも、それはもう無駄だった。

既に黄色く光る鎖がぐるぐると巻かれ身動きの取れない状態だ。

 

「アークチェーン!!」

 

私は短くした魔法棒の先端、鎖を出していない方の側から小さい刃をだす。

さっきより小さいサイズなら、これで十分だ。

 

鎖を手繰りよせ、その勢いで飛ぶ。

狙うはさっきと同じく、急所。

 

「アークカッター!!」

 

風を受ける感覚とともに、化け物が大きく映る。

 

感覚が決めたその瞬間に、腕を振る。

 

出力された動きと同時に、確かな手応えが返ってきた。

 

化け物は音も上げず裂け目から霧散していく。

今度は成功。

 

私は息もつかずさっきの女の子の方を見る。

女の子は少しきょとんとしているが、無事そうで本当に、本当に――。

 

その時だった。

一瞬、目の前が真っ白になるような感覚。

閃光が走ったような衝撃。

 

「………………!!」

「?」

 

「…………!!」

「?」

 

「……」

「?」

 

「?」

「?」

 

 

 

私たちは互いに首をかしげた。

 

「あの……初対面ですよね、私たち」

 

「はい、そうですよ!! 初めまして、こころちゃん!!」

 

「そうですね!! 初めまし……んん!?」

 

「どうしましたか!?」

 

「いや、どうして名前を……? 初対面ですよね!?」

 

「え? あれ? ……本当だ!? 何か変!! やり直します!!

初めまして!! 田中さん!!」

 

「初めまし……んん!? 名字も名乗ってない!!」

 

「え? あれれれれ……?」

 

「あの……本当に私たち初対面ですよね?」

 

不思議そうな顔をする女の子に私は気を取り直して、

胸を張って答えるのだった。

 

「はい!! 初めまして!! 私、真田天!! 魔法少女です!!」

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