魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第4話 雨の中の魔法少女(後)

「……と、まあこんな感じでゆめちゃん元気そうだったんだ~よかったよかった」

 

「よい、か……?」

 

私は自分の部屋で渋そうな顔をする影ちゃんと向かい合っていた。

ゆめちゃんとお別れした後に、待ち合わせて家へと迎い入れたのだった。

 

みんな一度に集まれば話も早いのだが、みんな都合というものがある……らしい。

 

「結局、田中ゆめは協力はしてくれるけど姉とべったりなんでしょ? 微妙な立場ね……」

 

「……うん、べったりかあ」

 

「真田天、何を考えているの?」

 

「ええっと……なんでもない……!! さあ今日の会議を作戦しなきゃね!!」

 

「おかしいわよ、言語」

 

本当になんでもない。

べったりという単語で衣食住、買い物に、食事に、お風呂に、ベッドに

あらゆる場面でこころちゃんが隣にいる生活をイメージしてしまっただけだ。

 

もしもそんな時間を過ごせたら――。

 

私は浮かんだ思考をそっとしまい込んで、影ちゃんへと向き直った。

私が戦わないと、そんなこころちゃんの平和な生活もなくなってしまうんだ。

 

「それで田中ゆめは何て言ってたの?」

 

「ゆめちゃんの意見だとこっちから打って出るのがいいんじゃないかって」

 

「簡単に言うわね~。それならいっしょに行動してほしいんだけど。

伊藤花も来ないし……まったく」

 

ぷりぷりと怒る影ちゃんを私はなだめた。

花ちゃんも今日来る予定になっていたのだが、先ほど電話で来られないという連絡があった。

最近、花ちゃんは体調が不安定らしい。

心配だ。

 

集まれないことはしょうがないのかもしれない。

でもどんなに頭で納得したところで、

心が寂しさを感じているのも本当のことだった。

 

「……まあ私たちだけでなんとかしましょう。もともとそのつもりだったじゃない」

 

「……うん」

 

影ちゃんの優しい声に励まされ、そのまま今日の会議は進んでいった。

 

どうやってあの事件を阻止するか。

答えを出すまでの時間はなくなってきている。

 

だんだんとわかってきたのだが、

時間が戻っているといっても完全に同じことが起こるわけではない。

影ちゃんの推測は同じ状況でも同じ人が同じように行動するとは限らないからでは? というもの。

 

私はよくわからなかったが、

つまり時間が戻っていることを信じてもらうのも、

それをうまく活用するのも難しいということだ。

 

 

「まあ田中ゆめの意見には私も賛成ね。

前みたいに後手に回ってたら結局同じことの繰り返しになっちゃう……」

 

私も頷いた。

前は真赤ちゃんの異動記念パーティの日に事件が起こった。

その日が来る前に解決してしまえばいい。

 

「でも……どうやって?」

 

「簡単よ。私たち二人で」

 

影ちゃんはすっと立ち上がって、かっと目を見開いた。

 

 

「研究所を襲撃するのよ」

 

 

「しゅ、襲撃ー!?!?!?!?」

 

「しぃぃぃぃ!!!! 声がでかいわ真田天!!!!

襲撃だなんて!!!! 人に聞かれたら!!!! まずい!!!!」

 

私は慌てて口を押さえた。

その後の影ちゃんの声の方が大きかった気がするが、気にしないことにした。

 

「襲撃ってその……めちゃくちゃ暴れるってこと……?」

 

「いいわね。めちゃくちゃやりましょう。

あの男の野望なんてミキサーにかけて粉微塵に粉砕してやるのよ!!」

 

「ソンシノヒョウホウ……!!」

 

「そうそう……は? なんて?」

 

「ゆめちゃんも言ってたんだ、ソンシノヒョウホウでも先手を打つのがいいって!!

つまりそういうこと!?」

 

「……? じゃあそれでいいわ」

 

胸の鼓動が早まるのがわかった。

いよいよ運命が、私たちの戦いが本格的に動き出した。

そんな気がする。

 

 

「でもどうすればいいんだろう。アンテナをどうにかできないかなあ?」

 

私は前の決戦の時のことを思い出していた。

黒い霧を噴出して、モンスターをばら撒いていた研究所屋上のアンテナ。

それを無力化できれば少なくとも被害は抑えれるんじゃないだろうか。

 

「それも考えたけど難しいかもしれないわ。

調べたけど火薬を使うのって許可がいるみたい。

それにお小遣いも足りないかもしれないわ」

 

「ば、爆破するつもりだったんだね、影ちゃん」

 

「……? あの男の企みをバキバキに破壊するためよ。

あと世界を救わないといけないし」

 

アンテナは工事のお仕事をした人たちが作ったものだし、

壊すのはちょっと避けたい。

自分たちが頑張って作ったものが壊れたら、誰だって悲しむだろう。

 

どちらにしろ無理なようなので私はほっと安心した。

 

「でもそうなるとどこを襲撃したらいいのかな?

あんまり周りの人を巻き込みたくないし……」

 

「決まってるわよ」

 

影ちゃんはまたもすっと立ち上がった。

どうやら大事なことを言う時の癖らしい。

 

「あの男――村田零を直接襲撃する」

 

「は、博士を直接襲撃ー!?!?!?!?」

 

「声が!!!! でかい!!!!

襲撃って!!!! 大声で言っていい単語じゃないから!!!!」

 

私はさっきよりも滑らかに素早い動作で口を押さえた。

自己記録更新。

ちゃんと学習できている。

 

やはり影ちゃんの方が声が大きい気がするが、気のせいだろう。

 

「でもどうやって……?」

 

「甘いわね真田天、あなたは魔法少女よ。

やることは決まっているじゃない?」

 

私たち魔法少女にできること、それは……。

 

「魔法で攻撃する……!!」

 

「そういうことよ!!」

 

影ちゃんは心底嬉しそうに声を上げた。

どうやら影ちゃんの頭の中には既に計画が練られているらしい。

ついていくのでやっとの私はひとつずつ整理していくことにした。

 

「その……影ちゃんはそれでいいの?」

 

「なにがよ?」

 

「だって博士にもしも何かあったら……」

 

「何かあるから攻撃するんじゃない!!」

 

私は考えた。

博士の体にモンスターが既に憑りついているのか、

今は普通だけどこれからの時間で何か起こるのか、それはわからない。

 

魔法力で攻撃するのなら、普通の人間には影響は出ない。

でももしも、既に体を蝕まれているのならその時は――。

 

私はもう一度聞いた。

 

「影ちゃんは……それでいいんだね?」

 

「……。何度も言わせないでよ。やるのよ、私たちが」

 

博士だって前みたいな状態になるよりも助かる可能性は高いはずだ。

 

私は頷くとそれ以上、この話題はしないことにした。

私が考えた以上に、影ちゃんはたくさん考えたはずだから。

 

 

「博士は家には帰って来てないんだよね?」

 

「そうよ……あの男が家を……お母さんを大切にしていなかった何よりの証拠だわ!!

仕事を口実に研究所に寝泊まりしているのよ……!! 毎日!!」

 

ヒートアップする影ちゃんをなだめつつ、

胸にわいていたのはきっと切なさだった。

 

私は、お父さんが家族を大切にしない父親はいないと言っていたのを思い出していた。

 

気を取り直して話し合いに心を戻した。

 

「じゃあ研究所にいる時を狙うんだ」

 

「そうね、私は研究所の構造を知らないから案内してもらえると助かるわ」

 

「えっ? 影ちゃんって研究所に入れないんじゃ……?」

 

てっきり影ちゃんは外で待機するものと思っていたので驚いてしまった。

魔法少女講習を受け、魔法少女手帳をもらっていない者は魔法少女と認められない。

当然、研究所にも入れてもらえない。

 

「あら? 見学だとか、付き添いだとか、トイレを貸してほしいとか

理由なんて適当でよくない? 何とかなるでしょ」

 

影ちゃんは計画をよく練っている、たぶん、きっと、もしかして。

 

幸いにも自分は受付のお姉さんとよくおしゃべりする。

全部はしゃべれないけど、事情を説明してわかってもらおう。

 

いざという時は影ちゃんが漏らしそうになる演技をするしかない。

 

「入ってしまえば後は簡単よ。あの男を魔法力で攻撃する。

気づかれないように後ろから私も援護するわ。

少し騒ぎになるかもしれないけど、まあしょうがないでしょう」

 

影ちゃんの顔を見れば博士も気づくだろう、という意見だ。

まずは私から攻撃することになる。

 

「博士、いきなり攻撃して怒らないかな……?」

 

「こんな時に何を言ってるの。

魔法力が暴走しました~とかいって思いっきり鎌で引き裂いちゃえばいいのよ!!」

 

「え、影ちゃん、顔!!」

 

言っている影ちゃんの口元は頬が裂けんばかりで、

笑顔を超えた何かになっていた。

 

「こほん。まあ作戦はこんなところね。本当はもっと情報があったらいいんだけど……」

 

「そのことなんだけど、影ちゃん」

 

私はかねてより考えていたことを口にした。

影ちゃんが博士と、自分のお父さんと戦うと決めた以上、

私も覚悟を決めようと思っていた。

 

「影ちゃんの能力でイメージ映像を流すの、あったよね?」

 

「シャドーシアターのこと? 気分転換に遊びたくなったの!?

も~しょうがないわね~」

 

「そ、そうじゃなくて!!

あれで私の覚えていること……全部話したらどうなるかなって」

 

影ちゃんは私の言葉を静かに聞いていた。

たぶん、私の真剣さをちゃんと感じ取ってくれたんだと思う。

 

私は言葉を続けた。

話さないと伝わらないことも、きっとあるから。

 

「実はこうして時間が戻ってるの、何回もやってるんじゃないかって……

花ちゃんが言ってたのを、ゆめちゃんが聞いたらしいの。

それなら似たような状況が前にあったかもしれなくて……。

お話しているうちに何かわかるんじゃないかって……」

 

「真田天」

 

「はい」

 

「却下」

 

「ええ!? きゃっか……? きゃっかって……?」

 

「ノーってことよ!!」

 

私の長々とした意見はあっさりと退けられたらしい。

 

「あの能力で見えるのはその人の頭に浮かんだイメージよ。

つまり実際に起こったことか、作り話かの区別はできないの」

 

何かを思い出すのも、起こりそうな状況を考えるのも

頭の中では区別されないから、と影ちゃんは付け加えた。

だからこの能力で前の世界に起こったことを信じてもらうのも無理だったらしい。

 

「そっか。じゃあ曖昧なことをイメージしても逆に迷惑をかけちゃうかも……。

……うん、やめとくね」

 

私はその言葉に甘えるようで申し訳なかったが、

影ちゃんはばつの悪そうにそっぽを向くと、小さくつぶやくのだった。

 

「……別に。誰にだって言いたくないこと、あるでしょ」

 

「……影ちゃん!!」

 

「わ!! 反応しないでよ!! 恥ずかしいでしょ、まったく……」

 

はにかんで顔を赤らめる影ちゃんに、私も笑みがこぼれた。

持ってきたカレンダーに赤い印で丸を付ける。

 

もう日付は迷わない。

作戦の決行は、明日の放課後だ。

 

 

 

 

 

「飲み物もってきたわよ~」

 

「あ、お母さん。ありがとう!!」

 

「光さん、いつもありがとうございます!!」

 

「ふふ、いいのよ。影ちゃんはよく遊びにきてくれてお母さんも嬉しいわ~。ところで……」

 

少女たちは嬉しそうにオレンジとグレープのジュースに手をつけ、口に含んだ。

 

「襲撃するとかしないとか、聞こえてきたのだけど……」

 

「ぶふっ」「ぶうぅぅぅぅ!!」

 

少女たちの口から液体が吹き出る。

その様子、霧吹きのごとし。

 

「ふふっ、アイドルの次はテロリストかしら? 危ないことはやめてね~」

 

「光さん!! これにはわけが……。

そう!! 前みた映画でアイドルがテロリストをしてました!! その話です!!」

 

「なんだあ~そうなのね~」

 

「ふう。うまく誤魔化せたわね、真田天」

 

「そ、そうかなあ……?」




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