魔法少女GL ~女の子たちの初手はいつだってルームシェア時空!!~   作:MOPX

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第1話 お久しぶりです!!!! 魔法少女式帰りの会!!!!(前)

僕が初めて魔法少女になったのは小学5年生の時。

 

4年生の終わりごろにうっかり覚醒してしまい、

決まりだとかなんかで5年生に上がるとともに配属になった。

 

はっきり言ってやる気はなかった。

 

初めてチームの人たちと面談になって、

リーダーを決めなければいけなくなり

「赤が一番リーダーっぽい!!」なんてふざけた理由で推薦され、渋々承諾した。

下手な人がやって揉めるよりもよっぽどいい、その程度の所感だった。

 

魔法少女の活動は面白くはなかった。

 

 

 

でも集まった僕以外の4人は存外面白い人たちだった。

 

将来の夢も、その有無も、趣味も特技も成績もバラバラだった5人。

 

気の合うか合わないかは趣味や成績よりも普段のテンションが近いか、

というのが僕のこれまでの人生での見方だった。

 

たぶん、僕らはみんな刹那的だったのだと思う。

 

意味のないけどスピード感のある掛け合い。

親や世間に対する、一種の諦観でありニヒリズム。

 

人間としての基盤が一致していたとも言う。

 

冬を迎えて、5人で集まった時に僕は産まれて初めて、

友達たちからプレゼントをもらった。

 

僕の髪色よりもっともっと、真っ赤なマフラー。

 

みんなでお小遣いを出し合って買ったらしい。

何でもリーダーを押し付けたようになったから、その懺悔らしい。

僕はこころよく赦しを与え、代わりに約束を取り付けるのだった。

 

全員の誕生日を、また5人で祝おうって。

それがいつまで続くかわからない。

小学生の約束なんてあっさりと忘れるものかもしれない。

 

それでも覚えているうちまでは、5人で続けようと、そう決めたんだ。

 

また4月を迎え学年がひとつ上がった。

僕が隣のチームに異動になったのはそんな折だった。

 

こうして僕の物語は唐突にその終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

まどろみから解放されるように、意識が覚醒した時に目の前にいたのは

緑の髪を持つ少女だった。

 

伊藤花。

 

自分が現在、所属しているチームのリーダー。

要するにまとめ役であり、大人たちとの伝令役であった。

 

連絡の迅速さや、不測の事態への動じなさでいえば十分な仕事をしていると言えたし、

そのことに特に不満はなかった。

 

自分もほんの1年前までは同じ役割だったが、それ自体に拘りはなかった。

問題が起きなければ、誰がやってもいい。

 

「足元ふらついたようですが、眩暈でしょうか?」

 

どうやら僕はそうした状態だったらしい。

 

改めて自分の体に問うたが、特に変わった様子はなかった。

 

「何でもない。いつもと同じ調子だよ」

 

「体は、ということですか」

 

含みのある言葉を投げかけてきたが僕は大して気に留めなかった。

この人はだいたいいつも、こんな感じだ。

いつもと同じということは、情報量がないということだ。

 

言葉の主に顔を向けたが、今度はいつもと違う部分が目に入った。

 

「……? 髪、いつものアレは?」

 

「捨てました」

 

アレとは頭に付けている生花だか造花だかわからないもののことだ。

彼女の頭は毎日違った花園と化している。

 

代わりに付けていたのは緑の葉のアクセサリーだった。

雑談がてら新しく買ったのか聞いてみたが、

「これはもう私の体の一部となったので……」とのこと。

 

いつもよりスッキリとしていて好ましいので、僕が把握するのはそこまでで十分だろう。

 

僕らは学校の授業を終え、研究所へ行く途中だった。

国内でも有数の魔法力の研究を専門とした施設で、全5階建て。

各フロアごとに研究テーマが決まっているのは、ゲン担ぎというやつらしい。

 

商店街の前を通りかかったところで、やけに走っている人が多いのに気づいた。

どうもアンチマジック・モンスターが商店街の方に現れたらしい。

 

僕が産まれた時から当たり前に存在しているのであまり意識していなかったが、

どうやら昔はこいつらが存在していないのが当たり前だったらしい。

実際、大人たちは今の若い人は大変と感じるらしいがピンとこない話だった。

 

僕はモンスターがいない世界を知らないのだから。

 

モンスターが現れたとはいえ、数や出現頻度がパターンから大きく外れていないなら

異変は起きてないと言えた。

 

 

僕らが商店街の入り口に到着した時に、今回のモンスターの姿が見えた。

 

丸っこい、頂点に引っ張られるような楕円に似た形。

僕らの身の回りであるものでは「鳥の卵」が最も近いだろう。

 

モンスターはそれぞれが他の個体にない特性を有していることが多く、

その内容は容貌からある程度推察できる。

原理は定かではないが。

 

戦闘準備にかかろうかという時に、気勢の良い、元気さに満ちた声が飛んでくる。

 

 

「アークは天!! 私も天!!」

(アークはどういう綴りなんだろうか。最初は動きの通り円弧のことかと思ったんだけど……)

 

「魔法少女ォ!!!!」

(真田さんに直接聞いたことがあるのだけど「かっこいいから!!」だそうだ。なんだかはぐらかされた気分だった)

 

「ガルガンチュアァァァァアアアアァァァァ……」

(出た。すごい巻き舌)

 

「アアアアァァァァク!!!!」

(真田さんが本気を出したら一瞬でしょ。お疲れさまでした~)

 

 

「ずおおおおりゃああああ!!!!」と威勢の良い声が響き渡る。

僕はもう戦闘が終わると思い、帰る準備をしていた。

 

だが、そうも都合よくは流石にいかなかった。

 

真田さんの振り下ろした大鎌は、敵に深々と刺さったものの、

そのまま特に何も起こっていなかった。

 

反魔法力の密度が高いタイプなのかもしれない。

 

真田さんが口元を一文字に結び直す。

踏ん張っているようだが、あまり効果があるようにも見えない。

 

そろそろ出番か。

たまには仕事をしても罰は当たらないだろう。

 

伊藤さんが真田さんの名前を叫びながら駆け寄る。

僕が魔法棒に手をかける。

 

 

今度は良い意味で期待を裏切られることになった。

 

卵の形をしたモンスターから黄色い光が漏れる。

帯状になったそれは、ひとつ、またひとつと増えていき、やがて決壊した。

 

「アークウェイブ!!!!」

 

真田さんお得意の高度応用魔法のひとつ。

本来は魔法力による爆発を巻き起こし、広範囲を効率よく殲滅する技術。

 

これを接近して使うという発想があるのが、彼女の強みだと僕は理解する。

爆発はモンスターの中で巻き起こり、そして消滅へと至った。

 

やはりことモンスター撃退において真田さんは頼りになる。

 

駆け寄り、いつものように水を差し出すかと思われた伊藤さんは、

何やら真田さんと視線が合うとにっこりと笑みを浮かべていた。

 

わずかに違和を感じた。

この人は真田さんにご執心なのだが、感情の伝え方が一方的なきらいはあった。

だというのに、今回の笑みは真田さんの反応を待つニュアンスがあった。

 

真田さんのもとに駆け寄り、無事を確認する。

曰く、彼女も研究所で警報を聞き飛んできたらしく、

まだ敵は残っているのではとのこと。

 

いつもとやや違う雰囲気があっても、まだ日常の範疇だといえた。

 

 

 

残った敵を探すべく、僕ら3人は商店街へと入った。

途中で敵をおびき出せないかと3人で魔法力を噴出してみる。

 

この作業自体は研究所でもレクチャーを受ける基本の索敵手段なのだが、

いかんせん、蒸し暑かった。

3人寄らば何とやらである。

 

魔法力の発生には副産物として熱や光を伴う。

一度、友達たちと発電などに利用できないか議論になったことがあったが、

効率が悪すぎて無理だろうという結論になった。

人力発電と称して自転車を漕ぐのと大差ないかもしれない。

 

魔法力を依然として噴出する。

そんな僕らに寄ってきたのは、小さな子供だった。

怖かったのか涙を浮かべていた。

 

真田さんが抱きかかえて安心させてあげている。

落ち着いた時を見計らって、僕は事情を聞いた。

 

 

向こうの公園のあたりにモンスターが一体いること。

それは卵のような形をしていたこと。

最初は動きがなかったが、見ていたら急に飛び跳ねだしたこと。

通りかかった子が、石を投げて引きつけ、自分を逃がしてくれたこと。

 

興奮気味で聞き取りにくかったが、

少女が言わんとしていることはこのような内容だった。

 

話を聞くなり、真田さんは少女を僕に預け、公園の方へと駆けて行った。

確かに他の住民が襲われているのなら早く向かわねばいけないだろう。

 

モンスターによる事故は最近はめっきり報告されていないらしいが、

それはモンスターが積極的に人間や建物を襲わないからに過ぎない。

いつかモンスターが一斉に出現したら……なんてのも絵空事として捉えられがちだが、

モンスターの生態がわからぬ以上、否定もできない話だった。

 

真田さんに付いていくように伊藤さんも走り出した。

これもまあ、予想通りではあった。

魔法少女の仕事に思い入れはないが、

仕事熱心な人たちがいるから楽をしているのは、きちんと意識すべきだろう。

 

僕は泣きじゃくる子に、ほっぺたを引っ張られながら商店街の外へと引き返す。

マフラーを引っ張られそうになったが、それは遠慮してもらった。

途中で保護者の方がお見えになり、感謝されてしまった。

 

こうして仕事はしているのだから、異動願いも聞き届けられるといいのだけれど。

希望はもちろんDチーム、僕の元々の居場所だ。

真田さんや伊藤さんを嫌っているわけでは決してない。

ただ、ものすごい気が合うわけではない、それだけだ。

人数の関係上、難しくてもずっと出し続けよう。

少なくとも僕の目的はそれくらいしか――。

 

「ちょっと君、待って」

 

僕の思考は視覚情報で遮断された。

 

さっきの子より、もう少し大きな子がこちらへ向かい走ってきたのだ。

黒髪だから通りすがりの魔法少女ではない。

 

外からこちら側、つまりわざわざ安全なところから危険な方へ向かっているということだ。

この騒ぎを知らないのだろうか。

 

「君!! 待ってってば!!」

 

なおも止まらない少女に僕の声は張りあがった。

進路を塞ぐように正面を取る。

 

少女が口元を歪ませる。

まるでこちらが悪者だと言わんばかりだ。

 

「待ってって……!!」

 

「……待てません」

 

その声はとても力強くて、熱を帯びていて、

でもなぜなのだろう、この空虚な感じは――。

 

「お姉ちゃんがこの先にいるはずなんです!! どいてください!!」

 

姉がいる。つまりこの子は妹だ。

その事実が自分の胸に訴えかけてくるのを、僕は理性で抑えた。

 

「ここから先は危険だから!! 僕たち魔法少女が……」

 

「お姉ちゃんを助けてくれるんですか……?」

 

少女の言葉に確認の意味合いはなかった。

その言葉はむしろ皮肉であり失望の炎が灯っていた。

 

少女が僕の静止を振り払った。

 

「だから危ないって……!!」

 

「……どんなに危険だっていい」

 

少女に僕は手を伸ばした。

 

「私はお姉ちゃんが無事ならそれで……!!」

 

少女が自分の横を通り過ぎる。

覗いた横顔からその瞳が見えた。

まるで吸い込まれるような錯覚を覚える。

その瞳はどこか儚げでまるで今にも消えてしまいそうだった。

 

手の、指先が一瞬、彼女に当たった。

指先に感覚が宿る。

痛覚なのか、熱なのか、わからないものが手に残る。

 

僕はしばらく、自分の手を見つめていた。

 

これは僕が、小学6年生の時の物語。

 

 

 

 

 

僕は少女の後を追った。

 

足はそこそこ速い方だったが、少女は同じ程度速かったらしく、

引き離されはしないものの、追いつくこともできなかった。

あるいは少女の必死さが、脚力以上の勢いを与えていたのかもしれない。

 

少女が一瞬、足を止める。

その視線に釣られて自分も目をやると、

大きな黄色い竜巻が巻き起こっていた。

 

それを目印に少女が方向転換する。

僕もそれに合わせる。

距離はそこそこに近い。

 

商店街を抜け、脇の小道に入った時に、目に飛び込んだのは3人。

 

自信の体から竜巻を巻き起こしてモンスターを粉微塵にしている真田さん。

その真田さんの傍に、僕の知らない髪の短い女の子。

更にちょっと離れたところに少しふらついている伊藤さん。

 

最初に助けた子の言を思い出すに、

髪の短い子がモンスターの注意を引きつけた子だろう。

 

しかし真田さんはいつの間にあんな技を身に着けたのか。

空中に吹き飛んでいた卵は無残にも切り刻まれるように消滅していった。

あまりにも容赦がない。くわばらくわばら。

 

その真田さんはというと、助けた女の子と抱き合っている。

意外と大胆な行動を取るんだな、と僕は驚いてしまった。

真田さんの新たな一面を垣間見た気分だ。

 

そこへと駆けついたのが2人。

僕と僕を振り払って無理やりやってきた少女。

 

少女はほっと胸を撫で下ろしていた。

今、助けられた子がこの子の姉なのだろう。

 

「よかった」そう短くつぶやいているのが聞こえた。

僕はそんな彼女の横顔に、嫌味の一言でも言おうかと思ったがやめた。

 

誰もが無事そうだったのは確かに「よかった」の一言だ。

 

ともかくこれでこの場には5人が集まって――。

 

「おらおら!! クソモンスターども!!

この村田影が相手をしてやるわ!! ……どこよ、モンスター」

 

僕ら5人の視線が、唐突にやってきたベレー帽の少女に向く。

 

何の因果か、こうしてこの場には6人の少女が集結していた。

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